異変に気づいたのは隠忍の血統、万星の常時という男だった。
その男は物を引き寄せる体質だった。
幼き頃より不意に飛んでくる岩を避け時に骨を砕かれながら、己の星と、向き合う術を身につけた。
その感知能力と、力の増大によって絶え間なく降り注がせる事が出来る様になった星屑によって最強の一角まで上り詰めていた。
不自然な霊力の流れがある。うっすらとだが、日本中からこの町の一所に霊力が流れ込んでいる。
中心に、小さな社があった。中には岩の扉があり、奇怪なことに、あまりにも厳重な封印がなされていた。
何かに導かれる様に封印を解き、扉を開くと膨大な霊力の本流が彼の体を突き抜けた。
知らず、涙が溢れた。恐怖ではなく、体を突き抜けた安堵の念によって。
彼は跪いて、呟いた。涙と友に、言葉がこぼれ出た様だった。
「私も…救われますか?」
岩戸の中の何かは答えた。
「もちろん」
「君も…私の民なのだから」

その日、比良坂の管理する国宝が三点消え失せた。
隠忍の血統の代表は、名も知れぬ一人の忍者が出ることとなったが、奇妙なことに異議を唱える物は誰ひとりとしていなかった。



それはその神権が故にすべての日本の存在に対し、上位命令権限を持つ。
それは一億の信仰を集める、日本最大の宗教組織の霊的最終兵器である。
それは正当なる後継者として、古代より伝承されし神器を振るう。
神であるがゆえに存在を認められなかった、世界最古の王朝の最後の神なる王である。
親王(インペリアル)。現人神(デミゴット)。
隠されし唯仁。
最終更新:2021年04月29日 09:01