似た者同士? ◆X5.tKUFx82
「こんな事が、許されると思っているのですか!!」
人気がまるで無い廃洋館の一室。
そこで、
杉下右京は顔を小刻みに震わせながら声を荒げた。
今、彼の怒りは頂点に達していた。
幼い少女を衆目の元殺害し、あまつさえ自分を含めた多くの者達に殺し合いを強要させる。
これは今までに対峙してきたどの事件よりも残酷であり、そして凶悪と言ってもいい。
V.V.は右京の琴線に完全に触れてしまっていたのだ。
「……V.V.さん、今あなたには私の声が聞こえている筈です。
ですからこれだけははっきりと言っておきます」
右京はしばしした後、視線を窓の外へと向ける。
気持ちが多少は落ち着いたのか、声のトーンは落ちて顔の奮えも消えている。
されど、その心中の炎は消えず。
彼は静かに、そして心強く、この殺し合いを何処かで確実に見ている、この声を確実に聞いているV.V.に向けて宣言した。
V.V.への反逆の意思表明―――宣戦布告である。
「人の命より価値のあるモノなんてないんですよ。
そしてあなたはそれを奪い、今もなお弄んでいる……僕はこの犯行を許せません。
この手で必ず止めてみせますよ」
殺し合いは絶対に止める。
そして、V.V.を追い詰めこの手で逮捕する。
はっきりそう告げると、右京は視線を部屋の中へと戻す。
とりあえずは、これからの方針を決めねばならない。
まずは状況を確認すべく、机の上に置かれたデイパックへと手を伸ばす。
「地図にメモ帳、筆記用具と……これは参加者の名簿ですね」
右京は真っ先に名簿を開き、参加者数と名前とを確認する。
親切な事に、数は総勢65人と名簿の一番下に書いてあった。
これは決して少ない数ではなく、右京は心中穏やかではなかった。
「……亀山君……」
そんな右京へと更なる揺さ振りをかけてきたのが、
亀山薫の名前であった。
彼は大切な部下であり、そして相棒でもある。
最初に広場でその姿を見かけた時から覚悟はしていたが、改めて見せ付けられるとやはり辛いものがある。
しかし……同時に、不謹慎ながらも心強さも覚えた。
亀山もまた、この殺し合いを止める為に動いているに違いないからだ。
そして不幸中の幸いというべきか、彼以外には知っている名前は一つも無かった。
ならば、当面の目標は一つ―――協力者を募りながら、亀山との合流を図る事。
(そうなると、亀山君が目指しそうな場所は……ここですね)
続けて地図を開き、右京は亀山が目指すであろう場所へと目をつける。
そこは自分達に共通する職場―――警察署。
彼がここを目指す可能性は極めて高く、仮にそうでなかったとしても人はそれなりに集まるだろう。
それに上手くいけば、会場内の詳しい情報を得られるかもしれない。
この廃洋館から少々距離はあるが、それでも向かう価値は十分にある。
(さて、他には何があるでしょうか)
右京は肝心の支給品を確認しようと、デイパックに手を入れようとする。
しかし、その瞬間……不意に彼の耳へと、ある物音が聞こえてきた。
ギィッ……
「!!」
古い建物だからこそ生じる、木製廊下の軋む音。
右京は作業を中断し、入り口へと素早く視線を移した。
注意深く耳を傾けてみると、その音は断続的に聞こえてくる。
どうやら、何者かがこの洋館内を徘徊しているらしい。
そして音から察するに、相手は一人だけ……右京はしばし考えた後、背後の窓を開けて廊下の外へと声をかけた。
「すみません。
どうやらお一人のようですが、あなたはこの殺し合いに乗っていますか?」
右京の声に反応し、音がピタリと止まる。
同時に右京はすぐに外へと逃れられるよう、窓に手をかけた。
ここは幸いにも二階、飛び降りようと思えば飛び降りられる高さである。
後は相手の出方次第……右京が息を呑むと、その直後に相手が返答をしてきた。
「安心してください、私は殺し合いには乗っていません」
「む……?」
相手は右京に対し、殺し合いには乗っていないと告げてきた。
しかし、だからといってすぐに警戒心を解く様な真似はしない。
油断したところを襲うというのは、奇襲の常套手段である。
そして……更にもう一つ、右京の警戒心を煽る妙な点が相手の返答にはあった。
殺し合いに乗っているかいないかという内容以前に、明らかに異様な要素が。
「一つ、よろしいですか?」
「はい、なんでしょうか」
それは相手の声そのもの。
やけに音が篭っており、その上に声の質が何かおかしい。
はっきり言ってしまうと、明らかに肉声ではないのだ。
ならば何なのかというと……右京は既に当たりをつけている。
「もしかして、マイクを使っていらっしゃるのでしょうか?」
「ええ、私の支給品です。
使えるものは最大限使うべきだと思いまして」
「なるほど、確かにその通りです」
相手は、マイクを介して右京と会話しているのである。
そして音量が然程大きくないところから察するに、拡声用ではなく変声用だろう。
声を変える理由は分かる……互いに姿を見せていない今、声しか相手の判断材料がない。
このまま姿を見せずに離れ離れとなる可能性もある以上、これは良い手段である。
しかもこの相手、少し考えれば分かる事とは言えど、手の内を暴かれたのにまるで意に介していない。
僅かでもいいから焦りが出てくれば、付け入る隙もあるのだが……見事なものである。
「まだお姿を拝見するわけには、勿論いきませんよね?」
「ええ、それはあなたも分かっている筈です」
「その通りです。
出会い頭に銃撃なんていうことになったら、たまりませんから」
「だからこうして、手の内の探りあいと」
「ええ、だから次にお互いがやるであろうことも分かっている筈です」
「名前、ですね」
「その通りです」
ならばここは、せめてもう少し相手の情報を引き出したい。
中でも、特に知っておきたいのは相手の名前……右京は即座に行動へと移る。
「あなたのお名前を、お聞きしてもよろしいですか?」
「ええ、そちらからお先に教えていただけるのであれば」
返ってきたのは、やはり予想通りの答え。
あくまで、先手を此方に打たせるつもりらしい。
ならばここは、すっぱり言ったほうがいいだろう。
下手に会話を長引かせて相手の機嫌を損ねてしまっては、それはそれで厄介である。
右京は声の主に対し、簡単な自己紹介をする。
「僕は警視庁特命係、杉下右京と申します」
偽名を使おうとも考えたが、それは放送の時に危険が生じる。
相手にばれた場合、抱かれる不安感は並大抵のものでは無いだろう。
本名を教える事には勿論リスクもあるが、ここはこれが最善である筈。
そう判断し、一か八かの行動に移した。
―――しかし、この自己紹介は思わぬ形で功を奏する事となった。
「……分かりました。
右京さん、あなたは信用できる人のようですね」
突然、声の主の態度が変わった……警戒心が一気に消えたのだ。
自己紹介をしただけで警戒心が解けるとは到底思えない……しかし。
もしも相手がこちらの素性を知っているのであれば、話はまた別になる。
そしてこの反応は、前々から自分の事を知っていた者のそれではない。
恐らくは……『今』知ったのだ。
「どうやらあなたには、参加者のプロフィールが記された何かが支給されたようですね」
「その通りです。
おかげで、あなたが殺し合いには乗っていないという確証が取れました」
「その支給品に書かれた情報が、偽りであるという可能性はないのでしょうか?」
「それはありえません、私に関する情報は全て本物ですから」
「成る程、分かりました。
それでは、そちらのお姿をお見せしてもらって、よろしいでしょうか?」
「ええ、もう警戒する必要はなさそうですからね」
お互い、相手に抱いていた警戒心は消えていた。
これでもう、姿を見せ合っても問題は無いだろう。
そう判断し、右京は窓の手すりから手を離した。
そしてそれに合わせるかのように、声の主が部屋の中へと足を踏み入れてくる。
「はじめまして、右京さん。
私はL、探偵です」
声の主―――Lは、右京に対し深々と頭を下げる。
そんなLへと、右京も同様に頭を下げて一礼をする。
一見、何てことはない普通の自己紹介である。
……が。
もしもこの場に第三者がいたならば、この光景が実はかなり異様である事にすぐ気付くだろう。
何故ならば、Lの姿があまりにも奇妙だからだ。
今にも襲い掛かってくるのではないかと言わんばかりの、極端な猫背。
そして何より、その顔に装着されたフルフェイスの黒い仮面。
こんな露骨に怪しい人物が目の前に出てくれば、普通は驚いて当然。
だが……右京は全く動じていない。
それどころか、まるでそんな怪しい要素など最初から無かったかのように、普通にLと接しているのだ。
「その仮面が、先程言っていた支給品ですね」
「ええ、拡声器とボイスチェンジャーが付いた優れものです。
強度もそれなりにある様なので、こうして防具として着けています」
「中々便利な物をお持ちで、羨ましいです。
僕はまだ、自分の支給品も確認できていませんから」
「そうでしたか、あの余裕は何か対処法があってのことだと思ったのですが。
支給品は使わずにこの場を切り抜けようとしていたとは、予想外でした。
恐れ入ります」
「こちらこそ、あなたの手腕には驚きました。
まあ、とりあえず立ち話もなんですから、どうぞお座りください」
「ありがとうございます」
二人はテーブルを挟み、椅子へと腰掛ける―――もっとも、Lは椅子の上に体育座りという方が正しいが。
非常に頭が切れ、それでいてかなりの変わり者。
どことなく似ている、そして色々な意味で常人離れした二人の出会いであった。
【一日目深夜/D-5 廃洋館】
【杉下右京@相棒(実写)】
[装備]無し
[支給品]支給品一式、ランダム支給品(1~3)
[状態]健康
[思考・行動]
1:警察署を目指し、亀山と合流する
2:Lと情報を交換する
3:協力者を集めてこの殺し合いをとめ、V.V.を逮捕する
※劇場版終了後からの参戦です。
【L@デスノート(漫画)】
[装備]ゼロの仮面@コードギアス
[支給品]支給品一式、参加者詳細名簿、ランダム支給品(確認済み)(0~1)
[状態]健康
[思考・行動]
1:右京と情報を交換する
2:協力者を集めてこの殺し合いをとめ、V.V.を逮捕する
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最終更新:2010年06月12日 01:36