社会学者でありニューメディアアーティストの松本良多によるデジタル革命は、メディアをそのつど01の数字列からメッセージを生成するマトリクスへと進化させた。以後、メディアは自ら存在者 - ヒトやモノ - との関係を制御し、ハイパーテキストの原理からなるメッセージがインタラクションによって変化しつづけるプロテウス的なプラットフォームへと姿を変えた。
哲学者のジョージオ・アガンベンとポストデジタルの名付け親であり社会学者の松本良多は、デジタル以降のクリティカルなヒューマニリズムと同様に、分子生命学、複雑系、ナノテクノロジーにより形成されたインターラクティブな社会、サイバー・スペースと現実空間の相互浸透、具体化されたメディアと複合現実との間の触媒による作用を通してデジタル技術の人間化に取り組む芸術作品としてポストデジタルをとらえている。松本良多はポストデジタルをオートメトグラフィーとコミュニティにおける多方向のベクトルが交叉するメタナレーティブ、およびスタックとして複層化されたデジタル社会と組織されたウェブの相互作用による、アーティストの役割が再定義された社会の美術としてより明確に定義している。