第5話 エイルの過去
(回想:エイルの夢)
「魔術が使えないお前がここに来ているんじゃねぇよ」
「ほら、出てけよ」
「痛いなら早く防護魔術でも張ってみれよ」
「うっ」
小さな頃、魔術学校に通っていたころ、俺はいじめにあっていた。理由は簡単だ。俺が魔術がうまく使えない。それは俺が無属性であることの問題だったと思われる。
俺は蹴られたし、殴られた。
簡単な魔術で痛みを和らげることもできないほど俺は弱かった。
何も出来なかったのだ。俺もそれを認めていた。
十代にもなると、ある程度の魔術の使い方を覚えてきた。
それでも、他人よりも使えなかったので俺はそれを補うために体術を覚えることにした。
「くらえ!!」
街のごろつきが襲い掛かってきた。
「あぶねえな」
俺は相手の避けながら足を引っ掛けて転ばす。
「くそ!」
男は悪態をつく。
「脅し程度に…」
俺は呟くと足に魔力を溜めて男の目の前で地面を踏む。すると放たれた魔力が踏んだところで小さな衝撃波を生む。
「ひっ?」
悪いな。そういうとごろつきは「覚えておけよ」なんてテンプレートな台詞を吐いてどこかに行ってしまった。
「また、魔術が使えないことを馬鹿にされたのかい?」
白衣の中年男性がふと現れた。
「あなたのことを馬鹿にされたから少しむかついただけです、教授」
「なるほど、私の沽券に係わるとでも思ったのかね」
「まあ、そんなとこです」
「君はほんとにできた研究員だ」
「俺はあなたのおかげでここにいれるんです。どんなことでも恩で返しますよ」
「ハハハハハハ」
笑い声をあげながら教授は研究所の方に少し歩いたところで止まった。
「どうしました?」
「ふふふ。本当に君は使える実験体だよ」
「教授?」
こちらを振り向いた瞬間そこにはヘルメスがいた。
「え?」
「お前は何もできない無属性なんだよ」
「何を…」
ヘルメスに近づくと今度はティアがいた。
「エイルさんは何にもない人なんですよ」
俺はティアの肩を掴む。
「それはどういう…」
瞬間ティアはまた他の人物に代わる。
「君は何も持たない。人として不完全な存在だ」
ローブの男が言う。
「君は必要のない奴なんだよ。いらないんだ」
いらない、いらない、いらない、いらない、いらない、いらない、いらない、いらない、いらない、いらない、いらない、いらない、いらない、いらない、いらない、いらない、いらない、いらない、いらない、いらない、いらない、いらない、いらない、いらない。
頭の中でずっと言葉響き続ける。
「…やめろ」
いらない、いらない、いらない、いらない、いらない、いらない、いらない、いらない、いらない、いらない、いらない、いらない、いらない、いらない、いらない、いらない、いらない、いらない、いらない、いらない、いらない、いらない、いらない、いらない。
「やめてくれ!!!!!!」
最終更新:2014年07月03日 17:06