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I/O

【あいおー】
ジャンル SFミステリーアドベンチャー
対応機種 プレイステーション2
発売元 GNソフトウェア
開発元 レジスタ
発売日 2006年1月26日
定価 6,800円(税別)
レーティング CERO:C(15歳以上対象)
判定 賛否両論
ポイント 良くも悪くも難解なシナリオ&br;あまりにも少なすぎる立ち絵
レジスタオリジナルアドベンチャー
I/O / Myself;Yourself / ルートダブル


始まりは終わり、 &br; 終わりが始まるのだ。



概要

  • 作品概要
    • PCゲームのコンシューマー移植を主としていたGNソフトウェアのオリジナル作品第1弾であり、『Myself;Yourself』等を手掛けるレジスタの処女作でもある。
    • コンピューターネットワークと電脳世界を主題としたSFアドベンチャー。舞台はインターネットが高度に発達した2032年の東京だが、SF的飛躍は抑えられており、現代の延長線上としてのリアリティが保たれている。
    • メソポタミア神話(バビロニア神話)を世界観の下敷きに据えているのが特徴。
    • 『infinityシリーズ』の中澤工が監督を務め、原案に田中ロミオ、シナリオに健部伸明、ムービー制作に神月社を起用。各分野の著名クリエイターが集結して製作された。

  • シナリオ構成
    • 物語はABCDの4ルートに分かれており、開始直後にプレイヤーが任意で選択する。
      • Aルートは導入に適したライトな内容だが、アルファベット順に進むにつれて物語はハードかつ難解なものへと変貌していく。
      • 公式にはAからDの順でのプレイが推奨されているが、逆順でプレイすることで高難易度の謎解きやコアな展開を味わえるとされている。安易な選択は推奨されない。
    • 全ルートの条件を満たすことで、物語を総括する最終章「Eルート」が解禁される。
    • Eルートクリア後、完結編となる「ダッシュルート」が解放される。
      • ダッシュルートはA´B´C´D´E´の5編構成。本編の過去を描く「過去編(D´C´)」、二つの後日談を描く「未来編(B´A´)」、そして物語を締めくくるエピローグ「虚実編(E´)」を経て、真の結末を迎える。


  • デフラグマップ
    • 本作のシナリオ構造を管理する円形の管理ボード。初期状態は「断片化(虫食い)」しているが、プレイ状況に応じて色が埋まっていく(A:青、B:赤、C:橙、D:緑)。
    • ルートをクリアするごとにシナリオが「修復」され、それまで欠落して読めなかった箇所が次回プレイ時から順次解禁される仕組みとなっている。
    • 修復はクリアしたルート以外にも波及するため、徐々に物語の全貌が明らかになっていく。
    • 未修復の状態でもストーリー自体は成立するが、多くの謎が放置されたまま終了することになる。
    • マップ上では既読状況やエンディングの回収率、選択肢の分岐状況が一目で確認できる。
    • 特定のバッドエンドを踏むと、一度修復された箇所が再び「破損」する独自の演出が存在する。

ストーリー

    • 西暦2032年4月26日、東京。3年ぶりの皆既月蝕を機に、ネットワーク犯罪やテロ、不可解な怪現象が頻発し始める。
    • 実と虚が混濁していく世界の中で、少年少女たちは予期せぬ邂逅と別離を繰り返していく。

  • シナリオ紹介
    • 葵 日向(Aルート)
      • 主人公は離人症を患う15歳の少年。流行のネットゲーム「バビロン」と、2年前に失踪した妹・夢月の謎を追う。高校生の視点から描かれる、本作の基礎となるシナリオ。
    • イシュタル/Ishtar(Bルート)
      • ハッカーチーム《クリミナル》のリーダーである18歳の少女が主人公。企業からの依頼をこなす中で、テロリスト集団《コード》との電脳戦に巻き込まれていく。明るいチーム劇の裏で、残酷な結末が待ち受ける。
    • イシュタル/Ishtar(Cルート)
      • Bルートと同一の容姿を持ちながら、性格も環境も異なる「もう一人のイシュタル」が主人公。断片的な描写と曖昧な時間軸により、事態の把握が極めて困難な難解シナリオ。
    • He/ヒィ(Dルート)
      • ネット上の都市伝説とされる伝説のハッカー「He」が主人公。正体不明の男性視点で描かれ、激しい戦闘シーンが展開される。Cルート以上に不可解かつ断片的な物語構成となっている。

登場人物

+ クリックして展開
    • 葵日向(CV:萩道彦):Aルート主人公。妹の失踪以来、無気力に過ごす内向的な少年。
    • イシュタル(CV:たかはし智秋):B・Cルート主人公。ハッカーチームを率いる少女だが、ルートによってその性質は大きく異なる。
    • He(CV:???):Dルート主人公。電脳神の異名を持つ伝説のハッカー。銃火器を操る謎の男性。
    • 葵夢月(CV:永田佳代):日向の妹。2年前に謎の失踪を遂げた。
    • 川原朔夜(CV:田中涼子):日向の幼馴染。世話焼きな少女。
    • 綾瀬みか(CV:藤咲かおり):《クリミナル》メンバー。ハンドルネームは「マグダレーン」。
    • 宮田浩介(CV:鳥海浩輔):《クリミナル》唯一の男性。ハンドルネームは「エクエス」。
    • 篠塚真佐実(CV:吉住梢):《クリミナル》メンバー。負けず嫌いな姉。ハンドルネームは「エル」。
    • 篠塚真佑実(CV:吉住梢):真佐実の双子の妹。日向に好意を寄せる。ハンドルネームは「アル」。
    • エンリル(CV:相田さやか):日向に敵意を見せる謎の人物。

評価点

  • 緻密な伏線とシナリオ構成
    • ミステリー小説のように巧妙な伏線が張り巡らされており、最終シナリオですべてを繋ぎ合わせる構成はプレイヤーに強い感銘を与える。
    • 提示される謎が多いため物語の牽引力が強く、最後まで飽きさせずにプレイさせる。
    • 中澤監督が過去に手掛けた『infinityシリーズ』の流れを汲むトリックやカタルシスが健在であり、同シリーズのファンを惹きつける要素を多分に含んでいる。
    • 中澤監督の代表作であり、未完結とも取れる結末で物議を醸した『Remember11』と比較しても、本作は相応の問題点は抱えつつも、露骨に投げ放すようなオチではなく一応の結末を見せる。
  • 極めてユーザーフレンドリーなシステム
    • オートプレイ、高速既読スキップ、100箇所のセーブスロット、クイックセーブといった基本機能は完全に網羅されている。
    • テキストログ機能は前回のプレイ履歴まで閲覧可能で、ログからの音声再生やゲーム再開にも対応している。
    • シナリオの特定箇所から開始できるショートカット機能も搭載されており、繰り返しプレイを前提としたサポート体制は万全。KID時代の作品群を彷彿とさせる、ユーザーの利便性を最優先した設計となっている。
  • 充実したTIPS機能
    • 『Remember11』と同様に、劇中の用語を解説するキーワード機能が搭載されており、難解な専門用語や固有名詞を即座に参照できる。
    • メッセージウィンドウから直接用語解説へジャンプできるため、プレイの手を止めることなく世界観への理解を深められる。
  • 没入感のある世界観構築
    • 近未来を舞台に仮想世界と現実の境界が曖昧になっていく様を描いており、映画『マトリックス』のような非日常感を味わえる。
    • SF的設定が現代の延長線上として地に足の着いた形で描かれているため、SFジャンルに馴染みの薄い層でも取っ付きやすくなっている。
  • 高品質なBGM
    • 当時BMS作家として活動し、現在は音楽ゲーム等へ楽曲提供を行うonokenが作曲を担当。各シーンの雰囲気に合致した楽曲が揃っており、オープニングテーマ『fragment』も非常に高く評価されている。

論争点

  • 同性愛的な要素の存在
    • 女性キャラクターが別の女性を「おねえさま」と慕う、あるいは女性同士で恋人関係になるといった、いわゆる「百合」を想起させる描写が複数存在する。
    • 男性に対して過度に攻撃的なキャラクターも登場するため、プレイヤーの嗜好によって受け止め方が分かれるポイントとなっている。
  • 膨大なシナリオボリューム
    • クリアまでの標準プレイ時間は50~60時間に達し、シナリオ数も実質10本に及ぶなど圧倒的な文章量を誇る。
    • 潤沢なボリュームは長所でもあるが、本作特有の難解かつ複雑なプロットに加え、提示される情報の密度が極めて高いため、プレイヤーにかかる知的負荷は相当なものとなる。
  • ネットスラングの起用
    • 『科学アドベンチャーシリーズ』ほど顕著ではないものの、「厨房」など制作当時のインターネット上で多用されていたスラングが一部の台詞に含まれている。
    • 近未来を舞台としながら現代的なネットスラングが登場することへの違和感や、スラングそのものに嫌悪感を抱く層にとっては、没入感を削ぐ要因になり得る。

問題点

  • 他のアドベンチャーゲームと比較して選択肢は1ルートにつき5~6個と非常に少なく、一本道に近い構造となっている。
    • バッドエンドの多くは「選択ミスによる即死」であり、ダッシュルートに至っては完全に選択肢のない一本道である。
  • 視覚情報の極端な不足
    • 立ち絵が用意されているのは、説明書に掲載されているタロット(大アルカナ)の番号が振られた主要キャラと、敵の無名戦闘員のみに限定されている。
      • 脇役はもとより、音声設定のある登場人物であっても立ち絵が存在しないケースが非常に多い。
    • 『infinityシリーズ』のように登場人物が絞られた作品とは異なり、本作は多数のキャラクターが物語に深く関与する。しかし、主人公の家族やクラスメイト、さらには物語の核心に位置する超重要キャラにすら立ち絵が割り当てられていない。
      • このため、重要な会話シーンであっても誰もいない背景を背に音声だけが流れるという、極めて不自然な状況が頻発する。
      • 敵の戦闘員の立ち絵についても、特定キャラの造形をスキンヘッドにしたような使い回しであり、同一画面に複数が表示される際の違和感は拭えない。
      • イベントCGには描かれているにもかかわらず、通常の会話シーンでは姿が表示されないという乖離も目立つ。
      • 監督自身も「圧倒的に立ち絵が不足していた」と認めており、制作過程でシナリオが肥大化し脇役の重要性が増したものの、予算の都合で絵を追加できなかったという経緯が語られている。
    • 人物以外でも、重要アイテムや食事、就寝中のキャラクターといった状況描写のイラストも欠落しており、プレイヤーの想像力に依存する場面が多い。
    • キャラクターデザインを担当した志緒野博(SOYOSOYO)による造形は独特であり、髪の上に目が描かれる手法など、絵柄の好みは分かれやすい。
  • 描写のテンポと冗長性
    • 雑魚敵の断末魔が頻繁に挿入されたり、同一のムービーが繰り返されたりと、演出面でテンポを削ぐ箇所が見受けられる。
    • 難解なSF理論の解説や、意図が不明瞭な回想シーンが頻発し、冗長さを感じさせる場面が多い。特に無限ループに陥るシークエンスが二度繰り返されるなど、構成上の課題も指摘されている。
      • ただし、スキップ機能が充実しているため、繰り返しプレイにおけるストレスはある程度軽減されている。
  • 境界の混濁による難解なシナリオ
    • 現実世界とネットゲーム「バビロン」の仮想空間、さらには時間や空間の概念が入り乱れる構成のため、全体像の把握が非常に困難である。
      • キャラクターたちの行動原理や目的に理解が追いつかない場面が多く、立ち絵の少なさも相まって視覚的な補完が効かないことが理解を妨げる一因となっている。
    • 作中に「解説役」や「聞き役」となるキャラクターが乏しく、世界観を所与のものとして動く人物ばかりであるため、プレイヤーが置いてけぼりにされる感覚を覚えやすい。
    • 特にC・Dルートは時系列が曖昧かつ断片的であり、情報の整理は困難を極める。
+ ネタバレ注意
    • 物語が進むにつれてSF・ファンタジー色が強まり、現実と仮想世界の境界が完全に消失していく。
    • ログオフ中に自動行動するAI「シャドウヌル」が生命を得て自律行動を開始するC・Dルートでは、現実の人間との判別がさらにつかなくなる。
    • 量子論や多世界解釈といった概念の導入により、仮想世界の出来事が現実に侵食・融合していく展開が加速する。
    • 最終盤、昏睡状態の夢月を目覚めさせるために、日向たちが「夢の中の夢」へと幾重にも潜り込んでいく無限ループの描写がある。意図的な混乱を狙った演出ではあるが、物語の必然性を超えてプレイヤーを困惑させる結果となっている。
    • 一方で、A・Bルートに関しては比較的骨組みがしっかりしており、理解不能に陥ることは少ない。

  • 結末の納得感
+ ネタバレ注意
    • 諸悪の根源とされる巨大企業「エクサーク社」の悪行が主に台詞のみで語られるため、敵役としての実感が薄い。むしろテロ組織や直接的な元凶の方が悪辣に描かれているため、スケープゴート的な印象を与える。また、同社の壊滅描写もあっさりとしており、カタルシスに欠ける。
    • 終盤で世界観を広げすぎたために、収拾がつかなくなっているとの批判もある。
    • 多層世界説の採用により、トゥルーエンド後も正史がA'とB'に分岐する。一見ハッピーエンドに見えるA'も、B'をプレイすると見え方が変わる二重構造となっている。
    • 最良の結末を目指すE'ルートではメタ的な視点まで導入され、さらに難解さが増す。
      • エピローグも多くがプレイヤーの解釈に委ねられており、投げっぱなしではないにせよ、後味の爽快感は得られにくい。
  • 科学的・論理的な矛盾
    • 「100匹目の猿」理論や「レミングの集団自殺」といった、現在では否定されている説が作中で事実として扱われている。
      • 物理が得意な日向や科学者がこれらを否定せずに肯定する展開には違和感が残る。フィクションとしての設定であれば、その旨をTIPS等で補足すべきであったという意見も多い。
  • 過剰な情報量とテーマの散逸
    • メインとなるSFやIT、量子力学のほか、神話、宗教、哲学、心理学、遺伝学など、盛り込まれたテーマが多岐にわたる。
      • 物語の重厚さに寄与している反面、各要素の絡み合いがまちまちで、内容と乖離している印象を受ける箇所もある。
      • 実力派の脚本陣がそれぞれの専門性を発揮した結果、全体の整合性を取るのが困難になった側面がある。
  • キャラクター描写と感情移入の困難さ
    • 登場人物の日常的な描写が乏しく、物語を進行させるための記号的な役割が強いため、感情移入がしにくいという指摘がある。
    • 多くのキャラクターが日常的にハンドルネームを使用しており、現実の本名と混同しやすく、人物関係の把握を困難にしている。
    • これらについても、前述の立ち絵不足が視覚的な個性を奪っている影響が大きい。
  • 理解に苦しむキャラクター設定
+ 例えば…
    • 葵 日向
      • 内向的かつ優柔不断な描写が多く、主人公としての好感を得にくい。行動理念の描写不足も重なり、成長の兆しを見せるまではフラストレーションが溜まりやすい。ダッシュルートにおいて、再び消極的な性格に逆戻りしてしまう場面も散見される。
    • アンドラス
      • Bルートではストーキングや強姦疑惑さえある卑屈な小悪党として描かれるが、他ルートでは一転して妹思いの側面や主人公への協力姿勢が描かれる。悪辣な面が強いキャラクターでありながら、一部で肯定的に扱われる描写に対し、首をかしげるユーザーも少なくない。
    • エンリル
      • テロ組織のリーダーとして、主要キャラの殺害やその家族への加害、日向への重傷など非道な行為を繰り返す。
      • それほどの悪行を重ねながら、終盤にはあっさりと和解に至る展開は非常に強引である。Heに倒されるという報いを受けるが、その事実も改変を経て最終的には復活を遂げる。
      • 自身の信念があるとはいえ、未曾有の大惨事を引き起こしたことへの法的な咎めや贖罪の描写が乏しく、ダッシュルートでは当然のように味方として振る舞う点に不満の声も多い。
      • 日向が捜索していた夢月の恋人という立場でもあり、日向の視点で見ると「妹を奪った悪党」という印象が拭えない。
    • 葵 夢月
      • 物語における救出対象だが、ストーリーが進むにつれて今回の事件を引き起こした元凶の一人であることが判明する。
      • 事件の引き金となった行動は本人の意志によるものであり、本編中では回想シーンを除いて好感を持てる描写が少ない。そのため、プレイヤーが彼女を救うための動機を維持しにくいという問題がある。
      • ダッシュルートでは出番が増え、人間味のある描写も追加されるが、自身の不始末を棚に上げて兄を批判するような場面もあり、素直な好感を得るには至っていない。
    • 本編における敵役の扱い
      • 事件の黒幕といえる存在に対し、明確な制裁が加えられないまま本編が終了する。
      • その後のA'ルートでは、あたかも味方のような扱いで登場する。甚大な被害を出した張本人を不問に付し、すべての罪をエクサーク社に転嫁するような展開は、プレイヤーに釈然としない感情を抱かせかねない。
      • ただし、B'ルートにおいては生存を許されず消滅させられるという末路を辿る。
    • 総じて、悪役が適切な報いを受けなかったり、一般的な倫理観では理解しがたい行動原理を持つキャラが少なくない。原案の田中ロミオ特有の哲学が色濃く反映されており、非常に人を選ぶ作風となっている。

総評

  • 著名な実力派スタッフの集結により、独創的な設定、濃厚な世界観、緻密な伏線回収を誇るシナリオ主導のアドベンチャー作品となっている。
  • 一方で、プレイヤーを置き去りにする難解なプロットや、癖の強いキャラクター造形、展開の強引さなど、評価が分かれる要素も多い。
  • 登場人物の多さに対して極端に立ち絵が少ないという制作上の不備が、作品理解や没入感への大きな弊害となっている点は否定できない。
  • クリエイター陣の知名度に反して知名度が低いマイナー作品に留まっており、他機種への移植もWindows版を除いて行われていない。一般向けの調整がなされていれば名作となり得た惜しい作品だが、ミステリアスかつ難解なアドベンチャーを求める層にとっては、独自の魅力を持つ一作と言える。

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最終更新:2026年05月09日 12:36