修羅六名による闘いは決着した。
   勝者は、"天上組"。

   判定一つ、1d6一つ違っていれば、これと同じ結果になったかどうかは分からない。
   それでも、此度はここが、闘いの終着点で、次の闘いの出発点である。

   続けて。
   "天上組"三名による、たった一名の最強を決める闘いが始まる。

   集いし六名の修羅たちに、ここまで来ることさえ叶わなかった修羅たち。
   たった一つの最強の座は、狭すぎる。


最初に動いたのは、三巌。
座り込んだ姿勢から、信明に向け素早い跳躍。

横一文字に信明の胴を断つ。
しかし、信明はその姿を靄のごとく変じさせ、二歩ほど離れた位置に出現する。

同時、呪詛が三巌に返り、その左腕を断った。
三巌は跳躍軌道を直角に変え、一つ隣のビルに着地する。

黒潮一人もまた、無人ヘリコプターに登場し、距離を取っている。
ただし、三巌の左腕へ与えられた傷は、三巌による呪術を通し一人にもその傷を与えている。

三名が、開戦に向けた配置につくまでの刹那に、既に二度三度の応酬が繰り広げられた。
そして、闘いはこれから始まる。

   本セッションの最終決戦には、隠されていた特殊ルールがあった。
   セッション開始時に、各PLに与えられたGMからの問い。

   「セッション開始時点で、最も琴線に触れたPCは?」

   この回答が、ここで公開された。

   黒潮一人:一票
   柳生三巌:二票
   安倍信明:一票
   ミッシェル・ペリー:一票
   唯仁:一票

   この最終決戦の開始時に、「一票でも獲得した対戦相手がいるPCは、1点の射撃戦ダメージを受ける。」というルール。
   最終決戦の参加者三名は全員これに該当し、1点の生命点を失う。

   黒潮一人、残り生命点3点。
   柳生三巌、残り生命点2点。
   そして、安倍信明は残り生命点0点となるも、最終決戦のルールにより、生命点1点まで回復し、戦闘開始となった。

   まずはプロット。《影分身》の無くなった今、全員が一発勝負でのプロットとなる。
   プロット結果は、以下の通り。

   プロット6:三巌
   プロット3:信明
   プロット1:一人

   最終決戦のルールにより、戦場がランダムに決定される。
   戦場は、「高所」。

信明は三巌に向け、勾玉のレプリカをかざす。
片腕を失った三巌の隙をついて、その支配を奪う呪。

誤算は、片腕の喪失は三巌にとって隙たり得なかったということ。
片腕を失いながらビルに着地した直後の再跳躍。

信明に向かって一直線の突き。
ビル床面に設置されていた一人の防衛装置を布のように裂き、しかしそれは阻まれる。
「八咫鏡」。
信明の持つ神器のレプリカ。一度きりの神権の行使が三巌の大太刀を阻む。

「これが日の昇る国、日本を背負う覚悟です。」
「"天上天下"は日本国の手におさめなくてはいけない。」

   三巌の手番開始時に、信明が「追加忍法」から《操り人形》を使用。
   しかし、これは三巌に奥義破りされる。

   三巌は《陽炎》から《万華鏡》で信明に攻撃。
   この《陽炎》がスペシャルし、三巌の生命点は回復して3点になる。

   特技分野が1つしか残っていない信明は、この回避に失敗。
   一人の「絶対防御/流し/防御低下」が使用されるも、三巌はこれも破ってみせる。

   《朽気》を含めて4点のダメージに、信明は生命点が0になり「奥義:不死身/定め/回数制限」を使用。
   一人は《一見》で奥義破りに参加し、失敗して《涓滴》のカウントを進める。

   信明が生命点4点で戦場に復帰し、三巌の手番は終了となった。


割れた神鏡を投げ捨て、即座に呪の詠唱を完了させる信明。
霞が関の空に多層三次元に構築された外縛陣は、一人と三巌の両者を捉えてみせる。

両者を締め上げる信明の呪は、一人の耐呪装置を、三巌の高速機動を上回った。

   信明は《外縛陣》を使用。
   《羅盤》《揺らし》に加えて「忍法修行」「家宝:加速」で強化されたそれは、凡そ必中の攻撃であり、黒潮一人はこの回避に失敗。
   一人が使用した「絶対防御/くらまし/防御低下」も信明自身によって破られ、一人は2点のダメージを受けて生命点1点まで削られる。

   一方、如何に難易度の高い判定であろうと、一度だけなら逆凪と引き換えに成功する《朧》を擁する三巌。
   しかし、この回避判定で、三巌はファンブルをロールしてしまう。
   《朧》はファンブルに対しては使用できない。
   「奥義:絶対防御/くらまし/防御低下」で応じ、一人の《一見》が失敗したことで直接のダメージは防ぐも、三巌は逆凪に落ちてしまう。
   そして、「高所」の効果により、接近1点を受け、生命点が2点となる。

   そして、これで信明の手番は終わり、ではない。

「関の三番」。
三巌への呪詛は、その血を纏った大太刀に移し替えられていた。
大量生産がゆえ、使い捨ての利く最上級の一般品。
刀も、手傷も道具として遣う三巌の防御は、信明の陣を一度は弾くが、しかし。

逆凪に落ち、ビルの谷あいを落下する三巌に対し。
その身を縛り上げられ、身動きの能わない一人に対し。

信明の式神が、国体維持を行使したのだった。

   攻撃終了後、信明は「背景:後援者」を使用する。
   任意の忍具を一つ手に入れるこの背景により、信明は遁甲符を獲得。

   そして獲得した遁甲符を消費し、《式神》が起動する。
   連続攻撃。

   《羅盤》《揺らし》「忍法修行」「家宝:加速」。
   全てが適用された《外縛陣》が、再び一人と三巌を襲う。

   一人は回避に失敗する。三巌は逆凪により回避判定を行えない。
   回避判定が行えなければ、《朧》を使用することも出来ず。

   両者ともに、2点のダメージを受け、生命点0、脱落となった。

第四修羅、国士無双、黒潮一人。脱落。
そして、第五修羅は、しかし。

「叶わねえなあ。組織ってもんの大きさにゃあ。」
「けど、俺じゃねえやつが最強だってのは、認められねえよ。」

懐中から取り出したのは、これまた両刃の小太刀。

「……貴様! 頭領が何かをわかっていない貴様ではあるまいに!」

ゆっくりと、小太刀が三巌の心の臓へと沈んでいく。

「楽しかったぜ、修羅どもよ。」

血が滲み、小太刀が赤く染まる。
そして、信明の胸が袈裟に断たれた。

「……楽しんでいただけたのならば、十分です。」

信明は倒れ臥し、三巌は地へ堕ちる。


第五修羅、深剣、柳生三巌。死亡。
第六修羅、国体維持、安倍信明。脱落。

   生命点が0となった三巌は、黒潮一人も同じく脱落するを見、ある行動を宣言する。
   『最後の一撃』。
   自らを死亡させることで、最後にもう一度攻撃を行うシノビガミのルール。

   このタイミングで信明を脱落させれば、勝者無しとなり、それは即ち三巌が敗北していないとも、取ることができよう。
   最強を目指した三巌の選択。
   最後の《陽炎》《万華鏡》は、信明を貫き。
   5点の生命点ダメージを受けた信明は、戦場から脱落した。



倒れ、力尽き、高所より自由落下を始める修羅達。

信明の、三厳の懐より零れ落ちる、二つの巻物。

巻物は風に乗り、何処かへと消えた。

六合統一は為されず。

最強の座は、未だ空席。
最終更新:2021年05月14日 00:10