第3話 荒れた土地
俺たちは外に出て、荒れた土地を歩きながら村の居住地域に向かう。俺は来た時も気になっていたことを訊いてみた。
「そういえばなんでここらだけこんなに荒れてんだ?」
「ああ、それはな、昔俺がやったんだ」
「やったってこれ全部か!?」
「まあ、実験中の失敗でなったんだけど」
「どんな実験をしていたんですか?」
ティアが首を傾げる。ヘルメスは頭を掻いた。
「実験つっても、色々やっていたからなあ。確か…」
ヘルメスは近くにあるクレーターを指さした。クレーターにしては何か爆発が起きたというよりはきれいさっぱり抉られたような跡だ。
「これはオルムって土のホムンクルスを創ろうとして出来たものだ。結局半日もせず元の土とか鉄とか素材に戻ったけど」
「へぇ」
ホムンクルスって本当に人間が作るんだな。でも金属とかを使うってことは材料はどこから持ってきているんだろう。そうか、家の周りにあったあれはその材料か。
(移住地区内で村人に話しかけると)
移住区について歩いていると村人のひとりがヘルメスを見て苦虫を噛んだかのような顔をした。
「なんだ、ヘルメス。家から出てきてまた何かやらかす気か?」
「なんだよ、おじさん。今回こそ俺の研究の成果を見せてやるよ」
男性はないないと手と首を振った。
「いつもお前はそれだろ?爆破なんてしている暇があったら農業の手伝いくらいしてくれよ」
そういうと男性は家に戻っていった。ヘルメスは邪魔者だといいたいのだろう。
他の村人もヘルメスに気付くと顔を曇らせる。一部というか子どもたちは面白いものをみる目で見る。
「ヘルメス兄ちゃん!今日は何をやるの?」
「今日は村の外に出るんだ。ほらあっち行っとけ」
「はーい」
田畑のあるところまで来ると人は居らず、話しかけるひとも見当たらない。
「ヘルメスって村の奴らに嫌われてるのか?」
「ん?ああ。まあな」
「何をしたんです?」
「何っていわれても俺は村のためにとやってただけだ。別に悪いことをしたわけじゃない」
「なにしたんだ?」
「作ってみた栄養剤を畑に撒いたり、ホムンクルスを使って害虫を駆除しようとしたりしただけだ。まあ、結局はあの荒地になったんだけど」
「だからそんなに嫌われてるんですね」
「そういえばこれから倒しに行く奴も村のためとか言ってたな。なんなんだそいつは?」
「そいつは昔とある錬金術師が作ったホムンクルスだ。その力は衰えていないはずだった…ここ最近まではな」
「ここ最近までってどういうことだ?」
「ここ数年、村の作物の生産量が低下しているんだ。理由はそのホムンクルスはもともとここら一帯の土に栄養を与える力があったんだ。だが自分を使う主がいないとホムンクルスはその力を失っていくんだ。だから俺がそいつの新しい主になって、またその力を取り戻させる」
「そのためになんで闘わなければならないんだ?主になるだけなんだろ」
「ホムンクルスは主を変えるのにはその時の主より強いか、ホムンクルス自体より強いってことを認めさせる必要がある。俺だけだと確実に倒せる見込みがないからな。だからお前たちの力を借りるわけだ」
「へぇ」
「世界には不思議なものがたくさんあるんですね」
「見たところエイルもティアちゃんも世間知らずのようだけど、貴族か何かかい?」
「いえ、私は故郷の村以外何も知らないんです。みんな村から出させてくれなくて」
「なるほど、箱入り娘だったわけか。で、エイルは?」
「あー、まあ諸事情でな」
「まあ、終わったらでいいから教えてくれよ」
俺たちはそこで話を切り、村を出た。
最終更新:2014年07月03日 17:02