クライマックス戦闘。その前に、まずは各PCの状況を確認しておこう。

   黒潮一人
   生命点:1/6 忍具:1/6
   変調:「忘却:三巌へのプラス感情」
   公開された奥義:「絶対防御」「絶対防御」「不死身」
   《涓滴》のカウント
   石蒜の「絶対防御」:1回
   唯仁の「絶対防御」:2回(以降、自動成功)
   唯仁の「クリティカルヒット」:1回
   唯仁の「範囲攻撃」:2回(以降、自動成功)

   柳生三巌
   生命点:5/8 忍具:3/6(うち一つは公開済の霊装)
   変調:「残刃」「行方不明」
   公開された奥義:「判定妨害」
   《朽気》により攻撃に接近2点追加
   《荒行》により命中判定+3

   石蒜
   生命点:1/6 忍具:2/6
   公開された奥義:「絶対防御」
   《忍道》により全判定+2、攻撃に射撃3点追加

   安倍信明
   生命点:2/6 忍具:2/6
   公開された奥義:「追加忍法」
   《揺らし》で攻撃に射撃1点追加

   ミッシェル 生命点:6/6 忍具:0/6
   公開された奥義:「追加忍法」「不死身」
   《親友》で使用可能な忍法
   《即興》《帝釈天》《飛龍》《影分身》《破術》《外縛陣》《式神》《相克》

   唯仁
   生命点:5/6 忍具:2/6
   公開された奥義:「絶対防御」「クリティカルヒット」「範囲攻撃」
   《殺陣》《開祖+殺陣》により「クリティカルヒット」と「範囲攻撃」の奥義破りに-6。

   以上。
   非公開の奥義数で勝る"天上組"と、生命点で勝る"天下組"といった構図か。

   メインフェイズで強力なビルドであった唯仁が若干の息切れ気味であることを考えると、"天下組"としては速やかに1名を脱落させ、人数有利をつけたいところである。

   逆に"天上組"としては、唯仁の奥義を封じ込められる黒潮一人を維持し、確実に有利を守っていきたい。

   判定の成否はもちろん、プロットの差1つに至るまで、天秤は揺れ続ける。
   さあ、六名の修羅による最終決戦の始まりだ。


4.1.クライマックス戦闘

東京、霞が関。
日本政治の中枢たる摩天楼は、この日だけは全てのビルの灯が落ちている。

否、正確には、信明が指示した特定のビル、特定の階層のみ点灯している。
尋常ならざる霞が関の夜闇に、ある法則に従って配置された灯。

陰陽五行の呪法陣。多層三次元に描画されたその球星陣の中心で、信明と"天上組"の2名は待つ。


それは、国家体系を転覆し"正統"のものとする絶対的神権。
それは、外海より圧倒的戦力によって支配を迫る侵略者。
それは、全ての生命全ての存在に等しく訪れる終末。

迎え撃つは、闘士の長。
迎え撃つは、国家の長。
迎え撃つは、忍者の長。

修羅が、激突する。


   まずはプロット前タイミング。
   石蒜が《影分身》に成功。
   続けてミッシェルも《影分身》を使用するが失敗。
   プロットは以下の通りとなった。
   6:三巌、石蒜
   5:唯仁
   4:ミッシェル
   3:信明
   2:一人
   1:なし

ビル群の南方、道路に一人立つ石蒜が、中層ビルの屋上に坐す信明に鎌を向ける。
死神がもたらす終末に、距離の概念が意味を為さないことは"天上組"の誰もが理解しているところであり。

その意識の偏りをついて。
一つ隣のビル、その中層オフィスの只中に、石蒜の霧体が実を結ぶ。
悠然と振り上げた大鎌は、しかし振り下ろされることはない。

石蒜の両の腕には、一本の赤線が走っていた。
大鎌ごと腕の先が斬り飛ばされる。続けて、石蒜の胴にも無数の赤線が走る。

信明の背後、自らの胸に薄く血を滲ませた三巌が、石蒜を大太刀で捉えている。


"死"は。あらゆる存在にとって抵抗能わぬ終末、その代行者は。
自らへ向けられた不遜な呪いに対し、絶対の権能を行使する。

斬り飛ばされたはずの両腕は、鎌を床へ突き立てている。
「避けられぬ死」。石蒜の奥義。

   最初の行動は、三巌。《陽炎》から石蒜に対して《白夜》。
   公開済の霊装により、回避判定の特技を《死霊術》に変更する。

   そして《白夜》は、体術分野の特技以外を使用して回避する場合に-4のペナルティがつく攻撃忍法である。
   体術から遥かに遠い《死霊術》による回避を強要された石蒜は、《陽炎》「プライズ:家宝(加速)」込みで-7のペナがついた回避となる。

   石蒜は、これに対して「奥義:判定妨害/驚き/発動条件」で応じた。
   ミッシェルが誘発して《解説》を使用して遁甲符を獲得。さらに誘発して一人が《慢心》を使用するがこれは失敗する。
   非公開で温存されていた奥義。三巌の判定はファンブルとなり、失敗に終わる。
   はずであった。これが、頭領6名という修羅による決戦でないのならば。

   斜歯忍軍が頭領、黒潮一人の《一見》が。初見の奥義に対して奥義破りを行った。
   感情修正+1を得て、7チェックに失敗。
   石蒜を脱落させられるかどうか、ここが決戦の分水嶺であり、当然一人は神通丸を使用する。
   振り直して判定は成功。ミッシェルが遁甲符を使用し、失敗。
   さらに信明が遁甲符を使用し、成功へと変ったところで、唯仁が遁甲符を重ねて失敗に戻る。
   信明がここに2つ目の遁甲符を使用すると、改めて判定は成功となる。
   唯仁も2つ目の遁甲符を使用するが、判定は再び成功し、これ以上のリソースは両陣営ともに残ってはいない。

   「判定妨害」が不発となった今、石蒜は回避を試みる必要があった。当然この回避には失敗し、「絶対防御/張り/発動条件」が使用される。
   しかし、この奥義破りには三巌が成功する。
   《朽気》込みで4点の接近戦ダメージ。生命点が1の石蒜は、手元に残した兵糧丸を合わせても生き残ることは出来ない。

   プロット6の同時行動タイミング、4点ダメージの適用が為されるその前に、石蒜が手番で行動する。
   「奥義:追加忍法/巡らし/回数制限」による《蟇仙》を使用する。
   《蟇仙》は、攻撃の代わりに使用し、自身のデータを生命力8点の忍獣へと変じさせるサポート忍法。
   同時行動のルールにより、生命点8となると同時に4点の接近戦ダメージが適用されることになる。脱落を回避する一手となるはずだったが、しかし。

   黒潮一人の《一見》が。その希望を奪い去った。奥義破りが成功し、《蟇仙》は不発に終わる。
   プロット6の終了時点、兵糧丸での余裕分を上回る4点のダメージを受け、クライマックス戦闘最初の脱落者は、死に近き石蒜。


床に突き刺された大鎌から、臨死の想念が三巌を刺す。

「下だ!柳生!」

黒潮一人のデバイスが、迫りくる死相を可視化する。
三巌はそれを受け、足元より突き出された黒端を避ける。

オフィス内部の石蒜がその活動を停止すると同時。
ビル南方に位置していた側の石蒜が、その姿を死の国の異形へと転じていく。
「語り得ぬ死」。"死"を確実に代行するための、隠されし力。

しかし。黒潮一人は、石蒜の"死"を既に2度経験している。。
あるいは、死の影に近づいたのは、3度目か。

影絵座、忍び寄る影。
かつて一人を追い詰めた暗殺者の性質が、"死の影"によるものであったのは、全くの偶然だったのだろう。

しかし、3度の邂逅を経て、黒潮一人は既に"死"の解析を終えている。
"死"を捉える黒い鎖が、異形へと転じようとする石蒜を抑え、石蒜はそのまま、影へと溶けていった。

第一修羅、死に近き石蒜。脱落。


「そろそろ、最後でしょうか。」
そう言って神剣をかざすのは唯仁。絶対的神権の解放は、しかし、刻を遡る三巌の大太刀により、解放の前に撥ね退けられる。

その一瞬の間に。
黒潮一人の手によって。
唯仁の持つ、三種の神器の解析が、完了した。


   続けてプロット5。唯仁が「クリティカルヒット」を三巌に使用。
   -6のペナルティがついた奥義破りを、信明が判定放棄、一人は判定して失敗。
   そして、三巌の《朧》によって判定は成功へと変換され、唯仁の奥義は破られた。

   そしてこれが、一人の《涓滴》の2回目である。
   これ以後、唯仁の奥義は全て、一人によって自動成功で破られる。
   六名全員が頭領の本セッションにおける、斜歯の恐ろしさが目の当たりとなった。


大勢が、決したのだろう。
その場の戦圧は"天上組"へと、不可逆に傾いて。

それを反映したかのように、ミッシェルが構えていた概念的FLEETもまた、霧散して消えた。

「これはどうにもならないデース!」
「・・・・・・バイバイデース!そのうち、また来マスヨ!」

   プロット4。ミッシェルは《海原》を使用する。
   対応して一人の「不死身/定め/回数制限」。
   ミッシェルは《親友》から《相克》を使用し、「追加忍法」を「不死身への打消し」に変換して使用する。
   このミッシェルの奥義を、一人は破ってみせた。

   生命点が回復し、器術分野の特技が使用可能となった一人が、《破術》で《海原》を無効化する。

   ミッシェルは続けて、《忍法乱舞》から《即興》《飛龍》を一人へ。
   そして、その《飛龍》がファンブルした。
   ミッシェルは逆凪へ落ちる。そして、頭領クラスの決戦で、恐らく次のラウンドは存在しない。


此度は、既に陣が構えられている。信明の呪法が即座に完成する。
この霞が関に立つ"全員"が。
この日本国を脅かしうる戦力を持つ"全員"を。

信明の呪法が縛り上げた。

「ここ、霞が関は私の庭。この庭を、この国を、最大限守る必要が私にはあります。」
「信明、貴様。」

一人は苦々し気に言うも、その狙いは過つことがない。
逆凪に落ちていくミッシェルと、ビルを駆け上る一人の忍ドローンが交叉する。

第二修羅、黒船、ミッシェル・ペリー。脱落。


   プロット3。信明のとった行動は、"自分以外全員への《外縛陣》"。
   この決戦の後の、"天上組"3名での対決を見据えた削りに入る信明。
   手番を損失することなく、戦場の全員に攻撃が可能な《外縛陣》だからこその戦術。

   一人は回避に失敗、ミッシェルと三巌は逆凪、唯仁はスペシャルし、生命点を回復。
   黒潮一人を除き、命中したPCは1~2点の射撃戦ダメージを受けた。
   一人は「絶対防御/流し/防御低下」でダメージを無効化し、信明に射撃戦ダメージを1点与える。
   また、一人とミッシェルは「重傷」の変調を、三巌は「呪い:《帝釈天》」を受けた。

   続けて、一人が《万華鏡》をミッシェルへ使用。「重傷」により接近1点を受けながら、ミッシェルの残り生命点を刈り取る。
   ミッシェルは「不死身/定め/回数制限」で応じるが、一人の《一見》が、10チェックの奥義破りを成功させたのだった。
   ミッシェル、脱落。

   最後に、《変形》で《修羅》を《帝釈天》に変更。指定特技は《記憶術》。
   信明にとって4距離、三巌にとって6距離となる共通のスイートスポット。
   「指定特技:任意」の攻撃忍法を後出し修得できる《変形》の常套手段だが、頭領たる黒潮一人のそれは、一味違う。

   一人にとっても、《記憶術》は3距離。通常命中判定が成立しづらく、弱点と分かっていてもそれを選ぶことは難しい。
   しかし、一人には《閻魔》がある。命中判定を自動成功にするその装備忍法が、最も効果的な指定特技を選択することを許容したのだ。

「次、貴様らとやるのなら、選ぶべきはこれだ。」
黒潮一人は持てる121の忍道具のうち、もっとも三巌と信明に効果的なものを選び出し、準備する。

「俺はこの後に備える。これで大方決まったろう?」
   三巌はここで自主脱落を選択。
   唯仁は攻撃忍法を持たず、その奥義は一人の《涓滴》によって自動成功で破られる。
   "天上組"が負け得ない状況を前に、仲間によって生命点が削られることを嫌ったのだ。

「神が膝を折るわけには行かないので。」
「最後まで凛と立ちましょう。どうぞ、おやりなさい。」
   唯仁は誇りにかけて戦場に残る。

現代に蘇った絶対的神権は、その神秘に、その幻想に終わりを告げるのだった。
第三修羅、隠されし唯仁。脱落。


   一人及び信明も戦場に残った。
   そして、唯仁が脱落するまでを、GMとPL共同の判断でカット。
   "天上組"の勝利が確定した時点で、一人は信明による集団戦ダメージを嫌って自主脱落を選択した。

   "天上組"の勝利。勝者は安倍信明。
   戦果として、黒潮一人の【秘密】を獲得し、《揺らし》が全員に適用できる状態になった。


   そして。
   頂点を決める闘いが、始まる。
最終更新:2021年05月05日 22:41