序章 ~狂宴~ - (2008/07/19 (土) 03:09:57) の1つ前との変更点
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序章 ~狂宴~ ◆X7hJKGoxpY氏
目覚めたカイジがそれを現実と認識するまで、少しの時間がかかった。
(なんだよっ……ここっ……)
見覚えのない空間。――ホテルの一室であろうか。
内装の品の良さから、かなりの高級ホテルであることが窺える。
カイジには到底縁のないような施設であり、無論、昨晩こんなホテルに泊まった記憶は無い。
カイジはベッドから身を起こし、何者かの手により綺麗に並べられた靴を履いた。
(ここ……どこだ…………何故オレはこんなところにいる……?)
カーテンをそっと開ける。
窓の外には目映いばかりの海が広がっていた。
美しい、心洗われるまさに絶景と呼ぶべき風景である。
だが、カイジは感動するでも驚嘆するでも無く、逆にある種の恐怖と絶望を感じるのみであった。
(……海だとっ………まさか……孤島っ…………?)
孤島であるとすれば、この地から容易に抜け出すことは出来ない。
つまり、ここは日常と完全に隔離された牢獄であるということ。
何者かによる監禁が行われている、と見て間違いないだろう。
もちろん確証があるわけではないが、カイジにはある予感があった。
――カイジはこれだけのことをしかねない男を知っている。
(……とにかく逃げねえと………ここからっ…………)
カイジはドアの前へと移動する。
だが、ドアは外から鍵がかけられているらしく、いくらノブを動かしても開かない。
(ぐっ……やっぱりダメっ……)
当然予想していたことではある。
しかし、まずこの部屋から抜け出せなければ、脱走を企てることがまず不可能。
カイジはハァ、とため息をつき、ベッドに腰をおろした。
(……覚悟するしか無いってことかよ………一体オレに……何をやらせるつもりなんだ………)
カイジが目を覚まして三十分も過ぎた頃、突然部屋の扉が音を立てて開いた。
「失礼致します。……お早う御座います、伊藤開示様」
「なっ……!」
カイジは声の主の方へ振り向く。
その声を発したのは黒い服を着て、サングラスをかけた一人の男。
カイジのよく知っている風体である。
「間もなく開催の時間です。案内いたしますので…」
「待てっ!何が開催だっ………その前に聞かせろよっ……それが先………!答えろっ……!
オレをこんなところに連れてきた……その理由………!」
カイジは黒服に飛び掛かり、胸倉を掴みながら彼に詰問した。
しかし、黒服は表情を一切変えずギロリとカイジを睨みつける。
カイジが手を放したところで、黒服はようやく淡々と答えた。
「……貴方は選ばれたのです。この度のギャンブルの参加者として」
「……ギャンブル………?何をしようっていうんだっ………?それに……何故オレが………」
カイジは再び質問するも、黒服は今度は横に首を振る。
「………申し訳ありませんが、これ以上の質問には答えかねます。時間が押していますのでこちらへ……」
黒服は話を強引に打ち切ると、カイジに目隠しをし、腕を引っ張って歩きだした。
「到着致しました」
黒服はそう言ってカイジの腕を放し、目隠しを外す。
「こちらが主催者による挨拶とルール説明が行われる会場になります」
「…………」
いやに立派な扉である。
カイジは黒服をちらりと見て、扉を開いた。
中はそれなりの大きさの広間となっていて、既に何人かがこの中で待っていた。
(……やっぱり………オレ一人じゃないのか)
カイジはひとまず、上等な絨毯の敷かれた床に座り込む。
事ここに至れば、もはや覚悟を決めて待つより無いだろう。
(……まあいいさ………なんでもやってやる…………オレは……)
カイジが待つ間も、続々と人数は増えていった。
中には見知ったものもいた。
だが、カイジはどんな状況かも知れぬこの場で話しかける気にもなれず、ただ黙って待ち続ける。
数分後、広間内に突如としてマイク越しの声が響いた。
「皆様、お待たせいたしました。只今より、開会の挨拶を執り行います」
その言葉の直後、高級そうなスーツに身を包んだ一人の男と、機関銃を持った二人の黒服がステージに現れた。
とたんに、ピタリとざわめきがやむ。
その一方でカイジは、男を見てある予感が確信に変わった。
(……あの男……やはり…………)
「皆様……私が進行役を務めさせていただく黒崎です………宜しくお願い致します」
男はゆっくりと語りだす。
「さて……さっそくですが、ギャンブルの説明の前にひとつ………まず皆様にはこちらを装着していただきます……」
そういうと黒崎は、輪っかのようなものを取り出した。
「こちらは……我々特製の首輪となっております。係の者が皆様につけて回りますが………
精密機械であり、大変危険ですので、これには決して触れぬようお願い致します」
その言葉が終ると同時に、数人の黒服たちが会場内の人間に首輪を取り付けてゆく。
銃に警戒しているのか、それとも単に恐怖しているのか、逆らうものは一人もいない。
無論カイジも逆らわずに首輪の装着を受け入れる。
首筋に金属のひんやりとした冷たさが感じられた。
全員が首輪をつけ終えたところで、再び黒崎は話し出す。
「では、ギャンブルについての説明をさせていただきましょう………今回のギャンブル……。
まずはじめに………皆様の許可も得ずにこちらへお連れしたことをお詫びとして…………
皆様には千万円ずつ贈呈させていただきます………無論……無償で…………」
(無償……?そんな訳あるかっ………そんなはず無いっ………)
黒崎の言葉にカイジは内心毒づく。
他の者も多くはカイジと同じ考えなのだろう、怪訝な顔で黒崎を見つめていた。
「それに加えて、この中でただ一人………勝者には十億円の賞金を贈呈させていただきます……!
普通に生きていては一生手にすることのできないであろう金額っ………!」
十億。
千万円とは文字通り桁違いの数字である。
あまりに突飛な額に、周囲はざわめきだした。
カイジも、あり得ないと思いながらも、今度は胸の鼓動が高まるのは抑えられない。
「では、このギャンブル……バトルロワイアルの説明をさせていただきます。
……ルールは至って明快かつシンプル………」
そこまで言うと、黒崎は一度言葉を止め、クククと笑った。
「……皆様には………殺し合いをしていただきます…………」
会場内が、シン、と静まり返る。
カイジは呆然とした。
(………殺し合い……だと…………そんなバカなことが……)
「ふざけるなっ!!」
カイジの隣に座っていた男が急に立ち上がり、声を張り上げた。
カイジは我にかえり、男の暴走を止める。
「よせっ!バカっ!」
しかし男は興奮し、カイジの静止も聞かずに言葉を続けた。
「誘拐まがいのことをして殺し合えだとっ!ふざけるなっ!無法っ!無法だろっ!これっ!」
「……今はルールを説明しております………黙っていただきたい…………」
「関係ねえっ!ルールを聞いたって……どっちみちやらねえんだからっ………!
オレはやらねえぞっ!こんな無法っ………!」
男は言い終えると、肩で息をしながら返事を待った。
黒崎は黒服に何かを合図し、リモコンのようなものを受け取って、笑みを浮かべる。
「確か……山口君………だったね……」
「あ……ああっ!そうだよっ!それがどうしたっ………!」
「本来ならばこのギャンブルに選ばれた者には参加する義務がある…………あるのだが…………
山口君………君の発現……君の勇気に免じて、君の参加は取り消そう………特例として…………」
「………え?」
黒崎は手に持ったリモコンを山口に向けスイッチを押す。
ピピピピピピ、という電子音、そして直後、小さくも鋭い爆発音が聞こえ、カイジの顔には血が降りかかった。
「さて……」
何事も無かったかのように黒崎は話し出す。
「ちょっとしたトラブルがございましたが、ルール説明を続けさせていただきます。
先程ご覧になられたように、皆様の首輪………首を飛ばす程度の威力の爆弾となっております。
これは強引に外そうとすること、及び禁止エリアに入ることで爆発致します。
禁止エリアに関しましては、定時放送で禁止となる時刻、場所を指定いたしますので、
入ってしまわぬようお気を付けください。尚、【D-1】エリアに関しましては、
最初から禁止エリアに指定されております。後ほどお渡し致します地図でご確認ください……。
続いて、お渡しする支給品ですが、食料、水、千万円相当のチップ、地図、これらは皆様共通です。
また、それとは別に、ランダムで道具を支給致します………良い武器が当たることをお祈りください。
次に、ギャンブルルーム……これは、島内に点在しておりまして、三十分百万円から入室が可能です。
このギャンブルルーム内での一切の暴力行為は禁止、ギャンブルに用いる道具は麻雀牌から、
トランプまで数多く揃えております。ギャンブルで賭けるものは、金、武器、命等なんでも結構………
ただし過程はどうであれ結果には必ず従っていただきます。
万が一、これらの禁則事項を破られたときは、首輪が爆発致しますのでご注意ください。
最後に…………当然皆様には最後に生き残ること………優勝者を目指していただきたいのですが、
例外として途中で生きたまま棄権する権利もございます。
棄権を望まれる方は当ホテル地下で、一億円にて権利をご購入いただけます……。
………ルールは以上となります」
雰囲気にのまれたのか、黒崎が言葉を終えてからも、一言も発する者はいなかった。
カイジは床に拳を叩きつける。
(………なんであいつら……あんなことして………平然と……くそっ…………!)
黒崎の言葉に耳を傾けながらも、カイジは涙が止まらなかった。
どことも知れぬようなこの地で、己の目の前で哀れにも首を飛ばされ死んでいった山口という男。
この男の仇は必ず取らねばならぬ、そう思った。
(許せねえっ………あいつらっ…………!)
「では、呼ばれた方から前へ……係員の誘導に従ってください。最初に、赤木しげる様…」
いやに周りの声が遠く聞こえる。
頬にかかった乾きかけた血が、妙に温かかった。
&color(red){【山口 死亡】}
&color(red){【残り 45人】}
|-|CENTER:[[投下順>本編投下順]]|001:[[本質]]|
|-|CENTER:[[時系列順>本編時間順]]|006:[[「I」の悲劇]]|
|初登場|CENTER:伊藤開示|006:[[「I」の悲劇]]|
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序章 ~狂宴~ ◆X7hJKGoxpY氏
目覚めたカイジがそれを現実と認識するまで、少しの時間がかかった。
(なんだよっ……ここっ……)
見覚えのない空間。――ホテルの一室であろうか。
内装の品の良さから、かなりの高級ホテルであることが窺える。
カイジには到底縁のないような施設であり、無論、昨晩こんなホテルに泊まった記憶は無い。
カイジはベッドから身を起こし、何者かの手により綺麗に並べられた靴を履いた。
(ここ……どこだ…………何故オレはこんなところにいる……?)
カーテンをそっと開ける。
窓の外には目映いばかりの海が広がっていた。
美しい、心洗われるまさに絶景と呼ぶべき風景である。
だが、カイジは感動するでも驚嘆するでも無く、逆にある種の恐怖と絶望を感じるのみであった。
(……海だとっ………まさか……孤島っ…………?)
孤島であるとすれば、この地から容易に抜け出すことは出来ない。
つまり、ここは日常と完全に隔離された牢獄であるということ。
何者かによる監禁が行われている、と見て間違いないだろう。
もちろん確証があるわけではないが、カイジにはある予感があった。
――カイジはこれだけのことをしかねない男を知っている。
(……とにかく逃げねえと………ここからっ…………)
カイジはドアの前へと移動する。
だが、ドアは外から鍵がかけられているらしく、いくらノブを動かしても開かない。
(ぐっ……やっぱりダメっ……)
当然予想していたことではある。
しかし、まずこの部屋から抜け出せなければ、脱走を企てることがまず不可能。
カイジはハァ、とため息をつき、ベッドに腰をおろした。
(……覚悟するしか無いってことかよ………一体オレに……何をやらせるつもりなんだ………)
カイジが目を覚まして三十分も過ぎた頃、突然部屋の扉が音を立てて開いた。
「失礼致します。……お早う御座います、伊藤開示様」
「なっ……!」
カイジは声の主の方へ振り向く。
その声を発したのは黒い服を着て、サングラスをかけた一人の男。
カイジのよく知っている風体である。
「間もなく開催の時間です。案内いたしますので…」
「待てっ!何が開催だっ………その前に聞かせろよっ……それが先………!答えろっ……!
オレをこんなところに連れてきた……その理由………!」
カイジは黒服に飛び掛かり、胸倉を掴みながら彼に詰問した。
しかし、黒服は表情を一切変えずギロリとカイジを睨みつける。
カイジが手を放したところで、黒服はようやく淡々と答えた。
「……貴方は選ばれたのです。この度のギャンブルの参加者として」
「……ギャンブル………?何をしようっていうんだっ………?それに……何故オレが………」
カイジは再び質問するも、黒服は今度は横に首を振る。
「………申し訳ありませんが、これ以上の質問には答えかねます。時間が押していますのでこちらへ……」
黒服は話を強引に打ち切ると、カイジに目隠しをし、腕を引っ張って歩きだした。
「到着致しました」
黒服はそう言ってカイジの腕を放し、目隠しを外す。
「こちらが主催者による挨拶とルール説明が行われる会場になります」
「…………」
いやに立派な扉である。
カイジは黒服をちらりと見て、扉を開いた。
中はそれなりの大きさの広間となっていて、既に何人かがこの中で待っていた。
(……やっぱり………オレ一人じゃないのか)
カイジはひとまず、上等な絨毯の敷かれた床に座り込む。
事ここに至れば、もはや覚悟を決めて待つより無いだろう。
(……まあいいさ………なんでもやってやる…………オレは……)
カイジが待つ間も、続々と人数は増えていった。
中には見知ったものもいた。
だが、カイジはどんな状況かも知れぬこの場で話しかける気にもなれず、ただ黙って待ち続ける。
数分後、広間内に突如としてマイク越しの声が響いた。
「皆様、お待たせいたしました。只今より、開会の挨拶を執り行います」
その言葉の直後、高級そうなスーツに身を包んだ一人の男と、機関銃を持った二人の黒服がステージに現れた。
とたんに、ピタリとざわめきがやむ。
その一方でカイジは、男を見てある予感が確信に変わった。
(……あの男……やはり…………)
「皆様……私が進行役を務めさせていただく黒崎です………宜しくお願い致します」
男はゆっくりと語りだす。
「さて……さっそくですが、ギャンブルの説明の前にひとつ………まず皆様にはこちらを装着していただきます……」
そういうと黒崎は、輪っかのようなものを取り出した。
「こちらは……我々特製の首輪となっております。係の者が皆様につけて回りますが………
精密機械であり、大変危険ですので、これには決して触れぬようお願い致します」
その言葉が終ると同時に、数人の黒服たちが会場内の人間に首輪を取り付けてゆく。
銃に警戒しているのか、それとも単に恐怖しているのか、逆らうものは一人もいない。
無論カイジも逆らわずに首輪の装着を受け入れる。
首筋に金属のひんやりとした冷たさが感じられた。
全員が首輪をつけ終えたところで、再び黒崎は話し出す。
「では、ギャンブルについての説明をさせていただきましょう………今回のギャンブル……。
まずはじめに………皆様の許可も得ずにこちらへお連れしたことをお詫びとして…………
皆様には千万円ずつ贈呈させていただきます………無論……無償で…………」
(無償……?そんな訳あるかっ………そんなはず無いっ………)
黒崎の言葉にカイジは内心毒づく。
他の者も多くはカイジと同じ考えなのだろう、怪訝な顔で黒崎を見つめていた。
「それに加えて、この中でただ一人………勝者には十億円の賞金を贈呈させていただきます……!
普通に生きていては一生手にすることのできないであろう金額っ………!」
十億。
千万円とは文字通り桁違いの数字である。
あまりに突飛な額に、周囲はざわめきだした。
カイジも、あり得ないと思いながらも、今度は胸の鼓動が高まるのは抑えられない。
「では、このギャンブル……バトルロワイアルの説明をさせていただきます。
……ルールは至って明快かつシンプル………」
そこまで言うと、黒崎は一度言葉を止め、クククと笑った。
「……皆様には………殺し合いをしていただきます…………」
会場内が、シン、と静まり返る。
カイジは呆然とした。
(………殺し合い……だと…………そんなバカなことが……)
「ふざけるなっ!!」
カイジの隣に座っていた男が急に立ち上がり、声を張り上げた。
カイジは我にかえり、男の暴走を止める。
「よせっ!バカっ!」
しかし男は興奮し、カイジの静止も聞かずに言葉を続けた。
「誘拐まがいのことをして殺し合えだとっ!ふざけるなっ!無法っ!無法だろっ!これっ!」
「……今はルールを説明しております………黙っていただきたい…………」
「関係ねえっ!ルールを聞いたって……どっちみちやらねえんだからっ………!
オレはやらねえぞっ!こんな無法っ………!」
男は言い終えると、肩で息をしながら返事を待った。
黒崎は黒服に何かを合図し、リモコンのようなものを受け取って、笑みを浮かべる。
「確か……山口君………だったね……」
「あ……ああっ!そうだよっ!それがどうしたっ………!」
「本来ならばこのギャンブルに選ばれた者には参加する義務がある…………あるのだが…………
山口君………君の発現……君の勇気に免じて、君の参加は取り消そう………特例として…………」
「………え?」
黒崎は手に持ったリモコンを山口に向けスイッチを押す。
ピピピピピピ、という電子音、そして直後、小さくも鋭い爆発音が聞こえ、カイジの顔には血が降りかかった。
「さて……」
何事も無かったかのように黒崎は話し出す。
「ちょっとしたトラブルがございましたが、ルール説明を続けさせていただきます。
先程ご覧になられたように、皆様の首輪………首を飛ばす程度の威力の爆弾となっております。
これは強引に外そうとすること、及び禁止エリアに入ることで爆発致します。
禁止エリアに関しましては、定時放送で禁止となる時刻、場所を指定いたしますので、
入ってしまわぬようお気を付けください。尚、【D-1】エリアに関しましては、
最初から禁止エリアに指定されております。後ほどお渡し致します地図でご確認ください……。
続いて、お渡しする支給品ですが、食料、水、千万円相当のチップ、地図、これらは皆様共通です。
また、それとは別に、ランダムで道具を支給致します………良い武器が当たることをお祈りください。
次に、ギャンブルルーム……これは、島内に点在しておりまして、三十分百万円から入室が可能です。
このギャンブルルーム内での一切の暴力行為は禁止、ギャンブルに用いる道具は麻雀牌から、
トランプまで数多く揃えております。ギャンブルで賭けるものは、金、武器、命等なんでも結構………
ただし過程はどうであれ結果には必ず従っていただきます。
万が一、これらの禁則事項を破られたときは、首輪が爆発致しますのでご注意ください。
最後に…………当然皆様には最後に生き残ること………優勝者を目指していただきたいのですが、
例外として途中で生きたまま棄権する権利もございます。
棄権を望まれる方は当ホテル地下で、一億円にて権利をご購入いただけます……。
………ルールは以上となります」
雰囲気にのまれたのか、黒崎が言葉を終えてからも、一言も発する者はいなかった。
カイジは床に拳を叩きつける。
(………なんであいつら……あんなことして………平然と……くそっ…………!)
黒崎の言葉に耳を傾けながらも、カイジは涙が止まらなかった。
どことも知れぬようなこの地で、己の目の前で哀れにも首を飛ばされ死んでいった山口という男。
この男の仇は必ず取らねばならぬ、そう思った。
(許せねえっ………あいつらっ…………!)
「では、呼ばれた方から前へ……係員の誘導に従ってください。最初に、赤木しげる様…」
いやに周りの声が遠く聞こえる。
頬にかかった乾きかけた血が、妙に温かかった。
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|-|CENTER:[[時系列順>本編時間順]]|006:[[「I」の悲劇]]|
|初登場|CENTER:伊藤開司|006:[[「I」の悲劇]]|
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