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**レポート「イベント05 No2 伝説のケーキ作り」
「伝説のケーキ作り?」
「そう」
「それで?」
「そのレシピがどこからか見つかって、作ってみようかなと」
「………」
「手伝ってほしい」
明日は休みだし、お酒でも呑んでゆっくり過ごそうと思っていた吉沢は嫌そうな顔をしたが、キルリアナには良くしてもらってるし機体も整備してもらっている。その頼みを無下に断るわけにもいかず、サンドイッチを頬張りながら首を縦に振った。
「そう言ってくれると思った。これ、レシピね」
差し出された1枚の紙を受け取り、その上に書かれている文章に目を通す。卵、小麦粉、砂糖、バター…ケーキの材料としては一般的過ぎて面白みに欠ける。むしろトッピングがない分、物足りないくらいだ。調理法が特殊なのかなとも考えたが、いくら特殊でもこれだけの材料でおかしなケーキはできないと考えを改める。目一杯甘いかこれでもかって位に黒いかのどちらかだろう。
「伝説って言っても、分かればこんなものかな」
「そんなわけないよ」
もう1枚、今度は今にも崩れて無くなってしまいそうな、明らかに古めかしい紙を懐から取り出した。
「これが伝説のケーキのレシピ」
「そっち先に見せてよ」
「簡単に見せると伝説っぽくないから」
「手伝えって言った割には酷い扱い」
「びっくりさせたいから明日のお楽しみ」
「それでもいいけどね」
「買い物はしておくから、明日来て」
「分かった」
このときはあんな惨劇が起こるとは思ってもいない二人だった。
そしてケーキ作り当日。
「ケーキ作り開始」
「おぉ~」
まずは卵を割りほぐす。あまり多くしても食べる人がいないので、3つ程度に抑えておく。
「黄身と白身は分けなくていいの?」
「そうらしいね…そして砂糖を入れて泡立てる」
「任せて」
整備士でパイロットの吉沢よりも体格の良いキルリアナが、勢い良く泡立てを開始する。それを確認してから小麦粉にふるいを掛ける。
「つ、疲れた……」
「早っ!?」
泡だて器を持っていた右手を押さえながら床を転げ回っている整備士。体格は良いが、いかんせん力が弱く素早くも無い。中途半端に黄身と白身が混ざったものが器に残したままダウンを奪われていた。
「しょうがないな、代わるよ」
自分も力には自信がないものの、キルリアナよりは持つだろうと泡立て器を手にする。お菓子作りにはかなりの力が必要となる。パティシエに男性が多いのはこのためだとか。
「悪いね……力作業は任せた」
「えぇ?」
「見た目はちょっと強そうだけど、本当は弱くて。でも、器用だからデコレーションとは大丈夫」
「いや、黄身のほうをかき混ぜて欲しいんだけど」
「これ以上の右手の酷使は機体の整備に支障をきたすので拒否する」
「むぅ……」
こっちも操縦に支障をきたすと反論したい吉沢だったが、こののままでは水掛け論で日が暮れそうなので、涙を呑んで力仕事を引き受ける。
「………」
「ご苦労様」
かき回しすぎて右手がもげるんじゃないかと本気で思う吉沢。口を利く元気は既に無く、右腕を押さえながら床にうつ伏せになっていた。
「これじゃ普通のスポンジじゃ…」
「伝説はこれから」
「あ、そう。なら休ませてもらうよ…」
力仕事は終わり、もう自分のすることはないと目を閉じる吉沢。だんだんと周囲の音が聞こえなくなってきた。
「出来た」
「も、もう……」
どのくらいの時間が経ったかは分からない。少なくとも、吉沢の感覚では目を閉じてから完成までは一瞬の出来事だった。
あと少しで楽になれるところで起こされた。顔を上げると何も無かったスポンジに綺麗なデコレーションが施されており、これなら伝説にもなるかなとちょっと納得しながら立ち上がる。
「食べてみよう」
「食べるの?」
「伝説の味を確かめよう」
「(あ、伝説は見た目じゃないんだ)」
切り分けたケーキを皿の上に盛り付ける。見た目も、切り口も綺麗ではあるが、普通のケーキだ。
「いただきます」
キルリアナが先陣を切ってケーキを口に運ぶ。何度か咀嚼し、ケーキが喉を通過した途端に前のめりになって倒れこむ。イスやテーブルを派手に散らかしながら悶え、しばらくするとぴくりとも動かなくなった。
「………」
その姿を見て、吉沢は介抱を諦めた。良く見ると倒れたときにどこかにぶつかったのか、頭を中心に赤い何かがじわじわと広がっている。吉沢は一瞬ためらった後、キルリアナの供養とばかりに手元の皿に乗っているケーキを一思いに頬張る。
今度は膝から崩れ落ちる。これも運が悪いようで、テーブルの角か何かに頭をぶつけて派手に吹き飛ぶ。
後日、二人とも出血は激しかったが辛うじて軽症で発見される。思い返せば、生きていたので何とか笑い話になっているが、死んでいたら怪事件として伝わっていただろう。
(レポート作成:吉沢葉月)
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