兄貴はちょうどキッチンで冷蔵庫から麦茶を取り出してコップに注いでいた。
あたしがこっち来たことに気付いて「え? なんでコイツ来てんの?」みたいな顔してる。
いいじゃん、いっしょにいたいんじゃん。バカ兄貴
「あたしにもちょうだいよ」
兄貴に麦茶を要求する。
「……おらよ」
勝手に何か合点したのか、変な顔つきはやめて、コップを差し出してきた。
そして、もう一個コップを取って自分の分を注いでいく。
へへ、何気ないけど、優しいじゃん。
やっぱ兄貴はシスコンなんだよねー? はっきり認めて言ってくれればいいのに。
そしたら、あたしの彼氏になってよって言うのにさぁ~あ。
受け取った麦茶を飲みながら時計を見ると午後十一時を回っていた。
お母さんたちはもう寝てるのか、家の中はあたしと兄貴がコクリコクリと麦茶を飲む音しかしない。
兄貴の方へ向き直ると、兄貴もこっちを見てた。
視線がまた交差する。
「な、なに見てんの? ウザ」
「――なぁ桐乃」
兄貴はあたしの言葉には反応せず、なにかを思案するような顔であたしを見てた。
え? な、なんなの?
てっきり「なんでもね~よ」とか言ってくるものかと思ってたのに。
なんかいつもと違う切り返しにあたしは少し狼狽した。
「あのさ、お前日本に帰って来たんだよな」
「は? 見りゃ分かんじゃん」
どうしたの? 兄貴頭おかしくなった? 帰ってきたのはもう数週間前じゃん。
他ならない兄貴があたしんとこ来てくれて、二人っきり~で夜過ごしてぇ~、二人でハネムーンみたいに飛行機乗ってぇ~、帰ってきたんじゃん?
兄貴は何も言わず麦茶を飲んでいる。
「なんなのよいったい」
じれてあたしは兄貴に問いかけた。
そしたら兄貴は、飲み干したコップを置いて、あたしの正面を向いて「すぅ」と一呼吸すると――、
「桐乃、帰って来てくれて――ありがとな」
……!? な、なななんで? お、お礼?
いきなりのことにあたしは動転した。
あ、あたしが日本帰ってきたのは兄貴が寂しいって言ってくれたからで、それがチョー嬉しかったからで、
「あんたに……、お礼言われるような……、ことじゃ…ない」
ふいうちの言葉に心臓の鼓動が高まって、うまく言葉が出せなかった。
「それでもよ、一応言わせておいてくれ。ありがとな」
「べ、別に……いい…ケド」
え、その……。お、お礼って……兄貴、それって、それってあたしが帰って来て嬉しいってことだよね?
あたしが兄貴のそばにいるの嬉しいって、ことだよね?
そ、そうなんだよね?
何か言いたいけど、嬉しさと恥ずかしさと緊張から、あたしは肩をちぢこませて、両手で掴んだコップから麦茶をクピクピ飲むだけだった。
あたしの様子を少し眺めていた兄貴はやがて、
「もう寝るけど、お前も早く寝ろよ」
そう言ってリビングから出て行った。
後に残ったあたしの胸には、階段を上がっていく音がひどく心地よく響く。
兄貴のバカ、そんなこと言われたら、ガマンできそうにないじゃんあたし――
リビングに桐乃を残し、部屋へ戻ってベッドに再び入ると、心地よい眠気が襲ってきた。
一階に下りていったらまだ桐乃のやつがいて、麦茶飲もうとしたらあいつも『くれ』って言ってきたんで、二人で飲んでた。
別にどうだっていうほどのもんでもねぇんだけどな。
あいつと二人で麦茶を飲んでいるとき、さっき考えてたことが頭をよぎっちまったんだよ。
もしかしたら、そう本当にもしかしたらだけど、桐乃は俺が意識する前から、俺の方を向いていたのかもってさ。
だとしたら、あいつの心は、実は俺が思うものほどには違ってんのかなって、あいつの顔見てたら思っちまったんだ。
だから俺は、『ありがとう』って言った。
寂しがって、泣きついちまった情けない兄貴を見捨てないで帰って来てくれて、俺の方を向いていてくれて、俺のことをちっとは見て、考えてくれていて、〝ありがとう〟ってさ。
確証なんて無かったから、その後に続く言葉は言わなかったけどよ。
ハッ。妹相手になっさけねぇこった。でもよ、不思議と悪い気分じゃあねえんだわ。
やっぱシスコンだろって?
ちげーよ、そんなんじゃねえんだよ、
俺と桐乃は――さ。
……多分な。
へへ、今になって少し恥ずかしくなってきた。
これ以上起きてられん、あーはずかしっ。
いい感じに眠たくなってきてるし、さっさと寝るとしよう。
なんとなくだが、今日はいい夢が見れそうな気がするよ。
時計の短針がいつの間にか1をさしていた。
もうかれこれ二時間近く、ベッドで身じろぎしていたことになる。
夕方に少し寝ていたから眠気は襲ってこない。いや、それだけじゃないか。
兄貴のことが頭から全然離れないからだ。いや、離したくないから。
「兄貴、眠れないよ。兄貴のせいだよ、変なこと言うから。どうしてくれんの?」
さっきのこと、あたし超嬉しいんだよ。
兄貴があたしのこと見て、言葉にしてちゃんと言ってくれたから。
「兄貴、兄貴、兄貴、兄貴、兄貴、兄貴、兄貴、兄貴、兄貴……、あに…きぃ」
濡れた瞳で壁の向こうに何度も呼び続けた。
「あにきぃ、あたしのこと、もっと見てよ。兄貴スケベだからさわりたいでしょ? さわってもいんだよ? 兄貴……、兄貴……、あに…きぃ……」
さっきからもうずっとこんなことの繰り返しだった。
同じような言動を繰り返すたびに、想いだけが雪のように積もっていく。
凍えるカラダを両の腕で抱いても、いっこうに温まらない。
兄貴にあっためてもらいたい、溶かしてもらいたいよ。
「兄貴、もう……寝たよね……。今、なら……。兄貴、あにき、アニキ……、もう、あたし、あたし……」
だ、だめ、もう無理だよ、あたし、あたし――っ!
情欲に駆られたカラダをベッドから起こし、ふらふらとあたしは部屋を抜け出し、兄貴の部屋へ来た。
音がしないようにドアを静かに開ける。
部屋は薄暗いけど、外灯と月の明りが窓のカーテンから漏れており、中の様子はなんとか把握できた。
ベッドからはスゥスゥと寝息が聞こえてくる。
あたしは少し開けたドアの隙間からそうっと部屋へ入り込んだ。
ゆっくりとベッドに近寄り、かたわらに腰を下ろして兄貴の顔を窺う。
けっこう眠りが深いのか、起きる気配はないみたい。
「はぁ…はぁ……」
ごめん兄貴。あたし、あたしもうガマンできないからね?
兄貴が悪いんだよ、あたしにあんなこと言うから。
あたしにあんな……あんな嬉しいこと言ってガマンできなくさせちゃったんだから。
責任、とってよ……。
震えながら兄貴の顔に自分の顔を近づけていき、
「あ、あに…き……。……………………ん」
唇が触れた瞬間、ビリっと体中に電気が走り抜けた気がした。
しちゃっ…た……キス。キス……した。あ、あたし兄貴とキスした、キスしちゃったよぉぉ!
唇をはなして、いったん呼吸を落ち着かせる。
「んぁ……。はぁ、はぁ、はぁは……」
や、やた。あたしの初キス、兄貴と出来た。
あはぁ、チョー嬉しいよぉ。メルルちゃん、あたしやったよ! 兄貴とキスしたよ!
兄貴、あたしが勝手にキスしてんの、どう思うかな? やっぱり怒るかな……?
ごめん、でも、だって……もう抑えられそうにないもんあたし。
自分の気持ちに気付いてから、これまでガマンしてきたけど。
これまで――
兄貴のハブラシで歯磨きしたり、
兄貴の後をこっそりつけてたり、
兄貴がいないときにベッドで寝てみたり、
兄貴のイスにあたしの匂い擦りつけたり、
兄貴の靴の匂い嗅いだり、
兄貴がトイレ出た後すぐに入ってみたり、
兄貴の飲みかけのペットボトルに唾液入れたり、
兄貴の箸で間違えたフリしてご飯食べたり、
兄貴にパンツ見せつける為に前に座らせてみたり、
兄貴の捨てたゴミ漁ったり、
兄貴の毛が落ちてないか探してみたり、
兄貴のパンツを履いたり嗅いだりしてた『くらい』だったけど……。
今日はどうしてもガマン、出来そうにない、あたし。
だから……今日だけ、今日だけだから、さ?
あたしが自分に言い訳を言い聞かせている間も、兄貴は変わらず眠っている。
これくらいじゃ全然起きそうに無いみたい。
だ、大丈夫だよね? だから、もうちょっと、もうちょっと……いいよね。
「ん、ちゅ。ん……んふっ。ちゅぷ……、ちゅ、ちゅ……」
あたしは何度も何度も兄貴の唇をついばみはじめた――
明晰夢って言葉知ってるか?
夢を見ている最中に「あーこれは夢だ」って夢の中で夢だと気付くあれのことだ。
実は今それを体験しているとこなんだよ。
夢の舞台はどこか知んないけど、暗い部屋、俺は寝てるようなんだが、そこへドアを開けて誰かが入ってきた。
顔はなんかボヤけてよく見えないんだが、女ってことだけはなぜか分かった。
あと髪の毛は茶髪のロング、黒じゃないのが惜しいところだ。
んで、彼女が枕元に近づいてきて、「なにすんのかなー?」と思ってたらさ。
なんとキスしてきたんだよこれが!
一度目は触れるか触れないかくらいの、んで今は「ちゅっちゅ」と愛らしい唇を必死に俺の唇に重ねてきてくれている。
くぅ~~、たまんねぇ。エッチな夢サイコーッ!
夢の中だって自覚できてるから、俺はそりゃもう必死に夢の場面が切り替わらないように祈ったさ。
夢ってのは放っといたら、映画のように勝手に進んでいきやがるからな。
この前見た夢なんて、
麻奈美としゃべってたと思ったら、いきなり怪物に襲われて泣きながら逃げてたし。
おっと、話が逸れたな。
まぁつまりだ、俺は男の大多数がそうするように、もちろんそのエッチな夢を心ゆくまで満喫することにしたのさ。
夢に出てきた彼女は愛らし~い唇で繰り返し繰り返し俺にキスをしてくる。
可愛い、超可愛い。
もっと、もっとチューしたいぜぇぇ!
俺は夢に現れてくれた彼女へお返しするようにこっちからもキスした。
「ん、んんっ!?」
起きたのかと一瞬緊張したけど、そんなこともないみたいだった。顔に当たる寝息は規則正しい。
寝てる……けど兄貴からキスしてきてる! なにこれ、すごい!
「バカ兄着、驚いちゃったじゃん。んぁっ、でも、でも兄貴があたしの口にすいちゅいれる。あたしもぉ、もっと兄貴とキチュしたい。ん…、んんん。ちゅ、ちゅッ、ちゅッちゅッ……、ちゅちゅうう」
おおい、なんかえらい積極的じゃねーか。
俺がキスすると、彼女からすんげー大量にキスの雨が降ってきた。
ひゃっほー、こりゃたまんねえ。
俺も負けじとどんどんキスしていったね。
「んはぁ……、あに、きぃ。もっと、もっとあたしゅの吸って。あたしいっぱい、キシュしたい。んちゅ…、ちゅうう、ちゅ、くちゅ……、ちゅちゅ、ちゅるるううぅ」
間近にある兄貴の顔を見ると、ピクピクと瞼の下で目がほんの少し動いているみたいだった。
ま、まずいかな、起きちゃう? でもこんなの……、止められるわけないじゃん。
「ちゅ、ちゅっ、ちゅちゅっ。チュプチュプ。あっ…、ふみゅ、んはっ……きもひイイよ、兄貴とキスするの気持ちイイよぉ」
うはぁ~。やっべ、超やっべ! 気持ちいい、キス超気持ちいいです!
いや、実際はキスなんてしたことねえから、本当にこれがキスの感触か分かんないんだけどね。黒猫のは頬だったし。
ただもう夢とはいえ快感がね、すごいのよ。なんていうか~トロけるっつうの?
本当のキスの感触かどうかはおいといて、俺のリヴァイアサンがパンパンに膨れ上がったのは確かだ。
よ~うしっ、今度は、い、いっちょ……、ディ、ディープキスとやらをしてみっかな。
俺の夢なんだし良いよね? 良いよねっ!?
俺はレロ~と彼女の口に舌を挿入れてみた。
「あむ…、んっ、ちゅ、ちゅちゅ……、んっ、んんん!?」
驚きであたしはバッと兄貴から口を離した。
え、なに!? 今の感触って? し、舌? あ、兄貴もしかして起きたの!?
に、逃げる!? でっ、ででででも……っ!
いきなり彼女の気配が消えちまった。ちょ! なんで!? 舌挿入したのダメだったの?
うおぉおおおい! ごめんなさぁぁいぃぃ、調子乗ってましたぁ!
頼むよおぅぅ戻ってきてくれよぉー! もう一度、もう一度だけ
お願いします!
明晰夢なんだろ、これって俺の夢なんでしょ? なんとか頼むよぉぉっ!
俺は突然消えた彼女に必死に呼びかけたよ。
情けないことに涙ボロボロでな。
逃げるタイミングを失ってドキドキしながら兄貴の気配を窺っていたが、起きてくる気配は無い。
口が少し開いて、舌がピクピクしてるのが見える。ちょっと寝苦しそう?
しかし他はこれといって様子は変わらない。相変わらず寝息を立てている。
「大丈夫みたい…だけど、……ふぅ。し、心臓止まるかと思ったじゃん、このバカ兄貴」
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさぁぁいぃっ! 俺が悪かったですぅ!
だからお願いします、お願いしますだよぉぉ戻ってきてくださいぃぃっ!
俺は必死にいなくなった彼女を求めて叫んだよ。
情けないことに鼻水ズルズルでな。
少し様子をみていたけど、やっぱり起きそうにない。ほんとに寝てるみたい。
兄貴起きてない。でも、さっきのって?
――――はっ! 兄貴、もしかしてキスしたいの?
寝てても……、あたしとしたい? あたしとキスしていいの!?
したいですう! チューしたいっス!
だって俺十八歳だよ!? エッチな夢なんて毎日だって見たい花も恥らう(?)お年頃なんですよ! お願いだから帰ってきてくれぇぇっ!
俺は諦めずにしつっこいくらい彼女に帰ってきてくれとわめいたよ。
情けないことにワンワン大泣きでな。
兄貴……。あたしとキスしたいんだよね? ベ、ベロチュー、し、してもいんだよね?
してあげても……い、いいよ……。ゴクリ。
兄貴とベロチュー、兄貴とベロチュー、兄貴とベロチュー……。
あ、あああ兄貴と、ベベベロチュ――ッ!
あたしは兄貴の顔に覆いかぶさると、
「ん、ちゅ。ん…んん、えぇ、くちゅ、ちゅ…、ちゅぴ、ぇああぁ。ひゃ、ひゃにひぃぃん」
もう一度唇を兄貴に押し付けた。
……!? やた! よっしゃあぁぁっ!
さすが俺の夢、さすが明晰夢、マジお願いしたら戻って来た、帰って来てくれた――っ!
しかも、彼女の方から俺の口に舌を挿入してディープキスしてきてくれている。めちゃ気持ちいい!
かぁ~~~っ、なんてエロ可愛い娘だよこんちくしょー。
もう拒絶されてないと分かり、俺はむさぼるように彼女の唇を、口内を、舌を味わい始めた。
兄貴からも舌を絡ませてきてるっ。なにこれ、夢? 超嬉しいよぉっ!
あたしは嬉々としてますます兄貴の舌に自分の舌を絡ませていった。
「くちゅ、ちゅるるる、ひゃぁぁ、あにひ激しい、いっぱい、いっふぁいあたひの舌にかりゃんでくりゅ。んん、もっとぉ、もっとベロぉ、兄貴のベロからませてよぉぉ。
兄貴の、へへ、兄貴のぉぉ。ちゅぱ…、ちゅぷちゅぷ、ちゅるるるる、くちゅくちゅ。んやぁ、感じちゃう。ベロチュー、超気持ちイイよ、あにきぃ、あにきぃぃっ」
おいおいおいおい、たまらねえな。サイコーすぎだろ!
久々にいい夢みてるよね俺ってば。いやこんな超エッチなのは初めてか?
一度いなくなったときはダメかと思ったけど、帰って来てくれたしな!
しかし――誰なんだろうな?
今も俺の舌に吸い付いて離してくれない、この超可愛くて絶エロな娘は……?
兄貴の唾液、兄貴の唾液、兄貴の唾液ぃぃっ!
「んぇぇ、んん……、くちゅる、ぺろぺろ、ん…、んん、こくん。あはぁ、兄貴の唾液飲んじゃったよ、くちゅ、ちゅくちゅくちゅく…、ひゃにきもぉ、あはしのらえきろんれよね?
あたしだけに、ん…、飲ましぇるのぉぉズリュイんだからね? ん、くちゅ…くちゅちゅ…くちゅちゅ、んふぁ、ふむっ、んあ、ちゅ、ちゅ、ちゅるるる」
おいしい、おいしいよ兄貴の唾液。ハブラシとはやっぱし違う。
もっと欲しい、もっと……もっと――っ!
ふーむ、やっぱいまいち良く分からねえな。
すぐ間近にいる彼女の顔は、ピントが合わないカメラのようにボヤけて視認することは出来ない。
髪は~、茶髪、いわゆるライトブラウンみたいだが、ん~レロレロ。
「んぇろ、れろ、ちゅる、ちゅるる。んあぁ~もっろぉ、もっろぉキスぅ。兄貴、兄貴、あにきぃぃ。もっとベロであたしの中犯してぇぇ。口いっぱいに兄貴の唾液ちょうだぁいぃ。
んむ……、むちゅ、ちゅ、くちゅるる、ちゅぽ、ちゅぷ…ちゅぷぷ、くちゅる」
兄貴が起きているときは絶対出来ない行為に、あたしはさらに陶酔していった。
ロングでライトブラウンに染めてて、可愛くて、積極的で、エロくて。
う~ん、思いあたらねえ。俺の周りにいたかぁ、そんな娘? 近くにいたら絶対分かりそうなもんだが。
秘蔵コレクションのお気に入り女優にも覚えがねえしなぁ……。
それとも、ただ単に俺の夢が創りだした架空の存在ってことか?
「んちゅる、くちゅぷ、ちゅぷぷ…、んあぁ~。しゅごい感じるぅぅ、兄貴の唾液おいしいぃぃ、んん、もっひょよこしてよぉ……、ちゅぱちゅぱ、れろ、れろ……、んく、んく。
あああ、おいしいぃのぉ、感じりゅのぉ、あたし兄貴のでたくさん気持ちよくなっれるぅぅっ」
ま、いいか。
いなくなったときはマジ泣きしたけど、こうして帰って来てくれてそばにいてくれるんだしな。
…………ん? んんん?
でも――まてよ、そういえばつい最近も、こんな気持ちを味わわなかったっけ?
えーっと、こう俺が泣いて頼んだら帰って来てくれて~、それが嬉しかって~。
「えへぇ、あにきぃ、兄貴の歯にもキスしてあげるね、感謝してよねぇ。んちゅ、ちゅっ…、ぺろ、れろ…れろぉ、あっ、あっん…んっ、んあ……、ちゅくちゅく。あっうんん、歯が舌に当たって気持ちイイよ。
あたしの舌で兄貴の歯、磨いちゃてるの、感じちゃうよ。んえぁ、ぺろ、るれぇろ、あん、んん……カリカリすんの感じちゃうろぉおぉ?」
なんかずっと俺のすぐそばにいたやつでさ……。
そして俺のことを――
「あにきぃ、んあ、あにきあにきぃ。ちゅるる。もっとちょうらいってばぁ兄貴、バカあにきぃぃ。あっ、んん、ちゅぱ、ちゅぷ…ちゅぷぷ、ちゅっ、ちゅちゅちゅうううっ。
やぁ、あたしが変態あにきぃろぉ舌食べてるんりゃから、あにひは舌吸っちゃらめぇらのぉ、このシ、シスコンあにきぃぃぃぃっ」
そうそう、俺のことをバカだの変態だのシスコンだのとつけて『兄貴』と呼ぶ人物。
つまり――、俺の妹の桐乃だ。
なーんだそっか、誰かと思ったら桐乃だったのか、そういやあいつの髪もロングだしライトブラウンに染めてたもんな。
おまえ、こんな超可愛くてエロかったんだなぁ。
なーるほど。
……………………………………………………………………………………………………。
ううおおおぉぉぉおおおいいいぃぃぃぃいいいぃぃ――――――――!?
「んっ、くちゅちゅう、ちゅぷちゅぷちゅぷ。んはぁ、んむぅ。あにきぃ、いっぱいいっぱい気持ちひいことしよ。兄貴の口の中、れ~んぶ犯してあげるかりゃ、あたしの口の中も犯しなさいよね。
ちゅる…るるる、くちゅる……、はぁはぁ……はぁ。兄貴兄貴兄貴、あにきいいぃぃっ」
ボヤけていた顔がはっきりと桐乃を形作った。つややかなライトブラウンの髪、丸顔だが十分すぎるくらいに端正に整った顔。
俺がキスを交わしていた相手は、まさしく俺の妹の―――桐乃だった!
その妹の桐乃が、今まで見たことが無いくらい可愛い顔で、『兄貴、兄貴』といとおしげに何度も俺を呼び、扇情的な言葉を言いながら俺の口内に舌を挿入し、舐めまわしている。
「き、桐乃!? お、俺は! ―――!? ちょ、ちょっとまて俺、おいおいおいおい待て待て待て待てぇぇぇっ! それはマズイ、それはマズイってぇぇっ!」
夢の中の相手が桐乃と知った瞬間、俺の中のどんなスイッチが入ったかは知らんが、今までに無い快感が急激に下半身から駆けあがってきた。
「あにきぃあにきぃ、兄貴とのキシュ、ちょ~イイよぉ。しゅごく感じちゃうのぉぉ。バカ兄貴もぉ…もっとあたしとのチューで気持ちよくしてあげるからね。ちゅ、くちゅちゅちゅ、ちゅぱ、くちゅるるるるぅぅぅぅっ!
あにきぃあにきぃぃ! あっ、あむっ、んむぅぅ、くちゅちゅちゅちゅううううううっ! 兄貴、兄貴、兄貴、兄貴、兄貴……、あにっ…きいいぃいいぃぃっ!」
よ、よせ桐乃! こ、これ以上は……む、無理だっ。
く、くおおおっ! だ、だめだ、耐え切れんっ!
「…………ぐ、く……うあ、ぁぁああああああああっ――――――!!」
「あにき、あに……へ、ふぇええ!? あ、兄貴!?」
突然、兄貴はうめき声をあげてカラダを身悶え始めてた。
そこでようやくあたしも「はっ」と自分が我を失うくらいに夢中になり過ぎてたことに気がつく。
ま、まままっずい、これ絶対起きる、今度こそ起きちゃうって! に、逃げなきゃっ!
あたしはあわてて駆け出し、自分の部屋へと逃げ戻っていった。
もっとキスしたかったのに……グス。
「……………………」
目が覚めた。
えーっとここは……、俺の部屋だよな。
部屋はシーンと静まりかえっている。
なんかドアが開く音が聞こえたような気もしたが、部屋の外からも何も聞こえてこない。
鮮明だった夢のせいか少し頭がぼうっとしていたが、徐々に意識がはっきりしてくる。
………―――~~~くっ、くわあああああああ――っ!
やっちまったぁぁぁっ! な、なんちゅう夢見てんだよ俺はぁぁっ!
最初の方はあんま覚えてねえケド、夢の中で俺が可愛い、超可愛いと大喜びでキスしていたのは、間違いなくっ、隣の部屋で寝ている妹の……き、桐乃だっ!
ぐああああああ! 俺のばかああああぁぁっ、変態ぃぃぃっ!
なんか口元もベタベタしてんし、一人で寝ながら舌出してベロベロしてたってことかぁ!?
うっぎゃああああ! 危ね! 俺危ねぇぇ――っ!
へ、部屋で良かった。もしどっか誰か人がいるようなところだったら……。
ひいいいぃぃ!
ゾゾゾッっと背筋が冷たくなった。ほ、ほんと部屋で助かったぜ!
しかしよぉ……と、とんでもねえ夢見ちまったぜ。だ、だいたいなんで桐乃なんだ?
俺ってもしかして本当に……。
い、いやいやいやいやそれはない! 断じてないいぃっ!
こ、これはだな、いわば夢の中での出来事であって、いくら明晰夢だからといっても出来ることと出来ないことがあってだなあっ?
まして、潜在的に持ってた望みが浮かびあがったとかそういうんでもなく!
て、ていうかよ、たまたまそーゆー夢を見ちまったってダケで、たまたま寝る前に桐乃とちょっと会話してたのが変に重なって、これまた、た、たまったまそーなっちまったってダケで……。
「く、くぅうう……。さ、さっさと忘れちまおう。それが俺の自我の為でもあるよな、うん」
と、俺が必死に今見た夢の忘却作業に専念していたら、股間が妙に冷たいことに気付いた。
おいまさか、やめてくれよ~……。
そーっと、パンツの中を確認してみる。
「うっげ、やっちまってるよ……」
パンツの中は見事に俺のリヴァイアサンの大海嘯で濡れていた。
ああああ、ついてねえぇぇ。夢精なんてするかよ普通?
はぁ、そういやここんところ夕方は勉強、夜は桐乃のゲームに付き合ってたから処理してなかったもんな。そのせいか?
「にしても、なんだよこの量。溜まってたっていってもこんなに出るか普通?」
パンツの中はすんげ~ベトベトだった。
夢ん中でキスの相手が桐乃と気付いたとき、急激に沸きあがってきた快感に耐え切れなかったわけなんだが……。
うわわわわ、いかんいかんいかん。こっから先はあんま考えない方が身の為だ。
忘れろー、忘れろー俺っ!
はぁ…はぁ……。
と、とりあえずこのパンツをなんとかするか。あ~あ、お気に入りだったのによ。
俺は替えのパンツを持ってそうっとドアを開け、家族に気付かれないようにソロソロと一階へと向かった。
風呂場の脱衣所でパンツを脱ぎ、タオルで股間を丹念に拭う。
「うへぇ~」
なんちゅう量だよ。もしかして俺って多いほうなのか? 比べたことなんてあるわきゃねーから分からんけどよ。
いや、つまんないこと考えてないでさっさと済ますか。
股間を拭ったあと、洗面台で手を洗い、新しいパンツに履き替えて短パンを履く。
ついでにシャツも用意した新しいものに着替えた。
「うっし、これで一応大丈夫だよな。――さてと、残るコレはどうするよ?」
精液が付着したパンツとタオル(それとシャツ)をつまんで、しばし思案する。
このまま洗濯かごに入れておけばいいかな?
いやしかし、もし匂いでバレたらそれこそ恥ずかしすぎて死ぬ。
かといって、持っておくなんて論外だし、捨てるつっても、こんなん捨ててたらそれこそお袋にバレて、家族のみならずご近所で辱めの刑にあっちまいかねない。
あのババア、どこまでしゃべるか分かんないからな。
「ん~、さっき風呂入ったときの下着に紛らせときゃバレねえかな」
うん、それが一番無難な気がするな。
横着のお袋はかごの中身はいつもまるごと洗濯機に放り込んでるし。
そう思い立ち、洗濯かごに手を突っ込んで自分の下着近辺にブツを紛れ込ませようとした。
「んーと、この辺にバスタオルでくるんでおいて~と……」
そのとき――
最終更新:2010年08月09日 00:42