第5話 ホムンクルスとの戦い

 (ホムンクルス:ゴラム戦前、エリア進入時)

 遺跡は奥にいく度に不穏な空気が漂ってきた。とはいってもそれは消えかかりそうな感じの土の匂いのする空気だ。
 最も奥にある部屋に俺たちはたどり着いた。そこには…、

「何もないな」

 何もなかった。ヘルメスも部屋を見渡した。しかしなにもない。

「どこにもいないです」
「もう力尽きていたのか?」
「そんなはずは…」

 ヘルメスが歩いて部屋の中心まで行く。もちろんなにも見つからない。ヘルメスは膝を地に付けた。

「これじゃ、なんのために俺はいままで…」

 俺たちはうなだれている錬金術師を見つめる。

 (このままだと魔物は増える一方か)

「ヘルメスさん!上!」
「!?」

 ティアが叫んだと同時にヘルメスは後ろに飛び退いた。
 天井から何かが落ちてきたのだ。その「何か」は人型の生物のようなもの。その姿は無機質の塊にも見えるような、土を固めただけの泥人形のような、例えるには難しい。しかし、その表面には「Gollum」という文字をかたどった模様が見てとれた。

「カ、カ、カ、カ、カ」
「名前はゴラムか」

 ヘルメスがホムンクルス:スプライトをフラスコから出した。

「エイル!ティアちゃん!」
「こいつを倒せばいいのか」
「早く終わらせましょう」

 各々手持ちも武器を構えた。



 (ゴラム戦後)

 ゴラムは激しい動きを止め、体を震わせる。

「カカカカカカ!!」

 それを見るとヘルメスはすぐさま空のフラスコを取り出した。

「さあ、この中に入れ、ゴラム!!」

 叫んだ途端、ゴラムの形が小さくなり容器に吸い込まれる。全て入りきるとヘルメスはその蓋を閉めた。

「よし!捕獲完了!」
「はあ」

 俺は思わずため息をついた。

「疲れました…」
「すまんな。これで仕事は終わりだ。ありがとな」
「じゃあ、早く村に帰って力を借りよう」
「いや。その必要はないんだ」
「え?どういうことだ?」
「土に栄養を与えるのはここでいい」

 ヘルメスはそういうとゴラムのフラスコを開けて命令する。

「ゴラム!この地にもう一度お前の力を与えよ!」

 瞬間、辺りに暖かい気が広がっていく。土の香りが部屋中に満ち溢れた。

「これは?」
「元の土の状態にしただけだ。これに関してはもう問題ない。一件落着だ」
「ちょっと待て。ゴラムはここにいなくていいのか?」
「大丈夫だ。当分の間はこいつの加護みたいなものでここの土地は守られるよ」
「すごいんですね、ホムンクルスって」
「こいつは人間の代わりに作ったものだからな。そうでもないよ。さ、帰るか」

 こうして俺たちはレム遺跡を後にした。

最終更新:2014年07月03日 17:04