さよならを教えて ~comment te dire adieu~
【さよならをおしえて こまん とぅ でぃーる あでゅー】
| ジャンル |
ファナティックアドベンチャーノベル |
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| 対応機種 |
パッケージ |
Windows 95~Me |
| あそBD |
BDプレイヤーズゲーム |
| DLsite専売 |
WindowsVista~10&br;Android(11) |
| 販売元 |
ビジュアルアーツ |
| 開発元 |
CRAFTWORK |
| 発売日 |
パッケージ |
2001年3月2日 |
| あそBD |
2011年12月16日 |
| DLsite専売 |
2016年1月29日 |
| 定価 |
パッケージ |
8,800円(税別) |
| あそBD |
4,300円(税別) |
| DLsite専売 |
Win |
2,750円(税込) |
| Android |
2,420円(税込) |
| レーティング |
アダルトゲーム
|
| 判定 |
良作
|
|
怪作
|
概要
評価点
- 緻密に練られた狂気のシナリオ構成
- イレギュラーかつ危険なテーマを扱った作品であることから、文章表現の随所に意図的な「意味不明さ」や「不自然さ」が散りばめられている。しかし、伏線配置や文章構成、会話文のリズムなどは非常に丁寧に設計されており、難解な内容に反して意外なほど読み進めやすい。
- 一般的なゲームシナリオの枠組みから大きく逸脱した構成でありながら、狂気・エロティシズム・暴力性を独自のバランスで融合させている点は圧巻。倫理観を踏み越える展開の数々は強烈な拒否感を生み出す一方で、「この作品にしかない異様な魅力」として成立している。
- アダルトゲームという媒体だからこそ成立し得た過激性と精神性が高次元で噛み合っており、単なるショック演出では終わらない説得力を獲得している。
- 終盤に至るまで断片的に提示されていた違和感や異常性が、エンディング到達後に一気に一本の線として繋がる構造は秀逸。
- 一周目では不可解だった台詞や選択肢、演出意図も、真相を知った後に再確認することで全く別の意味を帯び始めるため、再読・再プレイ時の発見も非常に多い。
- 主人公の精神描写が極めて生々しく、内面描写の迫真性も高く評価されている。
- 誰しも抱えうる劣等感や承認欲求、自己嫌悪といった感情を丁寧に掘り下げているため、読者自身の精神状態によっては強く感情移入してしまう危険性すらある。
- そのため、単なるフィクションとして消費しづらい重苦しさを持っており、「読んでいて精神を削られる」という評価も少なくない。
- 作品内で描かれる狂気は決して非現実的な怪物ではなく、人間誰しもが持つ陰鬱な感情の延長線上に存在しているため、余計に不気味さを増幅させている。
- 不調和なあふれる世界観
- 序盤では穏やかで平凡な日常劇のように見える本作だが、物語が進行するにつれて徐々に空気が歪み始め、後半では背徳・狂気・官能が渾然一体となった異常世界へと変貌していく。
- エロティックな描写と残虐性、さらに精神的嫌悪感を煽る演出が容赦なく混在しており、表面的には極めてアンバランスで歪な作品構造となっている。
- しかし、この「日常」と「狂気」、「性愛」と「暴力」という本来相容れない要素同士の激突こそが、本作最大の魅力となっている。
- 安堵感を与える日常描写があるからこそ、後半の崩壊描写が際立っており、プレイヤー心理を激しく揺さぶる構成になっている。
- また、単純に恐怖演出へ寄せるのではなく、どこか官能的で倒錯した空気感を同時に漂わせているため、他作品にはない独特の読後感を生み出している。
- 単なる過激作品では終わらず、「理解できないのに目を離せない」という不気味な吸引力を持っている点も特徴。
- 恐怖と性的興奮、嫌悪感と好奇心が混在する感覚は極めて独特であり、本作を唯一無二たらしめている要因の一つとなっている。
- グロテスクな描写ですら世界観形成の一部として機能しており、単なる悪趣味に終始していない点は高く評価されている。
- キャラクター
- 本作に登場する女性キャラクターたちは、ビジュアル面だけでなく、過去・性格・思想・嗜好に至るまで非常に細かな設定が構築されている。
- しかし、それ以上に異彩を放っているのが主人公の作り込みである。
- この手のアダルトゲームでは、男性主人公はプレイヤー投影用の無個性な存在になりがちだが、本作では主人公自身が一人の完成された人格として描かれている。
- 独白や行動原理、他者との接し方に至るまで一貫した異常性が存在しており、その歪みがシナリオ全体の説得力を支えている。
- テキストの断片から徐々に浮かび上がる過去のトラウマや家庭環境、精神構造の形成過程は非常に丁寧で、単なる狂人では片付けられない複雑さを持つ。
- 主人公がなぜ破滅へ向かうのか、その理由付けが徹底的に積み重ねられているため、読者側も彼を完全には否定しきれなくなる。
- 倫理的には到底許容できない行動であっても、その心理的経緯が細かく描かれているため、「理解だけはできてしまう」という危うい没入感が生まれている。
- その結果、本作は単なる猟奇作品ではなく、「人間の弱さや歪みを描いた精神劇」としても高い完成度を獲得している。
- BGM
- 本作の作中を彩るすべてのBGMは、独創的な音楽性で知られる作曲家・さっぽろももこが全面的に手掛けている。
- そのメロディの数々は、作品が持つ独特な狂気や、歪んだテキスト内容との圧倒的な一体感が極限まで追求されており、ゲームの没入感を底上げする非常に重要なファクターとしてファンの間でもきわめて高く評価される傾向にある。
- 劇中に用意されている楽曲の絶対数自体は決して多くはなく、近年のゲームのようにイベントの展開やキャラクターの細かな感情の動きに応じて、シーンごとに細かく曲を切り替えるような映画的な演出技法はあえて使われていない。
- 各ヒロインごとに用意された専用のテーマ曲こそ、それぞれの歪んだ性格や個性を的確に表現した非常に先鋭的で個性的な仕上がりとなっている。
- その一方で、ゲームの大部分を占める通常画面で流れるBGMに関しては、まさに世界の黄昏時を連想させるような、極めてスローテンポで重苦しい楽曲が採用されている。
- これは、劇中で淡々と、そして狂気的に繰り返されることになる主人公・人見青年のけだるく不毛な一日をそのまま象徴するかのように、画面が切り替わっても常に同じ旋律が背景で執拗にループし続ける仕様になっている。
- この徹底して抑揚を排除した演出手法が、プレイヤーの精神をじわじわと摩耗させる、本作ならではの逃げ場のない閉塞感を見事に表現している。
- そして、物語の結末を飾るエンディング主題歌「『さよならを教えて ~comment te dire adieu~』 原詞:長岡建蔵 作詞・作曲:さっぽろももこ 編曲:高瀬一矢(I've) 歌:MELL(I've)」は、透明感がありながらもどこか影を帯びた女性ボーカルの美声、人間の破滅を唄う退廃的な歌詞、そして重厚で冷徹な伴奏のバランスが奇跡的な比率で調和している。
- 作品の持つ唯一無二の空気感や余韻を極限まで引き立てる至高の名曲として、発売から長い年月が経過した今なお、ユーザーの間で絶大な人気とカリスマ性を誇る楽曲として語り継がれている。
- ちなみに、この主題歌のボーカルを担当したMELLは、のちに大ヒットTVアニメ『BLACK LAGOON』のオープニングテーマとしてあまりにも有名な「Red fraction」などを世に送り出すことになる実力派歌姫である。
- さらに編曲を手掛けた高瀬一矢は、当時の美少女ゲーム界を席巻した泣きゲーの金字塔『Kanon』の主題歌「Last regrets」「風の辿り着く場所」や、『AIR』の歴史的名曲「鳥の詩」の編曲といった、数々の伝説的な楽曲を世に送り出してきた希代の天才クリエイターである。
- これらが所属していた「I've」は、当時のPCゲーム業界において質・量ともに最も凄まじい勢いと影響力を誇っていた最強の音楽制作グループであり、本作のゲームパッケージの表面にも、その高い音楽的クオリティを保証する証として「I've sound」のブランドロゴが誇らしげにあしらわれていた。
- 演出
- 上述したように、本作はアドベンチャーゲームという限られた表現形式の枠組みの中において、これまでの同ジャンルの常識では到底考えられなかったような、極めて異質かつ先鋭的な画面演出やテキストの構成技法が実験的に用いられている。
- そして、それらのトリッキーな演出の数々は、単なるプレイヤーを驚かせるための安易な目眩ましなどではなく、メインシナリオが抱える狂気の本質や物語のギミックを100%成立させるために、緻密な計算のもとで完璧に生かされている。
- 画面の向こう側の主人公がその歪んだ網膜と精神で見つめている、世界の崩壊や狂気に満ちた異常な光景の数々が、システムのギミックを通じてそのままゲーム画面の前のプレイヤーの脳内へとダイレクトに伝達される。
- 主人公の認知の歪みそのものをプレイヤーが地続きで追体験し、知らず知らずのうちにその狂った主観に深く共感し、足元をすくわれていくという、極めて恐怖度の高いインタラクティブなゲーム体験を実現している。
賛否両論点
- 性的実用性
- 本作はアダルトゲームというジャンルに属してはいるものの、いわゆる成人向けコンテンツとしての純粋な性的実用性や快感を期待して購入した場合、その目的は基本的には全く果たせないものと考えて差し支えない。
- これは、描写されている行為そのものにエロティシズムや官能性が欠如しているからというわけではなく、行為に至るシチュエーションやその背景にある状況設定があまりにも常軌を逸して特殊すぎることが最大の原因である。
- それに加えて、初見のプレイヤーにとっては到底受け入れがたいほど、物語の文脈やシーンの繋ぎ方が意図的に不整合かつ不条理な形で処理されていることもその理由に挙げられる。
- プレイヤーが何の気なしに、ごく普通の恋愛シミュレーションのような感覚で意中のヒロインに会いに行くつもりで画面上の移動場所を選択したとする。
- しかし、画面が暗転から復帰した直後、何の前触れもなく唐突に過激なアダルトシーンが開始され、しかもその行為の内容が、生理的な嫌悪感を催すような凄惨かつ猟奇的なエッセンスにまみれた精神的暴力を伴うものであった場合、大半の人間は興奮するどころかただあっけに取られて呆然とするしかないのが普通だろう。
- このように、プレイヤーの性欲や期待を完全に裏切り、精神的な動揺と困惑を植え付けるための演出の道具としてエロ描写が機能しているため、一般的な意味での実用性は皆無に等しい仕様となっている。
- 救いの無いエンディング
- 本作の根幹をなすシナリオは、全編を通して一切の救いやカタルシスが排除された、きわめて凄惨な鬱描写によって徹底的に支配されている。
- 物語の結末としてプレイヤーの目の前に突きつけられるオチは、通常の一般的なアドベンチャーゲームにおいて誰もが忌避する最悪のバッドエンドと比較しても、遥かに胸糞が悪く、倫理的な一線を踏み越えた凄まじい破壊力を持っている。
- この人間の尊厳を徹底的に破壊していくような逃げ場のないダークなプロットの救えなさこそが、人によっては本作の持つ唯一無二の狂気的な魅力であり、芸術的な完成度の高さであると熱狂的に評価される最大のポイントとなっている。
- しかし、その一方で、あまりに精神的な負荷が強すぎるため、純粋に娯楽としてゲームを楽しみたい層や、少しでもハッピーエンドの救いを期待する人間にとっては、不快感しか残らない最悪の欠点や地雷要素として機能している。
- このように、作品の評価そのものがプレイヤーの精神的な耐性や嗜好によって天国と地獄ほどに極端に分かれる、きわめて劇薬性の強いシナリオ構造となっている。
問題点
- 担当医
- 本作のメインシナリオを、現実世界の実際の精神医学や臨床心理学検証してみると、医学的な観点から見てあまりに不自然極まりない突っ込み所や矛盾点が非常に多い。
- もしも本作で描写されている治療行為や診察内容が現実のものであるとするならば、主人公の治療を統括している上記の担当医は、信じられないほどに無能で倫理観の欠如した、きわめて劣悪な医者ということになってしまう。
- 医療従事者としての基本的な治療技術やアプローチの仕方が稚拙であることは言うに及ばず、あろうことか「自らが担当している患者を性的に誘惑する」という、現代の医療倫理においては絶対にあり得ない一発アウトの重罪行為にまで平然と及んでしまうからである。
- この狂った治療方針については、のちに「あまりにも純粋で脆すぎる主人公の過酷な内面に触れていくうちに、医者側の母性や感情が激しく揺さぶられてしまい、彼の傷付いた精神を救済するためであれば、最終手段として自分の身体を対価として許しても構わないと思い詰めてしまった」という、キャラクター側の心理的な説明や内面のフォローも一応は用意されている。
- しかし、どのような個人的な感情や大義名分を並べ立てたところで、医療従事者としての最低限の一線を踏み越えてしまっている以上、医者としては完全に失格の烙印を押されるべき存在であることに変わりはない。
- これに関しては、作品のジャンルが「そもそも過激な性的描写を前提としたエロゲーだから」という、メタ的な都合やジャンルの縛りによる力技の言い訳でなかば強引に片付けることもできる。
- だが、サスペンスとしての物語のリアリティや医療サスペンスとしての精緻さを厳密に求めるプレイヤーにとっては、シナリオの綻びや説得力のなさを強く感じさせる大きな不満点として機能してしまっている。
- また、この担当医は、主人公にとって現在の深刻な精神病やトラウマを形成した決定的な元凶の1つであるはずの「実の姉」に対して、なぜか主人公を毎日欠かさず直接会わせ続けるという、医療の常識からは到底考えられない致命的な臨床ミスを犯し続けている。
- 過酷なトラウマを想起させる存在と日常的に接触させ続ければ、患者の病状や精神状態がさらに劇的に悪化し、破滅へと向かうのは火を見るより明らかな事実である。
- このあまりに致命的な接触環境の放置に関しては、一応作中のシナリオ内部においても「取り返しのつかない決定的な医療ミス」として明確に見なされ、物語のドラマを生むためのフックとして処理されてはいる。
- しかし、精神科の専門医という肩書きを持つ担当医が、患者の最も基礎的なバックボーンや病巣の本質を事前に把握しておらず、そんな危険な状況を長期間にわたって全く認知していなかったというのは、いくら何でも設定としてあまりに杜撰で不自然ではないか、というシナリオ上の整合性を欠いた問題点として厳しく指摘されている。
- ゲームシステム
- 本作のゲームシステム全編における最大の不満点として、ゲームデータのセーブ処理を行えるタイミングが「テキストが画面に表示されている最中」のみに厳格に限定されているという、極めて前時代的な仕様が挙げられる。
- アドベンチャーゲームにおいて最も状況を見極めたい場面である、次の目的地を決めるための「移動先選択」の画面や、物語の展開を大きく左右する重要な「選択肢が出現しているシーン」の真っ最中においては、システムメニューを開くこと自体が拒絶され、一切のセーブ操作が行えない構造になっている。
- 一般的なテキストアドベンチャーゲームを快適に遊び進めるにあたり、プレイヤーが「まさにこの分岐のタイミングで、直前のデータを確実にセーブして保険をかけておきたい」と最も強く願うポイントに限って、システム側が非対応であるという不条理な設計になっている。
- このように、セーブやロード周りを含めたシステム全般のユーザーインターフェースや快適性に関しては、本作と同時期に発売されていた他の同ジャンルのアドベンチャー作品と比較しても、明確に不便でユーザーフレンドリーさに欠ける劣悪な部類に入ると言わざるを得ない。
- ただし、このあまりに不自由なセーブ制限に対するシステム側の最低限の代替措置や救済策として、次の瞬間にセーブが完全に不可能となる選択肢画面へ突入する「一歩手前の最後のテキスト表示時」において、文頭に「∴」という特殊な記号が自動的に表示される仕様が搭載されている。
- これによってプレイヤーは画面上のマークを目安にして、手遅れになる前にデータの保存を行うタイミングを視覚的に察知することができる。
- また、ゲームを高速で読み進めるための既読スキップ機能を使用している際も、この「∴」記号が表示されるテキストの瞬間に到達すると、スキップ処理が自動的に一時停止してプレイヤーに入力を促す安全弁としての役割も果たしている。
- なお、これらのセーブ機能に関する致命的な利便性の悪さについては、後年にリリースされた「あそBD版」や、現代のPC環境に対応した各種「ダウンロード(DL)版」のバージョンにおいてはシステムの全面的な改修が行われた。
- ゲーム中のあらゆる局面において、プレイヤーの好きなタイミングで「どこでもセーブ」が自由に行えるよう大幅なシステムアップデートが施され、当時のストレスは完璧に改善されている。
- 進行バグ
- 本作の初期のゲームデータにおいては、特定の非常に限定された状況下や、特定の操作手順をプレイヤーが意図せず踏んでしまった場合に、ゲームの画面が完全にフリーズしたり、次のイベントが正常に発生しなくなって物語をそれ以上先に進めることができなくなるという、致命的な進行不能バグが明確に存在していた。
- アドベンチャーゲームにおいて、セーブの不便さも相まってそれまでのプレイの進捗を完全に無に帰すようなこの手の重大な不具合の存在は、発売当時においてプレイヤーの間で大きな不満を呼ぶこととなった。
- しかし、この致命的なエラーに関しては、発売からまもなくして開発元から公式に問題の箇所を修正するための「修正パッチ」がデータとして迅速に配布されることとなった。
- これをゲームに適用することでバグの発生原因が根本から完全にシャットアウトされたため、現代のプレイ環境においては、このバグに怯えることなく安心して最後まで物語を完遂することが可能となっている。
総評
- 尖った表現を躊躇しないアダルトゲーム全般の中にあっても、従来のゲームとは明らかに一線を画した作品。一人の悩める男の日常を描いた学園物であるかのような物語の中にそれとなく不安定な非現実感を織り交ぜる手法で、作品世界に読み手を強く引き込んでくる。
- いちADV作品としてはかなり簡略化されたシンプルな構成をしている上に、プレイ環境も快適とはいいがたい。しかしその強烈な内容に衝撃を受けたプレイヤーは多く、今なお熱心なファンが存在する。
- なにぶん、現実と非現実の境目を曖昧にした作風とグロテスク表現の存在から、パッケージに大々的な注意書きのなされた作品である。触れてみる際は自己責任で、また絶対に「ネタ要素の話題性ありき」で甘く考える事の無いように注意。
最終更新:2026年05月31日 17:21