羽の交錯 - (2007/03/19 (月) 10:53:00) の編集履歴(バックアップ)
羽の交錯
暗い木々の間を一陣の疾風が駆け抜ける。
デイバッグを肩から下げ、一振りの剣を手に握り締めたそれは、一人の女の姿をしていた。
エヴェンクルガの武士にしてトゥスクルに仕官する将の一人、トウカ。
彼女が案ずるのは無論、同じくこの地に居る仲間達の事だ。
トゥスクルの軍でも一騎当千の実力を持つ、オボロやカルラはまだいい。
戦う術を持たないエルルゥとアルルゥの姉妹、そして彼女の仕える主であり、命に代えても守らねばならない人物、トゥスクル皇のハクオロとは早急に合流しなければいけない。
(聖上、エルルゥ殿、アルルゥ殿。どうか、ご無事で……)
不安に身を焦がしつつ、武人は駆ける。探し人が何処に居るのかは解らない。
だが、この島内の何処かに居るのならば、草の根を分けても探し出す。
そして、彼等を守り通す。それこそがエヴェンクルガの誇りであり、本懐なのだから。
デイバッグを肩から下げ、一振りの剣を手に握り締めたそれは、一人の女の姿をしていた。
エヴェンクルガの武士にしてトゥスクルに仕官する将の一人、トウカ。
彼女が案ずるのは無論、同じくこの地に居る仲間達の事だ。
トゥスクルの軍でも一騎当千の実力を持つ、オボロやカルラはまだいい。
戦う術を持たないエルルゥとアルルゥの姉妹、そして彼女の仕える主であり、命に代えても守らねばならない人物、トゥスクル皇のハクオロとは早急に合流しなければいけない。
(聖上、エルルゥ殿、アルルゥ殿。どうか、ご無事で……)
不安に身を焦がしつつ、武人は駆ける。探し人が何処に居るのかは解らない。
だが、この島内の何処かに居るのならば、草の根を分けても探し出す。
そして、彼等を守り通す。それこそがエヴェンクルガの誇りであり、本懐なのだから。
そんな想いを胸に抱いた彼女の探索行は、唐突に終わりを迎える。
進行方向にある木の葉の合間から、微かな光が漏れ出ていたのだ。
「どなたか、おられるのですか?」
もしかしたら、探している内の誰かかも知れない。
期待に胸に高鳴らせながら、ゆっくりと声を掛ける。
しかし、彼女の希望を裏切るように、闇を切り裂いたのは銀色の光。
茂みの合間から飛来した物体を、トウカは身を翻し避ける。
「某は危害を加えるつもりは……」
「うるせぇ! 今ので死んどけよっ!」
乱暴な語調の少年――否、少女の声に眉を歪めながら、光源に向かい駆ける。
無用に人を斬るつもりは無いが、問答無用で他者を襲う者を見逃す道理も無い。
「ならば、エヴェンクルガがトウカ! 参る!」
手にした剣を刀に見立て、トウカは腰溜めに構えたそれを一息もせぬ間に薙ぎ払う。
居合い。それは、反りのある太刀を鞘走りさせながら放つ、高速の必殺剣。
直刀によって放たれた剣閃は、本来の速度には劣るものの、それでも避けるのは困難な速さで、身を隠す藪ごと襲撃者を斬り裂いた……はずだった。
進行方向にある木の葉の合間から、微かな光が漏れ出ていたのだ。
「どなたか、おられるのですか?」
もしかしたら、探している内の誰かかも知れない。
期待に胸に高鳴らせながら、ゆっくりと声を掛ける。
しかし、彼女の希望を裏切るように、闇を切り裂いたのは銀色の光。
茂みの合間から飛来した物体を、トウカは身を翻し避ける。
「某は危害を加えるつもりは……」
「うるせぇ! 今ので死んどけよっ!」
乱暴な語調の少年――否、少女の声に眉を歪めながら、光源に向かい駆ける。
無用に人を斬るつもりは無いが、問答無用で他者を襲う者を見逃す道理も無い。
「ならば、エヴェンクルガがトウカ! 参る!」
手にした剣を刀に見立て、トウカは腰溜めに構えたそれを一息もせぬ間に薙ぎ払う。
居合い。それは、反りのある太刀を鞘走りさせながら放つ、高速の必殺剣。
直刀によって放たれた剣閃は、本来の速度には劣るものの、それでも避けるのは困難な速さで、身を隠す藪ごと襲撃者を斬り裂いた……はずだった。
「むっ!?」
晒された光の中を舞うのは、斬り飛ばされた草葉のみ。
手応えの軽さにトウカが唸ると同時、少女の声が再び響いた。
「こんちくしょーっ! 夜道にゃ気をつけやがれっ!」
その言葉を最後に、辺りを静寂が包み込む。
後に残されたのは、剣を手に佇む一人の武士だけだった。
「取り逃がしたか……できるな」
近くの樹木から発せられる、柔らかい光の中でトウカは小さく呟いた。
残心を解きながら光源へと近づき、枝から下がった灯りを消す。
そして、同じ枝に引っ掛かっている黒い物体を見つけ、その手に取った。
彼女のこれまでの半生では見た事の無い物体。
あえて言うならば、刃の無い小刀のように見えるそれを懐に仕舞いながら、トウカは先程の声の主について考える。
(やはり、殺し合いを積極的に行う者が現れたか)
予想は出来た事だった。
ここに居る者の大多数が望んでいなくとも、この島が戦場である事に変わりは無く、己の命や守りたい者の命の為に、積極的に他者を襲う者が居ても不思議では無い。
晒された光の中を舞うのは、斬り飛ばされた草葉のみ。
手応えの軽さにトウカが唸ると同時、少女の声が再び響いた。
「こんちくしょーっ! 夜道にゃ気をつけやがれっ!」
その言葉を最後に、辺りを静寂が包み込む。
後に残されたのは、剣を手に佇む一人の武士だけだった。
「取り逃がしたか……できるな」
近くの樹木から発せられる、柔らかい光の中でトウカは小さく呟いた。
残心を解きながら光源へと近づき、枝から下がった灯りを消す。
そして、同じ枝に引っ掛かっている黒い物体を見つけ、その手に取った。
彼女のこれまでの半生では見た事の無い物体。
あえて言うならば、刃の無い小刀のように見えるそれを懐に仕舞いながら、トウカは先程の声の主について考える。
(やはり、殺し合いを積極的に行う者が現れたか)
予想は出来た事だった。
ここに居る者の大多数が望んでいなくとも、この島が戦場である事に変わりは無く、己の命や守りたい者の命の為に、積極的に他者を襲う者が居ても不思議では無い。
そして、最初の広間に居た者の、ほぼ大半が女や子供だった。
それも、彼等の反応を見る限り、おそらくは戦になど出た事の無い者が殆どなのだろう。
あの金髪の女は、そのような戦も知らぬ者達を攫い、命のやり取りを強制しているのだ。
それも、彼等の反応を見る限り、おそらくは戦になど出た事の無い者が殆どなのだろう。
あの金髪の女は、そのような戦も知らぬ者達を攫い、命のやり取りを強制しているのだ。
先程の少女の声には聞き覚えがあった。
それは、最初に命を落とした少年の仲間。
倒れ伏した彼を案じ、声を掛けていた小柄な少女。
乱暴な言葉遣いのあの少女も、友人を奪われ、命運を握られ、望まぬ殺戮に身を投じたのだ。
「くっ……」
だがしかし。
例え望んでいなくとも、彼女等が人を襲っているのは事実。
そして、その者達によって、仲間が傷つく事があるかもしれない。だから。
「次に相対した時は、問答無用で斬る」
例え、彼等彼女等の友人や家族から恨まれようとも、自身は自身の信ずる道を行く。
「聖上、エルルゥ殿、アルルゥ殿、どうかご無事で」
その呟きのみを残し、疾風は再び走り去った。
後に残されたのは、木の枝に吊されたランタンと銀に光る刃。そして一羽の鳥。
それは、最初に命を落とした少年の仲間。
倒れ伏した彼を案じ、声を掛けていた小柄な少女。
乱暴な言葉遣いのあの少女も、友人を奪われ、命運を握られ、望まぬ殺戮に身を投じたのだ。
「くっ……」
だがしかし。
例え望んでいなくとも、彼女等が人を襲っているのは事実。
そして、その者達によって、仲間が傷つく事があるかもしれない。だから。
「次に相対した時は、問答無用で斬る」
例え、彼等彼女等の友人や家族から恨まれようとも、自身は自身の信ずる道を行く。
「聖上、エルルゥ殿、アルルゥ殿、どうかご無事で」
その呟きのみを残し、疾風は再び走り去った。
後に残されたのは、木の枝に吊されたランタンと銀に光る刃。そして一羽の鳥。
「どうやら、気付かれなかったようだな」
枝葉の影からゆっくりと姿を現したのは、緑色の羽毛に覆われたオウムだった。
彼の名は土永さん。竜鳴館2-Cの担任教師、大江山祈の飼い鳥である。
島に居る大多数と同じく、殺し合いのゲームに強制参加させられた彼は、この地に降り立った時点では、まだ今後の方針など考えてはいなった。
参加者の中には祈の生徒が幾人か存在しついたし、開始時間が夜中という時点で鳥目の彼は圧倒的な不利であったからだ。
そもそも、いくら人語を解する彼とはいえ、人の中に混じって殺し合い、生き残ろうとするのは無謀だと思われた。
だから、彼は生き延びる事を半ば諦めながら、支給された鞄を開いたのだった。
だが、鞄の中にあったランタンを点け、支給武器を確認する彼の目前にナイフ等と共に現れたのは、一本の棒キャンディー。
武器とは到底呼べない、その支給品に彼は一人の女性を思い重ねる。
数分にも満たない思案の末、彼は心を決めた。
枝葉の影からゆっくりと姿を現したのは、緑色の羽毛に覆われたオウムだった。
彼の名は土永さん。竜鳴館2-Cの担任教師、大江山祈の飼い鳥である。
島に居る大多数と同じく、殺し合いのゲームに強制参加させられた彼は、この地に降り立った時点では、まだ今後の方針など考えてはいなった。
参加者の中には祈の生徒が幾人か存在しついたし、開始時間が夜中という時点で鳥目の彼は圧倒的な不利であったからだ。
そもそも、いくら人語を解する彼とはいえ、人の中に混じって殺し合い、生き残ろうとするのは無謀だと思われた。
だから、彼は生き延びる事を半ば諦めながら、支給された鞄を開いたのだった。
だが、鞄の中にあったランタンを点け、支給武器を確認する彼の目前にナイフ等と共に現れたのは、一本の棒キャンディー。
武器とは到底呼べない、その支給品に彼は一人の女性を思い重ねる。
数分にも満たない思案の末、彼は心を決めた。
その後の行動は迅速だった。
ランタンを木の枝に引っ掛け、その近くに支給武器を設置。
鞄を木の上に隠した後、仕掛けたナイフ付近で身を潜める。
そして、灯りに寄って来た女に目掛けて、彼はスペツナズナイフの刃を放ったのだ。
結果はミス。相手は軽い身のこなしで刃を回避したが、それは予測の範囲内。
西洋剣を構える女に、彼は罵声を浴びせた。
――祈の生徒である、一人の少女の声色で。
彼の思惑通り、トウカと名乗った娘は襲撃者を勘違いしたまま去っていった。
その場には彼と灯の消えたランタン、そして銀の刃と彼の鞄だけが残される。
「……悪く思うな。我輩は祈の元に帰らねばならんのだ」
誰とも無しに呟かれた言葉は、闇の中で虚空に消えた。
ランタンを木の枝に引っ掛け、その近くに支給武器を設置。
鞄を木の上に隠した後、仕掛けたナイフ付近で身を潜める。
そして、灯りに寄って来た女に目掛けて、彼はスペツナズナイフの刃を放ったのだ。
結果はミス。相手は軽い身のこなしで刃を回避したが、それは予測の範囲内。
西洋剣を構える女に、彼は罵声を浴びせた。
――祈の生徒である、一人の少女の声色で。
彼の思惑通り、トウカと名乗った娘は襲撃者を勘違いしたまま去っていった。
その場には彼と灯の消えたランタン、そして銀の刃と彼の鞄だけが残される。
「……悪く思うな。我輩は祈の元に帰らねばならんのだ」
誰とも無しに呟かれた言葉は、闇の中で虚空に消えた。
【A-5 森林内 /1日目 深夜】
【トウカ@うたわれるもの 散りゆくものへの子守唄】
【装備:舞の剣@Kanon】
【所持品:支給品一式、不明支給品0~2(本人確認済み)、スペツナズナイフの柄】
【状態:走り回っている事による軽い肉体疲労】
【思考・行動】
基本:殺し合いはしないが、襲ってくる者は容赦せず斬る 1:ハクオロ、エルルゥ、アルルゥと早急に合流し守る
2:オボロ、カルラと合流、協力しハクオロ等を守る
3:次に小柄な娘(蟹沢きぬ)と会ったら問答無用で斬る
※蟹沢きぬが殺し合いに乗っていると思い込んでいます
【装備:舞の剣@Kanon】
【所持品:支給品一式、不明支給品0~2(本人確認済み)、スペツナズナイフの柄】
【状態:走り回っている事による軽い肉体疲労】
【思考・行動】
基本:殺し合いはしないが、襲ってくる者は容赦せず斬る 1:ハクオロ、エルルゥ、アルルゥと早急に合流し守る
2:オボロ、カルラと合流、協力しハクオロ等を守る
3:次に小柄な娘(蟹沢きぬ)と会ったら問答無用で斬る
※蟹沢きぬが殺し合いに乗っていると思い込んでいます
【土永さん@つよきす-Mighty Heart-】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式、祈の棒キャンディー@つよきす-Mighty Heart-
不明支給品1(本人確認済み)】
【状態:健康、鳥目による視覚障害】
【思考・行動】
基本:最後まで生き残り、祈の元へ帰る
1:とりあえず、明るくなるまで休息※留まっている樹木に灯の消えたランタンが下がっています
また、付近の樹木にスペツナズナイフの刃が刺さっています
【装備:なし】
【所持品:支給品一式、祈の棒キャンディー@つよきす-Mighty Heart-
不明支給品1(本人確認済み)】
【状態:健康、鳥目による視覚障害】
【思考・行動】
基本:最後まで生き残り、祈の元へ帰る
1:とりあえず、明るくなるまで休息※留まっている樹木に灯の消えたランタンが下がっています
また、付近の樹木にスペツナズナイフの刃が刺さっています
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