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男「なんだ、風邪か?」
女「うるさいな。ほっといて」
男「わかったよ、ほっとく」
女「ふん、あたし先帰る。あんたも、寄り道なんかしてないで、さっさと帰りなさいよね」
男「ああ、ちょっと待て」
女「なによ?」
男「クリスマスさ、ヒマかな?」
女「なに、ヒマなの?」
男「俺がモテたためしあったか?」
女「質問を質問で返さないでよね」
男「お前が先だろ。で、ヒマか?」
女「忙しい。風邪がひどくて、入院」
男「なんだよそれ。そこまで酷いのか?」
女「別に。ともかくその日は忙しいから駄目」
男「そっか、じゃ、暇になったらいつでも頼むわ」
女「待つより行動したら? 他の女当たれ」
男「俺はお前がいいんだよ」
女「あっそ。ま、気が向いたらね」
男「おう。じゃあ、また明日な」

女「また明日か……参ったな。明日から入院なんだけどな……言えないか」




 コンコン
女「? どうぞ~」
男「よう」
女「え!? な、何しに来たの?」
男「何って、見舞いだろ。まったく、入院するならそう言ってくれよな」
女「……悪かったわよ」
男「クリスマスのことか? 別にどうでもいいよ。毎年一人だし」
女「そっちじゃない……もういいや」
男「それよかさ、面会するまで、やたらと手間食ったんだよな。もっと色々準備したかったんだけど、急だったからさ」
女「別にいいって。必要なものなんて、お母さんが用意してくれてるし……」
男「ほれ、お守りと、適当にラノベ。新刊まだ買ってなかったよな?」
女「ありがと……ていうか、今日バイトじゃなかった?」
男「遅れるって連絡入れてある。実があんまり時間無いんだよな」
女「さっさと行きなさいよ。病人相手に喋ってるなんて、有意義じゃないでしょ?」
男「寂しいこというなよ。さっさと良くなって、学校来い。んじゃ、行ってくる」
女「う、うん……」

女「さっさと良くなって、か……なればいいけどね……無理だよ、多分」


女「帰らなくていいの?」
男「どうせ、もうすぐ面会時間じゃなくなるだろ」
女「夜か……引き止めちゃったね」
男「好きで喋ってた。それでいいだろ。お前、目腫れてるぞ」
女「そう。でもスッキリしたかも」
男「……そういう顔かよ」
女「ねえ、屋上って、まだ開いてるかな?」
男「開いてても寒いと思うぞ」
女「おんぶ」
男「おい……まあいいか。付き合ってやるよ」
女「ありがと」
男「いつものツンケンした態度はどうしたんだかな……っと、足冷たいな、冷え性か?」
女「どうでもいいでしょ、そんなの」
男「はいはい……んじゃ、ちょっくら忍び足で行こうか」
 ・ ・ ・
女「やっぱ寒いね」
男「言わんこっちゃない。コート持ってきて正解だったな──っくしゅ!」
女「あんたも一緒に羽織れば? ほら」
男「あ、ああ……お前、本当、どうした? 熱でもあるのか?」
女「病気ではあるよ」
男「あのなぁ……まあいいや。気の済むまで付き合う」
女「馬鹿だね、あんたも」



男「新年、おめでとう」
女「あんたも懲りないね。病人相手に楽しい?」
男「せっかく来たのに、ひどい言い方だな。ほれ、健康祈願。神社で貰ってきた」
女「もう貰ったよ。それよか、果物とかは無い訳?」
男「新年の健康祈願は、重みが違うぞ。何しろバイトの巫女さんが売ってくれるんだ」
女「果物とかないわけ?」
男「ジュースでいいか?」
女「我慢してあげる。そこに置いといて」
男「……開けたほうがいいか?」
女「ありがと。実を言うと、指先がうまく動かなくてさ」
男「……はぐらかさずに教えてくれないか。お前、本当に一ヶ月で退院できるのか?」
女「できるよ。嘘は言ってない……ただ、もう治療はできないっていうだけ」
男「──そっか」
女「足にもほとんど力が入んない。おんぶさせたのも、そういうわけ」
男「そっか……じゃあ、何しても、抵抗はされない訳だ?」
女「は? 何言って──」
男「……肩、冷たいな」
女「離して。そんな事されたら……っぐ、やめ、ひぐっ……堪えて、たのに……」
男「ごめんな。もうちょい、こうしてたい」
女「馬鹿……離してよ。手が動かせないじゃない」



男「また、ぎりぎりまで居座っちまったな。疲れたろ」
女「……結局、抱きしめただけ?」
男「何言ってんだ、お前」
女「チャンスじゃないの? 私、抵抗できないよ? それに個室だし」
男「馬鹿言え。病人にできるか」
女「私じゃ不満?」
男「ンなこと言ってないだろ。そういう問題じゃない」
女「じゃあ、お願い」
男「おい……お前、そういうのよくないと思うぞ」
女「じゃあ、どういうのがいいの?」
男「もっと、ちゃんと恋でもして、そういう相手とだな」
女「……だから、アンタに頼んでるんじゃない」
男「──あのなぁ」
女「あたしに恥かかせる気? 脱がなきゃ駄目?」
男「止せって!」
女「ッ──やれば出来るじゃない」
男「多分、止まらないぞ」
女「あんまり激しくは駄目ね。その、初めてだから……」
男「……気にすんな。俺もだよ、チクショウ」
女「よかったね。生きてる内に卒業できて」
男「それが理由か……ありがとうよ」
女「あんたが好きなだけ。こっちこそ、ありがと」


男「ふぅ……」
先「どした、今日はなんか溜息ばっかだな?」
男「あ、先輩、すいません。これから忙しいってのに」
先「体調悪いんなら、今のうちだぞ。もう直ぐバレンタインシーズンだから、使えない奴は居ない方がいい」
男「いや、やれますよ」
先「……お前、その財布にしまってる写真、昔の女か?」
男「え、見てたんですか?」
先「見えたんだよ。携帯の待ち受けにもしてないのに、今時写真なんて、よほど思い入れがあると見た」
男「……今日は、記念日なんですよ」
先「ほほう、そうだったか。そりゃ悪いことしちまったな。なんだよ、昔の女なんかじゃねえじゃねえか。さっさと帰れ馬鹿野郎」
男「は? あの」
先「人の恋路を邪魔するほど、野暮じゃねえよ。さっさと帰ってやんな」
 ・ ・ ・
男「まったく……バイトに入ったときから、思い込みの激しい人だとは思ってたけど……」

男「もう一年か……あっという間だった気がするな。とても、もう居ないとは思えないくらい、お前は……」

男「ああそうか……いっつも、笑ってるの見てるからか……はは、悪い。忘れられそうもねぇわ」

男「なぁ、俺、生涯独り身で良いかなァ? 童貞じゃないし、もういいよな。女は、お前だけでいいや。なぁ──」


 ──おすまい




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最終更新:2007年02月15日 11:53