帝都
ファンタズムの中でも
中央地区に次ぐ規模を誇る学園都市。
学園都市といっても、その都市機能は多岐にわたり、
兵器開発や
魔術礼装の大規模な研究所や文化施設、軍工廠など様々である。
この区画が『学園都市』という呼び方がなされているのは、
左画像左端に見える帝国内でも最大級の『
ユグドラシル帝立大図書館』の存在が大きい。
かの有名な『
ユグドラシル王立魔術学院』の本校が存在するのもここローネラズマであり、
他にも教会学校や軍の士官学校などの教育機関が存在する。
この地域は高層建築と地下空間が多いためか非常に人間が多く、
この中から特定の人間を探し出すことは砂漠で蟻を見つけるより難しいとすら言われている。
そのような特性から
アーサー帝が一時期、
マイスナーの追手をかわす為、
教会に偽名を用いて二年半程滞在していたこともあり、参謀会の中には
アーサーが死んだと本気で考えた者もいた。
これは
アーサーが自分が死んだと見せかけるためのものであったが、
マイスナーは
アーサーがそう簡単に死ぬような男ではないことを知っていた。
彼は、名君と名高い
ガノッサ帝から英才教育を受け、
一見何も考えていない振りをしながらも、狡猾な手を臆さず使う術を身に付けていたのだ。
かつて、
皇帝府内で何度か暗殺が試みられた際も、
アーサー自らがそれを予測し、巧みに避け続けていた。
己の身を護り生き残るためには、
アーサーは自分に出された毒物を上手く使い、
逆に自分の命を狙う者たちを消していくしかなかったのだ。
しかし、そのような生活は次第に、本来は心優しい
アーサーの精神を蝕んでいき、
一時は手を震わせ目を血走らせ、発狂する寸前のところまで悪化していた。
その後
アーサーは、帝国領全域に及んだ
マイスナーの部下による捜索を攪乱するために、
大司教
イルミナートの手引きで名前を変え、髪を解き、口調を和らげ、
素性を全て隠してこのローネラズマの教会学校に身を隠した。
だがこの
ディトリッヒという男は過去、消されそうになった際に
アーサーの機転で助けられ、
以降
アーサーへの恭順を誓っていた。
マイスナーが捜索の手をこのローネラズマにまで及ぼすのに二年半も掛かったのも、
彼の穏やかな妨害によるところが大きい。
『帝都に、このような先進的な場所があったとは。
私は夕方ここに到着したが、人間の多さからかまるで
セルタリスに戻ってきたかのような錯覚を受けた。
そういえば、私を親切にも案内してくれた、長い金髪の青年は一体誰だったのだろうか。
彼は名を尋ねた私に『フレイ』とだけ名乗ったが、なぜか私には、
彼の穏やかな口調の裏にどこか翳があるような気がしてならなかった。
それに彼が着けていた剣、あれはどこかで見たことがあるような気がしたのだが…?
明日、図書館に遺跡の資料を探しにいくついでに調べてみるのも良いかもしれない』
――竜人考古学者エワルスの日記
最終更新:2022年08月29日 18:26