ゲスとかレイパーとかでいぶとか、みんな死ねばイイのに02 84KB(合計)
※容量オーバーの為、勝手に分割しました
【4】
ありすは身が凍る思いをした。
それは夜風によるものではない。
薄い紫色の髪と手足を持つゆっくりが目の前にいたからだ。
しかし目の前のれみりゃがありすを襲ってくる事はなかった。
体は八つ裂きに切り崩され、目玉は刳り貫かれて息をしていなかったからだ。
「…なん…なの?」
ふらんと仲違いでもしたのだろうか?
しかしこれは牙によるものではなく、枝で刺されて斬られたような傷口なのだ。
辺りには使われた枝などは落ちいていない。
しかし膝から下を原型が無くなるまで分解され、手足をもがれ、首を折られ
最期の表情すらも察することが出来ない無残な姿は、ゆっくりが為した事とは思えなかった。
追い払ったというより明確な意思で殺した。
そう考えるしかない死体だった。
「なにが…あったのかしら…」
よく見ればれみりゃの残骸には小さな羽根や帽子が沢山落ちていた。
蝙蝠羽の他にも細長く綺麗な石が並んだものは、きっとふらんだろう。
ようするに捕食種が集団で襲ってきたのに対して全て撃退したという事だ。
たとえ熟年の大人のまりさ達が枝を咥えて束でかかったとしても
これだけの数を被害も出さずに一網打尽にし、なおかつ残忍には攻撃しないだろう。
しかし捕食種によって妹達が襲われている可能性は減った。
それだけを思い描いてありすは、視界に映った気色の悪い光景を忘れることにした。
「まりさー! ありすはここにいるわ! れいむー! まりさー!」
あの光景を見る限り捕食種は撤退したと考え、ありすは妹達に向けて夜空に響くように呼びかけ始めた。
暗がりを怯えながら覗いたり跳ねて回って探していた時と違い、木々のざわめきに紛れた音へと耳を傾けた。
「まりさー! れいむー!まりさー!」
ありすの声だけが響い続けるのだと思った。
もう自分の声が届かないところに、二匹は永遠に消えしまったと。
しかし今まで聞こえていなかった声が届いてきた。
「まりさ!?」
夜虫や風にかき消されそうな誰かの声は上手く聞き取ることが出来ない。
それはれいむが泣いている声かもしれない。
それはまりさが助けを呼んでいる声かもしれない。
とにかくありすは綺麗な髪を汚す事もいとわずに草むらを走り縫って
底部を草で擦り切りながら一直線に声の元へと近づいていった。
「おねえさんが いくからね! ありすが いくからね! だいじょうぶだからね!」
獣道を跳ね、木々を抜けた。
たどり着いたのは薄暗く分かりにくいが、確かまりさが狩りを任されている辺りのはずだ。
だとすると、やはりあの子達かもしれない。
もしも深い崖に落ちてしまっていたり大きな怪我をしてしまっていたとしても
ここからなら応援を呼んで駆けつけて貰うことも出来る。
れいむ、そしてまりさは本当の妹ではない。
以前に住んでいた群れは、新しい世代が生まれると体の弱いものは群れに残り
勇気があるゆっくり、逞しいゆっくり、誰かを気遣えるゆっくり
機転の聞くゆっくりなどが、新しい巣を探しに外へ旅立つ風習があった。
それはとても名誉な事ではあるが、親と決別するという事でもあった。
そしてありすより数週間遅れで誕生し
まるで妹のように懐いていたまりさが、持ち前の明るさと狩りの才能から抜擢された。
まりさは自分の頑張りが皆に喜ばれる事を嬉しがっていたし、ありすもそれを褒めてあげた。
しかし唯一同じ時期に生まれた幼馴染のれいむは、旅団に入る事が叶わず
姉妹のようなまりさと離れてしまうのを泣いて嫌がった。
旅立つ新しい世代の中で、特に秀でているまりさ。
そのまりさが元の群れに留まってしまうのは、生き残る可能性を下げてしまうのに。
素直に我侭を言えるれいむを羨ましがった。
ありすだってまりさの良さを知っている。
狩りが上手いとか、跳ねるのが得意とかそんな事ではない。
生まれた次期がちょっと早くても、むしろ早いからこそ
まりさが一人前のまりさになって行く成長を小さな頃から見てきていたし
土に汚れた頬を擦り傷だらけにしている姿の中に、誰にも負けない優しさとゆっくりを持っている事を知っていた。
配慮で旅団に入れてもらったれいむを羨ましがった。
妹分達のめんどうを見てきた姉役の自分が、同じ我侭を言えるはずもない。
ごく普通のれいむだった妹分は見違えた。
どのれいむよりも澄み切った歌声を奏で、集めた食料の調理や保存法もすぐに覚えていった。
誰かを癒したいれいむには、誰かの為に頑張りたいまりさか必要なのだろう。
命を賭して狩場を探すまりさには、ずっと待ち続けられるれいむが必要だろう。
何よりもまりさが…好きだから。
まりさを見ていたから、これが自然なんだと受け入れられた。
自分の手を離れた妹達が眩しかった。
…ぱちゅりーには気付かれてしまっているだろうか?
いつもお姉さん顔をしている自分も、ぱちゅりーにだけは気を許してしまう。
常に平静で平等に毅然と、群れの子供達の面倒を見ていたが
ありすにも間違った事や気付けなかった事もある。
それをぱちゅりーはいつの間にか察してくれて手助けをしていてくれた。
けれどぱちゅりーがずっと助けてくれるわけではない。
時が来たらぱちゅりーも伴侶と共に、子供達とゆっくり暮らすだろう。
まりさは、まりさとして旅立って行く。
ありすは、ありすとして大人にならなくてはならない。
広場には沢山の若いゆっくり達が集まっている。
まりさとれいむと別れる朝だ。
ありすが二匹への選別の花を選んでいると
なんだか笑顔のぱちゅりーと群れの長が訪ねてきた。
夜の風は跳ねる足をこわばらせる。
次第にはっきりしてくる声を更に追いかけていくと、山道を登りきった広い場所にありすは出た。
「まりさ!? れいむ!? ありすよ! ぶじなの!? へんじをして!!! おねがい!」
赤い飾りをつけた黒い髪などなかった。
黒い帽子をつけた金の髪などなかった。
月明かりも届かぬ闇の中で、白いものが浮き上がっていた。
その"もや"には二つずつの赤い点が輝いている。
その赤い点がすべて瞳なのだと理解する頃には、200個の眼に睨まれていた。
「…ゆ?」
霧の様に見えた揺れる白い髪。
その奥のほうでは、違うモノが泣き叫んでいた。
「うー…うー…」
地面に降り立ったふらんが、白い彼女達に囲まれている。
ふらんと分かったのは、七色の羽があったからであり
それ以外ではふらんの特長を説明する要素はない。
トゲの塊。
無数の枝によって体を貫かれ
その間から片方の羽根だけがビクビクと震えていたからだ。
「うー…」
栗の実から痛々しい声が聞こえてくる。
だからあれは生き物だ。
あれはふらんなのだ。
体中に枝を刺し込まれても生きている。
あれはとても痛いだろう。
あんな目にはなりたくない。
あそこにまりさがいなくてよかった。
気持ち悪い。
ここから逃げたい。
『…』
ジリジリジリと地面を削る音がした。
赤い眼と白い髪のゆっくり達が、枝を咥えて土を引っ掻きながらコチラに近づいてるからだ。
「……………ゆ?」
そうか、違うんだ。
捕食種が集団で襲ってきたのを撃退した分けではない。
捕食種を集団で襲ってきて子供も何も皆殺しにしているんだ。
既にうーうーと鳴いていた無残なふらんの声は聞こえなくなっていた。
こいつらは逃げた一匹のふらんを全員でココまで追いかけて
必要以上に残酷な方法で確実に命を奪っていたのだ。
この白い奴らはなんなのだろうか? ゆっくりなのだろうか?
彼女達の目は明らかに友好的ではない。
「…っ」
しかしありすはそんな外見では判断せずに話しかけようとした。
ただ殺気立っているだけであり、天敵である捕食種を倒したのは間違いない。
自分が仲間である普通のゆっくりと知れれば、きっとこの空気も変わるだろうと。
「ゆ…ゆっくりしていってね?」
ありすは恐る恐るだが挨拶をした。
白いゆっくり達は歩みを止めて、顔を見合わせると
リーダー格なのだろうか少し雰囲気の違う白髪が出てきた。
『…』
黒い髪飾りに月に魅入られたような赤い目をしている。
枝についているドロリとした物はふらんのだろうか。
恐怖を押し殺すためにすぐに目を反らした。
戦いに秀でているのは、まりさと同じだ。
けれどこんな気味の悪い奴らと、まりさが同じゆっくりだとは思いたくはない。
「ゆっくりしていってね! ありすはありすよ! こ、こんばんわ! すごいわね! ふ、ふらんをたおせるなんて…」
出来る限りの笑顔でありすは挨拶をした。
主に子供達の世話や教育役をしているありす。
それ故、もしもの時には子供達を安心させるためにいつでも笑顔が作れる。
しかしこれはもしも異常の環境だった。理解が及ばない。
ひたすらゆっくり出来ない何かが迫ってくる。
『…』
白いゆっくりは体を反らし目を細めている。
ありすはこんな姿をしたゆっくりを見た事がない。
ならば相手も同じなのでは?
ありすをゆっくりと思ってないのかもしれない。
「ありすは このやまにすんでる ゆっくりよ! いっしょに ゆっく―
『そう…ありすは ありすなんだね? 言われなくも ありすって分かるみょん』
想像していない冷たい声色だった。それに嘲りが混じっている。
白いのが枝を振ると付着していたふらんの中身が地面に飛び散った。
ありすの作っていた笑顔は直ぐにでも崩れそうだった。
彼女の持っていた大人びた振る舞いも、体の芯から来る恐怖に染まっていく。
「そ、そうよ! ありすよ! ゆ、ゆっくりしてね?」
ありすが挨拶と共に小首を横にかしげたのが幸いだった。
金髪の切れ端が目の前で風に舞っているのは
間合いを詰めたみょんが、その枝先をありすの顔に向けて振り上げたからだ。
『…ありすは ありすだみょん その顔はありすみょん』
空振りをしたみょんは、ありすには向き直らず当たり前の事を言い放った。
そう彼女達はありすをゆっくりとして知っていたのだ。
「わたしは ふらんじゃないわよ! ど、どうして そんなこわいことするの!? や、やめてね! そんなこと ゆっくりできないわよ!」
『ありすが…ありすだからみょん』
ありすがありすだから、ゆっくり出来ない事、危害を加えられる。
ありすが何かしたのか? ただ声をかけただけなのに。
『都会派だか なんだか知らないけどみょん そうやって大人ぶった顔して 近寄ってくるみょん』
何か機嫌を損ねる振る舞いをしたのか?
常に周りと相手の気持ちを汲んでいるありすでも
まったく心当たりがなかった。
しかし
「ありすは べつに………………ゆ? あなた けがを しているわね? ふらんに かじられたの?」
近寄って気付いたことだが、確かに白いみょんの頬には二列の裂傷が走っていた。
「ちょっと みせてみてね! ありすは てあても できるのよ! ぱちゅりーから おそわったのよ!」
ありすは天然の素材だけを使い、巣穴のコーディネートが出来るほどの器用さを持っている。
もちろん装飾や道具だけではなく簡単な施術なども行える。
ずらしたカチューシャから怪我をした時のために貼っておく薄い綿と葉を取り出した。
『さわるなみょん』
「いいから みせてごらんなさい! むれの まりさも よくけがをするから ちりょうはとくいなのよ!」
『さわるなみょん』
「はずかしがらないで! けがは かりうどの くんしょうよ! さあ うごかないでね!」
ありすは彼女達と誤解を解き、打ち解ける機会だと思った。
難しいぱちゅりーの講釈や治療の練習がこんなところで役に立つとは思わなかった
『さわるなみょん』
「もう! あまのじゃくね! いたいときは いたいっていうのよ! そのほうが ゆっくりできるわよ!」
『気持ち悪い顔を近づけるなみょん …レイパーは黙れみょん』
「…ゆ?」
今、何と言ったのか? ありすは聞き慣れない言葉に硬直した。
『レイパーはいい加減にしろみょん』
それはゆっくりを犯しつくす物狂いの呼び名だ。
特にありすが多い。
しかしありすはもちろん、両親も最初に産まれ暮らしていた群れでも
そんなゆっくりを実際に見た事も聞いた事もない。
とうに絶えて忘れられたゆっくりの話だ。
何故そんな呼ばれ方をしなくてはならないのか?
「なにいってるの!? ありすは ふつうの ありすよ? わかるでしょう!?」
『そんなのわかってるみょん 普通のありすだみょん』
"普通のありす"と言葉を返して、みょんはふらんを屠った枝を突きつけた。
「な、なら そんなもの ありすに むけないでね あぶないわよ! ね? やめま―
ありすの右眼は、自分の左眼を見ていた。
後頭部から差し込まれた鋭い枝は、ありすの体内を突き進み
左眼を引っ掛けたまま眼底を突き抜けていた。
『わかるよー 今は普通なんだねー』
いつの間にか、いたのだ。
ありすの後ろに回りこんでいた何かは、更に後ろから枝を無茶苦茶に掻き回す。
「ゆぎぃぃいいいいいい!!!!! ゆあああああああああああ!!!!!!」
『少しでも気を許すと すぐに気持ち悪い顔をして近寄って来るみょん そして手当たり次第にゆっくりをヤるみょん』
枝を突きつけていたみょんは切っ先を高く振り上げる。
痛みで動けないありすの頭上に、ふらんを屠った枝先が固定される。
「ゆっ…ぎ…あ、ありすの……おめ…め………ゆぎぃぃぃぃい!?」
枝先に引っかかっていた左眼が、みょんの一振りで叩き落されると
みょんは咥えていた枝でグチャグチャに砂と掻き混ぜた。
そして体重を乗せて何度も跳ね潰し跡形もなくす。
『ありすは…レイパーみょん 都会派とか気取っていても 死ぬまでゆっくりを犯しつくすキ○ガイだみょん』
「ゆひっ…ゆ…ち、ちが…あり…す…は…」
『レイパーがレイパーと自覚しているなんてあり得ないみょん
どれだけ知的な振りをしていても全部すっきりをしたいがための演技みょん
孕ました相手も自分の赤子も喰ったり犯ったり、もうゆっくりでもなんでもないみょん』
「そんなこと… ありすは…しな……あ……ゆぎぃぃやあああああ!!!!!!!」
背後のちぇんは、傷をえぐる様な動きをすると
ありすを貫く痛みは中枢にさえ届いているのか確かな思考を奪っていく。
体を痙攣させていたありすの体から液体がにじむ。
『そんなのふらんと何も変わらないみょん ゆっくりを食い物にするレイパーは さっさと死ねばいいみょん ゆっくりに必要のない存在みょん』
「ゆぎっ…ゆああ…ゆぅぅぅう……あ… ありすは…れいぱー…じゃ………」
『みょんはさっき「触るな」といったみょん それに対してお前はなんて言ったのかみょん?
恥ずかしがり屋? 天邪鬼? それはレイパーのツンデレってやつかみょん? そうか わかったみょん』
そう言い放つと咥えている枝が使われ始めた。
みょんはありすの底部を回り込むように
何本も仲間から渡される枝を突き刺していき、ありすを地面に固定する。
一周すると木で作られた皿の上にありすがいるようだ。
「ゆぎゃぁああああああああああああ!!! ごんなの ゆっぐり でぎばいわぁああ!!! やべでぇええ!!!! やべでねぇえ!!!」
『やめてほしいのかみょん?』
「やべで!やべで!やべで!やべで! ありずが ずっどゆっぐりじぢゃう!!!!」
『みょんは 都会派のありすが ツンデレって知ってるみょん
"やめて"って事は "やめないで"って事みょん ゆっくり出来てるって事みょん
そんなに喜ぶなら もっとしてあげる…みょん!』
ぐじゅり。
体重を乗せて深々と差し込まれていく枝。
それはありすの下腹部にある穴を、無理やり切り広げていく。
「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
なくなったありすの左眼からは止め処なく涙が流れ落ちた。
「ゆぎぃぃぃぃいいいい! だめぇえええええ!!!! ぬいでぇえええ!!!!!いだいいいいいいいい!!!!」
『涙を流すほど気持ちいいのかみょん? 言われなくても 抜かないみょん
そんなに体をよじって誘わなくても もっとやってあげるみょん 本当にありすは好きモノみょん』
抜き差しを繰り返す枝と共に ありすが内包していた乳白色の液体が下腹部から飛び散っていく。
歯を食いしばるありすの歯は、どれもヒビが入り欠けていく。
更に耐え難いストレスによって頭髪は少しずつ抜け落ちていった。
「やべで!やべで!やべでね! そこは いじっちゃだめぇえええ!!!! あがちゃん! あがぢゃあんが できなくなっぢゃううう!!!!!」
『こんなに喜んでもらって嬉しいみょん ここがいいのかみょん? 気持ちいいのかみょん?
ありすのふぁーすとすっきり?だかなんだかを貰えて嬉しいみょん』
血走った右目はカチューシャと同じ色になっていく。
もはや口なのか排泄口なのか、それとも子供を産む器官なのか
無残に引き裂かれ部位の区別もつかないカスタードを垂れ流す穴が一つ増えている。
「もぶ… やべで…ありずが…まりざど………ありずの……あがぢゃん……やべで もぶ…やべ…」
『まだしてほしいのかみょん? 素直じゃなくて ありすはツンデレさんで可愛いみょん
ありすのココは もうグチャグチャみょん でも頑張るみょん』
「やべで……やべ………………………………………………ゆ、ゆぐっ もっどじで じでいいばよ!!!! じでいいのよ!!」
ありすは閃いた。
みょんがありすの言葉をツンデレとして
真逆に捉えてしまうならばと、反対の事を叫んだ。
『わかったみょん』
「ゆ…」
みょんの蹂躙は止まった。
柔らかいゆっくりの体を無慈悲の破壊するだけであった硬い枝は、すぐに動きを止めた。
『ありすの望むとおり もっとしてあげるみょん』
「ゆっぎぃぃややぁぁぁぁぁあああああああ!!!!!!!!!!!! どうじでぇえええええ!!!!」
ありすの命も
いつか出来る未来の小さな命も
たった一本の枝で、無残に削り取られていく。
「ゆぁぁぁああ……あ…ゅ……………ぁ…」
生きる事は積み重ねだ。
生きる事は受け継ぐ事だ。
自分が老いて最期は土へと還ったとしても
その経験と記憶は子供達が覚えてくれている。
だから死と呼ばれるものが怖くなくなるのだ。
だから消えてなくなる事に寂しさを覚えないのだ。
ならば子供を残せないとはどういう事か?
それは刻々と全てが無に帰えるまで、ただ何も出来ずに死を待って過ごすという事だ。
自分が感動した事も乗り越えた事も全てが消えてしまう。灰となり空へ溶けるか、土の下へ埋もれるか。
感情も結果も全てが自分だけで完結し、そして死んで何もかも無くなる。
今この時なら家族や親友が自分を覚えてくれているだろう。
しかしそれは自分と同じか、それより早くどこか遠くへ消えてしまう。
結局は親であり他人なのだ。そこで終わるのだ。
子供に自分の知識や生き様を伝える。
それは自分が世代を超えて生き続ける意味を持つ。
しかし子供を残せなければ、本当に朽ちて死ぬ為だけに…生に執着して無駄に生きているだけになるのだ。
「ゆひっ…ゆぐっ…ゆっ……ゆ? ……………………ゅ…ぁ……………………」
引き抜かれた枝先には自分の体内から取り出された袋のような物体がこびり付いている。
もう機能しない器官。
ありすが母になるためのモノ。
自分から取り除かれてしまったモノ。
もう子供が作れない。
自分が未来のない無意味な塊になった事実が、ありすを恐怖と悲しみに染めた。
「ゆああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」
絶叫を放つありすの体は縮んでいく。
押し広げられた下腹部からは中身が搾り出されていった。
妹思いの優しいお姉さん。
そんな誰からも好かれた性格も
ありすが今まで生きていた思い出も
したかった事、叶えたかった事
れいむを気遣って隠していたまりさへの想いも
全てが土へ染み込んで、誰にも知られる事はなくなった。
【4】
ぱちゅりーは素早く跳ねる事も出来ないし体力もなく病弱だ。
それゆえ集落から遠く離れた森の景色を見た事がない。
しかし誰よりも危険に対して敏感であるぱちぇりーだからこそ
周りの草木の生え方、虫の声、そして肌から感じる空気から
群れで暮らしているこの森の変化に気づき始めていた。
至極丁寧に採取された花々。
踏み固めたのではなく、何かで切り開かれたような通り道。
それらは自分の属している群れの仕業ではないと思わせた。
群れの皆が知らないナニか。
ぱちゅりーすらも知らないナニか。
それが危険なのかどうか?
まりさ達が帰ってこない事と関係があるのか?
とにかく自分が持っている知識と用心深さを全て発揮し暗闇を進んでいった。
「むきゅっ むきゅっ む………けほっけほっ」
冷たい夜風を吸って咳き込みながらも、ぱちゅりーは跳ねる。
休み休み進む速度では、まりさ達を探しに行ったありすと引き離されるだけだ。
ならば賢いぱちゅりーにしか出来ないであろう方法。
消えたまりさに繋がる細かなヒントを見つけていくことが近道になるはずだ。
「…むきゅ?」
唐突に道がなくなった。
木々を縫って作れた通り道は行き止まりとなっている。
"しょうがない"、その一言を胸中で呟き、普段のぱちゅりーならば諦めていただろう。
けれど今のぱちゅりーには、あの子達の笑顔と大切なありすの姿によって
こんな暗い夜の森にいても恐怖に打ち勝つ事が出来る。
進んで暗がりに入り目を凝らす。
捕食種よりも怖い、ゆっくり出来ない怪物でも出てきそうな闇に目を反らしたくなる。
「むっきゅ!むっきゅ! がんばるのよ ぱちゅりー!」
すくむ己を自らの声で奮い立たせて、黒く塗りつぶれた奥へと近づいた。
何か鋭利な物でトンネル状に切り裂かれてしまっている茂みが目に入った。
いつもならば怪しい場所など、決して近づく事などないぱちゅりーではあったが
これがありすへ辿り着く鍵だと思うと急いで這って行った。
大人のゆっくりが ギリギリ通れるだけの幅。草木を刳り貫いたトンネルがあった。
ぱちゅりーでも無理をせずに通れるような綺麗な壁面に加工されている。
そしてトンネルの続く方向は、まりさがいつも語っていた狩場へと直線的に繋がっていた。
不意の落下や落ちている石などに注意して進めばいい。
ぱちゅりーは振るった事もない小さな枝を咥えると、心決めて暗い茂みの中に身を投じた。
茂みの地面は大きな石が取り除かれ葉っぱが堅く踏み慣らされている。
主に這って移動するぱちゅりーにとって、砂利が混じる普通の地面よりも移動しやすいものだった。
こんな芸当ができる仲間はいない。もちろん動物の仕業とも思えない。
全ての疑問も、ありすも、まりさ達も、この先にある気がしてならなかった。
「…むきゅ!?」
咥えていた小さい枝を落して呆然とした。
いつの間に冬が訪れたのだろうか。
茂みを抜けた先には真っ白い風景が広がっていた。
それが生き物だと気付くと、ぱちゅりーはウサギの群れなのではと思った。
必要な食料を集めるのに、夕暮れまで近場の狩りに同行していた時があった。
その時に出会ったウサギは、こんな風に白い姿と赤い眼をしていたのを覚えている。
しかし跳ねて逃げていったウサギと違うのは
数え切れない赤い双眸が一組、二組と次第にパチュリーに向けられていく事だった。
真っ白な髪が薄い月明かりに照らされ、対照的な赤い眼をしたゆっくり達。
それだけではない、その向こうには獣のような耳と尾を生やしたゆっくり達もいる。
かつて見たこともない奇妙なゆっくり。
しかも同じ種類が一箇所に集まって無言で佇んでいる。
異様だ。
まりさが帰ってこない事。
れいむが帰ってこない事。
ありすが見つからない事。
それを目の前の光景と論理的に考える事もなく
自然と ぱちゅりーの答えが口から漏れていた。
「あなたたちなのね!」
静かな夜空にぱちゅりーの声が響いたが、彼女達は微動だにしなかった。
唐突に現れた白い陰影に目が慣れてくると、白いゆっくり達が枝を咥えているのに気が付いた。
具体的な敵意を感じ取れる凶器を見て、ぱちゅりーは自分の置かれている状況をやっと理解した。
不慣れな長距離の登山を、息も絶え絶えに終えたぱちゅりーでは
到底逃げられる気がしなかった。
しかし黙ってどうにかされてしまうつもりはない。
相手が狼や梟ではなく、同じゆっくりならば対処する糸口があるはずだ。
「あなたたち…ありすを…れいむを…まりさを………………どこへかくしたの?」
『やっぱり ここには群れがいるみょん』
『わかるよー レイパーが 泣き叫んでた通りなんだよー』
レイパー? そんなものはこの山にはない。
独りで暮らしているありすなど聞いたこともないし、被害もない。
『ツンデレのレイパーが すぐに死んでしまって 場所が聞けなかったみょん』
『レイパーは本当に役立たずなんだねー』
死んだ? ずっとゆっくりしてしまった?
それが誰なのかわからない。
レイパーというならば、ありすのゆっくりであるハズだ。
もちろん誰よりも思いやりのある群れのありすの事ではないだろう。
ありす以外に夜の森へ出かけているゆっくりありすがいたという事か?
「あなたたち…なにをいっているの?…………………………………むきゅ!?」
ぱちゅりーへと急に投げて寄越された塊を、ぱちゅりーは避けることはできなかった。
衝撃に短い悲鳴を上げた。
恐る恐る目を空けて確かめと、幸い体に異常はなかった。
頭上に感じる重さ以外には。
ぱちゅりーの頭に覆いかぶさった物体は、ズルリと滑り落ちた。
立ち込める甘い臭いがぱちゅりーを包む。
ぱちゅりーは口を閉じた。
口内に充満する己の中身を出さないように。
「むきゅ!?…ゆぐぐっ……むきゅううう!?……ゆんぐぐぐくっ」
嘔吐を押さえ込んだぱちゅりーは、ゆっくりの上半身だけを見て震え始めた。
白目を剥いているように見えるのは眼球がないからだ。
もはや上半身とも言えない。
カスタードの内容物は残っておらず、もう皮だけしかない。
けれどカチューシャだけは、とても綺麗に残っていた。
ワザと残されたように。
「あ…りす? …ありす!?…………むきゅうううぅぅぅぅぅ…むきゅぅうううう……どうしてぇええ? どうしてなのぉお!?」
カチューチャに頬を当てると、ぱちゅりーは泣いた。
直ぐに冷たい夜風が涙を乾かしていく。
ぱちゅりーの声はありすに届かない。
ぱちゅりーがどんなに考えても知恵を振り絞っても。
何もできない。
考えるだけでは、もうどうにもできない。
ただ冷たくなったありすの欠片があるだけだ。
『どうしてかみょん? どうしてか分からないみょんか? みょん達がしたことが分からないみょんか?』
『わかるよわかるよー ちぇんは分かるんだよー』
「むっきゅあ!!」
耳付きのゆっくり達が、ぱちぇりーを跳ね飛ばすと ありすの残骸に群がった。
湿ったモノが潰れ、破かれ、踏まれ、その音がなくなると
ぱちゅりーの前には泥溜りしかなかった。
もう黄色や赤色はない。
「む、きゅ?…そ…んな……うそ……なんで………」
『わかるんだよー ちぇんが 潰したまりさや れいむと 同じなんだねー 頭が足りてないんだねー』
「なん…ですって?……あなたたち…なにを…まりさたちに なにをしたのよ! 」
『今みたいに 潰してゆっくりさせなくしたみょん ゆっくりしないで理解するみょん』
相手の名前なんか、どうでもよかった。
こいつらが全てを変えてしまった。
もう元気なまりさや、子供っぽいれいむの姿を見ることは出来ない。
ありすの笑顔も見ることは出来ない。
泣いて寄り添うことも出来ない。
何も残っていないのだ。
「むきゅううううう!!!!……………ありすを…まりさを…れいむを…かえしてよ!」
決して見ることは出来ない感情を剥き出しにしたぱちゅりーの表情。
涙を浮かべて まくし立てるぱちゅりーなど、まるで虫の雑音の様にしか思っていない顔でみょんが言い放った。
『ぱちぇりーは 頭の良い振りをした ゲスだみょん』
「むきゅ!? なにを…いってるの!? あなたたちは なんなの!? この ゆっくりごろし!!!」
『ぱちゅりーは 手足になる 子分達が潰されれば 何も出来ない ただのクズだみょん』
みょんが ありすがいた泥の上に跳ねてきた。
「こぶんですって? ありすも れいむも まりさも ぱちゅりーの たいせつなかぞくよ!!! あなたたちに なにがわかるのよ!」
『わかるよー 紫もやしのぱちゅりーだからねー あることないこと言って ゲスを率いて騙くらかすのが上手いんだねー』
「馬鹿なゲスしか引っ掛からない嘘で ゲス同士が馬鹿しあってるみょん」
ちぇんが笑いを堪えきれずに飛び跳ねている。
こいつらには悪意しか感じない。
とても同じゆっくりとは思えなかった。
どうしてこんなゆっくりが存在するのかぱちゅりーには分からない。
白いヤツは枝を咥えて座った視線を投げてくる、緑のヤツは動物のような鋭い牙を見せて笑っている。
目の前の全てを拒絶している。
何もゆっくり出来ていない。
けれどこいつらは辛そうでもなく悲しそうな表情もしていない。
『ちぇん達が追いかけっこしてあげるんだよー』
牙を見せびらかしているちぇん達は、仲間の一匹をぱちゅりーに見立てているのか
周りをグルグルと回るしぐさを見せて挑発してくる。
「むきゅ!」
ぱちゅりーは踵を返して跳ねた。
ここで ぱちゅりーも奴らの狂気にかかってしまえば全てが終わってしまう。
アレは本当にありすだったのか?
ありカチューシャを見間違えるはずは無い。
ありすの物だった。
そんな事。ありえない。信じたく無い。
もう二度と会えないのか。
言葉を交わせない。笑顔を見れない。温もりを感じられない。
続きは無い。ぱちゅりーとありすの未来は無くなった。
あずかり知らぬ所で終わらされた。
仇をとりたい。
けれどぱちゅりーにはその力がない。
今持っている感情のままに行動するのは賢者ではない。
自分の願望だけはなく、誰かを思いやる事。
それをぱちゅりーは先刻気づいた。ありすに教えられた。
だからこそ群れの皆がこいつらの暴力に出会わないためにぱちゅりーは跳ねた。
『待つんだよー 捕まえて 全部吐かせてあげるよー』
『小賢しいぱちゅりーが消えれば ゲス達に手を焼くのも 楽になるみょん』
どう逃げても追いつかれる。
だからぱちゅりーは、先ほど視界に入っていた小山に登っていった。
登りきったぱちゅりーが見下ろすと、緑色が睨み白いうねりが笑っていた。
ちぇん達はその長けた足を使わずに小山の下で待ち構えている。
まるで最期は自分で決めろと言っている様に。
『やっぱり馬鹿なんだねー そんなところに昇っても 意味がないんだねー どうするか見ものなんだねー』
『さっさと殺すみょん ゲスは まともな思考が出来ないみょん さっさと死ねばいいみょん もうウンザリだみょん』
すぐに追いかけず遊んでいるちぇん達に、枝を揺らしているみょんはイラだっているようだった。
「ゲス? ぱちゅりーの なにをみて そうおもったのよ! いいかげんにして!」
小山は囲まれ、もう逃げ道は無い。
『ぱちゅりーが ぱちゅりーだからみょん』
「むきゅ? ぱちゅりーは ぱちゅりーよ! だから なによ!」
『ぱちゅりーは 自分の手を汚さずに 他のゆっくりをこき使って 悪さをするゲスだみょん 最悪だみょん
何も知らないくせに いろんな嘘を言って 場を取り付くろうみょん 口だけは達者みょん』
『わかるよー 直ぐに吐いて死んじゃう 出来損ないのゆっくり だからだよーそうしないと 生きていけないんだよー』
『そうだみょん そんな自分で生きる力を持たないゆっくりなんかに 食料は無駄みょん 住処の邪魔みょん 今すぐ消えろみょん』
何がこいつらをそこまで思わせているか分からない。
その紅い瞳に嘘は感じられない。心底ぱちゅりーを毛嫌いしているのだ。
「そんな…そんなのって…」
『ぱちゅりーは 死ねみょん 役に立たない れいむも死ねみょん ゲスのまりさも死ねみょん レイパーのありすも死ねみょん』
「おかしいわよ! ぱちゅりーは うそをいわないわ! れいむだって がんばってるわ!
まりさも わるいこではないわ! ありすは!ありすは いちばんやさしいゆっくりなのよ! わるくいわないで!!」
『糞どもは 糞同士で 仲がイイみょん 自分のゲスさ気がつくハズがないみょん みんな糞なのにみょん』
みょんがちぇんを押しのけて進んでいく。
「わるいこも たまにはいるわ! でも みんなが ゆっくりしていれば みんな いいこになるのよ!
まちがったことをしたら なおせばいいのよ!」
『たまにいる? れいむやら まりさやら ありすやら ゆっくり出来ないゲスだけの中で 何を言ってるみょん
何も変わらないみょん ゲスはゲスのままだみょん』
「すべてが わるいゆっくりなわけないでしょう!? あなたのむれだって みんな せいかくがちがうでしょう!?」
『関係ないみょん ゲスゆっくりは れいむから まりさから ありすから そしてお前から 出てくるみょん だから殺すみょん』
『わかるよー 全部殺しちゃえば 安心なんだよー れいむや まりさがいなくなっても ちぇん達は 何一つ困らないんだよー』
悪いゆっくりは れいむ、まりさ、ありす、そしてぱちゅりーから現れる。
そして でいぶやゲスまりさやレイパーありすなどが、ゆっくりを破滅させる。
だからその源である種族を根絶やしにすればいい。元が無ければ産まれる事もない。
自分達はまったく違う種族であり、いくらそいつらが死のうと関係がない。
完全な排他的で独善的な思想があった。
「…そんなの…へんよ! おかしいわよ! ゆるされないわ!!!」
『もう いいみょん どうせ今すぐ殺されるみょん』
群れの皆が殺される。
まりさが頑張って集めた食料も
れいむが歌いゆっくりしていた巣も
ありすが世話をした幼い子供達も
全て奪われる。
こんな狂った考えによって。
「むきゅ…させないわ………ありすと れいむと まりさが だいすきだった むれを……そんなこと…」
『もういい黙れみょん そこで じっとしてろみょん』
みょんはちぇんの壁を突破し小山に跳ねた。
咥えていた枝は根元が折れるほど力がこめられ瞳は血走っている。
そして、
ぱちゅりーは叫んだ。
「ゆ っ く り し て い っ て ね !」
ぱちゅりーの声が響き渡る。
突然の大声にちぇんは耳を窄めさせて、後方のみょん達は枝を落しそうになっていた。
しかし先頭のみょんだけは怒りを露にする。
『この後に及んで 何を言ってるだみょん!? お前達に ゆっくりする資格も ゆっくりしてやる義理もないみょん!!
その帽子を引き裂いて 目玉を穿って 舌をすり潰して 砂利と泥に混ぜて 殺し尽くしてやるみょん!!!』
みょんが小山に跳ね上がろうとすると、花に眼を奪われた。
紅い花がみっつ。
ただの花だ。
どうして気になるのか分からなかった。
ここを拠点にしてから、よく地形を観察していたはずだ。
しかしこんな花を見掛けた覚えはない。
いいや、あのゲスまりさが隠していた食料と同じだ。
どうして今まで仲間から採取されていなかったのだろうか。
まるで今咲いたようにも感じられる瑞々しい赤色だった。
『…みょん?』
おぼつかない底面から地震が起きたと考えた。
が、そうではない。
山の勾配が変わったのだ。
みょんが小山から転げ落ちると、ぱちゅりーは遥か頭上にいた。
『わ、わからないよー????』
ちぇん達はとっさに小山から散っていた。
散り散りになるちぇんと入れ替わってみょん達が、リーダー格のみょんの後ろに並んだ。
『いいや、わかるみょん』
振動が収まるとゆっくりと小山は横に回転し始めた。
数メートルにも及ぶ巨大な三角錐の上にぱちゅりーがいる。
山肌は土の色と言うより灰色に濁っていた。
頂上は黒く染まり自然の色には見えない。
ふいに生暖かい風が吹き付けてきた。
それは小山から開いた口であり、巨大な緑色の瞳が草木の間からみょんを捉えていた。
『…ドゲスみょん』
『わ、わかるよー デクの坊のドスなんだよー』
反射的に一時退避してきたちぇん達が、小山の正体が判明するやいなや再び集まってきた。
『糞ゲス共が増長する根源みょん こんなのがいるから ゆっくり出来ないんだみょん』
大木のようなドスまりさに対峙しても、みょんが臆する事は無かった。
なぜならば、この群れはドスすらも葬っていたのだ。
熱線や巨体の攻撃は堪えれるものではない。
しかしあくまでゲスまりさをスケールアップしただけのドスだ。
体中を枝と牙で傷つければ泣き叫ぶし、木々を倒して追いかけて来ることも無い。
ただデカいだけだ。
無駄に頭が聞く分、こちらの挑発に乗せられたり仲間ゲスのためにじっとしていたりもする。
『なんて事ないみょん それがゲスのぱちゅりーが 無い知恵を搾り出した結果みょん?』
ぱちゅりーは惚けたような顔をしている。
このドゲスが例のオーラでも出しているのだろうか。
ならば一つ突き刺しでもすれば収まる。
ドスに振り落とされて潰れてしまえばいい。
『ゆっくりしないで ドゲスごと死ねみょん』
みょんがゆっくりの急所であるドスの底部に枝を突き刺した。
そして何度も切り刻もうとしたが
『…みょん!?』
枝が引き抜けなかった。
分厚い皮に引っ掛かったのかと、仲間から新しい枝を受け取ろうとしたが。
『わわわわわわからないよー!?』
突き刺された枝は――――――瞬く間に成長し葉を茂らせた。
『みょん!?』
棒切れが、まるで接木されたように命を宿して木になったのだ。
ドスの底部から生えた枝は風に揺れている。本物だ。
『…し、知らないみょん こんなの知らないみょん』
知らないことはそれだけではない。
そもそもドスの形自体が今まで狩っていたヤツと違っていたのだ。
巨大な三角帽子には、小山に生えていた草がそのままカビのように茂っている。
そしてハリもなくしわがれた帽子の先端には、大きなランタンが吊り下げられ火が灯っている。
それも青白い灯りだ。その灯りは暗い森を照らし浮かびあがらさせて、まるで地面に降りた月の様だった。
肌の質感も ゆっくりとは思えない。
血色の悪い頬は、まるで乾燥した泥のようにヒビ割れて剥がれ落ちてしまいそうだ。
幅の広いツバから落ちている無数の蔦(ツタ)は、蛇のように風に揺れてうねっている。
ドスは何もしゃべらない。元々言葉を発していない様に、夜の湿った空気だけを取り込んでいる。
揺れるランタンの明かりがドスの髪を青白く照らしだすと、リボンや帽子が結ばれているのが覗えた。
結ばれていた言うより、まるで何処へも逃げられないように捕まえられている様にも見える。
薄い金髪に半ば溶け込んでいたのだ。その数はみょん達の群れの比ではない。
途方も無い量の飾りは数えられるはずも無く、まるでゆっくりの死体に群がる蟻軍隊のようにビッシリと存在していた。
『み、みょん! 皆 動けみょん!』
仲間が呆気に取られている最中、みょんは早かった。
ドスが口を大きく開けるや否や口蓋から光が溢れる。
『わかるよーーーーーー!!!!!!』
直線的なドスパークなど、大振りの間抜けな行動である。
ドスの正面にさえ居なければ恐れることも無い。
ちぇんとみょん達が左右に分かれると…ドスパークは放たれた。
『馬鹿なんだねー 当たるワケないんだよー!!!!』
『無能な ドスが 群れの長とか 笑わせるなみょ―――――
熱風も振動も無い。
ドスから放たれた光は森を焦がさなかった。
ただ眩い閃光が無音で辺りを照りし尽くした。
凄まじい光に飲まれた後、みょん達はその場に無傷で残っていた。
【5】
「むきゅ?」
ぱちゅりーが眼を覚ますと、冷たい夜風に身を震わせた。
確か得体の知れないゆっくり達に追われていたはずだ。
『なん…なんだみょん………』
眼下にあの白いゆっくりがいた。
その姿には傷一つないが、とても苦しそうにしている。
「むきゅ!?」
100匹のゆっくりが ぱちゅりーを見つめていた。
そうだ、気の触れた群れから逃れて この小山に登った。
自分の知っている知識を信じて。
『みょん達が… 何をしたんだみょん…どうして…みょん…』
みょんは枝を咥えていなかった。
ちぇん達の口は閉じて牙は見えない。
他のみょん達も枝を落してぱちゅりーを向いていた。
「あなたたちは ありすを……まりさを… れいむを… みんなを うばったのよ!」
『みょん達は…ゆっくりしたいみょん…ちぇん達も…ゆっくりしたいみょん…
だから ゆっくり出来ないやつらを 殺すみょん 何も悪くない…みょん…』
体を引きずるように這って、みょんはドスの腹を登っていく。
「みんなが わるいこ じゃないわ!」
『それは たわ言みょん… どんなれいむも まりさも ありすも… どうせ いつかゲスになるみょん
だから善いとか悪いとか 違いなんてないみょん…全部 殺す…みょん…
れいむや まりさが いなくなっても…何も 困らないみょん
みょんでも ちぇんでもない やつらみょん…どうなろうと関係ないみょん…』
みょんの紅い瞳が淡くなっていた。
「それでも… いたとしても そんな ゆっくりできないゆっくりとは かかわらないわ!」
『その通りだみょん… お前達は追い出したんだみょん…
ゆっくり出来ない 普通でないゆっくりを 群れから追放したんだみょん』
ドスの足元にいたちぇんが無表情のまま倒れた。
するとぱちぇりーの足元から一本の茎が伸びる。
たちまち蕾を実らせると、見たことも無い紅い花が咲いた。
『異端を…排除してきたみょん 普通ではないから 自分達と違うゆっくりだから…
どうせ困らないみょん……自分達は沢山いるからみょん…その小さな一角を追放しても そいつらが外で野垂れ死のうが…関係なかったみょん…』
更にちぇんやみょん達が地面に倒れると
その度に ぱちゅりーの足元からは…いや草に覆われたドスの帽子には紅い花々が咲き乱れる。
『みょん達も 同じみょん…
れいむでも まりさでも ありすでも ぱちゅりーでもないから 普通じゃないゆっくりだからみょん だから…』
みょんがドスを登る度に、紅い花で三角帽子が飾られていく。
『見た事が無いから… 気味が悪いから…巣から追い出され…希少種だからと…人間に捕まえられ…
そして 仲間じゃないから…ゆっくりじゃないから…助けてもらえないみょん…』
「あなた…いったい…どこから…」
『みょんの傷は… ふらんにカジられたものじゃないみょん…
人間の里で作られたみょんが… 逃げ出して…やっと出会えた…同じゆっくりに… …切られて…』
99本の花が月を向いている。
『…ゆっくり………できない…………化け…物は……死ね………って…………みょん…………………………………………………』
ドスから落ちていくみょんの瞳は、髪と同じ色になっていた。
『……れいむは…死ね…』
『……まりさは…死ね…』
『……ありすは…死ね…』
『……みんな…死ね…』
紅い花畑に佇む ぱちゅりーの姿は、とても白く感じられた。
捜索隊が見つけたのは美しい100輪の花々だった。
きっとまりさが自分達を驚かすために黙っていたんだと、ゆっくり達は喜んだ。
少し離れた所にも寄り添う4輪の紅い花があったのだが
仲睦まじさに微笑むと「ゆっくりしていってね!」と声をかけて後にした。
by キーガー(ry
ゆっくり
ゆっくりxオリキャラ
絵付き
2009/04/11 どうして?
ttp://yukkuri-futaba.sakura.ne.jp/published/src/1242540956284.png
2009/04/13 三匹のれいむ
ttp://yukkuri-futaba.sakura.ne.jp/published/src/1242541052104.png
ttp://yukkuri-futaba.sakura.ne.jp/published/src/1242541229821.png
2009/04/16 逆お家宣言
ttp://yukkuri-futaba.sakura.ne.jp/published/src/1242541290577.png
2009/04/30 れいむとラジコンカー 触発あきさんパラレル
ttp://yukkuri-futaba.sakura.ne.jp/published/src/1242542819018.png
2009/05/17 本当の親
ttp://yukkuri-futaba.sakura.ne.jp/published/src/1242577607975.png
2009/05/24 遺伝
ttp://yukkuri-futaba.sakura.ne.jp/published/src/1243172904574.png
挿絵 byM1あき
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このSSへの感想
※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね!
- あのみょんとちぇん 制裁されればいいのに
-- 2021-04-10 14:02:14
- このみょんとちぇんが人間に虐待されてればスッキリしたのに -- 2017-11-18 11:55:06
- でも実際にみょんとちぇんが悪役のssってあまり見ないんだよなぁ -- 2016-08-03 08:14:54
- あいつら加工場でレイパーにおかされればいいのにq(^-^q) -- 2016-02-01 16:11:39
- ゲスなみょん、ちぇんっていたのか・・・ -- 2015-10-21 17:44:52
- タイトル詐欺ってどうゆうこと? -- 2015-08-19 20:43:12
- 下種じゃないのをころすのはげすだ
-- 2014-11-19 01:37:41
- ゲスの群れどもは抹殺だ! -- 2014-08-14 17:34:54
- ありすを殺したみょんとちぇんは、マスタースパークを受けるべきうん!
ぱちゅりーを殺そうとした、みょんとちぇんは、夢想封印を受けるべきうん! -- 2013-07-16 20:36:21
- 100匹のゲスの群れかぁ、フル装備で突っ込んで三國無双がしたいぜヒャッハー
人間が虐待するのはゆっくりできるが、ゆっくりが虐待するのは許せないんだ、だからせいっさいしたいな -- 2012-12-13 20:59:46
- たいとるさぎさんはすっきりできないよ・・・ -- 2012-10-03 00:03:20
- タイトル詐欺だな結局ゲスは生きてるのかよあとちぇん達は人間の仕事奪うなよなそれとゲス以外も殺すからいつまでたってもゲスがのさばるんだよ -- 2012-07-23 13:53:39
- みょんとtぇん死んでよねぇマジで -- 2012-04-18 07:19:10
- みょんちぇんが氏ぬべき -- 2012-02-19 12:55:30
- 「ゲスを制裁するだけ」……? -- 2011-03-22 13:33:53
- いい作品だと思うようん。でも長すぎ。それに見ててイライラするから全然ゆっくりできなかったよ。でもれいむ殺しはなんでゆっくりできるんだろうか -- 2010-12-04 05:24:21
- 苛立つのが間違ってるんだよw
ちぇんとみょんはえらく達者に見えるけど、こいつらもゆっくりだぞ?
人間と人間の会話なら苛立ちもわかるけどな
自分達はゆっくりできるからと差別して、深く考えずに荒れた考えもって、他者(他ゆ)を傷つけていく
だけども規模はゆっくりクラス って喜劇として俺は見てたわ
みょんちぇんを擁護するわけじゃないけど
法の無い状態で多数派が少数派を傷つけても良いってなったら相当恐ろしいとは思うぞ
他ゆを殺す免罪符にはならんけど、荒れるのは仕方が無いと思うわ -- 2010-10-03 15:10:45
- 集団心理みたいのもあるんじゃね?ゆっくりは単純なんだし。
人間だって民族浄化とかやらかしちゃったしな…
ただ、タイトルがなぁ
シンプルな勧善懲悪な内容を想像させない?ゲスいのが制裁されてすっきりー、的なヤツ
-- 2010-09-14 00:58:23
- 確かにみょんとちぇんははムチャクチャな事を言っていたが
れいむに関してはみょんとちぇんに同意w
れいむは巣で歌って遊んでゆっくりしてただけ
れいむごろしはゆっくりできるねw -- 2010-08-29 00:28:44
- 感慨深いものだった。自分と違うから消してしまえばいい。
この考えを持ったやつが強かったりすると、たまったもんじゃない。
もっとも、そいつが消えたら別の意味でたまらんがw -- 2010-07-29 05:29:18
最終更新:2009年10月27日 18:34