「布石」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る
布石 - (2009/11/26 (木) 00:23:31) のソース
**布石 ◆LztjGxL84I氏 「ククク……まさか貴様が参加してるとはな……」 「フフフ……いえいえ……それにしても、あなたが参加しているとは……ある特殊なギャンブルに興じているとは聞いていましたが……ねぇ、鷲巣さん……」 ギャンブルルーム前、零との勝負が終わった後……平井銀二、鷲巣巌、両者は相対していた。 鷲巣はこの場から離れようとしていたが、その困難さ……そして自分が何故逃げる必要があるのかというある種の傲慢さが鷲巣にその場から離れることを止めさせたのだった。 「ククク……儂の事も調べはついとるか……流石は……平井銀二といったところか……」 鷲巣は平井に敵意を向けたままそう言葉を返す。 しかし、平井銀二はその程度の事で怖じ気つくような凡人ではない……! 銀二、鷲巣……共に闇社会に生きる化け物……この二人はまるでよく知った者達であるかのように、ここが喫茶店か何かのように談笑する。 実際……お互いに直接の面識は殆どない。 お互いに似た世界に生きる二人……直接の相対はなくとも、顔と名前……そして成した功績……それくらいの知識はある…… 「本題に移りましょう……鷲巣さん……あなたはこの殺戮の舞台で何を望みますか……?」 「キキキ……ククク……ケケケ……何を望むか……単刀直入で良い質問だ。だが分かっているのじゃろう……」 「ええ……この世界にいればあなたの情報は入ってきます……あなたにとっては優勝賞金など端金に過ぎない……!あなたは殺しますね……しかも恐らくはそれ自体が目的……」 「流石は……銀王……といった所か……それでどうするのじゃ……儂と殺しあうか……?」 二人の中に流れる緊張感……しかし、この二人に限って言うならば緊張感など慣れ親しんだ友人のような物に過ぎない…… 事実平井は笑みを浮かべ、 「いえ、辞めておきましょう……私も優勝が目的ではありません……」 鷲巣も平井のこの言葉は予想通りだったのだろう……笑みを浮かべて、言葉を返す。 「……では何を狙っておる……のぉ、銀王よ」 「私の目的ですか……?私はこのギャンブルで大企業帝愛を潰すつもりです」 平井の言葉、これは鷲巣も予想していなかったのだろう。慌てて聞き返す。 「貴様……正気か……?帝愛は資金力だけで言うならば正に最大の企業じゃ……それを潰すじゃと……?」 「えぇ……この場所ではあまりその方法について論じることは出来ませんが……」 「コレのことじゃな……」 鷲巣はコンコンと首輪を叩く。 「えぇ、まず間違いなく盗聴器くらいは付いているでしょうからね……」 「まぁ……大体予想はつく……お主はこの殺し合いにかけられた賭け金……その破綻を狙っておるんじゃろ……」 「はて……何の事やら……」 「とぼけなくても良い……もちろん、それだけでは無いだろうが…………このゲームに賭けられている金額……これは総額、一体いくらになるのかも分からん…… そのような状況でもしこのギャンブルが破綻でもすれば…………帝愛は失うのぅ…………金、信頼、取引相手、権威………………そうなればいくら大企業帝愛といえども砂上の楼閣…………崩れる…………たやすくな…………」 「流石は……この国の暗部……その全てを占めるお方だ………概ね、その通りです……まぁ、それにはまだまだ色々な手回しが必要なんですがね………」 いつしか鷲巣は平井銀二に敵意を向けるのを止めていた………お互いに利に聡い者達だ……今相手を殺すことは自分にとってはマイナスにしかならないということが分かっていたから………! そもそも、鷲巣は普通の人間ならばそのような事は不可能な程の怪我なのだが……だからといって平井銀二はそれを見くびらない……! 追い詰められた人間は何をするか分からない……それもあるが……知っているのだ……この鷲巣は常識が通じるような人物ではないと……! 鷲巣は涎をたらさんばかりの笑みを浮かべ続ける。 「しかし……銀王よ、首輪が付けられたままその様な事を言っても説得力は無いのぅ……」 平井銀二……この殺戮の舞台で政治的な手腕にかけては右に出る者はいないだろう……しかし、その様な彼でさえ……付いている……首輪……! これでは飼い犬と同じ……飼い主に逆らうことは出来ない…… 「フフフ……この首輪ですか……確かに厄介な物ではありますが………解除することはそう難しい物ではありませんよ……」 「キキキキキキ……流石は銀王よ……ハッタリもそこまでかませば……」 「ハッタリではありません……まぁ……この殺し合いの場で困ることと言えば………ラジオが聞けないことくらいですかね………いつも周波数を忘れるんです……ここではそれを調べることすら大変だ…………」 「ククククククククククク……………銀王よ………面白いのぉ、貴様は………」 「フフフ………光栄です……」 そして二人は別れた。再び別の道を歩む二人であったが、鷲巣は平井銀二がこのギャンブル自体をコントロールするつもりであることを感じていた。 そして平井銀二は鷲巣がその自身が創り出そうとしている計画を破綻させる程の力……単なる戦う力ではない、それを持っていることを感じていた……! しかし、この場では交わることはなかった……お互いに馴れ合いもない、恐れもない……ただあるのは計算ずくの打算だけ……! 「ククククク………………もう少し待ってみるか………奴が造り上げた後で………奴が王となった後に殺すことが出来れば……儂はこの人生の中で最高の絶頂にひたれるじゃろうからな………」 鷲巣は銀王との会話を反芻しながら……ギャンブルルームの扉を睨みつけていた。 一応、中からドアを開けたものの死角になる位置に隠れてはいるものの……距離は殆ど離れていない…… この位置が殺すのにベストな距離と確信しての位置……! しかし、どこかで期待していた……予期せぬ反撃を…… 自身の快楽の絶頂に至るにはそれが必要だ…… 平井銀二が主催者達にしているように………正直な所……鷲巣は平井銀二の予想外なまでの優秀さに舌を巻いていた……… 実は平井銀二はあの先程の会話の中で多くの情報を伝えてきた……それは首輪の解除方法……驚くべき事に彼は既にそのヴィジョンを見ていた。 『困ることと言えば………ラジオが聞けないことくらいですかね………いつも周波数を忘れるんです……ここではそれを調べることすら大変だ…………』 これは盗聴されているために平井銀二が使った暗号の一つ、鷲巣ならば意味を理解することができると思っての事だろう…… その暗号は誰にでも分かるというものではなく、ある程度の軍事的知識。そして状況を整理して考えることができる能力が必要なものであった。 まず、首輪を解除するために乗り越えなければいけないものは何か?…………それはまず第一に遠隔操作による爆破… ならばこれを一時的に不可能にするためにどうすればいいか……?これがその暗号の主な内容………! 平井銀二はその起爆の為の周波数を調べるつもりだろう………これは爆弾を解除する為に軍隊などでも当たり前に使われていることだ……… まず、起爆するための情報……電波により飛ばすそれを妨害する……そのために……必要になってくる物が周波数の情報………! それさえわかれば、後は首輪の構造さえ理解出来れば素人だろうと解除する事ができる………! もちろん障害も多い……まずはもちろんのこと、その周波数の情報を得ること……そして、それを外部に送り妨害する為の電波を流させる…… 更には首輪の構造………これら全てを短い間にやらなければいけない……! そして、それをする事が出来るのは唯一主催者達がいるであろうあのホテルのみ…………!あそこには情報も、外部に伝えることができる道具もあるだろう……… しかし、それは正に鬼の口に飛び込むがごとき行為……勝利すれば大金を得ることが出来るだろうが、敗北すれば死………! 正に狂気の沙汰……… 「しかし……だからこそ面白い………」 鷲巣にとってはこのゲーム……誰が勝者になろうと大した違いはない……もちろん自分の命は前提として……の事であるが…… だからこそ、時が来れば……壊すだろう……その平井銀二の計画も……自身が快楽を得ることが出来るなら……… そして……外と隔絶された空間であったギャンブルルームの扉が開く……… 鷲巣は笑みを強めた……! 平井銀二は鷲巣と相対した場所から少し離れた位置から振り返る…… 「さて……あの少年はどうなるか……?」 平井銀二が求めていた物は生き死にのギャンブル……それに共に挑むことが出来る仲間……! 先程の少年は違った……しかし、どこか似ていた……嘗ての仲間、森田に……人を殺したくない。この場でそれは戯れ言に過ぎない…… しかし、それでも生き残れる程の実力を持つのであれば………………変わるだろう……命を賭けるに相応しい仲間に…… だから……今は去る……鷲巣巌……彼はギャンブルルームから出て来る零を殺そうとするだろう…… まさに台風のごとき存在の彼にかかればろくな武器を持たない一人の少年など簡単に殺される…… しかし、あの少年ならば生き残るかもしれない………平井銀二はそう考えていた。 もちろん、もし殺されればそれまで…………しかし……生き延びれば……… 「フフフ………森田は……怒り狂うだろうな……あんな少年を見捨てるなんてな……」 平井銀二は歩む……今は選別の時……!それが……自らを悪と認める平井銀二の選んだ時の使い方……! 【B-4/道路沿い/午後】 【平井銀二】 [状態]:健康 [道具]:支給品一覧、不明支給品0~2、支給品一式 [所持金]:1400万 [思考]:生還、森田と合流、見所のある人物を探す 【鷲巣巌】 [状態]:膝裏にゴム弾による打撲、右腕にヒビ、肋骨にヒビ、少し動けるようになってきています [道具]:防弾チョッキ [所持金]:0円 [思考]:零を殺す、平井銀二に注目、有賀を自らの手で殺す |027:[[反逆者]]|COLOR(#FFFFFF):BGCOLOR(#a9a9a9):CENTER:[[投下順>本編投下順]]|030:[[窮鼠]]| |027:[[反逆者]]|COLOR(#FFFFFF):BGCOLOR(#a9a9a9):CENTER:[[時系列順>本編時間順]]|030:[[窮鼠]]| |009:[[計略(前編)]][[(後編)>計略(後編)]]|COLOR(#FFFFFF):BGCOLOR(#a9a9a9):CENTER:平井銀二|045:[[余裕]]| |024:[[武器]]|COLOR(#FFFFFF):BGCOLOR(#a9a9a9):CENTER:鷲巣巌|034:[[賭博覇王]]| ----