新規作成
新規ページ作成
新規ページ作成(その他)
このページをコピーして新規ページ作成
このウィキ内の別ページをコピーして新規ページ作成
このページの子ページを作成
新規ウィキ作成
編集
ページ編集
ページ編集(簡易版)
ページ名変更
メニュー非表示でページ編集
ページの閲覧/編集権限変更
ページの編集モード変更
このページにファイルをアップロード
メニューを編集
バージョン管理
最新版変更点(差分)
編集履歴(バックアップ)
アップロードファイル履歴
このページの操作履歴
このウィキのページ操作履歴
ページ一覧
ページ一覧
このウィキのタグ一覧
このウィキのタグ(更新順)
おまかせページ移動
掲示板
このウィキのスレッド一覧
このページのスレッド一覧
RSS
このウィキの更新情報RSS
このウィキ新着ページRSS
ヘルプ
ご利用ガイド
Wiki初心者向けガイド(基本操作)
このウィキの管理者に連絡
運営会社に連絡(不具合、障害など)
掲示板
ページ検索
メニュー
ゲームなんでも評価wiki
操作ガイド
新規作成
編集する
全ページ一覧
掲示板
登録/ログイン
ゲームなんでも評価wiki
操作ガイド
新規作成
編集する
全ページ一覧
掲示板
登録/ログイン
ページ一覧
ゲームなんでも評価wiki
AI: ソムニウム ファイル
メニュー
トップページ
新着記事一覧
新着ページ100件
記事テンプレート
現在
約
-
人が見ています。
更新されたページ
取得中です。
新着ページ
取得中です。
検索
検索 :
AI: ソムニウム ファイル
【あい そむにうむ ふぁいる】
ジャンル
アドベンチャー
対応機種
Nintendo Switch&br;プレイステーション4&br;Xbox One&br;Windows
開発・発売元
スパイク・チュンソフト
発売日
【Switch】2019年9月18日&br;【PS4/Win(Steam)】2019年9月19日&br;【One/Win(MS Store)】2021年9月30日
定価
7,480円(税込)
判定
クソゲー
チュンソフトサウンドノベル関連作品
概要
評価点
論争点
問題点
総評
概要
評価点
打越氏による圧倒的な構成力のミステリー
『極限脱出』シリーズや『infinity』シリーズにおいて、その予測不能なトリックと緻密なプロットで数多くのプレイヤーを驚愕させ、独自の深いストーリー世界へと一気に引き込んできた鬼才・打越鋼太郎氏がシナリオを手掛けただけあり、今作のシナリオもまた氏の特有の持ち味や作家性が存分に活かされた仕上がりとなっている。
シナリオの骨組み自体は、隻眼の型破りな人間の刑事と、その左眼に宿る最先端AIの義眼である相棒が互いに知恵を出し合って奇怪な事件を解決していくという一風変わったSF設定が導入されており、過去の打越作品の系譜でもあまり見られなかったタイプの新機軸ではあるものの、根底にある刑事バディものとしてのドラマやサスペンスの要所は外すことなく非常にしっかりと作られている。
作中で発生する凄惨な連続猟奇殺人事件の謎を中心にストーリーを展開させており、物語を進めれば進めるほど新たな謎や不可解な状況が深まるスリリングな構造になっている。
しかし、終盤に近づくにつれ、それまで散りばめられていた不可解な点や謎をパズルのピースを合わせるかのようにすべて綺麗に解き明かしていくカタルシス溢れる展開となっており、プレイヤーが時間を忘れてどんどんのめり込むような圧倒的な牽引力を持つ内容となっている。
もちろん、氏が最も得意とするSFミステリーの要素もシナリオの随所に多分に含まれており、『Ever17 -the out of infinity-』や『12RIVEN -the Ψcliminal of integral-』といった不朽の名作群において遺憾なく発揮されてきた、プレイヤーの脳髄に強烈なカタルシスと衝撃を与える大掛かりな仕掛けや展開も健在である。
シナリオ自体のプロットはもちろんのこと、登場人物たちが抱える複雑な背景設定や、世界観システムそのもののゲーム設定に至るまで、画面の至るところに二重三重の伏線が緻密に張り巡らされており、終盤に訪れる怒濤の伏線回収ラッシュの鮮やかさには誰もが驚かされるであろう。
かつて『infinityシリーズ』や『極限脱出シリーズ』を熱心にプレイした経験のあるプレイヤーであれば思わずニヤリとしてしまうようなファンサービス精神旺盛な展開が用意されている一方で、逆にこれらのシリーズの構造を熟知して先入観を持っているがために、製作者の意図した見事な罠に引っかかってミスリードされそうになるという、経験者ならではの贅沢な心理戦を楽しめる展開もある。
精神世界に潜入するソムニウムパートの行動によって分岐するシナリオのシステムも秀逸であり、選択したちょっとした行動やアプローチの違いによって、以降のストーリー展開やキャラクターの運命がガラリと180度変わってしまう。
そのため、初見のプレイ段階ではなぜこの行動によってこれほど極端な分岐が起こるのかという因果関係がよく分からない場合が多いが、事件の全容や裏に隠された真実が徐々にクリアに見えてくるにつれて、過去の分岐点での出来事を思い返すとすべての辻褄が合い、深く納得できるようになっている。
また、単に猟奇殺人事件の真相を追うだけでなく、事件を取り巻く個性豊かな登場人物たちが抱える過去のトラウマや人間関係に関する個別のエモーショナルなストーリーも同時並行で重厚に盛り込まれる構成のため、最初から最後までプレイヤーを飽きさせない。
登場人物の複雑な内面や苦悩を描く部分にもかなりのプレイ尺を割いているためキャラクター個々の掘り下げも極めて深く、後述するように良くも悪くもプレイヤーの好みや人を選ぶ面は強いものの、暗い雰囲気を吹き飛ばすギャグ要素も非常に多く散りばめられている。
そのため、クールでスタイリッシュな外観や、残虐描写によるCERO Zという成人向け指定の持つおどろおどろしい第一印象とは裏腹に、実際の中身は涙あり笑いありの情熱的で盛り沢山の人間ドラマが詰め込まれた内容となっている。
それでいて、すべての謎を解き明かした先に待つトゥルーエンディングは、プレイヤーに一切の後腐れを残さない完璧な大団円として完成している。
多くの謎解きミステリーにありがちな、謎をあえて投げっ放しにしてプレイヤーの想像に委ねて終わったり、後ろ暗い含みや不穏な余韻を持たせることは一切無く、登場人物たちのその後の幸せな行く末をしっかりとした後日談とともに描いており、クリア後に胸に広がる心地よい読後感の良さはあの『Ever17』にも決して劣らないほどの高いレベルに達している。
そして極め付きは、作中で扱われる猟奇殺人という非常に重苦しくシリアスなテーマに反して、ある種の良い意味ではっちゃけた爆笑必至のスタッフロール演出である。
様々な事件を通じて多くの人々と深く関わり、幾多の苦難を乗り越えて事件を最後まで追ってきたプレイヤーにとって、画面いっぱいに広がる笑いと多幸感に溢れた最高にハッピーでピースフルなエンディングの演出は、それまでの緊張の糸を一気に解きほぐし、感動とカタルシスを最高潮まで高めてくれる開発スタッフからの粋なご褒美となっている。
さらに、このスタッフロールはゲームクリア後にノンクレジット版としてメニュー画面などから何度でも自由に鑑賞することが可能。
アドベンチャーゲームとして贅沢な分量
本作のシナリオ全体のボリュームは、一般的なプレイヤーがトゥルーエンドをクリアするまでの平均プレイ時間で約20から30時間という、テキストアドベンチャーゲームとして非常に遊び応えのある適度なスケールを誇る。
さらに、現実世界の怪しい場所を調べる捜査パートや、精神世界を探索するソムニウムパートの内部には、本筋とは関係のない膨大な探索・お遊び要素やテキストの小ネタがこれでもかと仕込まれているため、アドベンチャーゲームとしての総合的な満足度は極めて高いボリュームである。
チャート機能による高度な快適性
ゲーム内には全体の物語の流れを一目で把握できる詳細なフローチャートシステムが標準搭載されており、プレイヤーはメニュー画面からいつでも自在に過去のシナリオ間や任意の分岐点へと瞬時にタイムリープすることが可能。
これにより、全てのルートや結末を網羅するためにゲームを最初から何周も最初からプレイし直す必要がある従来の不便なアドベンチャーゲームと比べると、一見すると早く終わるような印象を抱くかもしれない。
しかし、これは逆に言えば、すでに見た同じシーンや同じ会話を何度も何度も強制的にプレイさせられる退屈で冗長なプロセスが完全に排除されているということの裏返しであり、きわめて快適なプレイ環境が提供されていると言える。
テキストの端々に仕込まれたユーモア溢れる小ネタやキャラクター同士の掛け合いが非常に豊富であり、事件の捜査とは全く関係の無い無関係な場所や調べる必要のないオブジェクトをあえて細かく見て回るのも非常に面白い。
この仕様は、かつて打越氏がシナリオを手掛けた『極限脱出』シリーズや、かつて氏が一作の製作に携わった不朽の名作探偵ADVである『EVEシリーズ』の精神的な流れを汲んでおり、プレイヤー自らの手で周囲の環境を細かく調べる探偵的な楽しみがしっかりと担保されている。
ソムニウムパートの総数もゲーム全体で合計13パートと非常に豊富に用意されており、これはあの名作『ZERO ESCAPE 刻のジレンマ』における高評価だったクエストパートの数に匹敵するだけの大ボリュームである。
さらに、個々のソムニウムパートの内部にも複雑な選択によるルート分岐が緻密に仕込まれているため、ゲームを遊び進める中でボリューム不足という物足りない印象を抱くことは恐らく皆無であろう。
奇抜さと深いドラマ性を併せ持つ群像劇
最先端のAIを搭載した高機能な義眼を左目に持つ主人公の捜査官や、世間で絶大な人気を誇る現役女子高生ネットアイドルのヒロインをはじめとして、凄みのある外見の裏で実は隠れアイドルオタクというギャップを持つヤクザの組長、夜の街で強烈な存在感を放つオカマのスナックのママなどといった、一癖も二重癖もある個性溢れる魅惑的な登場人物達が次々と登場し、時にシリアスに、時にコミカルにストーリーを大いに盛り上げる。
そして、作中に登場する一部の一般的な登場人物を除き、彼らの多くが過去の記憶と左目が同時に失われている状況や、過去の凄惨な怪我が原因で右腕が一切動かない状態などといった、一筋縄ではいかない複雑で訳ありの暗い過去を背負っている。
底流にある身体的特徴や失われた過去のエピソード自体が、前述したメインシナリオの根観に関わる巨大な伏線要素、あるいはパズルのピースとして機能しているのも本作の特筆すべき見事なポイントである。
個々の登場人物たちには、身長や体重、年齢といった基本ステータスはもちろんのこと、好きなもの、嫌いなもの、趣味、特技に至るまで、プロフィールデータが異様なまでに細かく、そこで情熱的に設定されており、そのプロフィールのテキスト欄の内部にまでクスリと笑えるパロディやネタが大量に仕込まれている。
この徹底した設定の作り込みは、主要なメインキャラクターたちだけに留らず、画面の隅に映るモブ同然の端役キャラクターにまで等しく用意されている。
対比が映える最高のパートナー
本作の主人公である伊達鍵は、端正な顔立ちの見た目だけを見れば非常にクールで格好いい大人の男性であり、事件の捜査における頭脳面でも、窮地を脱する格闘などのフィジカル面でも、相棒のサポートを得て鮮やかに活躍を見せる極めて優秀な男である。
商情、不条理な現実に苦しむ人々を見せておかない熱い人情味も持ち合わせており、大切な人を守るためには組織のルールを破ってでも時には熱くなれる泥臭い人間味を備えている。
しかしその華々しい活躍の一方で、ギャグシーンにおけるはっちゃけ方の壊れ具合も凄まじく、重度のムッツリスケベであることや、特定のグラビア雑誌を見ると身体能力が跳ね上がるといった、いわゆる残念なイケメンぶりを全編にわたって全力で披露する。
主人公の左眼に居座る相棒のAIであるアイボゥも、現実世界で普段見せている愛らしいマスコット姿に反して、頭脳やハッキング能力は非常に有能であり、さらに精神世界で具現化する擬人化体は妖艶でスタイル抜群의 美少女というハイスペックな存在である。
しかし、そんな彼女もまた主人公に負けず劣らずギャグ面では大いにはっちゃけた言動を連発する。
この極めて有能であるにもかかわらず、どこか致命的に残念という両者の強烈なギャップや、ソムニウムパート内をはじめ現実世界の各所で繰り広げられる、息の合った夫婦漫才のようなテンポの良いコミカルな掛け合いは、本作の最大の魅力の1つとしてプレイヤーから愛されている。
メインのキャラクターデザインには、スタイリッシュなアートスタイルで世界的に有名な『ノーモア★ヒーローズ』シリーズなどを手掛けたトップクリエイターであるコザキユースケ氏を起用。
主人公の伊達を筆頭に、登場するキャラクターの多くが非常にスタイリッシュで都会的に洗練された造形となっており、シナリオを手掛けた打越氏自身が公式インタビューなどでビジュアルの格好良さだけでジャケット買いしても絶対に後悔しないレベルと公言して太鼓判を押していたほどである。
作作には老若男女問わず多種多様なキャラクターが登場するが、ゲーム全体を見渡すと登場人物の平均年齢はアドベンチャーゲームとしては比較的高めに設定されている。
主人公からしてすでに30代の大人の男であり、周囲を取り巻く他の主要キャラクターたちも30代以上の分別の社会人が多く、ストーリー全体に漂う空気感は大人のビターな雰囲気が強い。
しかし、コザキ氏の描くキャッチーでファッショナブルなデザインマジックにより、大人中心の渋い設定であっても画面に堅苦しさや古臭さは一切感じさせない。
この絶妙なビジュアルバランスにより、普段大人向けの渋いサスペンス作風に不慣れな若いライト層の人でも抵抗なく手を出しやすく、逆にアニメ等によくある10代の若者達だけで世界の危機を救う記号的な物語にやや飽きてきた大人のゲーマー層にも新鮮な気持ちで心からお勧めできる作品となっている。
その洗練されたスタイリッシュさの一方で、作中にはあえて1970年代頃の昭和レトロな古いアニメの劇画から飛び出してきたかのような、極端にディフォルメされた濃いデザインのキャラクターも平然と同居していたりと、どこか混沌としたアングラな雰囲気も内包しており、それ自体が本作の実に個性的で特徴的なビジュアルアイデンティティとなっている。
物語のすべてが終わった後の長いエピローグから最終的なエンディングに至るまでのパートでは、本編の道中で悲しくも死亡してしまったキャラクターを除き、これまで物語に関わってきた脇役を含めたほぼ全員が登場し、主人公の伊達と直接個別の会話を交わすことができるという非常に豪華な大盤振る舞いの仕様となっている。
伊達と比較的親しくなった芸能事務所の愛嬌ある受付嬢や、息抜きに通ったメイド喫茶のメイドはおろか、ヤクザの事務所に乗り込んだ際に軽くあしらっただけのモブチンピラ、事件現場の隅にいただけの鑑識官、ストーリーの途中で一度しか登場しないタクシー運転手に至るまで、すべてのキャラにセリフが用意されている。
この徹底した演出からは、開発陣が自分たちの生み出したキャラクターの1人1人をいかに深く愛し、大事に扱っているかという作品への強い愛情がダイレクトに窺える。
その脇役やモブを含むほぼ全てのキャラクターが一堂に会し、全員が笑顔で一丸となって息の合ったパフォーマンスを演出するスタッフロールの光景は、正に圧巻の壮観の一言に尽きる。
息遣いまで伝わる立体的なグラフィック
過去の『極限脱出ADV 善人シボウデス』以降の打越作品における伝統的な技術の流れを正統に汲んで、本作でもゲーム内に登場する人物や背景はすべてハイクオリティな3Dモデルによって立体的に描かれている。
物語の中で動きのある重要なイベントシーンは、まるで洗練されたアニメーションか実写ドラマのワンシーンを見ているかのような、カメラワークの凝った高品質なムービー形式でシームレスに描かれる。
さらに、通常のアドベンチャーゲームであれば静止画で処理されがちな一般的な会話シーンであっても、テキストウィンドウの横には顔グラフィックの代わりに表情がリアルタイムに変化する3Dモデルが表示されるという徹底したこだわりぶりを見せる。
もちろん、セリフに合わせたキャラクターの口パクや、感情を豊かに表現する身体の細かいモーション演出も完璧に実装されている。
前作にあたる『刻のジレンマ』の段階でも3Dモデルの出来栄えや映画さながらの臨場感あるイベントムービーはユーザー間でも評価されていたが、本作はリリースされたハードウェアの性能進化に伴ってグラフィックの完成度が更に一段上のレベルへと高くなっている。
各キャラクターの個性を象徴する専用の固有モーションが豊富に用意されているのはもちろんのこと、主人公の伊達が相手に話しかける際には、相手のキャラクターがカメラ目線で必ずこちらと視線を合わせるなど、プレイヤーの没入感を削がないための細かいこだわりを随所に見ることができる。
本作のメインヒロインであるイリスが劇中で披露するアイドルの本格的なダンスシーンは、プロのダンサーによる綿密なモーションキャプチャー技術によって、指先の細かなニュンスに至るまで本格的に作り込まれている。
その高い技術的成果と情熱が最も美しい形で活きているのが、上述した最高のトゥルーエンディングのシーンである。
これから本作をプレイする方は、是非とも自身の選択によってすべての事件を美しく解決し、その手で掴み取った眼で極上のダンスパフォーマンスを確かめて欲しい。
しかも、一度ゲームをクリアした後のお楽しみ要素として、背景のシチュエーションやバックで踊るダンサーをプレイヤーが自由に指定して、お気に入りの組み合わせでいつでも気軽にダンスを鑑賞できるおふざけ機能も搭載。
バックのダンサーには作中に登場するキャラクターであれば、男女問わずおじさんやヤクザであっても指定可能である。
また、キャラクターが3Dで表現されている事を最大限に活かして、周囲の怪しいポイントを調べる調査画面は勿論のこと、日常の会話画面であっても通常のADVによくある正面を向いたキャラが背景の手前に固定されて立っているだけの退屈な画面構成にはなっていない。
カメラアングルが状況やセリフのニュアンスに応じて逐一ダイナミックに変化することで、視覚的な躍動感と現場の臨場感のある素晴らしい画面構成になっている。
会話している相手の表情や、今まさに調べているオブジェクトの詳細を画面上に小さなウインドウとして同時にポップアップ表示し、そこから直接次のアクションへアクセスさせたりと、他の標準的なADVではあまり見られない先進的でスタイリッシュなプレイ感覚も体験できる。
一切妥協のない完全音声化
本作は、名前のあるメインキャラクターはもちろんのこと、街の通行人や事件現場の警官といった一切名無しのモブキャラクターに至るまで、登場人物全員に実力派のキャラクターボイスが漏れなく割り当てられており、ゲームの最初から最後まで音声が途切れない完全なる全編フルボイス構成となっている。
参加している声優陣の布陣も、昨今の第一線で活躍する人気声優から、演技に重みをもたらす実力派のベテラン声優まで非常に幅広く贅沢に起用しており、物語を盛り上げる演技力は一分の申し分も無いクオリティである。
画面のテキストを黙々と読み進めるノベル形式のテキストアドベンチャーゲームであればフルボイスも比較的標準的ではあるが、本作のようにプレイヤー自身の手で画面を細かく調査したり、広大なマップを探索したりする要素の強いアドベンチャー作品では、開発のコスト面から大抵は重要なシーン以外はパートボイスという部分音声で済まされることが多く、本作のように隅々まで徹底されたフルボイス仕様は現代のゲーム業界を見渡してもなかなか類を見ない贅沢な仕様である。
各声優陣による情熱的なボイス演技は、各キャラクターが持つ強烈な個性や独特の特徴をしっかりと最大限に引き出しており、シナリオの持つ世界観を壊すことのない完璧な音声演出を行っている。
相棒のアイボゥに関しては、現実世界におけるハムスターのようなマスコット風のゆるキャラ姿のままであっても、擬人化時と変わらない、凛とした大人の落ち着いた女性ボイスかつ非常に男らしいサバサバした男性口調で話すというギャップの激しい仕様になっている。
そのため、プレイを開始した最初のうちはややシュールでコミカルな印象に思えるかもしれないが、彼女と共に数々の過酷な捜査を二人三脚で進めて行くうちに、その声と口調こそが最高に頼もしい相棒の証としてプレイヤーの耳に心地よくしっくり来るはずである。
論争点
夢幻の世界で展開される独自のゲーム性への評価
本作の目玉となっているソムニウムパートだが、その世界観やゲームシステムにおいて賛否が分かれている。
評価点でも触れた通り、ソムニウムパートは現実の常識が通用しない非論理的な世界観で構成されており、その世界に出てくる調査物も不可解な選択肢や動作を行うものばかりである。
一度正に常識は今のうちに捨てておいてくださいと言わんばかりの不条理世界であり、ただ現実的なアドベンチャーゲームでは味わえない超常的体験ができる。
現実離れした夢世界を探索して物語を進めるという点は『アランドラ』や『女の子と密室にいたら〇〇しちゃうかもしれない。
』など様々な作品で用いられる手法であり、本作もその流れの1つと言える。
それを本作のような刑事ものでやるのはかなり珍しい。
しかし本作は捜査や推理を前面に押し出しているため、ロジカルな推理ゲームと期待した人には、推理をしようにも推理できないものとしてパート自体を面白くないと思う人もいる。
ただし、元より本作はネット記事などでそう紹介される事はあっても、公式には推理アドベンチャーとは定義されていない。
このゲームで作り手が想定しているソムニウムパートのプレイスタイルは、まずは時間制限を超えて失敗することを前提にフィールド内にあるオブジェクトを片っ端から触ってみて、リトライを何度も繰り返しながら効率的なクリア方法を導き出す、というもの。
なお、各ソムニウムパートには何かしらのテーマのようなものがあり、そのテーマに沿ったオブジェクトを調べることでクリアに近づけるようになっている。
なので、総当たり的な探索が必須というわけではなく、そのテーマを暴き出すことこそが推理要素と言える。
思考を縛る制限時間システムの課題
選択肢を選んで制限時間を消費するというシステムも癖が強い。
限られた時間でトライアンドエラーを繰り返してクリアを目指すパズル系ゲームは珍しくないが、本作は選択肢を選ぶことで制限時間が減る形式なので、制限時間を目一杯使って正解を探すということができない。
試行錯誤すればするほど早くタイムオーバーが迫り、やり直しとなるケースが多く、最初は緊張感として働くもののこれを何度も繰り返すので作業感が出てしまっている。
これが前述の不条理な夢世界と合わさり、常識的な推理が通用しないのに、では推理材料を集めようと探索をすると制限時間が足りなくなるという噛み合わせの悪さに繋がっている。
メンタルロックを開ける度にチェックポイントが入るシステムを採用しており、リトライを選択するとそのポイントに戻れるのだが、何故かリトライがポイント制であり、ポイントを使い切ると最初からリスタートするしかなくなる。
リスタートするとポイントも回復する。
ポイントは3なのだが、戻るチェックポイントが遠いほどポイントも多く消費する。
具体的には2つ前のメンタルロック解除の地点に戻るとポイントも2消費してしまう。
3つ前に戻れば即使い切ってしまう。
ソムニウムパートにおいてもネタ要素の選択肢や面白い反応がいくつも存在するため、それを見たい人にとってもこのライフ制のような制限時間システムとは相性が悪い。
打越氏の過去作『パンチライン』のイタズラ・イタゴラパートは宣伝の割にゲーム性が薄く、ほぼおまけ扱いだった事の反省があるのもかもしれないが、今度は逆に少々取っ付きにくいものになってしまっているのが否めない。
調べるポイントはミニマップで確認できるが、調べたいポイントをマークしたりマップを回転したりもできずキャラの向きが表示されないため、位置関係や目的地が把握しづらい。
そのため、中盤以降はこまめにマップを確認していかないとあっという間に迷子になる。
網膜に焼き付く苛烈な残虐描写
さすがに猟奇殺人事件が題材であることとレーティングがCERO Zだけのことはあり、一部シーンでスプラッター要素が含まれたショッキングなシーンが演出として組み込まれている。
個々のシーンが強烈なインパクトを持つシーンだらけなので、こういった演出が苦手な人には当然向かない。
ゲームを始めるとまず描写される片目がくり抜かれた死体の時点で駄目な人は、他のシーンも辛い演出の連続になるだろう。
あるルートで見せられる殺害シーンはトラウマになるレベル。
これらを越えて最終シナリオに辿り着いても、クライマックスではそれまでの描写をも上回る強烈なスプラッターを見せられる。
内容的には残酷というより悲壮なシーンなのだが、かなりダイレクトに映るため、その人物の姿も相俟って衝撃は大きい。
他のCERO Z作品のグロ描写と言うと大抵はイラストで描かれているのだが、本作は3Dモデル。
しかも時には動作付きでダイレクトに描かれるので、きつさが増していることも。
ただし、一般的なCERO Z作品や、隙あらば残虐な展開に持って行く血みどろ路線だった極限脱出シリーズ、特に『刻のジレンマ』に比べると数は少なく、バイオレンス・スプラッター要素自体は作品全体で見れば控えめである。
無論、レーティング相応の表現はあるが、ある程度の耐性があれば過度に身構える必要は無い。
手応えを欠いた捜査フェイズの謎解き
捜査パートでの謎解き要素の薄さも気になるところ。
捜査パートでも凶器は何なのか、あるいは犯人はどこへ逃げたかといった謎を選択肢で推理させるギミックが存在するのだが、謎に関するヒントが多数あるので、『極限脱出』シリーズのようなものを求めていると肩透かしを食らう。
ソムニウムパートではプレイヤーの選択によってルートが変化したりバッドエンドになるが、捜査パートでは謎解きに失敗しても展開は変わらない。
証人に証拠を突き付けて尋問するシーンでは間違えても伊達やアイボゥにこれじゃない、違うんじゃないかと即指摘される。
ノーミスでクリアすると尋問毎にトロフィーや実績が解除される。
複数の選択肢から正解と思うものを選ぶケースもあるが、こちらも間違えても即座に否定されるので精神的なデメリットを除けば影響は無い。
または、質問しておいて結局全部の選択肢を選ぶというケースも。
ただ、本作はどちらかといえばストーリー重視なのと、過去の打越作品では謎解きが異様に捻くれて分かりにくいケースもあったため、ストーリーに専念できるという見方もできる。
作風を大きく揺るがす過剰なユーモア
本作はシリアスなサスペンスでありながらギャグ要素が非常に満載である。
これが一部の息抜きシーンといったレベルに留まらず、シナリオ全体に満遍なく存在している。
そのため、ストーリーを進めるだけでもプレイヤーの都合に関係なく容赦なくギャグが挟み込まれる。
関係のない選択肢を選んだり、オブジェクトを細かく調べたりすることで発生するギャグもあれば、メインシナリオの極めてシリアスなパートで唐突にギャグパートへと突入することもある。
ギャグの性質としても、人を選ぶインターネットのミームやパロディネタ、あるいは直接的な下ネタなども多く含まれている。
これらがツボにはまる人は大いに笑える。
しかし、肌に合わない人にとってはダダ滑りの状態のギャグを延々と聞かされるような苦痛の時間になりかねず、ゲームへのモチベーションを低下させる要因となってしまっている。
同様のネタを多く内包する『ダンガンロンパ』シリーズや『科学アドベンチャー』シリーズでも同様に賛否両論となる傾向は見られたが、本作におけるギャグの浸食度合いはそれらの作品を遥かに上回るほど強烈である。
少なくとも、購入前のクールでスタイリッシュな見た目の印象からは、これほどコミカルに突き抜けた内容であるとはとても想像できないであろう。
言ってしまえば、かつての『infinity』シリーズや『極限脱出』シリーズのような重厚でシリアスなミステリーの中に、『パンチライン』のようなはっちゃけたノリをそのまま力技で詰め込んだような構造になっている。
過去の打越作品にもギャグはあり、コミカルな作品にもシリアスはあったが、今作はその双方が極端なベクトルへと同時に突き抜けた歪な作りと言える。
もちろん、この独特のノリを楽しめる人にとっては最高に魅力的である。
物語の凄惨さや胸糞の悪さを和らげるための良質な緩衝材として働いているという点では、大きな長所としても機能している。
しかし、それ以上にかなり人を選ぶ尖った要素になってしまっているのもまた厳然たる事実である。
分岐の選択がもたらす読後感の落差
本作のシナリオは、基本的にはソムニウムパートの行動選択の成否によって2つの展開のどちらかに大きく分岐するシステムを採用している。
フローチャート上で最初のソムニウムパートを起点として大きく左右に物語が分かれることから、ユーザー間ではこれらを便宜上、左ルート、あるいは右ルートと呼んでいる。
このどちらのルートを最初に選んで進めるかによって、本作に対する第一印象や評価が全く違うものになってしまう。
仮に左ルートを先に選んだ場合、物語は純粋な推理サスペンスの文脈として硬派に展開していく。
しかし、逆に右ルートを選んでしまった場合、そこではオカルトや電波要素にまみれた非常に不可解なシナリオが展開されることになる。
右ルートは進めば進むほどオカルトや電波といった超常現象的な要素が強くなっていく。
その上で、なぜそのような怪奇現象が起きているのかという根本的な原因がルート内で一切解明されない。
そのままきわめて後味の悪い不穏な状態でそのルートの結末を迎えて終了するため、左ルートの完成度と比べるとどうしても消化不良の印象が強くなってしまう。
その違和感の大きさは、右ルートを先にプレイしてゲーム自体の面白味を見出せなかったが、その後に左ルートを進めてみたら見違えるほど急激に面白くなったという評価が散見されるほどである。
もちろん、右ルートの怪奇現象も完全に投げっぱなしで終わるというわけではない。
ちゃんと最終的なトゥルーエンドのルートまで物語をすべて進めれば、それらのオカルトや電波要素の裏に隠されていた合理的な真相が綺麗に解明される仕組みになっている。
しかし、その真相解明に辿り着くためには他のすべてのルートを網羅してクリアする必要がある。
そのため、運悪く最初に右ルートを深く攻略してしまうと、不可解な謎が長いこと解明されない生殺しの状態が続いてしまうのが大きな難点である。
また、アドベンチャーゲームとしての構造上、ソムニウムパートのどこの行動が具体的な分岐点になっているのかが、通常のゲームよりも分かりづらいことも指摘されている。
一応、抽象的なテキストヒントや枝分かれした樹形図のようなフローチャートは画面に表示されるが、初見のプレイで意図したルートへ狙って進むのはなかなか難しい。
さらに話を読み進めている最中の演出だけでは、今自分が右ルートと左ルートのどちらに進んでいるのかを直感的に把握しづらい。
ただ、これに関してはこまめにフローチャート画面を開いて現在の位置を確認すれば判断は可能である。
全体像が見えるまでの長い道程
本作のメインストーリーは、猟奇殺人事件を精緻に調査し、その犯人を突き止めて解決することが最大の目的となっている。
しかし、前述したようにラストのルート終盤に怒濤の伏線回収が集中しているため、事件の全貌や真相を突き止めるまでの道のりが非常に長い。
単一の事件を深く追うミステリーである以上、最後の最後まで真犯人が解決されないのは物語の構成として当然ではある。
だが、本作はシステムとしてすべての並行ルートを回ることが大前提となっている。
そのため、最終ルート以外のあらゆるエンディングでは、山のような多くの謎を残したまま不完全燃焼で終わってしまい、事件の真相にはなかなか近づけない。
具体的な例を挙げると、そのルートの主要人物が個人的に抱えていたトラウマや家庭の問題は美しく解決する。
しかし、肝心の猟奇殺人事件については何も解決しないまま、なぜかスタッフロールが流れて唐奮にエンディングを迎えてしまう。
あるいは、容疑者が途中で死亡したことによって捜査が強制終了し、真相は闇の中に消えるといった展開が続く。
一部のルートでは、主人公である伊達が捜査を諦めたわけでも何でもないのに、画面が暗転してそのまま話が終わってしまうことすらある。
また、物語が一応のエンディングを迎えることすらなく、この先のルートはまだ未解禁であるというゲームシステム上の理由のみで唐突にシナリオの進行がストップされる。
そして、他の未プレイ生命ルートの巡回をなかば強制される場面もある。
このじらすような構成は打越作品ではお馴染みの伝統芸能であり、終盤に爆発的なカタルシスを生み出すためには絶対に欠かせない要素でもある。
しかし今作は、猟奇殺人事件の解決という非常に明確で具体的な大目標が最初に提示されている。
そのため、純粋なサスペンスとしての真相究明を急いで求めてしまう人にとっては、途中のルートの足止め期間が長く感じられ、モチベーションが維持しにくい。
特に、打越氏の過去の代表作を知らない新規のプレイヤーや、この手の複雑なノベルゲームの構造に慣れていないライト層は、これらの生殺し状態に耐えたが故のご褒美が終盤に待っているという信頼感を持てないため、途中で挫折しやすい。
かつて氏の名を世界に知らしめた代表作である『Ever17』も、今でこそ稀代の名作と名高いが、発売当時は前半の日常の長さに耐えかねて最後までプレイせず、途中で低評価を下して投げ出される例が散見された歴史がある。
逆に、こうした仕様に慣れている熟練のゲーマーからは、無駄な引き延ばしがなくスムーズに進めて20時間程度で終わるアドベンチャーゲームと考えれば、全体の拘束時間はそこまで長くはないという意見もある。
ストーリーの先が気になる人であれば、むしろクリフハンガー的な各ルートのラストの引きの強さによって、別の分岐ルートを探索するための強いモチベーションに変えることができるだろう。
また、過去の似たような構成の他社作品のように、ルートが変わるたびに全く同じ場面の会話や長い回想シーンを何度も退屈に繰り返すような冗長さはほとんど無い。
そのため、プレイ中のテンポの悪さという問題自体は綺麗に回避されている。
劇中で過去を振り返る回想や事件の再現シーン自体は頻繁に挿入されるが、その大半は必要な部分だけをコンパクトにまとめた親切な演出になっている。
ただ、過去の映像をコンパクトな演出として画面上に多重表示して再現しようとしたが故に、一部のゲームハードでは処理落ちが発生して画面がカクつくという別の問題を引き起こしてしまっている。
特定キャラクターの過激な人物描写
本作の主要な登場人物は、それぞれが非常に個性豊かな一面を持つと同時に、ほぼ全員が他人に言えない訳ありの過去を抱えている。
この一癖も二癖もあるキャラクター設定自体は本作の大きな魅力の1つである。
しかし、その中でもとある特定の人物に焦点を当てた個別ルートに関しては、その人物のあまりに強烈すぎるキャラクター設定と、そこで描かれるシナリオの過酷な内容から、ユーザー間でも賛否がかなり激しく分かれている。
真津下応太という男が引き起こす拒絶反応
真津下応太は、小学生のような極端に幼い外見をしていながら、実年齢は24歳という極めて強烈な設定を持ったネットアイドルオタクの青年である。
彼は初登場の時点から、SNS上で自分の好きなアイドルの自作自演のファン活動やアンチ活動を執拗に行っている。
さらに、あろうことか殺人事件の凄惨な現場に知り合いの小学生をそのまま置き去りにして自分だけ一目散に逃走し、しかも後からその事実を必死に隠蔽しようとするなど、人間としての第一印象は最悪極まりない。
しかも、進むルートによっては、国家公務員である警察官の伊達に対して物理的な暴行を働くという、弁護の余地のないれっきとした犯罪行為まで平然とやらかす。
しかし、彼を中心に展開することになる応太編のシナリオでは、プレイヤーにとってさらにドぎつい彼の境遇と醜悪な内面が次々と判明していく。
詳細な核心部分の描写は伏せるが、要約すると、自身の両親に人生を揺るがすほどの重大な不幸が起こったにもかかわらず、母親に盲目的に甘やかされて育った応太は、その自己中心的な甘えを省みることなく何年もの間ニートとして好き勝手に自堕落な生活を送っていたという展開である。
その彼のどうしようもない現実の有様と、隠された内面の醜いエゴをこれでもかと詳細に暴き立てて見せつけられるルート終盤のソムニウムパートは、プレイしている人の精神的な芯をダイレクトに抉ってくるような、かなり心を痛める凄惨な内容となっている。
応太自身は、実の母親までが猟奇事件に巻き込まれて絶体絶命の危機に瀕したことで、ようやく自身のこれまでの生き方を激しく顧みることになる。
そして、自分のあまりに情けない境遇と醜い過去の事実を主人公に打ち明ける。
しかし、彼のそのあまりに身勝手な動機を知った主人公の伊達は、相棒のアイボゥとの通信会話において、事件の背景に対する人間的なフォローは最低限かけつつも、今の応太は完全にクズ人間であると画面の前でハッキリと切り捨てて言い放っている。
一応、それは彼が事件の真犯人のような決定的な悪党ではないという意味でのニュアンスを含んだ言葉ではあるが、作中の人物からもそれほど辛辣に評価されるほどのキャラクターである。
もちろん、彼のドラマも悲惨な状態で投げっぱなしにされたまま終わるわけではない。
シナリオの最後には、真津下家が長年抱えていた歪な家族の絆の修復や、応太自身が自分の罪と向き合って涙ながらに本気で改心する姿がしっかりとドラマチックに描かれる。
さらに、すべての事件が解決した後のトゥルーエンドの後日談においても、彼が過去の甘えを完全に捨て去り、心を入れ替えて真面目に社会人として生きようとしている前向きな様子がテキストで語られている。
だが、そうした最終的な救済措置や更生のドラマが用意されていることを踏まえたとしても、この精神的にきついルートだけは作品に必要なかったと断言する人がいるほどである。
彼の存在と描写のキツさは、本作のアドベンチャーゲームとしての総合的な評価を大きく左右するほど、一部のプレイヤーにとっては強烈な拒絶反応を引き起こす存在となっている。
問題点
プラットフォームによる処理性能の限界と負荷
本作は背景から人物の細部に至るまで、画面上のあらゆるオブジェクトを高品質な3Dグラフィックによって立体的に演出する手法を採用している。
しかしその反面、使用するゲームハードの性能によっては画面の描画に著しい遅延が生じる処理落ち現象が頻発することが課題として指摘されている。
特に、通常の会話の裏で次のシーンのデータをバックグラウンドで読み込む処理を行っている場面では、画面のコマ数が極端に低下するフレームレートの悪化が目立つ。
こうした技術的な負荷は据え置き機と携帯機を兼ねるNintendo Switch版において特に顕著である。
状況によっては画面が完全に固まってしまったのではないかとプレイヤーが錯覚し、フリーズの発生を疑って不安になるほど深刻なコマ落ちが生じるケースも報告されている。
さらに本作では、過去の出来事やキャラクターの記憶を再現する演出として、メイン画面の端に小さなサブウィンドウをポップアップさせて映像を重ねて映し出す特殊な画面表示を多用している。
このリアルタイムでの多重描画処理がハードウェアに与える負荷は想像以上に大きいようである。
サブウィンドウが画面に出現するたびに、読み込みのためにゲームが数秒間完全にストップしてしまう事象がしばしば発生する。
物語の後半に突入して事件が核心に近づくにつれて、この多重表示による過去のフラッシュバック演出の頻度は爆発的に上がっていく。
そのため、ゲームを進めれば進めるほどハードにかかる負荷も比例して累積していき、プレイヤーが快適にテキストを読み進めるテンポを大きく削いでしまっている。
サスペンスの緊迫感を削ぐ荒唐無稽な演出
本作は猟奇殺人をテーマにした比較的現実に近い地続きの世界観で物語が展開される。
その一方で、人間の脳内に潜入する試作装置や、高度な自律思考を持つAIを搭載した特殊義眼の存在など、物語の根幹には先進的なSF要素が含まれている。
これらは過去の打越作品において何度も提示されてきた独自の超科学や超理論の系譜であり、ある程度は現実離れした架空の世界であることを前提とした設計である。
そうした設定の枠組み自体はミステリーのガジェットとして機能している。
しかし、作中に登場する一部のキャラクターの行動や設定に関しては、客観的に見ても明らかに物理的な整合性を欠いた無理のあるトンデモ設定が紛れ込んでいる。
とはいえ、これらはかつての『12RIVEN』などで批判の対象となったような、シナリオの論理的な破綻や決定的なプロットの矛盾といった類の不具合ではない。
本作におけるこれらの一連の突飛な設定は、一言で言えばゲーム内のコメディ要素やギャグシーンに全力で振り切った結果として生み出されたものである。
しかし、それらがシリアスなサスペンスの雰囲気や世界観のリアリティを完全に破壊してしまっている場面がいくつか見受けられる。
結果として、多くのユーザーからの好意的な意見は少なく、世界観に没入したい人ほど冷めてしまう要素として白眼視されている。
こうしたはっちゃけた設定の悪影響は、作中で頻繁に発生することになる命がけのアクションシーンにおいて顕著に表れる。
劇中では、至近距離からフルオートのマシンガンで容赦なく銃弾を乱射してくる敵の集団に対して、主人公たちが文字通り無傷で接近して殴り倒したり、銃弾がなぜか一発も当たらないといった、リアリティを完全に無視すご都合主義なバトルが平然と描かれる。
これが緊迫したサスペンスとしての恐怖感や緊迫感を著しく削いでしまっている。
超人的な身体能力を持つ少女の戦闘描写
物語の核心を担う最重要人物の1人である女子小中学生の沖浦みずきだが、彼女には年齢や性別による身体的制限を完全に無視した、常人離れした怪力の持ち主であるという極めて奇抜な設定が与えられている。
その規格外の筋力は、大人の男性でも持ち上げるのが困難なバーベルを一切の力みもなく軽々とお手玉のように持ち上げるレベルである。
本編の開始前には、激しい怒りに任せて同級生の前歯を拳一つで全てへし折ったという凄惨な過去の武勇伝が当然のように語られている。
物語の当初は本人もその異常な怪力に気付いておらず、多勢に無勢であると諦めて無抵抗を貫いていたため学校でいじめに遭っていた。
しかし本編の1年前に主人公の伊達から戦闘の修行を課せられた際に自身の潜在能力に目覚め、それ以降は自らの怪力を周囲の目も気にせず公然と振りかざすようになる。
一応、この突飛な怪力設定については、ゲーム内において非常に風変わりではあるものの一定の説明が試みられている。
作中の解説によれば、みずきの祖父は幼少期に野生のイルカによって育てられ、10代の頃には海を泳ぐカツオを素手で掴み取って捕獲できるほどの超人的な野生の肉体を手に入れ、そのまま陸の世界に上がって大企業を起業したという破天荒な伝説が語られる。
のちの開発者の座談会などの公式な解説でも、このイルカの逸話は紛れもない事実であると肯定されており、その異常な身体能力が隔世遺伝によって孫のみずきにそのまま受け継がれた結果がこの怪力であるとされている。
しかし、実際のゲーム中の特定のルートにおけるバトルシーンでは、この設定のせいで深刻な絵面の不条理さが発生している。
具体的には、うら若き少女が愛用の重い鉄パイプを一本だけ手にして、自動小銃や近代兵器で武装した多国籍軍のプロの傭兵部隊を相手に、単身で無双の立ち回りを演じる凄まじい戦闘シーンが描写される。
この演出のせいで、それまでの重厚なサスペンスの空気が一瞬にして往年のギャグ漫画のような非常にシュールな雰囲気に変貌してしまう。
もちろん、彼女のこの理不尽な戦闘力に全てを頼り切り、どんな危機も少女1人で解決してしまうようなチート展開で物語が安易に片付けられることはない。
どのルートの戦闘シーンであっても、みずきは最終的に武装の数や戦術の前に何かしらの絶対的なピンチに陥り、最終的には主人公の伊達の手によって救出されるという王道の展開に落ち着く。
だが、それを考慮しても、血みどろの猟奇殺人を扱うゲームのメインシナリオにおいて、このような非現実的な超人バトル演出を受け入れられるかどうかは、プレイヤー個人の好みによって明確に分かれるところである。
戦場の緊張感を無に帰す性癖の超理論
本作の主人公である伊達鍵は、特定の大人向けのグラビア雑誌、いわゆるエロ本に対して異常なまでの執着心と情熱を抱いている。
作中では、彼がエロ本という単語を耳に挟んだ瞬間に、脳内の神経伝達が異常活性化して身体の反応速度が通常時の3.6倍にまで跳ね上がるという、極めて馬鹿馬鹿しい固有設定が真面目に定義されている。
この設定が単なる日常パートのギャグシーンの1つとして消費され、完結するだけであれば、キャラクターのコミカルな味付けとして笑って済ませることもできたであろう。
しかしよりによって、このエロ本に対する異常反応能力が、本作のメインシナリオの命運を左右する極めて緊迫した銃撃戦やバトルシーンにおいて、決定的な打開策として大真面目に発揮される展開が何度も発生する。
その具体的なバトルの流れを簡単に説明すると、まず主人公が強力な銃器を持った敵の包囲網に完全に囲まれて絶体絶命の窮地に陥る。
すると、網膜から周囲の状況をハッキングした相棒のアイボゥが、主人公の意識を覚醒させるために、視界の先のあそこに貴重なエロ本が落ちているぞと大声で虚偽の通信を送る。
それを聴覚から認識した瞬間に伊達の身体能力が限界を突破し、超高速の移動によって敵の弾幕を容易く潜り抜け、包囲網を瞬時に突破しながらついでに周囲の敵を全員叩きのめすというものである。
この一連のやり取りが、ゲーム全体の長い物語の中でたった1回だけの隠しネタや一発ギャグとして演出されるのであれば、まだ愛嬌として許容されたかもしれない。
しかし、本作のアクションパートにおいては、高確率でこのエロ本による限界突破演出が複数回にわたって何度も繰り返される。
これはまるで打越氏が過去に手掛けたアニメ作品の主人公が、特定のハプニングを目撃することで超常的な力を発揮するシチュエーションを想起させるノリである。
伊達は他にも、生身の人間を小脇に抱えたまま走行中の装甲車の荷台へと数十メートル跳躍して飛び乗ったり、強烈なアッパーカットの一撃で大人の悪党を遥か数メートル上空へと殴り飛ばすなど、随所で常人離れした身体能力を披露している。
しかし、上述したみずきのイルカ遺伝子や、このエロ本による超反応のインパクトがあまりに強烈すぎるため、それらの一般的なアクション演出がかすんで見えなくなるほど画面の絵面が崩壊してしまっている。
悪党たちの知性を奪う不条理な戦術
このエロ本に対する異常な反応速度と執着心を見せる設定は、驚くべきことに主人公の伊達個人だけに留まらない。
作中に敵として登場する、血も涙もない凶悪なはずの多国籍マフィアの武装兵たちにまで、全く同じような思考のバグが標準搭載されている。
主人公たちが武装マフィアの警戒する厳重な陣地に強行突入する際、伊達が懐から大人の雑誌を敵の目の前に向かって放り投げるアクションを行う。
すると、それまで完璧な陣形を敷いて周囲を厳戒態勢で警戒していたはずのプロの武装兵たちが、任務も警備も全てその場に放り出し、信じられないほどのマぬけな様子で地面のエロ本に全員で一斉に群がり、視線を釘付けにする。
そして、完全に無防備になったところを、主人公たちの手によって一網打尽にされて壊滅するという、ある種の有名な潜入アクションゲームに登場する無能な敵兵以上の信じられない大失態を演じる。
一応、ゲーム内の詳細な補足資料や設定資料集などを読み解くと、これらの末端の武装兵たちは特殊な違法薬物を過剰に摂取させられ続けた結果、脳の機能が完全に破壊されて豆腐のようになっており、まともな論理的思考や状況判断が一切下せない極限状態に陥っているという旨の裏設定が記載されている。
ネット上のユーザーによるゲームのレビューや考察サイトなどでも、マフィアたちがエロ本にあっさりと釣られて全滅する理由はこの薬物による脳機能の低下が原因ではないかと真面目に予想されている。
しかし、そうした科学的な設定の裏付けが用意されているとはいえ、命がけの凄惨な猟奇殺人を調査するサスペンスの真っ只中で、このような緊張感を著しく欠いたマぬけなコメディ描写が何度も挿入されることに対する戸惑いは大きい。
強制視聴がもたらすバトルの白け感
これらのトンデモ設定は、主にメインシナリオの要所となるバトルパートで集中的に展開される。
そのため、日常パートの些細なギャグを笑って許容していたプレイヤーであっても、アクションの緊張感が一瞬で消え去るバトルパートの演出だけは流石に白けてしまうといった辛辣な意見が出るほどのマイナス印象を与えている。
捜査パートのギャグ要素に関しては、本筋とは関係のないオブジェクトをプレイヤーが自発的に調べるなど、あくまで任意のイベントになっているものが大半を占める。
しかし、バトルパートで発生する一連のギャグ演出は、シナリオを進行させる上で必ず目にすることになる強制的なイベントである。
これが、シリアスなミステリーとしての世界観を大事にしたい層にとっては拒絶反応に繋がっている。
ゲームの発売後に公開されたファミ通のネタバレ座談会などの記事において、開発陣からこれらの突飛な設定が組み込まれた経緯や裏事情が詳しく説明されている。
しかし、肝心のゲーム中のテキスト内ではそうした設定の解説や納得のいくロジックに一切触れられない。
そのため、プレイヤー視点ではどうしてもその場のノリだけで用意された取って付けた感が非常に強くなってしまっている。
こうしたトンデモ設定を用いて超人的なバトルを展開するノリ自体は、打越氏が過去に手掛けたアニメ『パンチライン』などの作家性の延長線上にあるものとも言える。
しかし、あちらの作品では奇天烈な現象に対しても世界観に沿った厳密な理由付けや伏線説明が作中でしっかりと成されていた。
さらに、バトルにおけるシリアスな緊張感とギャグの間のメリハリも巧みに計算されていた。
それらの過去作の完成度と比較すると、今作の描写はあまりに唐突でバランスを欠いていると言わざるを得ない。
視界を奪われた暗闇の迷宮の理不尽
ソムニウムパートは、物語が終盤に進むにつれてパズルとしての難易度も段階的に上がっていく設計になっている。
しかし、その膨大なステージの中には、単に難易度が高いという域を超えて、客観的に見ても仕様が著しく理不尽であると批判されるステージが存在している。
その特定のキャラクターの精神世界を描いた夢の舞台は、深い真夜中の森の中という極限のシチュエーションである。
真夜中という環境のため画面全体の視界が非常に悪く、相棒であるアイボゥの周囲の極めて狭い範囲以外は、背景の景色を一切見ることができない。
画面に表示されるミニマップを常に確認しない限り、今自分がどこを歩いているのかすら完全に分からなくなる。
その上、どこまで進んでも全く同じような木々が並ぶ景色ばかりが続くため、方向感覚を容易に狂わされて非常に迷いやすい構造になっている。
しかも、マップ自体の面積もアドベンチャーゲームのマップとしては広めに作られている。
視界の遠方にある小さなオブジェクトの名前表示を暗闇の中から根気強く見極めないと、目的地がどの方向にあるのかすら把握できない。
キャラクターが立ち止まっている間はタイムの減少スピードが劇的に遅くなるという、ゲーム内でも最も恩恵の大きいシステム上の仕様を、全ステージの中で最も強く意識して活用せざるを得ないステージとなっている。
また、このステージを時間内にクリアするためには、ルート上の正解に必須ではない余計なオブジェクトにあえて寄り道をし、そこから時間消費を抑えるタイムアイテムを確実に獲得して効率的に活用していかなければならないという絶望的なまでの初見殺しの難易度を誇っている。
この仕様が、プレイヤーにとっての理不尽さに一層の拍車をかけている。
本作には他にも純粋にパズルとしての難易度が高いソムニウムパートはいくつか存在している。
しかし、それらは少なくともステージの全景や位置関係が視覚的にしっかりと把握できる。
そのため、この暗闇の森のステージのようにシステム側の嫌がらせによる理不尽さを理不尽に感じさせられることはない。
絶対的ヒロインの不遇すぎる運命
本作に登場する数多くのキャラクターのうち、最終盤の一部の展開を除いたほぼ全ての並行ルートにおいて、非常に不遇で凄惨な扱いを受け続けているキャラクターが存在する。
これがもし物語の端役にすぎないモブキャラクターであればまだ許容されたかもしれない。
しかし、物語の最重要人物として位置づけられているキャラクターであるため、その扱いの悪さが作中で非常に悪目立ちしてしまっている。
その不遇な目に遭い続ける登場人物とは、本作の表向きのメインヒロインにあたるポジションの左岸イリスである。
彼女は実際にストーリーの全体を通して主人公の前に深く関わり続ける人物である。
しかし、作中で彼女に与えられる役回りの悪さは、およそ一般的なアドベンチャーゲームのヒロインとは到底思えないほど過酷である。
その凄惨な境遇から、一部のユーザーの間では、主人公の眼の中にいるアイボゥこそが真のヒロインなのではないかと真面目に囁かれているほどである。
彼女は基本的に、物語の全ての謎を解き明かすことになる最後のルートである解決編以外のすべての分岐ルートにおいて、何らかの凄惨な形で必ず命を落とす展開になっている。
これはまるで打越氏がかつて企画や監修に携わったリアル脱出ゲームのタイトルである『アイドルは100万回死ぬ』を地で行くような、文字通りのデスループ状態である。
必ず死んでしまう運命にある儚いヒロインを助け出すために主人公が時空を超えて奮闘する物語、として肯定的に捉えることもシステム上は可能ではある。
しかし、当の本人が初登場の時点において、主人公の伊達に対して半ば脅迫に近いような強引な方法で捜査への同行を要求するという問題行動を平然と起こす。
さらに、分岐した片方のルートにおいては、これまでの打越作品でも見られたようなオカルトや電波な言動を全開にして主人公の前に接してくる。
そのため、プレイヤーの受け取り方によっては、単に不快でしかない電波キャラクターとして映ってしまい、好感を持てない描写が少なからず存在する。
また、経済的な収入源がほとんど無いはずのオタクの応太が、彼女のために多額の現金を無理して貢ぎ続けているという生々しい設定も相まって、彼女に対して可哀想だという同情心や、何としてでも自分の手で助け出したいという純粋な庇護欲の感情が湧きにくい。
別の分岐ルートに至っては、彼女自身が猟奇殺人の有力な容疑者として警察から疑いをかけられる。
その上、物語の特定の場面を境にして、画面から一切姿を見せなくなってしまう。
その先にさらに枝分かれするルートの終盤において、実はイリスが生きていたという驚きの生存説が浮上する。
しかし、別のルートのロックを解除して話をさらに読み進めていくと、そこで見つかったイリスは彼女の本人ではなく、イリスの姿を模した別の何かであるという残酷な事実が、遠回しなテキスト表現で判明する。
つまり、イリス自体はそのルートではもう生存していないという事実が確定する。
それゆえ、このルートの道中では、主人公の伊達と彼女が行動を共にして互いの絆を深めていくようなヒロインらしいまともな展開は一切用意されていない。
それどころか、彼女自身が潔白であるとは到底思えないような不可解で怪しい行動が全編にわたって目立つ。
結果として、プレイヤーに親近感を与えるのではなく、むしろ彼女への猜疑心や不信感を植え付けるような不穏なシーンが非常に多くなっている。
物語の要所要所でヒロイン相応の扱いを受けている華やかなシーンも勿論用意されてはいる。
しかし、そこに至るまでにプレイヤーに与えられる悪印象のインパクトが強すぎるため、やはり一般的なノベルゲームのヒロインのような無条件の好感は抱きづらい。
無論、これらの一連の冷遇描写が完全に投げっぱなしのまま終わるということはない。
最後の解決編ルートにおいては彼女は五体満足で生存しており、彼女が殺人容疑をかけられるに至った不可解な経緯や、裏での怪しい行動の真の理由、そしてオカルト染みた電波キャラクターのような言動を取ってしまっていた原因も、全てのルートを網羅することで合理的な説明がなされるのが唯一の救いである。
なお、のちの座談会で明かされた情報によると、シナリオライターの打越氏は初期の構想段階ではイリスではなく、その母親である瞳の方をメインヒロインに据えるつもりだったらしい。
主人公が30代の大人の男である本作において、あえてヒロインの年齢も同じ30代に設定することで、大人のビターな恋愛模様を描く予定であった。
日本国内の市場では受け入れられにくくとも、海外のゲーマー層であればそうした渋い大人のドラマも好意的に受け入れられるだろうと開発陣は考えていた。
しかし、キャラクターデザインのコザキ氏から上がってきたイリスの洗練されたビジュアルの絵を見た瞬間に、その可愛らしさに惚れ込んで急遽考えを変えたとのことである。
ストーリーの構築途中で行われたこの大きな路線変更の歪みが、実際のゲーム中における彼女の不遇な扱いに少なからず影響しているのかもしれない。
実際のところ、完成したストーリーの全体像を客観的に見渡してみると、作中での役割としてはイリスだけではなく、母親の瞳も、そして相棒のAIであるアイボゥも、全員がメインヒロイン級と言えるほど極めて重要なポジションを担っている。
そのため、本作は最初から複数のヒロインが同時並行で存在する群像劇であると捉えることも十分に可能な作りになっている。
プレイする際には、変にイリス1人だけを絶対的なヒロインであると強く意識しすぎない方が、シナリオの展開に混乱せずに物語を楽しめるだろう。
サイコパスの凶行に潜む動機の軽薄さ
本作に登場するその他のキャラクターたちの行動の動機についても、プレイヤーから見れば客観的に論理的な理解に苦しむ部分が散見される。
作中の事件を引き起こした真犯人は、物語の序盤に登場する遊園地のメリーゴーランドの内部に、決定的な証拠となるスマートフォンの端末をわざわざ馬の模型の隙間に隠していた。
しかし、のちのルートで判明する、真犯人がわざわざそんな場所に証拠品を隠した理由とは、ただ面白そうだからというあまりに軽薄極まりないものであった。
この真犯人が残したスマートフォンのデータがきっかけとなり、主人公の伊達が事件の核心的な真相へと大きく近づくことになったのは言うまでもない。
一応の擁護として、この真犯人は常人とは根本的に脳の構造が異なる本物のサイコパスである。
そのため、一般人の常識や利害関係では到底理解できないような、異常な価値観や独自の愉悦の基準に従って行動していたのだという解釈をすることは可能である。
しかし、緊迫したサスペンスの引き金となる要素としては、あまりに悪党としての知性や計画性を欠いた、ご都合主義的な動機であると感じるプレイヤーも少なくない。
網羅性と操作性がもたらす探索の徒労感
本作の捜査パートは、画面内の非常に多くのオブジェクトにアクセスして詳細を調べられる仕様になっている。
その網羅性の高さ自体はアドベンチャーゲームとして評価できる点である。
しかしその反面、物語の本筋や世界観の深掘りに全く貢献しない無意味なオブジェクトが大量に混ざっていることが課題として挙げられる。
特に、劇中の部屋に配置されている突っ込みどころのないごく一般的な家具や日用品において、その中身の薄いパターンが顕著に目立つ。
画面内のテーブルを調べてテキストウィンドウに「テーブルだ」とだけ表示されたり、ロッカーを調べて「ロッカーだ」などと返す、単なる見た目のオウム返しに終始する面白みのないテキストが少なくない。
一応、一部のオブジェクトでは主人公の伊達が何かしらの話を繋げたり、相棒のアイボゥやその場に同席している他のキャラクターが固有のリアリティある反応を返してくれる例外もある。
しかし、そうしたプレイヤーを楽しませるためのテキストの総数は全体から見れば決して多くはない。
そのため、世界観のディテールや隠された小ネタを期待して画面の隅々まで熱心に探索を重ねるプレイヤーほど、虚無感や徒労感を覚えやすい構造になっている。
また、調べたい対象に画面上の照準を合わせて調査を行うシステムを採用しているが、オブジェクトの当たり判定がゲーム画面上の見た目通りの厳密な範囲にしか設定されていない。
そのため、画面内にある極端に小さなアイテムや、細長い支柱のようなオブジェクトをピンポイントで狙って調べたい場合、カーソルを正確に合わせる操作が非常に煩雑で面倒である。
任意の手動操作で画面を拡大するアップ表示機能も、開発側が指定した一部の特定のイベント場面でしか実行することができない。
こうした操作性の不親切さが、広大な3D空間を調査する捜査パートのテンポを著しく損ねる要因となっている。
ユーザーインターフェースにおける機能の欠落
本作の世界観や専門用語を補足するためのテキスト資料、いわゆる補記機能のシステムまわりには、ストーリーの閲覧中にダイレクトに参照画面へジャンプできないという不便さがある。
かつての名作サウンドノベルである『街』や『428』といった作品では、作中で未知の専門用語が出現すると即座にTIPS機能が追加され、その場で文字の色が変わってワンボタンで詳細な解説文を参照できる快適なシステムが構築されていた。
しかし本作では、物語のテキスト中に新しい用語が登場して補記の項目が内部的に追加された際、画面上に「用語が追加された」というシステム側からの通知アナウンスすら一切入らない。
そのため、プレイヤー視点では今読んでいる物語のどのエピソードに関する補記がいつの間に解放されたのかを直感的に把握することが非常に難しく、混乱を招くことがしばしばある。
ゲーム内におけるこの補記の位置づけは、シナリオの理解をリアルタイムで助けるための道具というよりも、クリア後のアルバム閲覧機能と同様に、全ての物語を読み終えた後にメニューからまとめて読み返すおまけのアーカイブ要素に近い仕様になってしまっている。
さらに、ゲーム中のメニュー画面から直接データをロードしてやり直す機能が搭載されていないため、直前のデータを読み込みたい場合は、一度ゲームを中断してタイトル画面まで完全に戻らなければならない。
本作は一般的な2Dグラフィック主体のテキストアドベンチャーゲームとは異なり、全編が複雑な3D挙動で構築されているという技術的な内部事情があるにせよ、今どきのゲームでは標準実装されていることが多い手軽なクイックセーブおよびクイックロードの機能も備わっていない。
本作はチャプターごとのフローチャート画面から過去のシーンへ細かくピンポイントでジャンプして移動できるため、ゲームの進行自体で致命的に困る場面は比較的少ない。
しかし、自分が任意の手動セーブを行ったお気に入りのポイントへダイレクトに戻ってプレイを再開したい時には、少々不便を感じる仕様である。
また、データをロードした際には、ゲーム側がプレイヤーの記憶を喚起するために直近のシナリオのあらすじや流れを画面上でわざわざ振り返る演出が毎回必ず挿入される。
この演出が挟まれる影響で、ロードが完了して実際にゲームの操作が可能になるまでにやや長い待ち時間が発生してしまい、リトライの快適性を削いでいる。
総評
本作は、脳内へ潜入して精神世界を紐解くソムニウムパートの独特なゲームシステムや、重厚なSF要素が複雑に絡み合う先鋭的な世界観、そして全編にわたって容赦なく満遍なく散りばめられている過激なギャグ要素など、随所にプレイヤーの好みを激しく選ぶ尖った要素が数多く存在する。
さらに、猟奇殺人をテーマにしているが故の、目を背けたくなるような強烈で凄惨なグロテスク描写も多分に含まれており、万人が手放しで楽しめるような作品ではない。
しかし、それらの人を選ぶ強烈な要素や、一部のプラットフォームにおける処理落ち問題、操作性の不便さといった数々の欠点を補って余りあるほどの魅力が、この作品には確かに存在している。
特に、全ての並行世界のルートを網羅し、張り巡らされた無数の伏線が最終盤のルートにおいて怒濤の勢いで一気に回収されていくサスペンスとしての構成力は圧巻の一言に尽きる。
途中のルートで感じていた生殺しのような消化不良感や、不条理なトンデモ設定に対する困惑の全てが、物語の真実に到達した瞬間の圧倒的なカタルシスへと昇華される仕組みは見事である。
独特な作風やゲームシステムへの適応、そして緊迫したサスペンスの最中に挟まれるコミカルなノリを許容できるプレイヤーであれば、これまでにない唯一無二の濃厚なミステリー体験を味わうことができる、尖った輝きを放つ意欲作に仕上がっている。
タグ:
+ タグ編集
タグ:
タグの更新に失敗しました
エラーが発生しました。ページを更新してください。
ページを更新
いいね!
「AI: ソムニウム ファイル」をウィキ内検索
最終更新:2026年05月22日 17:43