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Until Dawn -惨劇の山荘-

【あんてぃるどーん さんげきのさんそう】
ジャンル ホラー / アドベンチャー
対応機種 プレイステーション4
発売元 Sony Computer Entertainment
開発元 Supermassive Games
発売日 2015年8月27日
定価 パッケージ版:6,900円(税別)&br;ダウンロード版:5,900円(税別)
廉価版 Playstation Hits&br;2018年11月21日/1,990円(税別)
判定 クソゲー
ポイント グラフィック・演技共に高水準&br;思わぬ結果をもたらす選択肢も&br;さほど分岐せず 話自体は一本道 &br; 暗転ドーン
''PlayStation Studios作品''


概要

ハリウッドで活躍する役者やスタッフを起用し、海外映画・ドラマの演出を織り交ぜながらゲームへと昇華させた作品。~
「惨劇の物語を追体験しながら生き抜くアドベンチャーゲーム」という公式サイトの謳い文句の通り、プレイヤーに大きな臨場感を与える「プレイする映画」と言える作品である。~
2015年8月25日に北米で発売され、同年8月27日には日本上陸となった…が、日本版においてはあまりにも擁護しきれない問題点を抱えてしまっている(後述)。


システム

  • バタフライエフェクト
    • プレイヤーの選択が後々思わぬ形で登場人物に降りかかることになる。メニュー画面では特定の場面ごとにバタフライエフェクトの展開が区切られており、その周回で選択した行動と発生した結果を確認できる。

  • トーテム
    • 収集要素の1つ。移動パートにてトーテムのパーツを拾えるのだが、それらを取得した時に未来の情景の断片を見せられる。トーテムの種類は拾った本人が息絶える瞬間を見せる「死」や、特定の場面でのヒントを見せてくれる「導き」など様々で、その情報を活かせるかはプレイヤー次第。


問題点

  • 原作北米版から見るシナリオ分岐
    • 本作は膨大な選択肢を網羅しているものの、それらによって変化するのは個々の登場人物の生死や場面ごとの細かな描写程度にとどまり、物語の大筋に決定的な影響を与えることはほとんどない。かつての『かまいたちの夜』のような、選択によって物語のジャンルや展開そのものがドラスティックに変化する万華鏡のような分岐を期待すると、肩透かしを食らうこととなる。
    • その象徴として、物語のクライマックスでは生き残ったメンバーの一部がロッジに逃げ込み、襲い掛かってくる脅威を相手に最後の命がけの駆け引きを繰り広げることとなるが、それまでにどのような分岐を選んでいようとも、最終的には必ずこのシチュエーションに収束する。登場人物の顔ぶれを除けば、舞台も展開もほぼ変化しない一本道な構造となっている。
    • 劇中で人物の死亡を左右するフラグの配分自体は丁寧に作り込まれているものの、あの時の些細な行動が後々になってタイムカプセルのように大きく響いてきたというような、バタフライエフェクトを感じられる場面は薄い。
    • 例えば序盤において、あるカップルが雪合戦を始めるシーンの最後で、キスをするか雪玉をぶつけるかという選択をあえて保留にすると、頭上から鋭いつららが落下してくるイベントが発生する。しかし、その直後に要求されるQTE(クイックタイムイベント)に成功しようが失敗しようが、演出に多少の差異が生まれるだけで、どちらにせよカップルは寸前でつららを回避するため、負傷や死亡には至らず、その後の展開にも一切の影響を及ぼさない。
    • もっとも、豊富なシナリオ分岐を誇る往年の名作群が基本的には「テキスト主体のサウンドノベル」という形式をとっていたのに対し、本作は高度なモーションキャプチャーによる「3Dムービー主体のシネマティック・アドベンチャー」であるという圧倒的な表現スタイルの違いを忘れてはならない。実写さながらの膨大な3D資産や演技の収録を前提とした場合、それらと同等のクオリティで何通りもの広大なパラレルワールドを用意することが物理的・コスト的に極めて困難であることは想像に難くない。そういった意味では、本作の完成度の問題というよりも、当時のハードウェアや制作手法における作品ジャンルの限界と捉えるのが自然である。
  • QTE
    • アクション要素として挿入されるQTEに関しては、この手のシステムにありがちな「ゲームのテンポを著しく損なう」といったストレスは比較的抑えられている。しかし、物語が後半に進むにつれて、要求される入力の受付時間は非常にシビアになり、頻度も跳ね上がるため、反射神経や精密な操作に自信のないプレイヤーにとっては大きな障壁となる。
    • 特に多くのプレイヤーの間で物議を醸したのが「動くな!」というQTEである。これはコントローラーのモーションセンサーを巧みに利用したもので、画面上に表示される枠線から逆三角形のマーカーがはみ出さないよう、一定時間コントローラーを完全に静止させ続けなければならない。微細な手ブレすら検知されるため難易度が非常に高い。
    • 救いとしては、QTEが発動する直前の予兆を察知してコントローラーを机や床などの平らな場所に直接置いてしまえばほぼ確実に無効化できる点や、シナリオの緊迫した空気感から「そろそろ来るだろう」という予測が比較的立てやすい点が挙げられる。本来は映画のような物語の演出をじっくり楽しむためのゲームであるため、これらの高難度なアクション要素で足をすくわれ、意図しないキャラクターの死を招いてしまうケースは少なくない。
  • 周回プレイにおける快適性
    • プレイヤーの選択や行動の成否によって登場人物の運命がリアルタイムに変貌していくため、一度クリアした後に異なる未来を求めて周回プレイをすることこそが本作の醍醐味である。しかし、その肝心の周回を快適に行うためのユーザーサポートにおいて、いくつかの手痛い仕様がその足を引っ張っている。
    • まず顕著なのがキャラクターの移動速度である。本作では、極限状態の雪山という緊迫した状況下で常に走り回りながら探索を行うのは不自然であるというリアリズムの追求から、どれほど急いで操作しても早歩き程度の速度しか出せない制限が課せられている。
    • 初回プレイにおいては、このもどかしさが恐怖や重厚な空気感を演出する優れた調味料として機能しているが、全貌を知った上での2周目、3周目の探索となると、この足の遅さは純粋なストレスへと変わってしまう。
    • また、豪華なムービー演出の最中に選択肢やQTEが発生するイベントシーン群についても、既読・未読を問わずスキップする機能は一切用意されていない。緊迫した瞬間や選択肢そのものを飛ばせないのは当然としても、そこに至るまでの長い会話劇を直前まで早送りするような工夫が欲しかったところである。
    • さらに、一度ゲームをクリアすればチャプターセレクト機能が解放され、物語の途中からピンポイントでやり直すことも可能にはなるが、チャプターごとの残り生存者数や累積したフラグの状況は、あくまで最後にクリアした際の状態に縛られる。そのため、序盤の些細な選択が中盤以降の生死を分けるようなルートを試したい場合、わざわざ序盤の該当チャプターまで戻って異なる選択をし、そこから目的の分岐点に到達するまで、イベントをスキップすることなく全て自力で進め直さなければならないという、煩わしい構造を強いられる。
  • 未回収の伏線
    • 緻密に練られた世界観の裏返しとして、作中には有耶無耶なまま幕を閉じる消化不良の伏線がいくつか散見される。その代表例が、中盤において、ある登場人物が紛失したはずのスマートフォンが、大音量で音楽を再生したまま外から窓を突き破って室内に投げ込まれる不気味なシーンである。その直後の展開から推察すれば、投げ込んできたのは直後に主人公たちを襲撃してきたあの得体の知れない存在であるはずなのだが、ここに奇妙な矛盾が生じる。
    • 作中で手に入る探索資料には、その存在に人間以上の狡猾な知性や学習能力が備わっていることを示唆する記録も遺されてはいるものの、実際の作中での暴れぶりを見る限り、スマホの電源を入れて特定のアプリを操作し、音楽を再生させてから狙い済まして投げ込むといった、近代的な精密機械を器用に扱うほどの高度な知性が残っているようには到底見えない。
    • また、物語の序盤からインターバル形式で意味ありげに挿入される精神カウンセリングのシーンについても、明確な背景は最後まで明かされない。画面の向こうのプレイヤーに対するメタ的な問いかけなのか、それとも作中の特定の人物が受けている対話なのかを、ゲーム側があえて意図的に曖昧にしたまま進行する。終盤の描写を注意深く考察すれば、ある人物が過去に受けたカウンセリングの記憶を基に、精神の崩壊過程で見ている凄惨な幻覚であると予想は立てられるものの、公式な確定情報として明言されることはない。
+ その他の消化不良点、※重度のネタバレ注意。真相に関する重大な情報が含まれます。
  • 因果応報がもたらす悲劇の真実
    • 主人公たちが謎の殺人鬼から執拗に命を狙われることとなる発端は、客観的に見ても自業自得と言わざるを得ない極めて深刻な過去の罪にある。彼らはかつて、殺人鬼の妹に対してリベンジポルノに類する陰湿で悪質な嫌がらせを行い、その精神的ショックから彼女は極寒の雪山へと狂ったように飛び出していってしまった。そして、彼女を連れ戻すために双子のもう一人の妹が後を追いかける。
    • その結果、姉妹は不運な崖の崩落事故に巻き込まれ、一人は即死、もう一人は大怪我を負った状態で深い闇の底へと遭難してしまう。この凄惨な事故の詳細は、保身のために仲間内で徹底的に隠蔽され、兄である人物には一切の真実が知らされなかった。訳も分からぬまま、兄は最愛の妹二人を同時に奪われるという地獄に突き落とされたのである。
    • しかし、この遭難劇の先に待っていたのは、さらなる狂気とおぞましさに満ちた悲劇であった。誰も知らない雪山の底で、生き残ってしまった方の妹は筆舌に尽くしがたい苦痛に苛まれることとなる。極寒の飢えと怪我の激痛、そして何より友人だと信じていた者たちに裏切られ、見捨てられたという絶望。そんな極限状態の中、彼女を精神の崩壊へと追い詰めたのが狂気的な飢餓であった。
    • 飢えの苦しみの果てに、彼女は自らのすぐ目の前に冷たくなった肉体という唯一の食料が存在することに気づいてしまう。最初は人間としての倫理観から必死にその誘惑に抵抗し、妹の遺体を雪に埋めて葬ったものの、ついに限界を迎え、その地面を掘り返して妹の肉にかじりつくという最悪の選択をしてしまう。だが、この凄惨な禁忌すらも悲劇の終着点ではなかった。
    • 彼女たちが遭難したこの山には、古くから人を狂わせる悪霊が彷徨っており、人間の肉を口にした者はその呪いによって悍ましい怪物へと変貌を遂げるという恐るべき伝承が存在したのである。哀れにも彼女は、人間の原型を失った醜悪な怪物へと姿を変え、永遠に満たされることのない飢餓感に苛まれながら、新たな人肉を求めて夜の雪山を徘徊する孤独な捕食者となってしまった。

  • 殺人鬼の真意と救いのない結末
    • 一方で、物語の前半で主人公たちを恐怖に陥れた殺人鬼の復讐劇の正体は、実は殺意の全くない極めて大がかりなドッキリに過ぎなかった。彼の両親が映画の製作関係者であり、自身もその技術や特殊メイクの知識を豊富に持ち合わせていたこと、そして山小屋に撮影用の機材やセットの材料が揃っていたことから可能となった狂気の舞台装置である。彼は最初から誰も殺すつもりはなく、実際に彼の仕掛けた罠が原因で死人が出ることはない。彼が執念深く求めていたのは、かつて妹たちを死に追いやった者たちの心からの反省と後悔の涙であった。
    • 妹たちへの非道な仕打ち、そしてそれを自分に対して必死に隠蔽し続けていた事実。二人の妹を同時に失った喪失感から、彼は精神を病んでカウンセリングを受けるほどに衰弱しており、物語の後半では完全に精神が崩壊して凄惨な幻覚を見続ける状態に陥っていた。しかし、それほどの狂気に侵されながらも、最後まで一線を越えた復讐殺人を実行に移さなかった点には、彼の人間としての最後の理性が垣間見える。
    • にもかかわらず、殺人鬼の正体が白日の下に晒された後、主人公たちの態度は冷酷そのものである。自分たちの過去の悪質な悪行に対して真摯に向き合い、謝罪するどころか、狂言を働いた彼を一方的に異常者として激しく責め立てる。特に嫌がらせの主犯格であった男に至っては、後に姉妹が辿った凄惨な共食いの真実を知った後ですら、自らの罪の重さから必死に話題を逸らし、自己保身に終始するという人間の醜さを露呈する。
    • この物語において、最も同情の余地があるはずの彼ら家族には一切の救いが用意されていない。特に兄である人物にはどうあがいても生存ルートが存在せず、最期は怪物と化してしまった最愛の妹の手によって頭部を無残に握り潰されるか、あるいは暗闇へと連れ去られて自身も同じ怪物へと変貌させられるという、最悪の結末しか残されていない。
    • 兄を除くプレイアブルキャラクターたちには、どれほど倫理的に問題のあるクズであっても全員に生き残るための生存ルートが用意されている一方で、事件の真の被害者である姉妹と兄の3人には、物語の構造上いかなる救済も存在しない。強いて言えば、プレイヤーの手で生存者を一人も残さず全員を死亡させる全滅ルートを選ぶことだけが、怪物となった姉妹の無念を物理的に晴らす唯一の手段となってしまっている点が、この物語の持つ最も皮肉でやりきれないビターな側面である。

  • 演出の矛盾と未解決の怪奇現象
    • 彼の復讐劇がすべて緻密に計算されたドッキリであったと仮定した場合、作中の演出においてどうしても論理的な説明がつかない奇妙な現象がいくつか残されている。
    • その一つが、ある登場人物が設置された望遠鏡を覗き込んだ際、突然レンズの向こうから得体の知れない何者かがこちらをじっと覗き返してくるという、ホラー番組さながらの心霊演出である。しかし、覗いた本人はなぜかほぼノーリアクションでその場をスルーし、その後のシナリオでもこの怪奇現象について触れられることは二度とない。
    • さらに不可解なのが、カメラのアングルが切り替わった一瞬、登場人物の背後の空間に実体のない幽霊のような影が不気味に浮遊している様子が画面に映し出されるカットである。
    • この時、仕掛け人であるはずの兄は目の前で対面して会話を交わしている最中でありながら、その異変に対して完全に無反応を貫いている。これが彼の仕込んだホラー演出なのだとしても、標的となる人物の死角や、自分にしか見えない位置にこのような幽霊のギミックを出現させるメリットはどこにもない。もし恐怖を煽るための仕掛けであれば、彼自身が盛大にリアクションを取って周囲にその存在を気付かせる誘導を行うのが筋である。これらの一連のオカルト描写については、世界観の不気味さを際立たせるための演出の都合として処理されており、シナリオ上の明確な解説やロジックが与えられることはない。
  • 期待を裏切る「過去の出来事」のアンロック
    • ゲーム中に特定の条件を満たすことで、失われた記憶や過去の真相を映し出した断片的な映像が徐々にアンロックされ、最終的に1本のシネマティックムービーとして完成する収集要素が存在する。あえて他社作品で例を挙げるならば、『アサシン クリード II』における「隠された真実」を彷彿とさせる、物語の根幹や裏側に迫るための野心的なギミックである。
    • しかし、苦労してピースを繋ぎ合わせても、その内容はすでに作中で手に入る様々な探索資料やテキストから容易に推測・把握できる事実の再確認に終始しており、完成させたムービーそのものがプレイヤーに与える衝撃や意味合いは極めて薄い。ここで初めて明かされる新事実や裏設定も一応は含まれているものの、わざわざ最終特典として厳重に伏せておくほどの価値がある内容とは言い難い。
    • さらに、前述した他社作品の秀逸な演出とは異なり、本作の仕様では断片的なバラバラの状態であっても音声や重要なセリフがクリアに再生されてしまう。そのため、全ての断片を完全に集め切る前の段階で、映像の全貌や結末がだいたい察せてしまうというプロット上の配慮不足も、この収集要素の達成感を著しく損ねている。
  • 執拗な内輪の悪ノリと偽りの恐怖演出
    • 本作の序盤における最大の手詰まりとも言えるのが、本格的な慘劇が幕を開けるまでの約2時間もの間、プレイヤーに対して延々と見せつけられる仲間内の悪ふざけや、勘違いによる安易な脅かしイベントの過剰な繰り返しが行われる。
    • 具体的には、ジェスが物陰から突如としてマイクを驚かせたかと思えば、今度はその意返しと言わんばかりにマイクがジェスを大声で脅かし返したり、暗闇を探索している最中に突然他の仲間がニヤけながら飛び出してきたりと、ただの悪ノリやいたずら目的の怖がらせ演出が幾度となく発生する。
    • さらに、山荘の主であるジョッシュまでもが、この極限状態の空気感を逆手に取るようにしてふざけた態度で周囲を脅かすなど、作中のキャラクター同士で何度も注意し合っているにもかかわらず、その忠告を一切無視してしつこいほどに不毛な驚かせ合いを身内で連発し続ける。
    • これらはアメリカン・ホラーにおける「最初の犠牲者たちの能天気さ」を忠実に再現しようとした演出の意図こそ汲み取れるものの、緊迫したホラー体験を求めて身を構えているプレイヤーにとっては、ただの勘違いや悪戯にすぎない肩透かしのジャンプスケアを何度も執拗に見せつけられる形となり、恐怖心を煽るどころか、そのしつこすぎる悪ノリに対して純粋な苛立ちや退屈さを募らせる大きな要因となっている。
  • 進行ルートが分かり辛い
    • 舞台となるエリアの構造を把握するためのマップ画面が非常に見づらく、現在の立ち位置や目的地の方向を直感的に把握することが難しい。アイテムの配置場所や、次にシナリオを進行させるために進むべき正しいルートのナビゲートも不親切であり、暗い画面も相まって探索時の迷いやすさと足止めの原因を作っている。

国内版の問題点

  • 無慈悲な残虐描写規制による没入感の破壊
    • 日本国内における本作のゲーム的価値やユーザー評価を、文字通り徹底的に貶める結果となった最大の問題点が、この国内版独自の過剰な残虐描写への規制である。
    • 五体満足ではいられないような人体欠損を伴う凄惨な死亡シーンや、無残に損壊した遺体を発見する緊迫した場面において、ゲーム画面が事前の脈絡もなく問答無用で真っ黒に「暗転」する仕様が採用されている。しかも、その暗転の挿入タイミングが極めて雑であり、緊迫したカットの途中で音声だけを残して画面がぶつ切りになるなど、演出としての余韻や文脈を暴力的に遮断してしまう。
    • そもそも、海外製の過激なホラー作品が日本国内の倫理基準(CERO)に合わせて残虐表現を規制されること自体は、現代のプレイヤーにとっても一定の理解があり、規制が入ることは致し方ないと受け入れる層も多かった。しかし、開発側がカメラワークを工夫して残酷な部位を直接映さないようにフレーミングを変更したり、違和感のないモザイク処理や視覚効果で隠すといった、ゲームの世界観を守るための最低限の手間を一切かけず、画面全体をただ真っ黒に塗りつぶすという「力技」すら通り越した極端な手抜き処置に走ったことに対し、購入したユーザーからは激しい非難と落胆の声が噴出することとなった。
    • 特に物語の終盤における重要な局面では、この暗転規制のせいで、視覚的に具体的に何が起こっているのかがさっぱり理解できないという致命的な状況に陥る。例えば、キャラクターが重々しい扉を開けた瞬間、部屋の奥から「何か」が床へと転がり出てくるカットがある。これまでのストーリーの傾向やキャラクターの絶叫から、それが何者かの凄惨な死体であること自体は辛うじて推測できるものの、暗転のせいで画面が真っ黒なため、具体的にそれが誰の遺体なのか、どのような状態でそこにあるのかといったミステリーとしての重要な情報が全く視認できない。特定の主要人物が死亡しているルートであれば、生き残った生存者がその人物の名前を叫ぶことで一応の状況把握は可能であるものの、物語の状況をプレイヤーへ伝えるための映像メディアとして、あまりにも不親切で情報量が少なすぎる。
    • それほど厳格な全画面暗転を徹底している一方で、なぜかプロログの時点で発生する、完全に腐敗が進んだ凄惨な生首を発見するシーンや、精神の崩壊(幻覚)の最中に、目の前の人物が自らの顔面の皮膚を仮面のように生々しく剥ぎ取り、その下の「中身」を見せつけてくる悪夢的な場面については、暗転やぼかしなどの修正が一切施されず、完全な無修正のまま生々しく描写されるという、極めて一貫性のないいい加減な基準が目立つ。
    • 本来であれば、日本の規制基準の網の目をすり抜けて、見せられる限界の恐怖表現を余すことなくプレイヤーに届けてくれたと好意的に評価すべきポイントなのだろうが、この一貫性のなさが皮肉にも、他の場面における「雑な全画面暗転」の手抜き感と理不尽さをより一層引き立てるという、最悪の逆効果しか生み出していない。
    • さらに、ゲーム内で収集できる「トーテム」と呼ばれるアイテムから垣間見える、未来の惨劇を予言する短い映像(予言映像)の中ではバッチリと凄惨なシーンが映り込んでいるにもかかわらず、実際のプレイでその瞬間に到達すると容赦なく規制の暗転が入るという、本末転倒なケースまで存在する。極端な例を挙げれば、何かが起こる前の予兆の段階からすでに画面が真っ黒に染まり始めるという始末である。
    • 具体的には、「床の隠し扉から何かが突如として飛び出し、登場人物の首を掴む」という予言映像のシーンがあるが、これが実際のプレイ画面になると、直後に首を捻じ切る凄惨な本番シーンだけでなく、その前段階である「床から何かが飛び出す瞬間」からすでに暗転がスタートしてしまうため、ストーリーの状況変化すら視覚的に追えなくなるという、理解に苦しむねじ込み方がなされている。
    • このような劣悪な仕様であるため、海外ドラマのシーズン区切りを強く意識したスタイリッシュな構成で制作され、本来であればプレイヤーの興奮を高めるはずのチャプター間に挟まれる「これまでのあらすじ」ムービーも、暗転の連発によって無残な細切れと化す。作品が持つせっかくの重厚なシネマティックの雰囲気は、完全にぶち壊されてしまっている。
    • これらのあまりに不条理で手抜きな暗転規制の仕様が元で、当時のインターネットコミュニティを中心に定着した本作の蔑称が「暗転ドーン」である。まさにゲームの現状を的確に皮肉った言い得て妙な言葉と言える。
    • 極めつけに、この手抜き感が著しい規制の仕様に関して、発売前のプロモーションや公式サイトなどでの事前告知のアナウンスは一切行われていなかった。そのため、海外版と同等のスリルを期待して購入した多くのプレイヤーが裏切られる形となり、発売後にネット上で大規模なブーイングが巻き起こった際も、公式側は一切の釈明や説明を行わず、だんまりを決め込み続けるという不誠実な対応が火に油を注いだ。
    • 発売直後に配信された公式の生放送番組において、出演していた販売元の社員が一言だけこの件に関して謝罪の言葉を述べる一幕はあったものの、ゲーム全体の仕様が修正されるわけでもなく、購入者の怒りや失望を鎮めるにはあまりにも焼け石に水であった。
  • 長期にわたる仕様の放置
    • 信じがたいことに、この手抜きと酷評された全画面暗転による残虐描写の規制仕様に関しては、発売から長い年月が経過した2020年代の現在に至るまで、アップデートやパッチによる改善・修正の試みは一切行われておらず、当時の劣悪な状態のまま完全に放置され続けている。

論争点

  • 一貫性を欠くプロットの迷走とジャンルの急激な転換
    • 物語の前半戦においては、雪山の孤立した山荘という最高のお膳立てを舞台に、正体不明の凶行に怯える殺人鬼ミステリーや、誰が犯人なのかを疑い合う閉鎖空間サスペンスとしての王道的な犯人探しの心理戦が緊迫感たっぷりに進行していく。
    • しかし、物語が中盤以降に差し掛かると、それまでの不気味な殺人事件の前提を根底から覆す悪質なドッキリ計画の露呈や、仕掛け人の精神崩壊が引き起こす幻覚的な復讐劇へと内実が変化し、最終的には土着の呪いが絡むモンスター系のホラーへとシナリオの方向性が目まぐるしく変貌を遂げていく。
    • この真相が二転三転しすぎる過剰なプロットの詰め込みにより、前半の論理的なサイコサスペンスの雰囲気に惹き込まれていたプレイヤーほど、終盤に向けて脈絡なくゾンビ系やクリーチャー系の怪物ホラーへと完全にジャンルがすり替わってしまった急展開に対して、シナリオの軸がブレてしまったような唐突感と置いてけぼり感を抱く結果となっている。
  • ホラー映画の文脈がゆえに生じる感情移入の障壁
    • 作中に登場する若者たちは、序盤においては徹底して古典的なホラー映画のテンプレートに沿ったキャラクター造型がなされている。
    • 刹那的で軽薄、極めて自己中心的な一面、些細なプライドや恋愛感情のもつれからすぐに激しい口論や喧嘩を始めるなど、まさに惨劇の最初の犠牲者にふさわしい典型的なアメリカン・ティーンエイジャーとして描かれている。
    • 海外のジャンル映画を熱心に嗜むファンにとっては、これぞホラーの定番だと納得のいく記号的な楽しさがある一方で、この独特なカルチャーやステレオタイプに馴染みの薄い一般的な日本人プレイヤーからは、キャラクターの短絡的な言動に対して感情移入が極めてしづらいという批判的な意見も少なくない。
    • 実際、物語のプロローグや序盤の段階をプレイしていると、これほどまでにお互いの仲が悪く、常にギスギスとした不穏な空気を漂わせているにもかかわらず、なぜわざわざ貴重な冬休みにスケジュールを合わせてまで、全員で人里離れた雪山のロッジに集まって一緒にバカ騒ぎをしようとしているのかという、根本的な人間関係の前提に対して、文化的なギャップから強い違和感や疑問を抱いてしまうプレイヤーも少なくない。
  • 原始的な恐怖を煽る過剰なジャンプスケア
    • 本作の恐怖演出において、最も頻繁かつ露骨に多用されているのが、静寂を切り裂いて突如として画面に何かが飛び出し、同時に暴力的な大音量を鳴り響かせることでプレイヤーの心臓を物理的に跳ね上がらせるジャンプスケアの手法である。
    • 暗闇を探索する緊張感の中に適度なスリルとアドレナリンを注入する仕掛けとしては極めて即効性があり、お化け屋敷的な純粋な絶刻体験を求めているプレイヤーに対しては非常に高い効果を発揮している。
    • その一方で、この演出のあまりの頻度の高さに対しては、物語の背景や演出の妙でじわじわと精神を追い詰めていく知的な恐怖ではなく、単に人間の原始的な聴覚・視覚の反射神経を突発的な大音量で無理やり驚かせているだけに過ぎない、安易で大雑把なホラーの手法であると冷ややかに捉える層も存在し、演出の好悪がはっきりと分かれる要因となっている。
  • 緊迫感を欠く序盤の冗長な展開
    • 物語の幕が上がってからの最初の数時間は、登場人物たちの狭いコミュニティ内での恋愛話や、些細なプライドが引き起こす仲間同士の低レベルな喧嘩、そして目立った進展のない緩慢な探索劇が中心となる。
    • 舞台装置や主要な背景を丁寧に描写するための助走期間としては理解できるものの、スリリングな恐怖体験や未知の脅威との対峙を期待してゲームを始めたプレイヤーにとっては、本格的な惨劇が幕を開けて物語が加速度的に面白くなるまでの待機時間が非常に長く感じられ、序盤のテンポの遅さが退屈さを生む要因となっている。
  • ホラーの文脈に縛られた不条理なキャラクターの単独行動
    • 惨劇が始まって以降も、若者たちは危機的状況であるにもかかわらず、あえて一人で孤立して行動を選択したり、見るからに不気味で危険な未踏の場所へ不用意に足を踏み入れたり、自身が目撃した重要な恐怖の情報を他の仲間に一切共有せず抱え込んだりといった、生存確率を自ら下げるような不合理で不可解な言動を連発する。
    • これらは往年のスラッシャー映画における様式美、すなわちお約束のプロットを忠実に再現した結果ではあるものの、プレイヤー自身が選択を委ねられるゲームという媒体において、あまりにも危機管理能力を欠いたキャラクターたちの愚行を見せつけられることは、操作側の没入感を著しく削ぎ、人によっては多大なストレスを蓄積させる原因となっている。
  • ゲーム性の薄さと探索を阻む快適性の欠如
    • 本作におけるゲームプレイの大部分は、暗闇をゆっくりと歩き回り、怪しいオブジェクトを調べ、光源となる電気を点灯させ、時折提示される選択肢を選ぶという単調なルーティンワークで構成されている。
    • プレイヤーの能動的な介入要素が極めて限定的であるため、爽快なアクションゲームや奥深い謎解きを期待して購入した層にとっては、映像をただ眺めている時間が長く、ゲームとしての手応えや遊び応えの面で大きな物足りなさを残す結果となっている。
  • プレイヤーの心理を巧みに欺く冤罪の引き金と「噛み傷」の罠
    • 本作における数ある選択劇の中でも、とりわけ映画的な緊迫感とプレイヤー間の激しい議論を生んだ名場面として語り継がれているのが、生存者の一人であるエミリーが怪物の襲撃から生還した後に発生する、山荘内での一連の疑心暗鬼の騒動である。
    • 一連の流れとしては、エミリーが暗い鉱山の奥底で獰猛な怪物ウェンディゴに襲撃され、命からがら山荘の安全圏へと逃げ帰ることに成功したものの、その直後に彼女の腕に生々しい噛み傷が残されていることが発覚する。この瞬間、それまで未知の脅威に怯えていた生存者たちの間で「この傷からウイルスの類が感染し、彼女も怪物化してしまうのではないか」という最悪の予測が走り、場は一気にパニック状態へと陥る。
    • 特にアシュリーが強烈な自己保身と恐怖心からエミリーの排除を強く主張し、その叫び声に煽られるようにして、錯乱したマイクが冷徹に銃を持ち出し、かつての恋人であったエミリーの脳裏へと銃口を突きつける。ここでプレイヤーは、仲間の安全のために彼女を処刑する「撃つ」か、あるいは引き金を引くのを踏みとどまる「撃たない」かという、極限の二者択一を迫られることとなる。
    • このイベントの真に恐るべき罠は、事態が収束した後に手に入る探索資料によって「ウェンディゴの呪いは人間の肉を喰らうことでしか発症せず、単なる噛み傷による感染などは絶対に起こらない」という決定的な事実が明かされる点にある。すなわち、恐怖に駆られて「撃つ」という決断を下してしまった場合、エミリーは怪物化の兆候など一切ない完全な人間としての「冤罪」のまま、仲間の手によって無残に射殺されたという最悪の真実が突きつけられる。
    • この場面がこれほどまでに有名なイベントとなった背景には、ゾンビ映画やパニックホラーにおける「噛まれたら終わり(感染)」というジャンルの絶対的なお約束を逆手に取り、初見プレイのプレイヤーをも完璧に罠へと嵌めてみせたプロットの妙がある。状況証拠があまりにもブラックであるため、操作側も本当にエミリーが怪物に変貌してしまうと信じ込みやすく、山荘内の若者たちがパニックに染まっていくリアリティも手伝って、安易な正義感や防衛本能で引き金を引いてしまいやすい。だからこそ、後から真実を知らされたプレイヤーが背負うこととなる罪悪感と、山荘内に漂うその後の重苦しく気まずい空気の破壊力は、作中随一のトラウマとして深く記憶に刻まれることとなる。
    • 一方で、仮にプレイヤーが理性を保って「撃たない」という選択を勝ち取った場合であっても、事態は決して円満な解決には向かわず、むしろ生き残った者たちの間に醜い人間性の亀裂を決定的に露呈させる。
    • 冤罪で殺されかけたエミリーの怒りは当然のごとく頂点に達し、自身を怪物扱いして執拗にマイクの殺意を煽り立てたアシュリーに対して「感染するなんて根拠のないデマを喚き散らしたのはあんたでしょ!」と激しい口調で猛烈に詰め寄る。
    • さらに、それまでの会話フラグや好感度などの特定の条件が重なると、エミリーがその怒りを爆発させ、言い訳を試みるアシュリーの顔面を容赦なく殴り飛ばすという強烈な報復シーンまで描写される。この徹底的な泥沼のキャットファイトは、極限状態における人間のエゴイズムをこれでもかと見せつける。
    • この一連の顛末は、プレイヤーコミュニティの間でも「パニックに陥ったアシュリーの言動は戦犯であり絶対に許せない」とする意見や、「実際に銃を持ち出して引き金を引こうとしたマイクの短慮さこそが諸悪の根源だ」という批判、あるいは「そもそも日頃の態度が災いして信用されていなかったエミリーにも非がある」といった、誰に感情移入するかによって見解が真っ向から対立する、泥沼の議論を巻き起こし続けた。
    • フィクションの定石であるゾンビホラーのルールを用いた巧みなミスディレクションであり、プレイヤー自身の倫理観と決断力をこれ以上ない形で試してくるこの山荘の銃撃イベントである。

評価点

  • 徹底的にオマケを詰め込んだアメリカン・ホラーの伝統美
    • 本作の根底に流れているのは、ハリウッドの古典的なB級ホラー映画やスラッシャー映画の世界に、自分自身がプレイヤーとして直接迷い込んでしまったかのような、濃厚でどこか懐かしい恐怖の体験である。
    • 大自然に囲まれた冬の豪雪地帯、外部との連絡が完全に遮断された絶海の孤島のごとき山荘、バカ騒ぎをするために集まった身の程知らずな若者たちのグループ、静まり返った闇から忍び寄る謎の連続殺人鬼、山に伝わる血生臭い因習と異形の怪物の影、そして極限状態に追い詰められたことで露呈する仲間同士の醜い猜疑心と対立など、アメリカン・ホラーにおけるお約束がこれでもかと網羅されている。
    • 劇中の展開や散りばめられたパニック描写の数々は、ホラー映画の歴史や文脈に詳しければ詳しいほど、まさにこの展開だとニヤリとさせられる記号に満ちており、ジャンルのファンにとってこれ以上ない極上のエンターテインメントとして機能している。
  • ビジュアルクオリティ
    • 作中を彩る視覚表現の美しさは目を見張るものがあり、リリースされた当時においては間違いなく家庭用ゲーム機のトップクラスに君臨する驚異的なグラフィック水準を誇っていた。
    • 実実のハリウッド俳優を起用し、高度なモーションキャプチャーおよびフェイシャルキャプチャー技術を用いて構築されたキャラクターたちは、単に容姿が似ているというレベルにとどまらない。恐怖に歪む顔の筋肉の強張り、瞳の細かな揺れ動き、視線の彷徨い、あるいは冷気によって白く染まる吐息のタイミングに至るまで、生身の人間が持つ極めて微細な表情の変化や仕草が狂気的なまでの解像度で再現されている。
    • このハリウッド映画のスクリーンそのものと言える超高精細な映像美が、プレイヤーを雪山の闇へと引きずり込み、コントローラーを握る手に実写映画の主役たちを直に操作しているかのような、凄まじい次元の没入感をもたらしている。
  • 運命の糸を紡ぎ変える周回プレイの引力
    • 物語の結末へと至るまでに、誰の命を繋ぎ、誰を凄惨な死へと追いやるのか、その生殺与奪の権を完全に握らされたプレイヤーの選択によって、ドラマのシチュエーションや人間関係のパワーバランスは様々に形を変えていく。
    • 一度ストーリーの全貌を看取った後であっても、あの時もし別の残酷な決断を下していたら、あの傲慢なキャラクターは一体どのような最期を迎えていたのだろうかという知的好奇心や、今度は全員を完璧に生還させる奇跡のルートを開拓したいという挑戦欲が自然と湧き上がる設計になっている。惨劇を繰り返すたびに新たな断片が見えてくるこの多面的な構造こそが、クリア後もなおプレイヤーを再び極寒の雪山へと向かわせる強力な引力となっている。
  • 抜群の没入感をもたらす空気感と息遣い
    • 登場するキャラクターたちはそれぞれ強烈な個性を放っており、ハリウッドのパニック映画や海外の人気サスペンスドラマで目にするような、独自の価値観や傲慢さ、そして等身大の弱さを持ったアメリカの若者像が極めてリアルに造型されている。
    • 劇中のグラフィックや環境音、音楽のクオリティも一線級の完成度を誇っており、静まり返った夜の雪山や、古びた山小屋の冷徹で張り詰めた情景は、画面越しにプレイしているこちらの肌にまで、凍りつくような寒さと恐怖が伝わってくるほどの圧倒的な臨場感を生み出している。
    • 吹き替えを担当した日本語声優陣のキャスティングや演技も非の打ち所がないほどにハイレベルであり、極限状態に追い詰められた若者たちの悲鳴や怒号、動揺を臨場感たっぷりに表現し、物語のドラマ性を大きく底上げしている。

  • 予想を裏切る劇的な因果の分岐
    • シナリオの全体的な構造や一本道化への不満こそ前述した通りであるものの、本作の核である「バタフライエフェクト(バタフライエフェクトシステム)」が深く絡み合う特定の選択肢の中には、プレイヤーの予測や常識を遥かに超越した、戦慄の結果と驚きをもたらす見事な設計のものが存在する。

+ バタフライエフェクトによる劇的な分岐の具体例、※中度のネタバレ注意
  • 「一匹のリスへの報い」
    • 物語の最序盤であるチャプター1の冒頭、山頂へ向かうケーブルカーが到着するまでの退屈な待ち時間、射撃場でライフルを用いて的当ての練習をするシーンにおいて、プレイヤーの目の前に現れた野生のリスをあえて「撃つ」という、一見すれば単なる悪趣味な悪戯に過ぎない選択肢が存在する。
    • この時リスを撃ち殺すと、その場に居合わせた女性キャラクターがその残酷な行動に対して激怒し、男性と口論を始めるが、その最中に突然一羽の野生の鳥が襲いかかってきて、結果としてその女性は目の上に「軽い切り傷」を負うこととなる。
    • その後、物語が中盤へと大きく移り変わり、この女性キャラクターが狂気の殺人鬼によって夜の山小屋を執拗に追い回される絶体絶命のチェイスシーンへと突入する。彼女は必死の逃走の最中、扉を開けた拍子に激しく転倒してしまうが、この際に最序盤で負っていた目の上の傷口が開き、「血が流れ出す」という事態に見舞われる(なお、傷の有無に関わらず、ここでの転倒というイベント自体はシナリオ上必ず発生する)。
    • 直後に、殺人鬼から逃れるために「さらに走り去る」か「物陰に隠れる」かという運命の二者択一を迫られる。本来であれば、ここで「隠れる」を選択し、その後に要求されるQTEを完璧に成功させることこそが、彼女が殺人鬼の手から完全に逃れて安全を確保するための唯一の正解ルートである。しかし、最序盤でリスを撃っていた場合、物陰に潜んでどれほど息を潜めていようとも、先ほど傷口から床へと滴り落ちた「一筋の血痕」が決定的な証拠となり、殺人鬼に容易に居場所を突き止められて捕まってしまう。
    • 最序盤における「野生の小動物を撃つ」という、殺人鬼の存在や後の生存競争とは全く無関係に見えた軽率な行動が、巡り巡って中盤の命がけの隠密行動において「どのような選択肢を選んでも絶対に殺人鬼に捕縛される」という、回避不能のバッドステータスとして牙をむく。これこそが、本作のバタフライエフェクトが最も残酷かつ見事に機能した好例と言える。

  • 「盲目的な献身の代償」
    • あるカップルのエピソードにおいて、危機的状況を打破するために山頂の通信塔へ向かって助けを呼ぶべきだと女性側が強く主張する場面がある。この時、操作キャラクターである恋人の男性が彼女の意見に全面的に「賛成する」を選ぶと、二人は通信塔へと向かうこととなる(この場面で反対の意思を示しても、展開の都合上、目的地自体には向かうこととなる)。
    • 命からがら辿り着いた通信塔の内部で、女性側の操作パートにおいてとある重要な防衛アイテムを発見するイベントが発生する。このアイテムを自分で所持し続けるか、隣の男性に手渡すかの選択肢が現れるが、ここで男性側へ手渡すと、彼は「いざという時にこれで助けを呼ぼう」と判断し、その防衛アイテムを「その場で即座に使用して消費」してしまう。
    • その後、状況は急転直下し、今にも崩落しかかっている不安定な通信塔の足場から、女性が奈落の底へと転落しそうになる絶体絶命の危機を迎える。ここで男性の操作パートへと切り替わり、自己保身に走って安全な場所へと避難するか、危険を顧みず彼女を「救おうとする」かの選択を迫られる。ここで恋人としての義務感から必死に手を伸ばして彼女を救おうと奮闘するものの、無情にも足場は崩れ去り、女性は奈落へと落下。男性自身も崩落の衝撃によって地面へと叩きつけられ、負傷したまま気を失ってしまう。
    • しばらくして目を覚ました男性は、傷ついた体を引きずりながら脱出を試みて歩き始めるが、その直後に暗闇から現れた謎の脅威によって奇襲を受け、防衛手段を持たない彼は抵抗の手立てもなく、なす術のないまま惨殺されてしまう。
    • 非常に皮肉なことに、もし最初の通信塔の場面で彼女の意見に「反対する」という一見不誠実な態度を取っていれば、防衛アイテムを渡されても使用せずに懐へとしまい込むため、後の奇襲の際にそのアイテムを用いて鮮やかに反撃し、生還を果たすことができる。また、彼女が転落しかけた局面で、救出を諦めて自らの「安全を優先する」という冷酷な決断を下していれば、そもそもこの襲撃イベントが発生するエリアへと立ち入ることすらないため、確実に生存できる。
    • すなわち、「愛する恋人の意見を常に尊重し、アイテムを信じて託し、彼女が危機に陥った際には自らの命を賭して献身的に尽くし続ける」という、人間として、そして恋人として非の打ち所がない最も美しく正しい選択を重ね続けた場合に限って、システム的に「回避不能な自身の凄惨な死」という最悪の皮肉がもたらされることとなる。この善意が悲劇を呼ぶ容赦のないロジックは、プレイヤーに強烈な苦い余韻を残す。


総評

    • 「もしも、国内版のあのあまりに不条理な残虐規制さえまともな形で行われていれば……」本作を総括するにあたって、この言葉以上に的確かつ痛烈な評価は存在しない。
    • 本作は、夜の雪山というクローズドな空間で繰り広げられる、スラッシャーホラーやスプラッタ映画さながらの恐怖と惨劇の雰囲気を、五感でじっくりと味わい楽しむことに全ての重きを置いた体験型のアドベンチャーゲームである。それでありながら、その恐怖の核心でありカタルシスともなるべき決定的な死亡・損壊シーンにおいて、作品の雰囲気を根底から台無しにするような手抜きの全画面暗転規制が施されてしまっては、作品が本来持っていた純粋な魅力やディレクターの意図は半分にも満たない形でしかプレイヤーに伝わらない。
    • 海外産ゲームの日本ローカライズにおいて最も高いハードルとなりがちな、翻訳の質や日本語吹き替え声優陣の演技のクオリティが非の打ち所がないほどに素晴らしい仕上がりであったからこそ、このようなシステム外の、それも不誠実な規制という形で作品全体の評価を著しく落としてしまった事実は、一人のゲームファンとして非常に残念でならない。
    • とはいえ、一見して実写と見紛うほどの映像美や、細部まで計算された演出の迫力には目を見張るものがあり、ストーリー全体の分岐構造の浅さや、周回プレイ時に強いられるいくつかのシステム的な煩わしさもあるクソゲーである

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最終更新:2026年08月11日 01:02