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こんなところで何をしているんだ、と思った。
自分にはもっとやるべきことがあるだろうと、憤った。
こうしている間にも、”アイツ”が待っている。
今すぐ行かないといけない。
”アイツ”は寂しがり屋なんだ。
どこの誰とも知れない異常者のせいで、彼女に会いに行けない。
そうしなきゃいけないのに。
そうしないと、彼女が悲しんでしまうのに。
こんなところでうつつを抜かしている場合ではないのに。
俺は混乱する頭の中を必死に纏め、現在置かれている状況を整理する。
バトルロワイアル。同じタイトルと趣向のゲームを題材にした小説を学生時代に読んだことがあるような気がした。
結構有名だったと思うし、きっとあの女もそれを元にこんなゲームを俺たちにやらせようと考えたのだろう。
まったく、はた迷惑なことだと思う。
ゲームで人が凶行に走るだとか、暴力映画は子供に悪影響だとか、そういう話は話半分に聞いてきた俺だが、まさか現実に遭遇するとは。
そうだ、俺は見た。
知らない人間だったが、手品だとかCGとかじゃなくて、本当に人間の命が失われる光景を、見た。
……思い出すだけでも吐き気がする。
あんなことを平然とやってのける輩がこの世にいるなんて、信じたくないし、今でも信じられないくらいだ。
でもこれはドッキリじゃない。
こんな悪質なドッキリがあったら、きっとテレビ局は苦情殺到だろう。
ただでさえ視聴者様の五月蠅い時代なんだ。
――そう。これは、現実だ。
現実にこんなわけのわからないことが起こっている。
勘弁してくれよ、と思う。
俺には帰るところがある。
”アイツ”のところへ戻らないと。
”アイツ”が俺を待ってる。
こんなところで死んでなんかいられない。
じゃあ、どうする?
誰かを殺して最後の一人までのし上がるか……いや、バカを言え。
確かに彼女の場所へ戻ることは大切なことだが、そのために罪のない人々を何人も殺すなんてできるわけがない。
それじゃあ、あの女と同じじゃないか。
かつて俺が付き合っていたあの女と。
虫酸が走った。
あの女はやるだろう。
そのくらいのことは平気な顔でやってのけ、自分の幸せのためになら他人を蔑ろにすることを一切厭わない、最低の人間。
俺はあの女とは違う。
だから殺し合うなんて馬鹿げたことはしない。
そんなことをしたら、俺の彼女への想いまで薄れてしまいそうだから。
やれるかは分からないけど、どうにかして参加者同士で結託して主催者の女を捕まえることが出来れば、きっとここから出られる。
警察にバレれば、たぶん一生刑務所暮らしは免れないだろう。
当然だ。人の命を奪ったのだから、そのくらいはむしろ軽いくらい。
人の当たり前の日常を台無しにしてくれたんだ、きっちり痛い目を見て貰わないと割に合わないはずだ。
俺は意気揚々と、ディパックに手をかけた。
殺し合いに乗らないにしろ、なにか護身用の武器くらいは持っていないと厳しいだろうと思ったからだ。
銃や刀じゃなくて、金属バットでもいい。
使わないに越したことはないのだし、大したモノじゃなくて構わないとディパックを開けた時、一枚の紙が目に入った。

「……参加者名簿?」

――それは、参加者の名前がずらりと羅列された名簿だった。
見れば、この殺し合いには国籍を問わずに人が集められているらしい。
中には明らかに偽名としか思えないモノも混じっていたが、探してみると当たり前だが俺――大志の名前もあった。
やはりこれは現実だ。
心のどこかで、俺が参加させられているのは何かの間違いではないかと疑い続けていたが、そんな逃げ道がないことを思い知らされた。
一人だけズルってわけには、やっぱりいかないか。
そう思いながら名簿を眺めていて、唐突に心臓を握り潰された。
正確には、心臓を握り潰されたかと思うほどの暴力的悪寒があった。
ぞわりと背筋を包まれて。
ぐしゃりと身体が潰されて。
さらりと残骸が解けて。
ひゅるりと溶けて消える、そんな悪魔じみた感覚があった。

「…………マジかよ…………」

頭を押さえて空を見上げる。
慰めてくれるものはどこにもなかった。
これは現実だった。
冷たくて理不尽で、やっぱり悪魔じみていた。

「さゆり…………ッ!!」

さゆり。
俺が帰るべき場所に、必ずいてくれる妻。
バカな俺があの悪女に陥れられて、彼女を傷つけて、彼女との夢の中でも何度も何度も、何度も何度も裏切った。
それでも彼女はこんな俺を愛してくれた。
夢でもいいと、健気に愛し続けてくれた。
ようやくやってきたんだ。
”ユメ”から覚めて、”リアル”の目覚めへ。
やっと俺たちの夫婦生活が帰ってきたばかりだってのに、よりによってこんなことになるなんて――
本当に、許せねえと思った。
戦う理由なんて、もう十分に揃っている。
さゆりを危険に曝した。
俺たちの幸せを奪った。
これ以上に、拳を握る理由なんて必要ない。

「なら、俺がやることは一つだ」

まずはさゆりを見つける。
考えたくはないし、想像するのも嫌だが、さゆりは決して強くない。
格闘技のプロだというわけでもないし、別に特別な技能も持たない。
早く見つけてあげないと、取り返しのつかないことになってしまったらもう遅いのだ。
考えるだけでもゾッとする。

「さゆり――」

俺はさゆりを愛している。
新しい明日を迎えて、もう惑わないことを決めた。
みゆきのヤツにはもう微塵だって靡いてやらない。
贖罪のためにも、ずっと彼女の側にいよう。
一緒に歩んでいこう。
そのためにもまずはここから帰るんだ。
そしたら、また幸せを始めよう。
心配しなくても、俺たちには幸い時間が腐るほどある。
一緒に、手を繋いでどこまでも行こう。

「――愛してるぜ。そりゃあもうどうしようもなく」

そう、ゆっくり歩くような速さで。


【一日目/朝/B-2・路上】


【大志@奥様は惨殺少女】
[状態]健康
[装備]なし
[所持品]基本支給品一式、ランダム支給品1~3
[思考・行動]
基本:殺し合いを潰す。さゆりとの幸せを取り戻す。
1:さゆりを探す
[備考]
※ED『未来への白の目覚め』からの参加です


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最終更新:2013年02月11日 12:06