さて、第2サイクルである。
まず、唯仁の《特別教室》は使用しないことを選択。
現時点で、"天上組"の評価点は0、"天下組"の評価点は1。
クライマックスにて勝利し、相手側の『巻』を奪い取ることで評価点が4獲得される。
つまり、クライマックス終了時までに5点の評価点を稼ぐためには、メインフェイズの間に少なくとも1点の評価点を稼いでおく必要がある。
本サイクル、最初に動くのは、"天上側"だ。
それでは、物語に戻ろう。
2.1.三巌のドラマシーン
斜歯忍軍が頭領、黒潮一人。斜歯忍軍の粋を尽くした戦闘用デバイスと忍器を用いた高次元戦闘は、頭領の位を関するにふさわしいものである。
そして、それは黒潮一人の強さの、一端に過ぎない。
他のどの流派の頭領でもない、斜歯忍軍の頭領であるということ。それは、別格の意味を持つ。
大統一を目前とする斜歯忍軍の長。それは、あらゆる忍者社会の情報に、戦略に、人脈に通ずることを示す。
世界随一の大企業、八咫重工の長。それは、あらゆる一般社会の情報に、戦略に、人脈に通ずることを示す。
そして、全ての忍者の長、黒潮一人はそれらを分析し、掌握し、支配することができる。
場所は渋谷、先日唯仁に破壊された斜歯のオフィス。
すでに完全復旧が済んだその場所で、"天上組"の3人が集まっていた。
要件は粗方済んでいる。"天下組"の情報と居所の共有。
すぐにその時を迎える正面衝突に向けた、準備の時。
そして。
「以上が私の拠点の一覧だ。当座のだがな。」
「俺の分も、よーく聞いとけよ?」
一人と三厳が見遣るのは、信明が座る椅子の背後、ビルの窓ガラスの裏側だ。
海軍服の迷彩に身を包んだ影が翻って消える。
ミッシェルが『修行』で獲得した《電撃作戦》は、自身のドラマシーン中に【居所】を獲得したときに誘発し、その相手に戦闘を仕掛ける忍法である。
このドラマシーンでは、"天上組"が互いに自身の【居所】を交換しあった。
それは信明経由でミッシェルへと【情報伝達】する。すでに獲得済の【居所】を再度獲得することはできない。
《電撃作戦》の妨害の後は、続けて三厳から信明へ感情判定を行う。
"天下組"が誰に対して戦闘を仕掛けても3人で応戦できるようにするための準備である。
判定には成功し、信明は三巌に対してプラスを、三巌は信明に対してマイナスを選択。
また、三巌は《荒行》を使用し、自らに「残刃」の変調を付与した。
「では行くぞ。」
「おうよ。」
「行きましょう。」
ビルのオフィスから、彼らの姿は消えていた。
2.2.石蒜のドラマシーン
"天下組"がシーンに登場。シーンは森中。
石蒜が唯仁に感情判定を行い、互いにプラスを選択。
血餅を使用して成功し、生命点を1点失って兵糧丸を得た。
これで、唯仁に対して二人ともが感情を持つ状態になり、"天上組"の襲撃に3人で相対することが出来るようになった。
「向こうの社会的機動力が高すぎデース!」
「ぷんぷん!」
「政治体系さえ正統なら、社会的に最強なのは私ですけれど。」
「ソンノージョーイ!バクマツみたいで激アツデース!」
「・・・?つまり、唯仁さんはめっちゃ偉いということ?」
「そんな感じですかね。」
「ではここからもよろしくお願いします。新たな日本国民よ。」
「僕、これで日本国民になったのか・・・」
2.3.1.一人の戦闘シーン(前半)
一人は唯仁に対しての戦闘シーンを選択。
当然、両陣営全員が乱入を選択し、3対3の正面衝突となった。
"天下組"が森を出る頃。最初に"それ"を察知したのは、死に近き石蒜。
鎌を手にすると同時、高速機動によりその身を二つに分け、一つを木の上側へと走らせた。
そこには、既に斜歯の電制が敷かれている。
石蒜の認知機能に阻害が走り、森の正面には既に黒潮一人が待ち構えている。
単純な立ち位置の誘導と、罠の配置。
誰にでも出来そうな戦術。黒潮一人の戦術は、そのほとんどが一般の忍者汎用のものに過ぎない。
しかし、汎用であるがゆえ。
あるいは、その使い手の全能さゆえ。
それは彼が支配するあらゆる情報と準備のもとに、万能の戦術となる。
戦闘開始。石蒜が《影分身》を宣言。判定に成功。
それに誘発して、一人の《慢心》が石蒜に「野望」の変調を付与する。
プロットが決定し、信明以外の5人がプロット6に。
そして信明のみがプロット3となった。
プロット6のPCのうち、手番上最初に行動するのはミッシェル。
同時。"天下組"の進行方向の右側に向けて。
唯仁は立ち止まり、予期したかの如く彼の持つ勾玉を掲げる。
絶対的神権の行使に相対するは、遥か遠く、即席に敷いた陣の上に坐す信明。
信明は彼の勾玉を示す。それは、民衆のため、民衆の手へと降ろした神権。
それは目に見えずとも、呪的で、そして苛烈なせめぎ合いである。
信明の呪を成し、ミッシェルの行動を縛する狙いであったが、その対立に勝ろうとするは、正統なる神権の側。
ミッシェルの行動選択、その直前に割り込むものがある。
「八尺瓊勾玉」。信明の「奥義:追加忍法」のもう一つの指定は、《操り人形》。
互いに【感情】を取得して優位を狙うミッシェルの戦法を逆に利用し、自らに【感情】を持つ相手にしか使用できない《操り人形》が放たれた。
信明は《操り人形》の判定に神通丸込みで成功。
しかし、偶然にも信明の奥義の指定特技は「仕込み」であり、《操り人形》の指定特技もまた「仕込み」に統一されている。
そして、唯仁の持つ《破術》が無効化するのは指定分野が「器術」のサポート忍法。
黒潮一人のサポート忍法を狙った「器術」指定に巻き込まれる形で、唯仁の《破術》が撃ち込まれた。
その真なる勾玉に、迫る手がある。呪術的潮流を裂きながら接近するのは、柳生三巌。真贋問わず戦闘の道具と為す彼の絶致の手が、唯仁の神権に迫る。
「無二刀取り」。
柳生が誇る絶致の略取術は、しかし、絶対的神権を越えるに能わず。
信明の勾玉による呪は、雲散し、そして霧消した。
唯仁の《破術》の判定に対して、三巌の「奥義:判定妨害/くらまし/回数制限」。
判定ダイスの1つを1の出目にして、その判定をファンブルにする。
しかし、唯仁には《空吹》があった。自身がファンブルとなるとき、神通丸か遁甲符を1つ消費して自動成功に変換することが出来る装備忍法。
唯仁はこのファンブルを神通丸を消費して自動成功に変換した。
三厳はこれに、さらに遁甲符を使用して応じる。
唯仁は判定を振り直し、ファンブル。しかし、《空吹》は装備忍法であり、ラウンド1回の制限は存在しない。
唯仁は遁甲符を消費して、このファンブルさえも自動成功へと変換した。
石蒜対、一人。
唯仁対、信明と三巌。
最初の衝突は、上記のような模様である。
ならば、残る一人はその出で立ちの通り。自由の駒である。
「行きマース!」
「概念的FLEETの登場デース!」
そこは、東京郊外の森の境。背の低い家屋を主とし、まばらに立つビルとそれらに隣接した深い森。
忍者の立体機動には十分なほどの多彩さを持つ地形であり、そしてもう、その地形が戦略的意味を持つことはない。
水が、その一都市を覆った。
実在の水ではない。忍者同士の刹那の交戦における、戦圧と、戦場の揺らぎ。
黒船、ミッシェル・ペリーの野戦術は、実物以上の大質量を概念的に具現し、戦場制圧を成す。
そして四隻の黒船が、その砲を向けた。
無事手番の行動に入ったミッシェルは、《海原》を使用する。
戦場を「水中」に変更し、自分よりプロットの低いキャラクターが「水術」の判定に失敗したならば射撃点1点を与えるサポート忍法だ。
ミッシェルよりプロットが低いのは、プロット3の信明のみであったが、信明はこれを成功。
戦場が「水中」に変更されるにとどまった。
《海原》は、攻撃の代わりに使用するサポート忍法である。しかし、ミッシェルが持つ《忍法乱舞》は、通常の攻撃に加えて複数回の攻撃を許容するサポート忍法。
本セッションのGM裁定においては、《忍法乱舞》の際、攻撃の代わりに行う行動を含めることが許容されている。
ミッシェルは、《海原》使用の後、攻撃を続ける。
そして、ミッシェルは現在、石蒜と《親友》の関係にあり、石蒜が修得している《飛龍》を使用できる。
間合い2に対して接近戦1点と射撃戦2点を同時に与える、通常ならばハグレモノ専用の大技、《飛龍》が、黒潮一人に対して使用された。
石蒜が纏う臨死の空気。その砲門もまた、それを纏っている。
戦闘と勝利の概念の具現。戦場の圧からミッシェルが造り出したその黒船には、遠く、黒潮一人と相対している石蒜の戦圧さえも含まれている。
ミッシェルの人脈構築は、決して戦闘準備段階のためだけのものではない。
徹底した御斎の戦闘術、その結集が、まずは黒潮一人を穿った。
続き、別の黒船の砲門が動く。ミッシェルの《忍法乱舞》の回数は、まだ尽きてはいない。
一門。二門。三門。
それらの砲門が、"ミッシェルへ向けての"全門斉射を行った。
最初の一発の着弾地点には、簡易のシェルターが展開されている。
そして、そのシェルターからは地面を通じて阻害の電磁波が張り巡らされており、それはその戦場の圧力を捻じ曲げ、ミッシェルの"黒船"への干渉を果たしていた。
「絶対防御参式・被堅執鋭」。
シェルターが開き、無傷の一人が現れる。
斜歯忍軍が頭領、黒潮一人の全能は、一度や二度で揺らぎはしない。
ミッシェルの《飛龍》は命中判定に成功、《親友》により《即興》も使用するが、こちらは判定に失敗する。
水中により-2のペナがついた回避判定を、一人は成功させる。しかし、これはミッシェルの遁甲符により失敗となった。
一人はここに、2枚目の「奥義:絶対防御/流し/防御低下」を使用。《即興》が失敗しており、「絶対防御/防御低下」によりちょうど3点全てが軽減される。
そして、射撃戦ダメージを軽減したことで「流し」の効果が適用。逆にミッシェルに対して、1点の射撃戦ダメージが与えられた。
これにより、ミッシェルが脱落。回数が残っていた《忍法乱舞》は立ち消えとなる。
《忍法乱舞》から、"天上組"3人を同時に排除するポテンシャルを有していたミッシェルが、ここで、黒潮一人の「奥義」によりその覇道を止めた。
続けて、一人が《修羅》を使用。直前に使用した《変形》は失敗し逆凪となっているものの、命中判定は《閻魔》により自動成功する。
唯仁がこの回避に失敗するも、プロット6におけるその失敗のダイスはまたファンブルでもあった。唯仁は《空吹》の効果でこれを成功に変え、回避した。
返す刀、一人の反撃。
医療用窒素ガスによる吸気断絶。
唯仁の絶対的神権がそれを捻じ伏せる。
しかし。連続的かつ周辺大気全てによる大規模攻撃を前に、その神権には陰りが見えつつある。
この時点でそれを知るは、未だ唯仁本人のみであるとしても。
まずは一名が脱落し。戦闘は続く。
最終更新:2021年05月03日 04:32