武器 - (2008/08/29 (金) 03:27:19) の最新版との変更点
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武器 ◆X7hJKGoxpY氏
鷲巣は焦っていた。
(グゥ……不味い、急がねば……)
このままではギャンブルルームに入ったあの二人に見つかるだろう。
当然連中に肉体的に不利な要因があるとは考えられないこと。
対して鷲巣は脚が動かないという決して良くない状況。
このままでは彼は連中の獲物――それだけは避けたかった。
王とは狩られる立場の人間では無い。
狩る立場の人間である。
(チッ………仕方ない)
鷲巣は這って茂みへと移動する。
殺した男の支給品は回収しておきたかったが、やむを得まい。
どのみち殺傷力に欠けるゴム弾である。
大した武器では無いのだ。
何者かに取られたとしてもさほど問題はないだろう。
(まあここは見つからないだけで十分………ワシの運があれば後でいくらでも挽回できよう)
* * *
「クク………死んでる……ククク……」
有賀は死体へと近づく。
目的は死体が手に持った武器。
いかに彼が無差別に殺しを楽しむ殺人鬼であるといっても、死体自体にはさほどの興味がなかった。
彼が好きなことはあくまで自らの手で誰かを傷つけ、殺すという行為。
目の前の死体は他人の手によって殺されて、その結果残ったものだ。
そのようなものは、無論どうでもいい存在である。
それよりも死体の持つ武器こそが彼の探し求めていたものだった。
優れた武器こそが何よりも欲しかった。
このグレネードランチャーはその条件を十分に満たすものである。
有賀はグレネードランチャーを手に取った。
つい最近発射された形跡がある――この死体が撃ったものであろう。
続いて転がっていた支給品のバッグを開ける。
他にはどれだけの武器があるのか、有賀にはその期待がある。
しかし、中身を見て彼は微かに落胆した。
入っていた武器はゴム弾が残り九発だけ。
(ククク……ハズレ………ただの玩具………)
容易に相手を殺せる武器では無い。
有賀は興を失った。
一人や二人殺すのならこれとナイフで十分だろう。
しかし、ここではもっとたくさんの人間を殺せるのである。
もっといい武器が欲しい。
有賀は一応弾を詰め支給品を回収すると、死体に顔を近づけ血を舐めた。
まだ温かく、血も乾いていない。
死んで間もなくといったところである。
だとすれば、この死体を作った者はまだ近くにいるのではないか。
(この子を穴だらけにした武器……欲しい………!)
有賀はざっと辺りを見回す。
ちょうど何かを引きずったか、或いは這ったかのような茂みに続く跡が見つかった。
置いて行かれた支給品、撃たれた形跡のあるグレネードランチャー、怪しい痕跡。
これだけ材料があれば何が起こったかは容易に想像がつく。
「ククク……キキ………」
有賀は笑いながらその場を離れた。
* * *
「チッ……来んのか………面白くもない………」
鷲巣はぶつくさと一人言を言った。
彼は罠として、敢えて這った跡を残していたのだ。
相手が跡に興味を示せば、鷲巣の目の前まで自らやって来る。
鷲巣は座ったまま標的に向かって引き金を引くだけで良い。
この脚で自ら攻め入るのは困難だが、待ち伏せなら問題なく殺せるだろう。
万が一相手が感づいて先に銃で撃ってきたとしても、防弾チョッキに防弾メットもあるのだ。
自分の身は余程安全である。
そこまで計算していたのだが、肝心の相手が気付かなければ意味はなかった。
(ククク……まあいい………来んなら来んでゆっくり回復できる……)
もともと行動出来ないからこそ潜伏したのだ。
殺して回るのは動けるようになってからでも遅くはない。
――そう思った矢先の出来事だった。
「クク……ククク………やっぱりいたんだ」
後ろから声をかけられハッと振り返る鷲巣。
そこにはグレネードランチャーをこちらに向けた男が立っていた。
「ぐっ………!」
慌てて鷲巣は銃を構えた。
しかし、引き金を引くより一瞬早く右腕にゴム弾を撃ち込まれる。
「グガッ……!」
右腕に激痛が走った。
右腕の骨にひびでも入ったのだろう。
その痛みで鷲巣はウージーを落とした。
「ククッ……カカカッ……!危ない危ない……回り込んできて良かったよ………!
真正面から撃たれちゃあたまらない……!」
男は喋りながら落としたウージーを拾う。
「こういうのを探してたんだ……!
……これは貰うね………僕は殺す、君は殺される……ククク………僕が持った方がいいでしょ」
「やめっ…!」
男は、無論鷲巣の制止を聞かずに銃をこちらに向けて撃ち始める。
痛みを感じる間もない。
鷲巣の目の前は、そのまま真っ暗になった。
「うっ……ワシは………?」
鷲巣が目覚めたとき、あの男はもういなくなっていた。
銃も防弾メットもバッグも無い。
防弾チョッキが残っているのは不幸中の幸いであろう。
彼が殺されずに済んだのは三つの幸運によるものだった。
まず一つ。
防弾ヘルメットをしていたため防弾チョッキを着ている胴体を狙われたこと。
無論防弾チョッキを着ているといっても衝撃は大きい。
その衝撃で今度はあばらにもひびが入り、そのまま気絶した。
これが二つ目の幸運である。
そして最後に、あの男がいい武器を手に入れた興奮のあまり生死の確認を忘れていたこと。
防弾チョッキ、気絶、確認忘れ――いずれが欠けても鷲巣は死んでいただろう。
こうして生き延びたことに、鷲巣は天の意思を感じずにはいられなかった。
あの男は必ず自らの手で息の根を止める。
幸運は再び巡ってくるはず。
鷲巣は気持ちを衰えさせることなく、状況を好転させる策を練り始めた。
【E-3/道路沿い/午後】
【有賀研二】
[状態]:健康
[道具]:果物ナイフ 不明支給品0~5(確認済み) グレネードランチャー ゴム弾×8
, サブマシンガンウージー 防弾ヘルメット 支給品一式×5
[所持金]:4000万円
[思考]:人を殺したい
【E-3/ギャンブルルーム付近・茂み/午後】
【鷲巣巌】
[状態]:ひざ裏にゴム弾による打撲 一時的に動けない 右腕にひび 肋骨にひび
[道具]:防弾チョッキ 支給品一式
[所持金]:0円
[思考]:この状況を打開する策を練る 有賀を自らの手で殺す
|023:[[情報]]|COLOR(#FFFFFF):BGCOLOR(#a9a9a9):CENTER:[[投下順>本編投下順]]|025:[[3人目のアカギ]]|
|023:[[情報]]|COLOR(#FFFFFF):BGCOLOR(#a9a9a9):CENTER:[[時系列順>本編時間順]]|025:[[3人目のアカギ]]|
|006:[[「I」の悲劇]]|COLOR(#FFFFFF):BGCOLOR(#a9a9a9):CENTER:有賀研二|-|
|014:[[装備]]|COLOR(#FFFFFF):BGCOLOR(#a9a9a9):CENTER:鷲巣巌|029:[[布石]]|
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**武器 ◆X7hJKGoxpY氏
鷲巣は焦っていた。
(グゥ……不味い、急がねば……)
このままではギャンブルルームに入ったあの二人に見つかるだろう。
当然連中に肉体的に不利な要因があるとは考えられないこと。
対して鷲巣は脚が動かないという決して良くない状況。
このままでは彼は連中の獲物――それだけは避けたかった。
王とは狩られる立場の人間では無い。
狩る立場の人間である。
(チッ………仕方ない)
鷲巣は這って茂みへと移動する。
殺した男の支給品は回収しておきたかったが、やむを得まい。
どのみち殺傷力に欠けるゴム弾である。
大した武器では無いのだ。
何者かに取られたとしてもさほど問題はないだろう。
(まあここは見つからないだけで十分………ワシの運があれば後でいくらでも挽回できよう)
* * *
「クク………死んでる……ククク……」
有賀は死体へと近づく。
目的は死体が手に持った武器。
いかに彼が無差別に殺しを楽しむ殺人鬼であるといっても、死体自体にはさほどの興味がなかった。
彼が好きなことはあくまで自らの手で誰かを傷つけ、殺すという行為。
目の前の死体は他人の手によって殺されて、その結果残ったものだ。
そのようなものは、無論どうでもいい存在である。
それよりも死体の持つ武器こそが彼の探し求めていたものだった。
優れた武器こそが何よりも欲しかった。
このグレネードランチャーはその条件を十分に満たすものである。
有賀はグレネードランチャーを手に取った。
つい最近発射された形跡がある――この死体が撃ったものであろう。
続いて転がっていた支給品のバッグを開ける。
他にはどれだけの武器があるのか、有賀にはその期待がある。
しかし、中身を見て彼は微かに落胆した。
入っていた武器はゴム弾が残り九発だけ。
(ククク……ハズレ………ただの玩具………)
容易に相手を殺せる武器では無い。
有賀は興を失った。
一人や二人殺すのならこれとナイフで十分だろう。
しかし、ここではもっとたくさんの人間を殺せるのである。
もっといい武器が欲しい。
有賀は一応弾を詰め支給品を回収すると、死体に顔を近づけ血を舐めた。
まだ温かく、血も乾いていない。
死んで間もなくといったところである。
だとすれば、この死体を作った者はまだ近くにいるのではないか。
(この子を穴だらけにした武器……欲しい………!)
有賀はざっと辺りを見回す。
ちょうど何かを引きずったか、或いは這ったかのような茂みに続く跡が見つかった。
置いて行かれた支給品、撃たれた形跡のあるグレネードランチャー、怪しい痕跡。
これだけ材料があれば何が起こったかは容易に想像がつく。
「ククク……キキ………」
有賀は笑いながらその場を離れた。
* * *
「チッ……来んのか………面白くもない………」
鷲巣はぶつくさと一人言を言った。
彼は罠として、敢えて這った跡を残していたのだ。
相手が跡に興味を示せば、鷲巣の目の前まで自らやって来る。
鷲巣は座ったまま標的に向かって引き金を引くだけで良い。
この脚で自ら攻め入るのは困難だが、待ち伏せなら問題なく殺せるだろう。
万が一相手が感づいて先に銃で撃ってきたとしても、防弾チョッキに防弾メットもあるのだ。
自分の身は余程安全である。
そこまで計算していたのだが、肝心の相手が気付かなければ意味はなかった。
(ククク……まあいい………来んなら来んでゆっくり回復できる……)
もともと行動出来ないからこそ潜伏したのだ。
殺して回るのは動けるようになってからでも遅くはない。
――そう思った矢先の出来事だった。
「クク……ククク………やっぱりいたんだ」
後ろから声をかけられハッと振り返る鷲巣。
そこにはグレネードランチャーをこちらに向けた男が立っていた。
「ぐっ………!」
慌てて鷲巣は銃を構えた。
しかし、引き金を引くより一瞬早く右腕にゴム弾を撃ち込まれる。
「グガッ……!」
右腕に激痛が走った。
右腕の骨にひびでも入ったのだろう。
その痛みで鷲巣はウージーを落とした。
「ククッ……カカカッ……!危ない危ない……回り込んできて良かったよ………!
真正面から撃たれちゃあたまらない……!」
男は喋りながら落としたウージーを拾う。
「こういうのを探してたんだ……!
……これは貰うね………僕は殺す、君は殺される……ククク………僕が持った方がいいでしょ」
「やめっ…!」
男は、無論鷲巣の制止を聞かずに銃をこちらに向けて撃ち始める。
痛みを感じる間もない。
鷲巣の目の前は、そのまま真っ暗になった。
「うっ……ワシは………?」
鷲巣が目覚めたとき、あの男はもういなくなっていた。
銃も防弾メットもバッグも無い。
防弾チョッキが残っているのは不幸中の幸いであろう。
彼が殺されずに済んだのは三つの幸運によるものだった。
まず一つ。
防弾ヘルメットをしていたため防弾チョッキを着ている胴体を狙われたこと。
無論防弾チョッキを着ているといっても衝撃は大きい。
その衝撃で今度はあばらにもひびが入り、そのまま気絶した。
これが二つ目の幸運である。
そして最後に、あの男がいい武器を手に入れた興奮のあまり生死の確認を忘れていたこと。
防弾チョッキ、気絶、確認忘れ――いずれが欠けても鷲巣は死んでいただろう。
こうして生き延びたことに、鷲巣は天の意思を感じずにはいられなかった。
あの男は必ず自らの手で息の根を止める。
幸運は再び巡ってくるはず。
鷲巣は気持ちを衰えさせることなく、状況を好転させる策を練り始めた。
【E-3/道路沿い/午後】
【有賀研二】
[状態]:健康
[道具]:果物ナイフ 不明支給品0~5(確認済み) グレネードランチャー ゴム弾×8
, サブマシンガンウージー 防弾ヘルメット 支給品一式×5
[所持金]:4000万円
[思考]:人を殺したい
【E-3/ギャンブルルーム付近・茂み/午後】
【鷲巣巌】
[状態]:ひざ裏にゴム弾による打撲 一時的に動けない 右腕にひび 肋骨にひび
[道具]:防弾チョッキ 支給品一式
[所持金]:0円
[思考]:この状況を打開する策を練る 有賀を自らの手で殺す
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