ふたば系ゆっくりいじめ 1025 妖怪饅頭の話

妖怪饅頭の話 13KB


悲劇 仲違い ゲス 愛護人間 独自設定 始祖ゆっくり


ポールあきとの約束

 ・かなりオカルトな話な上に、ゆっくり関連の設定が妙な方向にぶっとんでおりますので、お気をつけください。
 ・作中の薀蓄は、半分くらいがいいかげんなものだと思いますので鵜呑みにはしないでください。
 ・過去作の設定と矛盾するところがあった場合は、見なかったことにしてください。
 ・あと、あまあまください。実験用の蒸留水さんにブドウ糖さん溶かしたものは、もう見たくないです。

――――――――――――――――――――

おやおや、よく来たね、チビちゃんたち。
酒のつまみと得体の知れない井戸水ぐらいしかないけど、ゆっくりしていってね。

ん、なんだい?
また、オババの話を聞かせて欲しいって?

おうおう、いいよいいよ。
オババも、お話は大好きだからね。

それじゃあ、何の話をしようか。
頭を失くしたちるの、一人ぼっちのキャハハまりさ、熱帯夜の樽さなえ……ん? 
怖い話は、昨日したから、今日は怖くない話がいいって?

じゃあ、薔薇強姦魔なんてどうだい?
お母様(しんき)によって創造された七体の強姦魔(レイパー)、薔薇強姦魔(ローゼンレイパー)。
愛しのお母様を姦淫するために至高の強姦魔――吾理守(ありす)を目指して、姉妹は殺し合う。
裏切り、近親相姦、薔薇一物(ローザぺにぺに)の奪い合い。
繰り広げられる、カスタードクリームでカスタードクリームを洗うクリームみどろの愛憎劇。
舞台の幕が閉じるとき、彼女たちは何を見るのか……。

へ? そっちの方がよっぽどホラーだって?
駄目かい?
んー、困ったね。
今日は、とっときの怖い話をするつもりだったから、怖くない話は考えてなかったんだよ。

ほえ? 「始まりのゆっくり」の話を聞きたいって?
でも、いいのかい? あの話は、一昨日もしたよね。
……ほえほえ、そんなにあの話が好きかい。
うんうん、それじゃあ、そうしようか。
実は、オババもあの話が大好きなんだよ。
みんなも、それでいいかい?


じゃあ、始めようかね。




「妖怪饅頭の話」




あれは、いつの時代のことだったか。
政治の中枢がまだ京都にあった頃、この国では、いろんな所で争いが起きて、些細なことで皆がいがみあって、片時もゆっくりした時間が流れていなかったそうだよ。
でもね、その頃の人間ってのは、そんな苦しい時でも「感謝」を忘れなかった。
自分たちが食べる分も少ないってのに、恵みをもたらしてくれる神様と大地に感謝して、毎年毎年、お供え物をしていたんだとさ。

ある村でも、その例に漏れず、お祭りのときには、あっちの家からちょっと、こっちの家からもちょっといった具合に食べ物を出し合って、お供え物をしていたんだ。
その握り飯や団子といった、それはそれは美味そうなお供え物の中には、何個かのお饅頭もあった。
そして、驚いたことにね。
その饅頭の内二つは、命を持ってたんだよ。
普通、命を持たない物に魂が宿るには、長い年月が必要だって話だけど、昔の人たちは、神仏や妖怪変化っていうものを信じて暮らしてたからね。
そういった人間の心の有り様は、世界にほんの少しずつ影響してるから、皆が科学以外を信じることがなくなった今と比べると、昔は物が命を持ちやすかったんだよ。

それに、そもそもお饅頭自体に「人間の頭」っていう意味合いが込められていたからね。
おや、この話はしなかったかねぇ?
中国の孔明さんって人が、荒れ狂う川の水を沈めるために、人間の生首の代わりとして生贄に奉げた食べ物がお饅頭の始まりだって言われているんだよ。
まあ、そんなわけで、お饅頭ってのは、人に近い性質を帯びやすい食べ物だったわけさね。

さて、この二つのお饅頭なんだけど。
実は、人間と仲良くしたいと思ってたのさ。

自分たちの前で楽しそうに遊ぶ子供たち、笑いながらお話をしている農夫、赤ちゃんを抱いて頭を撫でるお母さん。
何気ない日常風景でも、動けもしない、おしゃべりもできないお饅頭たちにとっては、きらきらと輝く素敵なものに感じられたんだろうね。

みんなといっしょにあそびたい。
おしゃべりしたい。
ぎゅってされたい。
あたまをなでなでしてもらいたい。

いいな、いいな、たのしそうだな、おともだちになりたいな。

そういった思いが積もりに積もって行った。

そんなある日

「「ゆっくりしていってね!!!」」

赤いリボンに、黒い髪のゆっくりれいむ。

「れいむは、れいむだよ!!!」

黒い帽子に、金色の髪のゆっくりまりさ。

「まりさは、まりさだよ!!!」

その子たちは、妖怪になった。

勿論、すぐに人間たちと仲良くなることなんて出来なかったよ。
そりゃそうだね、村人からすれば、生首の化け物が自分たちの言葉を話しながら跳ね回ってるんだ。
薄気味悪いなんてもんじゃないよ。
子供は泣き出すは、爺様は腰抜かすは、てんやわんやの大騒ぎってなもんだよ。
そんな具合で、終いにゃ近くの寺から坊さん呼んで来て御祓いしてもらおうなんて話まで出てくる始末さ。
現代人からすれば、ゆっくり相手に大騒ぎしている昔の人は、随分とおもしろいものに映るんだけどね。

こうして初っ端から、最悪な印象を持たれちまったわけさ。
最近の根性なしのゆっくりどもなら、ここでもう諦めちまいそうなもんだけど、その子たちは人間と仲良くなることを決して諦めなかった。
「感謝」の念を沢山込めて作られたお饅頭の低級妖怪は、良く言えば物凄く純粋、悪く言えばどこまでも単純だったのさ。
友達を作るには、うってつけの性格さね。
それに、その子たちは、誰とでも仲良くなれる才能を持ってた。
それが

「「ゆっくりしていってね!!!」」

なんだよ。

「ゆっくりしていってね!!!」

疲れている人がいれば、全身全霊の「ゆっくりした気持ち」つまり「陽気」を言葉に乗せて相手を癒す。

「げんきだしてね!!! すーり、すーり!!!」

絶望した人がいれば、頬を摺り寄せて、相手の「ゆっくりしてない気持ち」つまり「陰気」を引き受けちまう。

人間に認めてもらいたいと願って、毎日毎日、そんな風にして頑張った。
雨と雪には、負けちまうけど、風にも、夏の暑さにも負けずに村中をテインテインと跳ね回った。
最初は、気味悪がってた村人たちも、そんな健気な姿見せられちゃ、邪険に扱えないってなもんさ。
この子たちを「ゆっくりオバケ」とか「生首饅頭」なんて呼んでた人間は、次第に少なくなって行った。
一人、また一人とお友達が増えていった。

そうして沢山のお友達が出来て、皆から「れいむ」「まりさ」と名前で呼ばれるようになってからは、毎日が笑顔でいっぱいだった。
遊んだり、お喋りしたり、村人に一時の癒しを与えるために村中を跳ね回ったりして一日中を過ごして、日が暮れたら川で体を洗ってもらう。
辺りがとっぷりと暗くなる頃には、大好きな人間の暖かい腕に抱かれて眠りに就く。
さぞ、幸せだったろうね。

勿論、中には「ゆっくりはゴミだ! カスだ! 死ぬべき存在だ! 爆発しろ! 煮えろ! 泡立て!」やら「ヒャッハー!!! 虐待だー!!!」やらと、まるで時代を先取りしたかのような不思議な主張を続ける虐待お兄さんもこの頃からいたけれど。

まあ、それでも、ゆっくりは、多くの人々に愛されて末永く幸せに暮らしましたとさ、めでたし、めでたし



……で終われると本当によかったんだけど、ねぇ。

可愛そうだけど、ここがこの子たちの物語の絶頂だったのさ。

妖怪や幽霊、特に力の弱い子たちがどうやって増えるのかは、前に説明したね。
……そうさ、噂だよ。
人が噂話を信じることで、虚ろな存在は本当に有るものとして力を得る。
そして、噂話を口にすることで、そいつは形を持つんだ。
トイレの花子さんを見たって話が日本中のいろんな小学校でされてるのはそのせいさ。

最初の子たちに友達が出来れば出来るほど、その存在は噂話として人々の間を行き交い各地に広まっていった。

「生首みたいな饅頭の妖怪がいる」

これは、最初に噂が生まれたところから、随分と離れたところでされていた噂さ。
噂ってのは、広まるうちに形を変えちまうもんなんだよ。
確かに、生首みたいな饅頭ってのは、言い得て妙だね。
でも、それじゃあ「れいむ」と「まりさ」のことを正しく伝えたとは言い難い。

こうして、情報がちょっとずつ、ちょっとずつ呆けながら伝わっていった結果、国中のいたる所でその子たちが生まれたのさ。

「「「「「「「ゆっくりしていってね!!!」」」」」」」

「次の子」たちは、様々な面で「最初の子」たちとは異なった。
そう、最初の子たちよりも優れていたんだよ。

「生首みたいな」という言葉が前面に押し出されて噂が広まった結果だね。
次の子たちは、より人間に近い性質を持って生まれてきたのさ。

単純な思考は、ほんの少し複雑になった。
少しの単語と短い文しか使えなかった知性は、もっと広い言葉の引き出しと上等な帳面を手に入れた。

快、不快、好き、嫌いといった単純な感情は、もっともっと複雑になった。
恋をして夫婦となること、愛し合い子を成すこと、子を慈しみ育むことを覚えた。

でもね、それは決して良いことなんかじゃなかったんだよ。

確かに、少しだけ頭は良くなった。
でも、それは、ひどく中途半端なものだったのさ。
賢くなったとはいっても、人間の真似っこだもの。
本物の人間の賢さには及ばない。

だから、人間の「決まりごと」や「守るべき当たり前のこと」といったものが理解できない。
最初の子たちは単純だったからね。
理解できなくても駄目だと言われたら止めるし、怒られればちゃんと謝った。
まあ、すぐに忘れちまうんだけどね。

でも、次の子たちは、なまじ物事を考えることが出来るもんだから、言われたことを素直に受け止められない。
やれ、野菜は勝手に生えてくるだの、誰もいなかったからここは自分たちの家だのと言って、人間たちを大いに困惑させ、怒らせ、不興を買っちまったんだ。

こうしたいがみ合いのせいで、人間とゆっくりの仲に罅が入った。


確かに感情は豊かになった。
恋や愛といった素敵のものが生まれた。

怒り、悲しみ、妬みといった余計なモノと一緒に。

その余計なモノの中で特に厄介なのが「欲」さ。
欲ってのは、確かに全ての生き物が持ってる。
「ご飯を食べたい」「眠りたい」といった欲を感じられないと、まず生きることが出来ない。
でも、人間の持つ欲ってのは、どんな生き物の持つそれより複雑で大きい。
他者を蹴落としてでも幸せでありたい、誰よりも優れた存在でありたい……。
ただ生きるだけなら必要のない欲求。
普段は、「理性」でもって押しつぶされている願い。
そして、理性ってのは、知性、賢さからくるもんさ。
そう、さっきも言ったように次の子たちの賢さは、中途半端だった。
つまり、理性も中途半端なものだったんだよ。

その結果、次の子たちの中に「ゆっくりさせる」ことより「ゆっくりする」ことを大事にする連中が増えてった。
そうして起こったのが陰気と陽気のバランスの崩壊、それに続く「ゲス」の誕生さ。

さっき、ちょろっと言ったけど、陽気ってのは、ゆっくりした気持ちのことだね。
ゆっくりが幸せを感じたときに生まれるそれは、血肉ならぬ餡子皮となり、心を豊かで寛容にしてくれる。
ただ、薬も過ぎれば毒になる。
摂りすぎた陽気は、その身を必要以上に肥え太らせ、心を怠惰で傲慢なものに変えちまう。
こうして体と心に肉を付けたゆっくりは、こう考えるようになったのさ。

――こんなにもゆっくりした自分は特別な存在で、他の連中は自分に仕えることが至上の喜びに違いない。だから、自分はもっとゆっくりするべきだ――

そうして、こいつらは、もっと沢山の陽気を求めてゲスな行為を行うようになった。

その辺の草よりも遥かに美味い人間の食い物を奪う。
龍脈、地面の中でも特別にゆっくりしたところに巣食って草木を枯らす。
出入りが多くて気の流入の多い人間の家でお家宣言といった具合にね。

その一方で、ゆっくりできなくなった連中もいた。
陰と陽は、二つで一つ。
必要以上にゆっくりした連中のツケは、その仲間が被ることになったのさ。
陰気ってのは、ゆっくりしてない気持ち。
ゆっくりが抑圧を感じたときに生まれるそれは、身を引き締め、精神を鋭く頑強にする。
でも、それは薄めた毒。
少量ならば薬でも、沢山摂ればやっぱり毒だよ。
押し付けられた余計な陰気は、表情を剣呑にして、心を嫉妬や憎しみといった負の感情で満たす。
育まれた負の感情は、もっと沢山の陰気と「もっと悪いモノ」を惹き付ける。
そして、陽気に対する強烈な飢えをもたらし、ゆっくりをゲスに変える。

たまに、共食いしているゆっくりを見るだろう?
あれなんて、まさにそれさ。
ゆっくりして陽気を掻き集めるよりも、元から持ってる奴から奪ったほうが早いからね。

でも、もっと悲惨なのは、引き寄せた悪いモノとくっついちまった連中さね。
餓鬼魂(がきだま)なんかとくっついたら二度と満たされることがない。
ツガイ、親、子供、友人、終いにゃうんうんや石なんてものまでかっ喰らうようになって、最後は自分の腹を貪り喰らって死ぬ。
そして、もっともっともーっと悪いモノとくっついたら……

人間にも害を及ぼす。

こういったゲスが生まれてきたせいで、人間とゆっくりの仲は完全に引き裂かれちまった。
勿論、次の子たちの全てがゲスだったわけなんかじゃないよ。
素直な善い子たちだって、いっぱい、いっぱいいたんだ。

でもね、坊主憎けりゃ袈裟まで憎しって言ってね。
人間は、ゆっくりのことが大嫌いになっちまった。
全国の至る所で「ゆ狩り」なんて言って、ゆっくり狩りが行われた。

そうして、ゆっくりたちは、人間の集落を追われて山々へと散って行ったのさ。
その中に、最初の子たちがいたのかどうか、今も生きてるのかどうか……。
妖怪に寿命はないから、今も元気でやってるかもしれないし、とっくに殺されてるのかもしれないね。
それは、誰にも分からない。
めでたし、めでたし。

ん? ちっともめでたくないって?
あれま、チビちゃんにこの話をするは、初めてだったかね?
ふっふっふ

ほら、窓の外を見てごらん。
人間の街だ。
区画整備がなされて、風水と科学で守られた、ゆっくりにとって住み心地がいいとは、決して言えない人間のための都市だ。
それなのに、ゆっくりはいなくならない。
桃源郷を夢見て山から下りて、現実を知って絶望しても、何とか人間の街で暮らそうとする。
人間の食い物が魅力的なのか、帰れない事情があるのか……。
勿論、そういった込み入った事情もあるんだろうさ。
でもね、オババは、こう思うんだ。

今でも最初の子たちの願い「人間と友達になりたい」って思いが心のどっかにあるからなんじゃないかってね。

さて、お話は終わりだよ。
チビちゃんたちのお母さんが迎えに来るまでは、まだまだ時間もあることだし、みんなで散歩にでも行こうか。

な~に~?
外は寒いから家の中で、KOY(キングオブユックリ)がしたいだって?
こんないい天気に、何言ってんだい。
40秒で支度しな!

あとがき

前からやってみたかった妖怪発祥ネタ。
いかがでしたでしょうか?
もし、有りならば「シルクロード経由で中国から欧州に渡った飛頭蛮っていう妖怪がれみりゃ、ふらんになる」とか「仙桃から生まれた最初のてんこが仙人の修行を真似して徐々にドMに開発されていく」というネタも書いてみたいっす。

ご意見、ご批判など、お待ちしております。

あと、作中に出てきた「樽さなえ」は、某怪奇小説から勝手にパチりました。
樽さなえ→タ ル サ ナ エ
で、文字の順番を入れ替えると、悪魔の名前が……。
ゆんやぁぁぁぁ!!! こわいぃぃぃ!!!

それにしても、婆ちゃんの語り口調ってのがわからないよー。




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このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね!
感想

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  • ドーラwww
    -- 2011-10-25 20:56:11
  • 「40秒で支度しな!」で最後はしっかり笑わせてもらったw -- 2011-08-13 01:46:59
  • ゆ虐界にアラマタ御大降臨か?!
    最後の「40秒で支度しな!」まではそう思ってました。 -- 2010-12-12 16:14:23
  • 良い設定話だ。面白かったよー! -- 2010-12-07 22:20:24
  • 妖怪噺は無条件で大好きです。 -- 2010-08-09 18:42:29
  • そのゲスゆっくり達も甘味を多くの民衆に提供し飢饉が発生した時にも多くの人々を救うわけで・・・
    それらも含めて豊穣の神からの「感謝」に対するお返しなのかもしれない -- 2010-07-31 23:22:09
  • 面白かったですね!
    虐待無しでも夢中になって読んでしまった位に
    そう言えば、中国の妖怪でチョンチョンなんて言うのも居ますね、人の頭だけが飛んでる様な妖怪です
    不吉な事が起きる前触れとも言われて居る妖怪です
    でもイラストとか設定見るとどう見てもゆっくりに見えてしまいますw -- 2010-07-20 01:12:44
  • 超面白かった。ぞくぞくした。 -- 2010-06-20 06:41:26
最終更新:2010年03月19日 18:23
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