幸せの星(後編)  ◆ew5bR2RQj.



泉こなたと平賀才人、柊かがみとストレイト・クーガー
偶然か、はたまた必然かは分からないが、この二人の出会いは全く同じであった。

経緯はどうあれ窮地に陥っていた少女を、男が颯爽と救い出す。
それぞれの行動理念は正反対と呼べるものであったが、出会いだけは全く同じであった。
さしずめ少女の方は姫、男の方は騎士とでも言ったところだろうか。

そんな二人組は比較的早い段階で遭遇し、そして剣を交えることになった。
これも偶然か必然かは分からない。
もし言葉で表すとしたら、この単語が一番相応しいのだろう。

この出会いは、運命だったのだと。


――――時は再び遡り、才人がクーガーの回し蹴りで吹き飛ばされた頃。
車の傍に避難していたかがみは、ぽかんと見つめていた。
自らを殺そうとした騎士と、自らを生かしてくれた騎士の戦いを。

(やっぱり……目で追えない)

才人呼ばれた少年の動き自体は、防戦に回っているからか彼女の目にもしっかりと映っている。
が、最速を自負するクーガーの動きに対応出来るところを見ると、やはり彼も超常の世界の人間なのだろう。

(なんで、私達がこんなところに連れて来られなきゃいけないのよ……)

彼女は極めて普通のどこにでもいる女子高生、魔法やアルター能力など存在しない世界の住人であり、
これからも平和な日常を謳歌することが約束されていたはずだったのだ。

にも関わらず、気が付いたらわけの分からぬ場所に連れ去られ、友人を殺害された。
そのうえ自分自身も、二度殺されそうになった。
しかも彼女が無二の親友だと思っていた、泉こなたによって。

(なんで、なんでよ、こなた……)

光を失い黒く淀んだ瞳を思い出し、彼女は項垂れる。
何で昨日まで一緒に笑い合っていた友達に、突然命を狙われなければいけないのか。
彼女は自らの境遇を呪い、呪詛の言葉を吐き出す。

これも当然だろう。彼女等は特殊な力もなければ特異な経験も無い。
常に死と背中合わせの世界で耐えることのできる精神力など、持ち合わせているはずがないのだ。

(もう、やだ……)

その場に腰を降ろし両膝を手で抱え、そこに頭を突っ伏す。
真っ暗な世界の中で、彼女は全てに絶望していた。

(……………………)

真っ暗な世界で思い出すのは、昨日までの日常。
こなたが話を振り、つかさが驚き、みゆきが解説を加え、かがみがツッコミを入れる。
そこにゆたかやみなみが入ってきて、いつの間にか大所帯になっている。

(……………………?)

そんな平和な日常を振り返って、彼女はふと気付いた。
みんな、笑っているのだ。
つかさやみゆきは微笑ましげに、ゆたかは純粋そうに、みなみは恥ずかしげに、こなたは含みのあるように嫌らしく。
その時の自分の顔など彼女自身が知るわけも無いが、きっと笑っていたのだろう。
皆の笑顔を思い出すと、彼女の心が温かい感情に満たされていく。

(きっと、きっとまだあるはずよ、昨日を取り戻す方法が!)

こなたは確かに私を殺そうとしたけれど、未遂で終わっている。
つまりまだこなたは何も罪を犯していない、そうに違いない。
だからこなたを説得しよう、もうあんなことはやめるように、と。
そうした後で、皆でこの狂った世界から抜け出す方法を考えよう。
さっきはああ言ったけれど、ゆたかちゃんを生き返らせる方法もあるかもしれない。

だから――――

そこまで彼女が考えて、顔を上げた時。

「ルイズーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!」

と、叫び声が彼女の耳を貫く。そして。

「分かったよ、サイト」

自分の正面から十メートル、さらに右へと四十五度ほどずれた位置。
そこに現れたこなたが、何かを彼女に向けて押した。

「さよなら、かがみ」

「え、こな……」

最後にそう呟いたこなたは、体を反転させ脱兎の如く駆け出した。


――――ここで偶然の産物ではあるが、一つの不幸を説明しよう。
クーガーは知らなかった、才人が泉こなたのことをルイズを呼んでいた事を。
クーガーは知っていた、あの少女の名前が泉こなたであることを。
そして名簿の中に、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの名前があることを。

故に才人がルイズの名前を叫んだ時に、疑ってしまったのだ。
彼らに第三の仲間がいて、ずっと隠れていたことを。

だから初動が数秒遅れた、こなたが投げ出した台車の動きに対応するのに。
硬いコンクリートの地面を、台車の車輪が音を立てて進んで行く。
からからと乾いた音を立てて、進んで行く。
何か小さな機械を取り付けられた、一斗缶を載せて。

クーガーが叫ぶ、しかし声は届かない。
得体の知れない何かを載せて動く台車に、かがみの意識は裂かれていた。
からからと音を立てて進む台車、物凄い速度で駆け抜けるクーガー。
この二つが同時に、かがみの元へ辿り付いた時。

強大な爆発音が、周辺一帯に響き渡った。

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

先ほどこなたが滑らせた台車に載せられていた物。
あれの正体は、共和国戦闘実験第六十八番プログラムにおいて、
三村信史が大切な叔父の形見を用いて作成した爆弾である。

工場勤務の叔父によって調合された爆薬は、凄まじい破壊力を発揮した。、
プログラムにおいては、巨大な倉庫を丸々一つ壊滅させるという惨状を演出し、
今回も遊園地を半壊させるに至った。

メリーゴーランドの馬達の肢体は四散し、バラバラの不気味な物体と化し、
観覧車は殆どのゴンドラが地に落ち、骨組みだけが残った姿は枯れ果てた樹木の様。
一番人気であるはずのジェットコースターは、レールが崩れ落ち原型を留めていなかった。
他にも爆弾の被害は多数に及んでいたが、一番悲惨なのは中央の広場であろう。
爆心地である地面には巨大なクレーターが開き、さらに破壊されたアトラクションの残骸が無数に転がっている。
そしてそれらを全て包み込むかのように、煌々たる炎とどす黒い煙が巻き上がっていた。
轟々と音を立て、残骸を巻き込みながら火柱となり漆黒の闇を昇っていく。
まるで全てを逃がさんとする、牢獄を形成するかのように。

だがその牢獄から僅かに逸れた位置に、一台の車が転がっていた。
ピンク色の塗装が成された派手な装飾のスポーツカー。
この説明だけであれば豪勢な車を連想する者も多いだろうが、現実は違う。
窓ガラスは粉々に砕けており、車体もところどころが拉げている。
何より車体が反転し、タイヤが天を剥いているところが爆発の悲惨さを物語っていた。
通常これだけの被害を車が被っていれば、間違いなく内部の人間は生きてはいないだろう。
しかし幸運なことに、内部の人間はまだ生きていた。

「うっ……あぁ……」

狭い車内で黒ずんだ衣服の煤を払い、煙を吸い込んだのが咳き込む。
その人間に目立った外傷は存在せず、すぐにでも行動することは可能であろう。
これは奇跡とも呼べる出来事である。

さて、ここまで来て疑問を浮かべている人も多いのではないだろうか。
爆発が起こる直前まで、車内に人は居なかったはず、と。
これについても説明しなければならない。
台車に載せられた物が、こなたが必死に逃げる様子から爆弾だと気付いたクーガーは、
手負いの才人を放置し、かがみの元へと一目散に駆け抜けた。
そして彼女の元に辿り着く直前に、アルターと化した車のドアを開け、
彼女を抱えて、車内に飛び込んだ。

その刹那、爆弾は爆発する。

爆風で車は放物線を描きながら、広場に落下する。
その後何度も横転し、悠に十数メートルは転がった後に爆風と共に停止した。
クーガーは咄嗟の判断で、車内に避難し爆発が直撃することを防いだのだ。

「ハァ……ハァ……」

クーガーが最速であるのは、何も物理的速度だけではない。
判断力や行動力、精神的な面においても彼は最速を貫いていた。

最速は、貫いていたはずだった。

「さがみさん、さがみさん!」

車内の中から這い出したクーガーは、目を瞑ったままのかがみに呼びかける。
――――しかし、彼女の返事は無い。

「さがみさん! 返事をしてください、さがみさん!」

ただ呼びかけるだけでは効果が薄いと判断したのか、かがみの身体を車の外に出す。
――――しかし、彼女の目は開かない。

「しっかりしてください、さがみさん! 貴女はこんなところで立ち止まってしまうような方じゃないでしょう!!」

もはや呼びかけるのが無意味と判断したのか、今度はかがみの体を揺すり始める。
――――しかし、彼女の体は動かない。

「かがみさん!! かがみさん!!」

普段の彼が絶対に見せることの無い、鬼気迫る顔で彼女の体を揺する。
――――それでも、彼女の体が動くことは無い。

何故なら、彼女は回転する車内で全身を強く打ち――――

「…………………………かがみ…………さん?」

――――死んでしまっていたからだ。


【柊かがみ@らき☆すた 死亡】


【一日目黎明/G−10 遊園地内】
【ストレイト・クーガー@スクライド
[装備]:なし
[所持品]:なし
[状態]:軽症
[思考・行動]
1:……………………

※クーガーのデイパック(支給品一式&確認済み支給品《1〜2》)とかがみデイパック(支給品一式)は両方とも車内にあります
※支給された軽トラック@バトルロワイアルは、アルターで改造された末に破壊されました。
これ以上、運転するのは不可能です。

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

「ゼェ、ゼェ……助かったよ、ルイズ」

爆心地である広場から数十メートル離れた場所で、こなたは才人と再会していた。
才人の身体はやはり満身創痍であり、クーガーとの戦闘がいかに凄惨であったかを物語っている。

「ううん、気にしないで。私もただ見てるってだけは嫌だったし」

才人にとってこなたはご主人様であり、守護すべきお姫様だったのかもしれない。
だが彼女自身にとっての姫は小早川ゆたかであり、自分自身は勇者のつもりであった。

「それよりもすげぇな、あの爆弾」

才人の言葉で、未だ昇り続ける巨大な火柱を眺める。
彼女に支給された爆弾、正確には三村信史特性爆弾セット。
それに配布された説明書には、爆弾を起爆させる詳細な方法が記されており、
爆弾など扱ったこともないこなたでも、起爆させることに成功した。

爆弾の知識など皆無のこなたには、この爆弾の威力がどれほどのものか分からなかったが、
一発限りの強力の隠し球に使おうと判断していて、出来れば温存しておきたい代物であった。

しかしクーガーは強敵であり、その上に謎の力を持っていた。
しかもその力は、あらゆる物の速度を上昇させるもの。
仮に才人を見捨てて逃走したとしても、あっという間に捕らえられてしまっただろう。

だからあそこで爆弾を使用したのは間違いではなかった。
爆弾の威力も知らないし、下手をすれば彼女自身や才人も巻き込まれてしまうかもしれない。
一か八かの賭けではあったが、結果的に勝利の女神が微笑んでくれた。
最も爆弾の威力は彼女の想像以上に凄まじく、全力で逃げても爆風で吹き飛ばされてしまったのだが。

「どうする? あいつらが死んだか確認しに行くか?」
「いや、いいよ。あんな爆発じゃ流石に生きてないだろうし、デイパックもボロボロだよ」
「そうだな、あれだけの爆発だと誰かやってくるかもしれないぜ、とっととズラかろう」
「そうだね、今の私達じゃやられちゃうかもしれないからね、一旦隠れよう」

可能な限り人数は減らしておきたいのが彼女の本音だが、決して無理はしない。
最低でも才人の体力が戻り、受けた傷も治療するくらいはやっておくべきであろう。
それにこの爆発によって誘き出された参加者が、勝手に殺しあってくれるかもしれない。
そこにわざわざ介入して、血反吐を吐き出し戦う必要性も無い。

最初はゆたかの死と異常現象で混乱していた頭も、数時間すれば不思議と冴えている。
これはやはりバトルロワイアルをゲームと判断したからだろうか。
あらゆるゲームに精通するこなたの知識と経験が、彼女に冷静で的確な判断を下させている。

「それじゃあ行こ、サイト」

こなたの呼びかけ体を翻すと、才人は短い返事をしてそれに追従する。

「少しの間待っててね、すぐにまた会えるから」

かつての親友を、自らの手で殺めてしまった少女。
この少女は、果たして何処まで堕ちていってしまうのだろうか。


【一日目黎明/G−10 東部】
【泉こなた@らき☆すた
[装備]:なし
[所持品]:支給品一式、三村信史特性爆弾セット(滑車、タコ糸、ガムテープ、ゴミ袋、ボイスコンバーター、ロープ三百メートル)@バトルロワイアル
     確認済み支給品0〜1個
[状態]:健康
[思考・行動]
1:優勝して、白髪の男の子にリセットボタンをもらう。
2:目の前の少年が言うルイズになりきり、ともに戦う。最後は少年も殺す。
3:とりあえず一旦休む。


【平賀才人@ゼロの使い魔
[装備]:女神の剣@ヴィオラートのアトリエ
[所持品]:支給品一式、確認済み支給品1〜3個(このうち少なくとも一個は武器です)、ルイズの眼球、背骨(一個ずつ)
[状態]:中ダメージ
[思考・行動]
1:新しい『ルイズ』と一緒に行動する。
2:とりあえず一旦休む。

※爆弾による爆音はエリア全体に響き渡り、火柱と煙が立ち上っていく様子も全エリアから見えます。
 漫画版を見る限り、火柱はすぐに消えますが煙はしばらくの間残っているようです。
※F−6、G−6の境目から、F−10、Gー10の境目までに車の爆走音が響き渡りました。


【三村信史特性爆弾セット】
名前通り三村信史が作中で使用した爆弾+α。
その他の道具は、信史がプログラムのある施設に爆弾を投下しよう集めた物です。
ちなみにボイスコンバーターとは、パーティーなどで使用される変声用のスプレーのことです。


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044:幸せの星(前編) ストレイト・クーガー 066:お前の姿はあいつに似ている
柊かがみ
泉こなた 072:Ultimate thing(前編)
平賀才人



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最終更新:2010年06月12日 02:08