俺は今入院中だ。
秋も深まり、もうじき冬に変わる季節。
いつ雨が夜更け過ぎに雪へと変わってもおかしくない。
大学受験を控えた受験生にこの時期の入院ほど痛いものはないだろう。
男「はあ…」
ため息をついて窓の外を眺めると、ほとんど丸裸になった木に葉が一枚。
男「ああ、あの葉が落ちたら私は死ぬのね……」
女「…バッカじゃないのあんた、どうやったら盲腸で死ぬのよ」
そう、俺は盲腸になった。
深夜、急に耐え難い腹痛が襲ってきてトイレに駆け込むも、一向にウ○コが出てくる様子はなく、腹は痛くなる一方である。
うめき声をあげトイレに閉じこもる俺を、発見した母親が病院に連れて行ったところ盲腸だとわかったというわけだ。
男「天国に行けるのかしら…私」
女「ちょっと、なに無視してんのよあんた!それにその喋り方キモイのよ!」
で、隣でうるさくわめいてるのは幼なじみの女だ。
家が隣同士なせいでオムツをしてた頃からの付き合いだ。
なんの因果かまったく同じ日に同じ理由で入院した。
おまけになんでか同じ部屋。
まったく勘弁して欲しい。
これではナース服の看護婦さんを視姦しておき、夜に一人プレイでハッスルするという完璧な計画が台無しだ。
大体こいつはうるさくて敵わない。
せっかく顔はかわいいのだから、もう少しお淑やかに願いたいものだ。
女「…これ以上、無視を続けるようならこちらにも考えがあります」
ほう、それは面白い。
せっかくだから俺は無視を選ぶぜ!
女「一応、幼なじみのよしみでこれから実行に移す行動を教えておいてあげるわ」
なんて優しいんだマイハニー。
いつものツンツンした態度の裏側にこんな優しい一面があるとは驚きだぜ。
女「ここに、あんたの部屋で撮影した一枚の写真があります」
ちょっと待て、いつ撮影した。
女「これを拡大コピーした上で、退院した後学校の全ての教室に張り出そうと思うの」
女「あなたが黒いストッキングをはいたやたら足がきれいな女が出てくるエロ動画を見ながら一人で…」
男「すまん、俺が悪かった」
前言撤回。こいつは腐れ外道だ。
男「つーかいつ撮ったんだそんなもん!」
女「私があんたの部屋に遊びに行ってやった時に。いつか使えると思って撮ったのよ」
男「撮るなよ!普通の女の子だったら“きゃー!このど変態!死ね!!”とか言って逃げるだろ!?」
少なくともカメラに収めようという発想は生まれないと思うぞ。
……ん?よく見れば女の顔が赤い…。
ククク、敵は冷静を装ってるが実は恥ずかしいとみえる。
女「あ、あんたの粗末なもの見たって、ど、動揺するわけないでしょっ!この馬鹿!」
男「いや、むしろこんなのがいいな。“そんなもの見て一人でやらないでよ!私がいるじゃないっ”」
男「え……?」
男「“馬鹿……”」
男「い、いいのか女」
男「“男になら…いいよ”」
男「女……」
女「なに妄想の中で私相手に卑猥なストーリーを展開してるのよ!!///」ガスン!
男「あべしっ!」
女の右ストレートがみごとに俺の頬に直撃する。
普通に痛いぞ、これ。
俺が女をからかったり、女が俺に暴力を振るったりして騒いでいると病室のドアが開いた。
看護婦「こら、仲がいいのはわかるけど騒ぎすぎよ。ここは病室です」
女「あ、すいません!気をつけます…でも仲がいいわけじゃありません」
男「そうだな、気をつけるんだぞマイハニー」
女「あんたのせいでしょうが!!それにハニー言うな!」
看護婦「女ちゃん」
女「す、すみません」
男「ぷぷぷ」
看護婦「男君もよ」
男「はい、申し訳ないです。美人のお姉さん」
看護婦「ふふ、ありがと。それじゃ次の検査の時にね」
女「あーあ、馬鹿のせいで怒られちゃったしもう最悪」
男「そんなに褒めるなよ」
女「褒めてない……もういいわ、なんかお腹も痛くなってきたしちょっと寝る」
そういって女はこちらに背を向けて横になった。
男「ん、おやすみ」
俺も少し寝るかな……。
体を曲げると腹が圧迫されて痛い。軽くうめき声をあげて横になる。
女「ねえ……」
横になってしばらくして女がぽつりとつぶやくように問いかけてきた。
男「どした?」
女「まだ、痛む?」
男「ああ、まだ痛いな。流石は盲腸、伊達じゃないぜ」
女「なによそれ…」
女「ねえ、男は……」
男「なんだよ、さっきから。歯切れが悪いな」
女「男は…やっぱり看護婦さんみたいな人が好み?」
男「なんだそれ」
女「だって、さっき美人のお姉さんって。それに看護婦さんを見るときの男、なんかうれしそうだし」
何を言ってるんだ、こいつは。
美人な女性がナース服を着てるんだぞ?
嬉 し い に 決 ま っ て る じ ゃ な い か 。
男「そりゃあ看護婦さんみたいな美人な人と話せるなんてうれしいからな」
女「……ふーん、そう」
……なぜか、女の声がどこか悲しげな気がした。
そう思ったから。
男「でも、俺は女と話してるときの方が楽しいけどな」
女「…え?」
男「おまえの方が俺の好みの女だし……気心しれてるから話しやすい」
自然とこんな恥ずかしいことを口走っていた。
女「……ふん、あんたの好みだからって言われても全然嬉しくないわよ…馬鹿」
男「そうかい」
女「………でも、一応言っとくと、あんただって私の好みよ」
こいつもけっこう恥ずかしいこと言ってるな。
まったく、調子狂うぜ。さっきまであんなに騒いでたってのに。
男「それは光栄だな」
女「ええ、光栄に思いなさい」
しばらく病室に沈黙が流れる。
正直な話、俺は女が好きだったりする。
うぬぼれじゃなけりゃ、あいつもきっと同じ気持ちだろう。
だが、それをここで言うのはどうもムードに欠ける気がする。
……いや、むしろこういうのもありかな?
それにこの機会を逃すとこんなこと話す雰囲気なんてそうそうできないだろう…。
ついに、幼なじみ以上恋人未満の関係を打破する時が来た!
男「女…」
女「な、なに?」
女も俺がなにを言おうとしているのかわかったようだ。
緊張してるのが伝わってくる。
男「ぶっちゃけていうと、俺……昔から女のこ」
バターン!!
男友「よう!お二人さん!元気してるかー!!」
男「……女、俺こいつのことすげー殴りたい」
女「奇遇ね。私もこいつを窓から突き落としたいわ」
男友「ちょwwwwww二人ともなにそんなおっかない顔してアッーーー!!」
その後、病室の窓の下にはボコボコにされた一人の男子高校生の姿があった。
幸いなのは、ここが1階だったということだろう。
☆シーン1終了☆
おまけ(?)
俺はとてもショックを受けていた。
なぜなら、盲腸の手術を受けねばならないと知ったからだ。
てっきり薬で散らして終わりだと思っていた。
友達はそうだったと言っていたからだ。
だが、俺の盲腸は手術をしなければ治らないらしい。
おっと待ってくれ。何も手術が怖いわけじゃあない。
男「俺の下の毛が無くなるのが怖いんだぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
女「ひっ!ちょ、ちょっと!急に叫ばないでよね!!周りの病室の人にも迷惑でしょ!!」
男「股間の毛はライオンのたてがみなんや!!男の尊厳なんや!」
女「どこかの似非関西弁男の真似なんてしなくていい!黙って横になってなさい!」
男「お前はいいよな…薬で散らして終わりだもんな!俺は股間の毛を綺麗に剃りあげた上、腹を切られなきゃいかんのだぞ!」
女「いいじゃないそんなこと!気にしなければいいのよ、そのうち生えてくるでしょ!」
男「そうか…俺に付き合ってお前も剃ってくれるんだな!ありがとう!俺の幼なじみはパイ○ンだぜ!」
女「!!こ、この馬鹿!!なんでそうなるのよ!死ね!!100回死ね!!氏ねじゃなくて死ねーーーー!!!!///」
男「だって気にしないんだろうが!痛!ちょwww病人が暴れんなwwww悪かったってwwww」
看護婦「いい加減にしないと二人とも麻酔かけて東京湾に沈めるわよ」
二人「すみませんでした!!」
最終更新:2007年02月11日 02:03