一人の女が戦場に佇んでいた。
その女は酷く薄着で、着ているものと言えば黒いインナーくらいのものだ。
女は、四人の忍者に取り囲まれていた。
刀、苦無、手裏剣、拳。
多様な武具を構えた鞍馬神流の忍者たちが、一歩、二歩と、間合を詰める。
彼女は、ただそこに佇んでいた。
刀をもった忍者が、光の速さでもって踏み込んでくる。
薙いだ太刀は確かに一撃を与え、彼女の右腕が切断された。
その様子に、女はニヤリと笑みを浮かべた。

刹那。斬り飛ばされた女の腕が爆発した。
轟音を響かせた土煙から現れたのは、致命傷を負い刀を取り落とした忍者の死体。
爆発物。俄かに、残った三人に緊張が走る。
苦無を構えた忍者が、銃弾が如き速度で獲物を放る。
狙うは、急所。彼女の喉だ。

的中。研ぎ澄まされた刃は、彼女の首を胴体から斬り飛ばした。
その瞬間、彼女の頭部がはじけ飛んだ。
再びの轟音に、再びの爆発。苦無を投げた忍者は、断末魔すら掻き消されて絶命した。
首を落とした。だというのに、彼女の足は未だ胴体を支えている。

三人目。
音速で放たれた手裏剣は、彼女の両足を斬り落とした。
爆発。残るは、ただの一人となった。
女は最早、胴と左腕のみが残った肉塊に過ぎなくなった。

無手の忍者は、一切の油断なく拳を撃ち込む。
抉り込むような一撃。
轟く轟音の中で、立ち上がっている者は誰もいなかった。

「ふぅ~。危なかった~」

誰もいない焼け野原に、場違いな呑気な声が響く。
声を上げたのは、焼け焦げたスピーカーだった。
千切れた人工筋肉が立ち上がり、そのスピーカーを拾い上げる。
吹き飛んだ四肢は自ら結合し、女は五体満足へと戻っていた。

それは身体の遍くを機械とし、人間ではあり得ない生命力を有している。
それは身体の悉くを爆発物とし、傷つけた者に致命傷を与える。
それは身体の須くを破壊されても、幾度も立ち上がる鋼の精神をもつ。
命をもたず、故に命に頓着しない、生きた爆発物である。
鍔鑿組。爆弾魔(ボマー)。
命知らずのバニー。
最終更新:2021年04月27日 21:12