なれる!キャンペーンGM
文責:はいふん
初めましてorお久しぶりです、大都会4回生のはいふんです。
今回私は部誌「求ム!冒険者」の記事であるGM概論で、単発シナリオの作り方を解説しました。ですが単発シナリオではPCがせっかく作ったキャラもわずか1セッションで(よそに持ち込まない限り)出番が無くなり、GMの方もシナリオをせっかく作ってもそこに仕込める要素はどうしても限界があるものになってしまいます。
そんな悩みを解決するいい方法があります。それは、キャンペーンシナリオを打ち立てることです。同じPCたちで何回かのセッションを行うことで一つの物語を追っていくキャンペーンシナリオならPCも複数の冒険を潜り抜けることでデータ的にもパーソナリティ的にも魅力的に成長し、GMも単発に比べてより重厚な物語を展開することができます。
ただ、キャンペーンシナリオを実施するというのはぶっちゃけ大変です。単発シナリオを同じ数だけ作るのよりも大変です。ですが、コツや抑えるべきポイントを知っていれば出来ない仕事ではありません。私自身も去年の春学期に初挑戦し、失敗と成功を繰り返しながら、現在自身5作目のキャンペーンを実施中です。
今回はそんな、「キャンペーンシナリオを作る」ということに焦点を当てて、キャンペーンGMに興味があるけどまだ経験がない人を想定して記事を書くこととしました。ネタを思い付き、それをキャンペーンシナリオに昇華し、各話ごとに落とし込んで実際にマスタリングするまでを、実際に自分が先学期にやったキャンペーンシナリオである「LOST COMET」での経験をもとに書いていこうと思います。
まずシナリオの概要を説明しようと思います。システムは「禁書封印譚 ブラインドミトスRPG」という、禁書という禁断の知識へと人々を誘う存在とその禁書の力で悪しき本を封印する禁書使いという存在が主役のグループSNEによる現代異能物です。このシステムで「LOST COMET」というハンドアウト制(注:PC作成時にGMから行動指針や背景等を記した、シナリオ上の立ち位置についての情報を渡す仕組み。主にFEARゲーでよく見る)の4話キャンペーンをやりました。
目次。
1.【シナリオのテーマを決めよう】
コラム①:テーマを思い付くために
2.【キャンペーンのストーリーを組もう】
コラム②:ハンドアウトの性格について
3.【キャンペーン構成を作ろう:①】
4.【キャンペーン構成を作ろう:②】
5.【各話ごとのシナリオを作ろう】
6.【作ったシナリオを回そう】
終わりに
1.【シナリオのテーマを決めよう】
まずシナリオを書くためには、「このシナリオで何をやりたいか」という核になるテーマが必要です。
「こんな理想のヒロインを出したい」「ひと夏のボーイミーツガールをやりたい」「主従エモをいっぱい見たい」「最高過ぎたあの作品みたいなことをしたい」「こんなデータを使ってやりたい」……こんな程度で大丈夫ですし、一個だけじゃなくても大丈夫。
今回の私のシナリオでは「誰も立てないのでブラインドミトスでシナリオを書きたい」「丁度最近ハマったBUMPのrayの歌詞に感化されたのでなんかやりたい」という二点が最初に来ました。ぼくは軽率なオタクなので最近ハマったものをネタによくシナリオを書きますが核なんてそんなんで大丈夫です。ネタ元と同じような話にならないか心配になるかもしれませんがこの後色々こねくり回すうちに大体別物になりますし、なんならPLが別物にしてくれます。「物語を書く」ということで吟遊にならないかなと作成時は心配になるような作り方をしているものですが、案外気を付けるところを気を付ければPLがきちんと自分の想定と別物にしてくれますよ。具体的にはマスタリングの項にありますので、どういうことかはお楽しみに。
そして核となるテーマが決まったら、その核をシナリオにどう落とし込んでいくかを考えていきましょう。何かの作品を元にするにしてもその作品のどの要素を、どんな形にしてシナリオに変換するかは人それぞれです。今回のシナリオの場合、
「ブラミトやりたい」
↓
「せっかくだし象徴体(禁書のアバターみたいなもの)をヒロインにしてみようか」「感情とか記憶とかの喪失がシステムに組み込まれているし、そういうのもやりたい」「本がテーマなのだし本ならではのギミックを搭載したいな、電子書籍の自炊とかネタにできないかな」
「BUMPのrayを元にしたい(歌詞についてはググって、良い詩なので)」
↓
「大事な人との離別を中心テーマに据えよう、他のもできるだけ拾いたい」
↓
「どのPCにもヒロインをあてがって離別したりそれを避けるために戦ってもらおう。他の歌詞の情景も、特にPC1周りに可能な限り盛り込もう」
という感じで核の要素をシナリオの要素へと変換しました。この先のプロセスで何度もシナリオの方向性が迷走することがあるかもしれませんが、そういう時にはここで決めたテーマにまで戻ってきましょう。一番やりたい要素を思い出せば、きっと軸は定まります。
コラム①:テーマを思い付くために
人によっては「シナリオは確かに書いてみたいんだけど、どうやったらネタが思い付くかわからん!」という人もいると思います。ということで、ここではテーマを思い付くための方法について軽く書こうかと。
これはシナ作に限らずあらゆる創作の基本なのですが、「何か作りたい」という欲求が生まれるためには、そうあなたに思わせるだけの良い作品に触れなくてはなりません。音楽でも小説でも映画でも他人のシナリオでも何でもいいので、いろんな作品に触れて自分の心を動かしましょう。また、ただ一人で鑑賞するだけでなく他の人とそれぞれの好きな作品だったり、あるいは創作について語り合ったりするのもいいですね。互いの好きを言語化することで「その作品の何が好きか」に気づいてそのままテーマになったりしますし、創作のスタンスについて他人の考えを聞くと競争心的なあれでやりたいことが思い付いたりします。
そして、心が動いてテーマが思い付いたらそれをすぐメモりましょう。人はバカなので、その時その時の感動はメモっておかないと次第に薄れていきますし、何なら全部忘れます。いつでも書き込める媒体ということでスマホのメモ帳アプリに、そうやってどんどん思い付いたことを書き込むネタ帳を作っておきましょう。シナリオが作りたくなった時や、後述するストーリーを作らねばならなくなった時、そこに書かれたあなたの感動の歴史はきっと力になってくれます。
2.【キャンペーンのストーリーを組もう】
ここまででシナリオとしての主眼は決まりましたが、それだけではもちろんシナリオになりません。シナリオとするためには時系列や各話ごとの事件、シナリオの流れが必要になります。
ここから先は核の要素に様々な肉付けを施しつつ、キャンペーンシナリオ全体の流れを決めるのを目的とします。シナリオ作成で一番大変かつ重要なポイントなのではないでしょうか?概論で話した単話セッションなら本筋があればそれでいいのですが、キャンペーンとなると各PCごとの物語も必要ですし、それらの筋をどう絡ませ合うかを考えるのは結構大変です。
私の場合はいつも、シナリオの中心になる物語の軸(メインストーリー)から決めていき、そこにサブストーリーを絡めて各話ごと、PCごとのストーリーを組んでいます。この時自分がいつも大事にしているのは、「PCは全員それぞれのストーリーの主人公である」というところです。とはいってもこれを意識するようになったのは割と最近なのですが。
PTを組んで複数のPCが皆で事件に対するといっても、どうしてもその中で主人公格な人とそうでない人というのは出てくると思います。それ自体は決して悪いことではないですし、PLも参加している卓で何がやりたいかは人それぞれなためむしろ良いことです。ぶっちゃけ全員が全員メイン筋の主人公になろうとしたら多分シナリオは破綻します。
でも、物語の中でたとえ主人公格ではないとしても、PCは一人の意思を持った人格です。当然彼らには彼らの物語があり、卓全体の物語とは別にそこでの主人公です。これを意識して各PCの物語をシナリオに組み込まないと、どうしてもPLの没入感が薄れたりPCの指針が立たなかったりということが起きることがあります。
そのための手法はいろいろあると思うんですが、個人的に一番軽率で簡単なのは「各PC全員に対応NPCを用意する」です。それもPCが持ってきた設定から拾うだけでなく、最初からシナリオで用意されてるNPCを用意してやるのがいいでしょう(双方の設定を組み合わせてNPCを作るとかでももちろんOK)。物語というものはキャラクターが動くことによって発生するのですから、シナリオで用意されているNPCとPCを絡ませればどう足掻いてもシナリオの物語に引き込むことができます。ハンドアウト制のシナリオだと大抵シナリオロイスの形などで設定されているものですが、ハンドアウトが無いPT制のシナリオでもこれを意識してNPCを用意するといいですよ。例えばPTがキャンペーンを通じて関わることになる陣営に主要NPCをPCと同数置いておくとか。
他にPCを物語に引き込む手法としては、PCが設定で持ってきたNPCにシナリオ中の役割を生やすとかですね。これが上手くいくと、個人的には上記のやり方よりもPCとしては満足度が高いです(個人の感想)。実際にLOSTCOMETでは第二話の事件でPC2の設定を組み込みました。この手法の方がPCとしては自分が作った設定をうまいこと取り込んでもらえるわけなので嬉しいですが、まぁGMとしては少し難易度の高い選択肢です。まずPCが早めに設定上げてくれないとそもそも考える時間がないし、よしんば上げてくれたとしても元のシナリオとある程度かみ合わないと自然には取り込めませんから。この辺は性癖が信頼できる相手と卓を囲むと「あの人ならこのハンドアウト取ってこういうキャラやるだろうな」とかがシナリオ作成時点で予想できるので少し難易度が下がります。あとはPCの設定が上がってくるまでシナリオを詰めすぎないのも大事ですね。がちがちに詰まった設定にさらに要素をぶち込むのは大変です。
少し話がそれましたが、ストーリーを考えるときにはPCを引き込むためにこういうポイントを気にしておくといいです。さて、それでは実際にLOSTCOMETでのストーリーの組み方を追ってみたいと思います。
今回の場合は核の時点で「象徴体がヒロイン」「PCは離別に関するストーリーをやってもらう、PC1はrayの歌詞っぽい感じ(ざっくり説明すると、昔にお別れした「何か」との別れの悲しさを糧に自分は前へと進んでいくみたいな感じです)」「記憶とかについても触れたい」というのまでは決まっていたので、これをもとにPC1のストーリーを策定するところから始まります。散々メモ帳を書き荒らしたり諸々考えているときにAbemaで劇場版SAOやってるの見てエモーイ!と叫んだり同時期に友人と別のシナリオの話をしたりした結果、時系列で語ると
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PC1が小学生の頃に大事にしていた星についての童話本が無自覚のうちに禁書化。でもPC1は象徴体が普通の人間だと思い込み、その象徴体たるヒロインとPC1の幼馴染とで仲良し三人組として遊んでいた。
しかし7年前のある日その禁書が専門機関に回収封印され、離別。それに伴い世界線の修正力が働き、PC1のヒロインについての記憶も「名前もどこに行ったかもわからないけど、確かに一緒にいたはずのあの子」ということしか思い出せなくなり、禁書使いとしての能力も失われる。幼馴染含む周囲の人の場合ヒロインについての記憶は完全に失われ、写真などの媒体からも消えてしまう。
その後巡り巡ってヒロインの禁書はマキシマソフトという組織の悪い計画に利用され、裁断してデータ化されてしまいました(所謂自炊ですね。これによってヒロイン(オリジン)は虫の息)。そうやって出来た彼女のコピーに色々改造を施した存在を元に一般市民をも巻き込んだ悪事が動き出すが、それと同時期にPC1の幼馴染は思い出の写真たちに残る不自然な空白に気づき一般人でありながら禁書の存在、並びにヒロインのことを忘れてしまったのは禁書関連で何かがあったからだと突き止める。
それを知った悪事の黒幕が幼馴染に接触し「私の計画に協力すればあの子を取り戻せるぞ」と教唆して巻き込み、ヒロインのコピー存在を与えて計画の中枢である「ヒロイン(コピー)の知名度向上=アイドル活動のプロデュース」を任せるようになる。幼馴染はかつて大事にしていたはずの友達の記憶を取り戻したいという想いを原動力に計画に勤しみ、その過程でかつての思い出を胸に仕舞い込み大きくなったPC1の前へと「記憶の中のあの子によく似た顔をした誰か」、ヒロインのコピーを連れて現れる。一方ヒロイン(オリジン)も虫の息ながらこの計画を止めなくてはと、かつて禁書とその持ち主であったことによる’繋がり’を頼りに夢を通じてPC1の前へ現れ、警告を送る。
夢で、現実で突然蘇る過去の幻影に戸惑いつつも禁書事件に巻き込まれ禁書使いとして覚醒したPC1は、次々に起こる事件を通じて「あの子」の正体、恐るべき計画の全容を解き明かし、これを止めようとする。終盤、黒幕に騙されながらも彼女を取り戻すために戦う幼馴染も撃破してついに全てを明らかにしたところで、この計画を止め人々を救うためにはもう虫の息であるヒロイン(オリジン)の禁書としての能力をフルに引き出さなくてはいけなく、ヒロインか人々かの二者択一を迫られる
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という話の流れが完成しました。なんだこの怪奇文書。推敲のために読み返してちょっと心がつらくなりますね。
幼馴染とヒロイン(コピー)と黒幕の関係、ヒロイン(コピー)にアイドルさせるあたりは劇場版SAOにもろに影響を受けましたが、こんな風に肉付けにおいても既存作品はガンガン参考にしていいと思います。パクリを三つ寄せ集めてこねくり回したら実質オリジナルみたいなものですよ。趣味なのだからそんなもんでいいんです。
こうやってPC1の物語が決まったので、次にPC2-4の物語について決めていきます。この時各PCの役割をどうするかが問題になるわけですが、そういう時にはキャンペーンシナリオのテーマを根底に置いたうえで、そのテーマの表現方法をPCごとに変えるとテーマが映えていいですよ。
今回ならシナリオテーマが「守るべき者との離別の物語」ということでPC1,3を「これまでの離別を動機に動く者」、PC2,4を「これからの離別を防ぐために動く者」、PC5を「守られる側から飛び立つ者」と定義し、これに沿ったストーリーを用意することとします。
それと並行して既に用意してあるメインストーリーとどのような形で接点持たせるか考えつつメモ帳をぐちゃぐちゃします。とりあえず「過去の禁書封印時の諸々」「黒幕が計画を進める理由」「黒幕の計画の途中段階」あたりが使いやすいと思ったので
PC2→クラスメートの親友が黒幕の計画に巻き込まれ、二人の日常を取り返すために戦う
PC3→7年前に任務で相棒を亡くし、その命を奪った悪側のエージェントを復讐のために追う(相棒が死んだ件=PC1のヒロイン封印事件、悪エージェントがメインストーリーの事件を自分の上司の指示でPC陣営とは別に追ってきていて、それをさらに追いかける形でPC3も事件に関わる&実は相棒が黒幕の娘で、形見として彼女が使っていた禁書を自分が使って彼女を蘇らそうと黒幕が計画を立てた)
PC4→警察庁禁書対策課の一員として、この町で起きる事件から市民を守るために戦う。同じくカッコよく事件を解決して町を守るのに憧れる新聞記者がコバンザメのごとくついてくる(担当ヒロイン)
PC5→未来の禁書使いとして屋敷に幽閉され英才教育されていたのを謎のお兄さんに「外の世界を見せてやろう!」と拉致られ事件解決に放り込まれる(実は謎のお兄さん=悪エージェント、実は根は良い人で、PC3の相棒を殺したのも不慮の事故という裏があった。シナリオ途中までは殺人犯として扱われるが、謎のお兄さん=悪のエージェントという事実と彼の善性が分かってからは味方NPCに)
こんな感じの物語になりました。ふわっふわだなと思うかもしれませんが、まだストーリーの大枠でしかないのでこんなものです。こうして見るとPC2と4がメインストーリーとの絡み少なくて反省って感じかな……まぁこんなんでもいいんです、形にするのが大事。
コラム②:ハンドアウトごとの性格について
ハンドアウト制とは冒頭でも軽く説明したように、キャラ作時点でPCに「あなたはこういうキャラです」とある程度の設定を提示し、キャラ作の指針としてもらうシステムです。
今回のシナリオのように各PCごとに明確な役割を持たせる場合に、PCが作成したキャラがすんなりとその役割に入っていけるようにする潤滑油の役割を持つ優秀なシステムですが、大抵どのようなシステム、シナリオでもPC1-4あるいは5とそれぞれのハンドアウトにはある程度共通の性格があります。もちろん例外も多いですが、以下に自分の中での典型的なハンドアウト観を置いときます。
まずPC1は、大抵の場合主人公です。物語の中心にいて、序盤はPCそれぞれの物語の中でも特に謎に満ちており、最終回に向け徐々にその謎が解けていきます。あと大抵普通の学生だったりと「初々しい」人物像から始まることが多いかもしれません。
次にPC2は、第二の主人公ともいうべき存在になりがちです。PC1と同じくメインストーリー中心近くにいることも多いですが、その立ち位置&個人の物語は多くの場合PC1とは違ったものになります。あとこの枠も先のような「初々しい」人物なことが多いですがPC1ほどではないことも多い印象。
次にPC3は、大抵PC1,2よりはメインストーリーとズレた位置にいます。ですが決して動機が無いわけではありません。ある時は復讐、ある時は探し物といった個人の目的がメインストーリーの流れに絡まり、動機は違えど熱心に事件へと向かっていくことになるでしょう。この辺から元々エージェントといったような「玄人感のある」人物像から始まることが多くなります。
次にPC4は、「お仕事枠」という感じが多いです。エージェント支部長や警官といった、仕事の都合で事件に絡んでくる玄人が多く、個人の動機よりも職業的理由で動くキャラをよく見てきました。立ち位置上専門的な知識、コネも持ってることが多くPTをそのような面から支援する大人役って感じですね。
最後にPC5はトリッキー枠、もしくは自由枠です。TRPGの人数上いてもいなくてもいい枠として作られがちなのでメインストーリーのキーとなるのはあまり見ません。代わりにこの枠独自の立ち位置を持っていることも多く、周りとは違う物語を楽しめるかも。
以上ざっくりとした所感ですが、ぶっちゃけ例外まみれなのでそんなに気にしないでいいです。でも物語上のPC立ち位置に悩んだ時にはこの辺の感覚を覚えておくと何かの助けになることもあるかもしれませんね。これに沿うだけでそれぞれのポジでPCの味が変わって、ストーリーに厚みが出ますし。
3.【キャンペーン構成を作ろう:①】
これで書くべきストーリーは決まりました。次に、これをキャンペーンに落とし込んでいきます。
どういうことかというと、キャンペーン全体の流れを話数の数に区切って、それぞれで一つの事件が起きてセッションになるように構成していきます。アニメで言うシリーズ構成みたいなものですね。今回は4話セッションなので一話で導入兼PC達の顔合わせ、二話で順当に物語を進め三話で一つのターニングポイントに、そして四話で一気に結末へと駆け抜けるという起承転結の流れに基づいてやっていけばいいでしょう。もちろん他にもいろんな形があるでしょうが、今回はこの形式にします。
その際気にするべき点として、「各話でどのPCにスポットを当てるかを考える」というのがあります。いわゆる主役回というものです。特にハンドアウト制の場合は各PCの役割が明確に定まっている以上、意識的にスポットを順に当てていかないと終わってみたら出番なかったみたいなことになりそうで怖いので、きちんと考えておくことをお勧めします。
今回の場合第四話は当然PC1、並びに黒幕とPC3の相棒の関係的にPC3もスポットが当たることが初期段階で分かっていたので後の3人をどう配分するかが問題になります。
ここで各話で出せそうなボスを考えると現状黒幕・幼馴染・悪側のエージェントの三人がいるのですが第四話で黒幕と戦う以上幼馴染との決戦は第三話でやるべきだと考え、そうなると流れで第二話が悪側のエージェントがボスとするのが丁度よさそうです。となると第二話のスポットライトはPC3/5に当たることになり、あと考えるべきはPC2と4です。ここについては正直この時点でそこまで思いつかなかったのでPC設定飛んでくるのを待つことにしました。そんなこんなでざっくりと作ったシリーズ案がこちら。
一話(学園祭一週間前)
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何か普通に禁書事件がPC1,2の通う学校で起き、PCが全員巻き込まれる。ついでに幼馴染&ヒロイン(コピー)の顔出し、PC1とヒロイン(真)の夢での邂逅、悪エージェントの影を演出しておく。多分PC4のヒロインを巻き込ませてPC4にスポットを当てる?
二話(学園祭)
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黒幕の計画の実証試験となる事件がPC1,2の通う学校の学園祭で起き、またみんな巻き込まれる。裏で独自に暗躍してた悪エージェントがボスであるが、学園祭での禁書事件は彼が起こした事件ではないことが明らかになり次話で真相を突き止めに行く流れを作る&PC3,5の物語を進める。また学園祭での禁書事件にPC2のヒロインが本格的に巻き込まれて今後の戦いの動機になるかも?あと夢での邂逅はまたやっておく。
三話(学園祭翌日~ライブ前夜)
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二話の結末をうけて情報収集を進めるうちに、裏でじわじわと進む計画&かつてのPC1に何が起きていたのかについて段々分かってくる。その結果週末に行われるヒロイン(コピー)のライブで計画が完遂され市民が犠牲になりかねないと分かり前夜のリハをやってるライブ会場のスタジアムに乗り込み、幼馴染&ヒロイン(コピー)と対決。そして勝利するものの、黒幕本人に敗北した幼馴染ごと罠にはめられる。
四話(ライブ当日)
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罠にはめられるも三話でヒロイン(真)と過去に何があったかを思い出したPC1が引き出したヒロイン(真)の力で罠から脱出し、ヒロイン(真)の導きで彼女が仕舞われている&黒幕の計画についての資料が眠っている敵本部へ潜入。途中の関門も突破してヒロイン(真)と邂逅し黒幕の計画の全容も分かるが、その先にあるのはヒロインか多くの人々かの二者択一だった。苦渋の選択を受け入れたのち再びスタジアムへ乗り込み、NPCの手も借りながら黒幕の元へと舞い戻り、黒幕&形見の禁書の象徴体として出てくる黒幕の娘=PC3の相棒との最終決戦。それに勝ったのち人々を救うための儀式として歌を歌い、二度目のお別れをする。
こんな感じです。これを読むとわかると思うのですが、三話と四話がこの時点で枠組みが結構固まっている割に一話と二話がスカスカですね。何故かというと、この時点でこれ以上思いつかなかったからです。
三話と四話、つまり物語終盤は大抵「このキャンペーンでやりたい要素」というのがふんだんに盛り込まれる見せ場なので構想初期から固まるのですが、そこに至るまでの序盤中盤ってなんとなくの流れはあっても細部までは思いつかないんですよね。そんなんでいいのかと思うかもしれませんが、これはこれでありですよ。なんてったってこれでも私のキャンペーンはちゃんと完遂できました。
勿論最初からある程度固められるだけの構成力はある方がいいのだとも思いますが、少なくともPC案とか出てきて本格的にキャンペーンが始動する前のプロットなんてこんなもんでいいと思います。その方がPC設定も無理なく取り込めますし、何より楽です。
ただ一つだけ気を付けておきたいこととしては、終盤につなげるための情報の配置だけはきちんとやりましょう。例としては黒幕サイドの連中の顔見せや、夢のシーンですね。この手の伏線ポイントだったり情報配置だったりを忘れると後々演出面でも情報開示面でも苦労する羽目になります。シナリオ構成の前にストーリー組みで全体の流れ自体は見えているはずですから、この手の流れに必要なポイントは早めに配置しておきましょう。このシナリオ全体の流れの意識を持っておくと、例えばシナリオを実際に回しているときでも状況に即して伏線っぽいのを仕込んだりできるようになります。まだシナリオ作成が初心者で最初から全部考えるなんて無理!という人は今回の自分のプロットのように、スカスカでもいいからとりあえず流れだけ抑えて構成を作って卓を立ててみるのをおすすめします。
4.【キャンペーン構成を作ろう:②】
そんなこんなで卓を立てて募集をかけるとPLが集まってハンドアウトを奪い取り、PC案を書いてくれます。
これらの反映に関する話はストーリーの組み方の項で説明したので実際の結果だけ記しておくと、PC2が設定で「自分の両親はすでに死んでおり、ハンドアウトに書いたクラスメートと同棲しているという重めの百合をやりたい」と書いてきたので2話の文化祭回でこの設定を使って事件を起こすことにしました。おかげでPC4以外はスポットタイミングが決まって来たので、第一話の事件でPC4にスポットが当たるようにPC4の担当NPCを一話の禁書事件へ関わらせると決定。またそれとは別にPC4が「自分の父親はTBファイラーだったが謎の失踪を遂げ行方不明」という設定を出してきたので禁書の闇に落ちて黒幕の計画に加担させ、七年前の禁書回収時にPC3のヒロインが死んだ要因を作ったり第四話の中ボスとして立ちはだからせたりしました。死人と行方不明人はGMのプレイエリアの中なのでどんどんシナリオでいいように使いましょう。あとはPC5がすごく可愛い箱入りお嬢様を用意してきたので自分の性癖が従者を出せと騒いだので、物語開始時点でPC5がいた家での世話役をNPCとして用意し、「家へ帰りましょう!」と彼女を連れ戻しにくるというサブストーリーを加えました。おかげでPC5のテーマである「庇護からの旅立ち」がより表現できるようになってエモかったと思います。
このようにして先ほど作ったガバガバ構成案はめでたくまともなシナリオ案となってくれました。本当はもっと色々反映させたりシナリオの構造・描写に使ったりしたけど割愛しつつ、この時点でのシナリオ構成案をPCごとの視点で書いておきます。
話数 |
PC1 |
PC2 |
PC3 |
PC4 |
PC5 |
1話 |
現実では幼馴染&ヒロイン(コピー)、夢ではヒロイン(真)といった形で過去の幻影がよみがえるとともに、禁書事件に巻き込まれTBファイラーに。 |
クラスメートである自分のヒロインといちゃつきつつ、自分は事件に巻き込まれてTBファイラーとして活動。 |
かつての仇敵である悪エージェントがやって来たという情報を聞き、舞台であるこの街にやって来たところを事件に巻き込まれる。 |
街で禁書事件が起きたので勝手についてくる新聞記者とともに解決のため行動。記者ちゃんの過去を掘り下げる感じで禁書事件が起きるのでヒロイン力を上げていこう。 |
謎のお兄さん(悪エージェント)に拉致られて街までやって来たところお兄さんに放り出されて事件解決へと巻き込まれることに |
二話 |
またもや文化祭中の学校で禁書事件が起きる。夢の中での警告や幼馴染・ヒロイン(コピー)の挙動がいろいろ気になるが……? |
左に同じく学校での事件に巻き込まれるが、その中核にヒロインが巻き込まれる。戦いに参加する動機が本格化。 |
またもや起きた事件の中に仇敵の影を見る。セッション終盤で打ち倒しようやく話をする機会を得るも、この事件の黒幕ではないことを明かされる。 |
事件が起きたなら解決しないとな!今日も今日とて仕事として、先の事件で新米TBファイラーとなった記者ちゃんと事件解決のために動く。 |
またお兄さんがしれっと事件へと放り込んできて巻き込まれる。終盤でお兄さんが悪エージェントと知り葛藤か何かしてもらう。 |
三話 |
悪エージェントの証言から今回の事件のこと、過去の事件のことを調べていったことで徐々にその全貌が明らかになっていく。その上で、彼女を取り戻そうと計画に加担している幼馴染と決着をつける。 |
ヒロインを無事に救い出すことができて幸せモード。でもTBファイラーとして事件の調査に関わるうちに二話の事件で巻き込まれたせいで計画を止めないとヒロインも危ないと判明。禁書使いとして目覚めた彼女と共に再び戦う。 |
悪エージェントから情報を聞き出し、この街で起きている事件と七年前の事件に繋がりを見出して調査を進める。かつての相棒の親が計画の中枢にいると知り、今度こそ七年前の清算をするために計画を止めにいく。 |
どうやら想像以上にでかい事件が進行しているらしい。記者ちゃんも手ごまとして使いつつ、市民のためにも何としても阻止せねばならない。それが自分の正義なのだから。 |
お兄さんの正体を知り色々あったのち、自分の家からも従者がやってきて帰ってきてくださいと言ってくる。でももう守られるだけの自分ではない、今帰るわけにはいかないのだ。 |
四話 |
ようやくヒロインと邂逅を果たすも、計画の全貌とともに明らかになる残酷な選択。おら!苦しめ!悩め!そのうえで今度はきちんとお別れしろ! |
↑そのまま継続で最終決戦。二話ではヒロインを守るヒーローとしてだったが、今度はヒロインと肩を並べて二人で日常を取り戻せ。 |
かつて失った相棒を蘇らせようとする黒幕との対峙。この計画を阻止することで、7年間の時をかけた過去の清算の終わりとなるのだ。 |
↑継続&ミドル戦闘で失踪したはずの父親(闇落ち)と対峙。これを打ち倒しつつ、自分の正義である市民の守護を遂行。 |
↑継続で最終決戦。この戦いをもって独立した自分を証明するのだ。 |
大体こんな感じで想定していました。今思い返すとPC4の物語はもうちょっと深められたような気もするなぁ……もう一本くらい筋を増やすと良かったのかも。
コラム③:NPCについて
さて、PC設定も反映させてシナリオ構成が定まったらいよいよ単話毎のシナリオを組んでいき、キャンペーンを走らせることになります……が、その前にNPCについてのお話でもできればと。
シナリオを書いていると味方だったり敵だったりモブだったりと、色んな場面でNPCが必要になってきます。そしてその数はキャンペーンシナリオだと時には膨大な数になります。
今回の私の卓では一人で構想していた時点で8人、その後PC設定が出てきてさらに1人増え、シナリオ運営時にもモブ役とはいえ二人増えて合計10人の大所帯になりました。単話でサラッと出てくるのも含めるともうちょい増えますが、まぁ相当な人数だと自分でも思います。
そしてここまでやるかはともかくNPCの人数が増えるとその管理が大変になるんじゃないでしょうか。ということでGMとしてのマスタリングなどに進む前に、このNPCたちをどう扱うかで自分が気をつけているところを何点かお話します。
まず、シナリオ中の重要NPCについては性格や行動指針といったキャラの軸をしっかり定めておきましょう。
そのキャラが何を目的としてキャンペーン全体で動くのか、どのキャラを好いていてどのキャラを嫌っているのか&それを表に出すか出さないか、キャンペーン全体の情報の中でもそいつは何を知っているのかなどを重要NPCについては事前に書き出しておくと、シナリオ中での彼らの動きをきちんとシミュレートできるようになります。
これがどういうときに力を発揮するかというと、「メイン回以外でそいつが何をしているか」「GMの想定外の行動をされたときにキャラが何をするのか」というのが必要になった時です。ぶっちゃけそのNPCのメイン回中で想定通りに事が運んでいるときはキャラクターレベルで行動原理とか分からなくても、シナリオ中でどう動いてほしいか考えるだけで動かせちゃいます。
ですがシナリオなんて想定通りに行くはずはありませんし、スポットライトが当たってなくても作中世界で時間が進む以上キャラクターはPCと同じようにその時その時で動いているはずです。そういう挙動を全部事前に用意しておくなんて言うのは土台無理な話ですが、行動原理だけ決めておいて状況に合わせて行動を出力するだけならその場でも案外できます。それによって不測の事態やスポットライトの当たっていない状況もシナリオ上で演出できるようにするとマスタリングが滑らかになるだけでなく、PC視点でもその時その時で自分が起こした行動がNPCに反映されると満足度が高くなります。少なくともキャンペーン全体を通じて行動演出が必要になる重要NPCについてはこの辺をしっかり固めておくのをお勧めします。
とはいっても、NPCの知っている情報や行動原理はともかく、キャラ同士の関係性やNPCの性格といった要素までシナリオ開始前から設定表だけで固めるのって大変だと思います。私はいつも苦労します。そんな時はいわゆる「百の質問」と言われる、キャラクターがどんな子なのかを質問してくれるサイトを使って固めていったり、イメージソングを決めたり、立ち絵を決める・描くなどするとふわふわしているイメージがどんどん具体化されていくのでおすすめですよ。
シナリオを作る段階でもそうなのですが、文字情報だけで行き詰まったら文字以外の情報の助けを借りましょう。それでも固まり切らないと思いますが、ぶっちゃけ後は卓内で走らせてみないことには固まらないのである程度のところで妥協しましょう。PCに関わり深い連中ならPCのRP傾向次第で変わる部分もあるでしょうし。
あと当然の話ではあるのですが、NPCの性格付けをする際には自分がRP出来るようなキャラをきちんと作った方が後々の自分に楽です。中の人によってRPの傾向は千差万別、得意なRPも苦手なRPもあるでしょうが、重要なNPCで自分があまり得意でないような性格をさせてしまうといざ演出する自分がつらいです。
もちろんそういった経験がRPの幅を広げるので一概には言えませんが、慣れないうちは得意分野なキャラ傾向に寄せておくのをおすすめします。
ついでにお話しておくと、キャラの口調は色々とバリエーションを用意しておくとNPC勢ぞろい!みたいな時にどれが誰だかわかりやすくなって楽です。ただあまり序盤で勢ぞろいさせるとせっかく特徴づけた口調とかをPLが把握しきる前に集まってカオスになるのでお気をつけて……(この前やらかした)。
5.【各話ごとのシナリオを作ろう】
ということで、今度こそ単話ごとのシナリオの組み方&マスタリングについてです。
まずシナリオの組み方についてですが、私の場合まず各話ごとに「その回で開示しなくてはいけない情報」をPC&重要NPC一人ずつごとに書き出していました。
それぞれのキャラのキャンペーン全体の物語が各話ごとにどんなペースで進むかは今までの作業で決まっているので、それを元に各話で入れなければいけない要素を書き出します。
それと並行し、各回での事件に応じてどんな流れでセッションを進めるかを考えます。
例えば1話の場合なら、記者ちゃんを掘り下げるために彼女が事件記者に憧れるきっかけとなった本が禁書化して事件が起きることにしました。ということでぶっちゃけ1話単品で見るならごく普通の事件が起きて解決するシナリオなので、それこそブラインドミトスのサンプルシナリオのように事件が起きて、禁書領域内で情報収集して、クライマックスに突入して封印して完了という流れになります。
こうして「要素」と「流れ」が決まったら、この二つを見比べながらシナリオフローチャートを作成します。
オープニングやミドル、クライマックスにエンディング、時にはマスターシーンといった各場面に必要な要素を配置しながら、既存のシナリオも参考にしつつどういう風にシーンとシーンを繋げていくかを記述していくことで、今まで考えていた要素を含むシナリオが自ずと出来上がっていきます。
あとは完成したフローチャートの各シーンにそのシーン中の流れを書き込みつつゲームとして成立するようにミドル戦闘や各種判定などを既存シナリオを参考にしてそれっぽく配置したらシナリオの完成です。
この際、人によってはNPCの台詞なんかも巷で頒布されているシナリオなんかのように書き出す人もいるようですが個人的には全部をわざわざ書き出す必要はないなと思っています。
どうせ書いてもPCは想定と違うことを返してくるので無駄になりますし、そういう時はアドリブで返してあげる方がTRPGの即興性が出て楽しいです。
ですが裏を返すと、PCの返答によらない部分については作る意味があるので、自分の場合は「各シーンの開幕台詞」「クライマックスでの決め台詞」「マスターシーン」なんかは予め書いておきます。この辺は即興でやろうといて詰まっちゃうよりは原稿通りとしてもスラスラやれちゃう方が雰囲気出ますしね。
6.【シナリオを回していこう】
ということで各回のシナリオが出来ていくわけですが、シナリオが出来たら当然回さねばいけません。ということでここからはマスタリングについてです。
とはいっても、こうしてきちんとシナリオが出来ている場合はそんなに難しいものではありません。フローチャートだけって不安じゃない?とか思うかもしれませんが、あなたの脳内にはキャンペーンを作成するまでの無数の試行錯誤のすべてが詰まっています。
そんじょそこらの既製シナリオとは比べ物にならない情報量があなたの頭の中にはあるわけで、あとはそれらをPCの行動に合わせて出力していくだけだと自信を持てば大抵何とかなります。でもそれだけではこの記事を書いている意味がないので一点だけ、自分が大事にしているポイントを書きます。
それは、「書いたシナリオに捉われずにPCの挙動を反映して常にシナリオをアップデートしよう」ということです。当たり前のことのように思いますが、意外と実行するのはむずいんですよこれ。
当然PCは自分の想定通りには動かないのでシナリオの通りだけには当日のセッションは進まないのですが、かといってその全てを受け入れてもキャンペーンの軸から外れて卓が崩壊しかねないし、受け入れないとただの吟遊です。ということで、どういう風にPLの提案を受け入れていくと卓が崩壊せずに満足度の高いセッションになるかを書いてみます。
まず、そもそもTRPGシナリオとは何でしょうか。色んな意見があるとは思いますが、自分は「GMが用意した、PCが遊ぶための箱庭」という表現が一番適切だと思っています。
GMは世界観やNPC、ハンドアウトに様々な難題といったシナリオ中の様々な要素を並べてPCが生きていく世界——箱庭を形作るわけですが、その中でどのような動きをしていくかはPCが決める事であり、GMは基本的に介入しないのが望ましいです(勿論、そのまま進んでいくと明らかに不利益が起きるような場面では、適切に箱庭中のオブジェクトを使って誘導したり、時には直接呼びかけて行動を変化させてもらう必要もありますが)。
この意識を持っておくと、マスタリングに置ける方針が見えてくると思います。
まず大事な点として、「シナリオが変動しても可能な限り情報開示は予定通り行う」というのがあります。これに失敗するとPLは予定より少ない情報量で様々な選択をしていかねばならなくなるため、無駄に迷ったりPLの望まない選択を知らず知らずのうちに取る羽目になったりします。特にキャンペーンシナリオではセッションの数だけPCの選択がシナリオの行く先にもたらす影響も大きいため、可能な限り選択のための材料である情報は予定通り出していきましょう。
逆に言うと情報開示に影響しないような提案なら大抵は受け入れてもなんとかなるので、どんどん受け入れるといいでしょう。どういう場面が当てはまるかというと、主に各セッションのクライマックスがあります。
そのセッションでの情報開示は終わっていることが殆どなのでどういう選択をしても大抵はPLの不満になるような方向にはならないでしょうし、仮に今後のキャンペーンの進む先が大きく方針転換するような選択をされてもGMが今後どうするか次回セッションまでじっくり悩めば大抵何とかなるからです。また、クライマックスでの選択は各PCの行動原理が強く表れるところでもあり、ここを大事にすることはPCの意思の尊重にもつながります。
特にキャンペーン全体の終盤ともなって大体の情報は開示し切り、あとはPCが全てを解決するために突っ走るだけ!みたいな状況になってからは何を受け入れてもいいでしょう。
具体的な例としては、最後の最後にヒロイン(真)か人々かの二者択一を提示したらとあるPLの思い付きによりどっちも救う案が提示され、実際にヒロインも人々も救われる完璧なハッピーエンドを迎えられました。なんとこのキャンペーンでやろうとした主題が壊れました。でも面白かったですし、何より「このPCたちでそれを思い付いたら絶対成し遂げようとするよなぁ」とも思ったので(両方達成しようとする代償としてアドリブでその後のシナリオの難易度を上げつつ)通しました。
こんな風に、GMが健全な卓運営のためにすべきことは「箱庭がどんな世界か描写すること」であり「PCの動きを縛ること」ではないということを意識できると、自由度と健全な卓運営が両立できるのではないでしょうか。まぁ他にも細かいテクニックとかはあると思うのですが、それを書くには時間がないのでまた別の機会にでも。
ということで、実際にシナリオを思い付いてから完走するまでを解説付きでお送りしましたが如何でしょうか?読んでいただけたら、案外キャンペーンGMもいけるんじゃね?と思っていただけるのではないかと思います。
実際、キャンペーンシナリオも単発シナリオも少し規模が大きくなるだけで根本の作り方はさほど変わりません。あなたがこれでシナリオ作りたい!と思ったネタをどんどん膨らませて、既存の作品などを参考になんとかシナリオに落とし込む。それだけです。
最後におまけとして、シナリオ作成&GMにとって一番大事な心構えを書いておきます。それは出ない傑作より出る駄作の精神です。
初めてシナリオを作ったりGMをする時って絶対怖いと思いますし思うようにいかなくて苦しいと思いますが、まずはそれでもやってみましょう。たとえ拙いシナリオ・マスタリングだったとしても、あなたの情熱はきっとPLに届きます。
そして、そうやって卓を完遂させたという経験は必ずあなたの糧になり、次のシナリオはより良いものになるでしょう。私自身、初めてのキャンぺGMを終えて達成感を味わうとともに未熟さも味わって、それを糧にシナリオを作り続けてLOSTCOMETが書けました。でも今こうして様々に分析してみるとまだまだ欠点ばかりなので、またさらに上を目指して今も卓を立ててます。
願わくば、自分と同じようにGM・創作沼にハマる人が一人でも増えますように。
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これを書いた人
はいふん。大都会まだ現役。
TRPG歴4年。GM歴1年少々。SW2.5、ブラインドミトス、ステラナイツ辺りがを中心に雑食。
最近はGM沼への浸食度の高まりを感じる。シリアス寄りの方が得意。
最終更新:2018年11月23日 16:04