3サイクル目最初の戦闘は、回避判定を主とし出目に恵まれなかった"天下組"の敗着となった。
   これにより、3連続の戦闘によるメインフェイズ中の評価点5達成は不可能となり、決着はクライマックス戦闘に託されることになる。
   "天下組"の次善の手は、メインフェイズ戦闘による"天上組"の生命点奪取。

   "天上組"もそれを承知の上だ。三巌はもはや「行方不明」の変調を自己付与している。
   もはや、一人あるいは信明が戦闘を仕掛けられた場合に助けに入ることが出来ない。

   つまり、"天上組"の側にはもう、まともに戦闘するつもりはない。
   "天上組"が最も避けるべきは、全面戦闘の末に、クライマックス時点で全員の生命点が1となっている事態。
   仕掛けられた戦闘を、なるべく小さい被害で済ませ、クライマックスに繋ごうという魂胆である。

   そして、彼女が付け入る隙のある相手と交戦するということの意味は。
   彼女に対して降伏を申し入れるということの意味は。

   単なる敗戦以上に大きな意味を持つことになる。

3.5.石蒜の戦闘シーン

ミッシェル・ペリー。外海からの侵略者。
そのルーツは、古く、長き江戸時代を終わらせた、かのペリー総督に遡る。

四隻の黒船という圧倒的戦力を背景に、日米和親条約を強制締結させた国家レベルの侵略的掌握者。

日ノ本の国に伝わる"天上天下"の接収は、400年余の時を越えて、修羅の黒船により為されようとしている。


場所は港区。洋上に配置された四隻の艦船。一隻当たり三基九門の超大主砲を擁する圧倒的戦力。
ミッシェルが具現化する概念的なそれとは別に、実在の砲門計三十六門が、黒潮一人の潜むビルにそれを向け続けている。

   石蒜が信明に戦闘を仕掛ける。
   戦闘の参加者は、"天下組"全員と、信明及び一人。
   三巌は、「行方不明」により戦闘参加を表明しない。

   石蒜は《影分身》を使用。さらに、ミッシェルも《親友》から《影分身》を使用する。
   応じて一人が使用した《慢心》は判定に失敗する。

   プロットは以下の通り決定。
   6:一人、石蒜、ミッシェル
   4:唯仁
   3:信明

   開幕行動はミッシェル。その直前に信明の「追加忍法」から《操り人形》。
   これは、ミッシェルと唯仁が奥義破りに成功する。唯仁はスペシャルをロールしており、「マヒ」を回復した。

海霧に紛れた石蒜の戦圧。《親友》のそれを自身の掌握術により具現化した副砲が斜歯のオフィスを穿つ。
黒潮一人が対抗するのは、その僅かな隙。
他者の力を変換して撃ち出された弾丸、その変換に要した微小な時間差に、弾丸全てを迎撃するADS(自動防衛装置)の配備が完了している。

しかし、その全ては陽動。
遠隔射撃に特化した黒潮一人の防衛方針そのものは、すでにミッシェルの掌握下にあった。

本命は、オフィス内部に出現する死の影。
石蒜の大鎌の一撃が、再び一人の生命力を刈り取ったのだった。

   ミッシェルは、《海原》を使用しない。仮に使用した場合、自主的にその射撃1点を受けて戦場から脱落される恐れがあるためだ。
   代わりに、《即興》《帝釈天》から一人を攻撃するが、その両方の判定に失敗する。
   《親友》により他者の忍法を使用する際、ネックとなるのはその指定特技。
   僅かな目標値の上昇は、成功率に確実に影響した。

   続く石蒜の行動。兵糧丸2つを消費し、まずは「呪い:疾風」と「重傷」をともに回復する。
   続けて、本来の持ち主による《即興》《帝釈天》。目標は、黒潮一人。
   回避には失敗し、一人は脱落。変調は「忘却:三巌への感情」。

   一人はプロット6の同時行動で、《修羅》を"天下組"全員に使用する。
   ミッシェル、石蒜がこれを回避し、唯仁に命中する。
   唯仁は自身に「絶対防御/くらまし/防御低下」を使用。
   この奥義破りに一人が失敗し、信明はファンブルをロールしてしまう。

一人が大鎌に倒れた直後。ミッシェルの弾幕を抑制完了したADSが一斉に爆裂する。
配備位置、爆裂による破片の飛散。
全て一人の戦略通りであり、"天下組"全員をその射程に捉えたが、その威光を取り戻した唯仁の絶対的神権がそれを阻む。

今度は、信明に呪法を完成させる時間が与えられることはない。
唯仁がかざした神剣は、その陣ごと信明を吹き飛ばしたのだった。

   一人が脱落し、信明は逆凪の状態にある。
   唯仁の「クリティカルヒット」が奥義破りを許すことなく、信明の生命点を4点奪い去った。

   勝者、"天下組"。戦果は、ミッシェルに対する信明の「友情」。
   ミッシェルは即座に変心丸を使用し、自身から信明への感情も「友情」へ書き換えた。これで、信明も《親友》の適用先となった。
   これで、ミッシェルの持つ《親友》は、石蒜、唯仁、そして信明の3名の持つ忍法を使用可能な、超弩級の装備忍法となった。

「では、あなた自身から開国を宣言してもらいマース!」
「ええ、"友達"としての働きを期待していますよ。」

ミッシェルが握手を求め、信明がそれに応える。

「では、少し外交をしましょうか?」
次に誘いをかけたのは、信明。

3.6.信明のドラマシーン

   登場は、信明、ミッシェル、一人の3名。
   通常、敵のシーンに登場することはリスクが大きい。同シーンにいることを条件としたサポート忍法による妨害を受ける可能性が高いからだ。
   そうでなくとも、ミッシェルに対して感情判定を行うことで、《親友》を解除することも出来てしまう。
   それでも、ミッシェルはシーンに登場することを選択した。理由は2つ、あるいは3つ。
   1つは、変身丸をあと1つ所持していること。感情判定によって《親友》を妨害されても、一度なら「友情」へ戻すことが出来、リスクへの対策となる。
   もう1つは、信明が感情判定を行った場合、回復判定の権利を放棄したことになるということ。信明は《隠れ家》により2点の生命点を回復できる。この権利を自ら放棄するのであれば、リスクに釣り合うリターンだと言うことだ。

   そして最後に、ミッシェルという人物は、"トモダチ"の頼みを断ることはない。そういうことなのだろう。

   比良坂機関のPCが、何を仕込んでいるか分からない。合理的な判断であれば、シーンへの登場は依然大きなリスクを伴うところだ。
   それでも、シーンに登場する。
   そうであるからこそ、彼女は、私立御斎学園の代表として、この『六合統一の儀』に参加しているのだ。


   シーン表は「トラップ」。信明は兵糧丸を使用して《罠術》の判定を行うも、失敗。
   ミッシェルと一人は成功し、信明のみ生命点を2点失い、残り1点となった。

   信明は《人質》によるGMの指示を受け、ミッシェルへの感情判定を行い、プラスの感情を選択。
   「友情」ではなく「共感」へと上書きしたが、ミッシェルの変心丸によって「友情」へと戻される。
   ミッシェルは感情の変更無しを選択。
   そして。

「うーん、"友達"の絆は堅いようですね。」
「真の友情デース!フレンドシップ・・・・・・モーレツに感動!」

「さて、外交ですが・・・・・・」
「私がこれから行うこと、手伝ってくださいますか?」

「前向きに検討しマース。何をするかによりけりデスが・・・・・・」

   そして、ミッシェルに対し、次に行う判定にプラスの感情修正をつけることを要求する信明。
   もちろん、ルール上は何の判定かが確定してからであるが、ここは口八丁である。

   比良坂機関の頭領、安倍信明。
   キャラクターシートの公開情報からは、《補給》の他に怪しい行動は見つからないものの、一度同じシーンに登場した以上、何をされても不思議ではない。
   良くて感情の再変更。悪ければ、忍具の強奪か、それともそれ以上か。

「あなたは、私の親友ですよね?」
   さらに踏み込む信明。

   信明の、トモダチの眼を見据え、ミッシェルは答える。
「OK!答えは当然、決まっていマース!」
「トモダチを手伝うデース!!」

揺さぶりをかけた比良坂、信明。
そして、乱れることなく芯を通した御斎、ミッシェル。

両者は静かに、決戦の時を見据えていく。

   信明は、次の行動として、《補給》を選択。
   ミッシェルの感情修正を受けて、これを判定し、成功。遁甲符を獲得した。

   結果としてはブラフだったということになろうか。
   それでも、これは各流派の代表として、ふさわしいやり取りだったのだろう。

3.7.サイクル終了時

   サイクル終了時、『修行』と変調回復の時間である。

   以下の通り、各PCは『修行』を行った。
   一人:判定に失敗
   三巌:《荒行》→《陽炎》
   石蒜:《接近戦攻撃》→《破術:指定飛術》
   信明:なし
   ミッシェル:判定に失敗
   唯仁:判定に失敗

   判定に失敗したPCは接近1点を受けた。唯仁はこれに「絶対防御」を使用。
   一方、一人は、これにより生命点が0点となる。シーン開始時に生命点が1点戻ってくるルールは、メインフェイズ中のみ適用のため、ここで生命点を失うと、クライマックスに参加できない。
   一人は兵糧丸を使用してから1点を受けることを選択した。

   変調回復は、一人が「忘却」の回復判定を行い、これに失敗したのみ。


   これにて、全3サイクルのメインフェイズは終了となる。
   かくして、『六合統一の儀』の決着は、クライマックス戦闘に委ねられた。
最終更新:2021年05月04日 17:39