ALLHAZARD PARANOIA/アルハザード・パラノイア ◆EAUCq9p8Q.
☆
昔々、仲の良い親子が居た。
というのが、この物語の始まりだ。
母の名前はプレシア・テスタロッサ。
娘の名前はアリシア・テスタロッサ。
二人はとても仲の良い親子だった。
永遠の別れが来るその日までは。
アリシアは事故に巻き込まれて死んでしまった。
プレシアはその事故の全責任を負わされて、世界からはじき出されてしまった。
全てを失い、それでもアリシア取り戻したかったプレシアは、神にもすがる思いで奇跡にすがった。
時を遡る魔術を調べた。
死者を蘇らせる魔術を調べた。
因果を従わせる魔術を調べた。
病に冒され日に日に弱っていく身体に鞭打ち、ただひたすらに、そんな馬鹿げた魔術について調べ続けた。
心の何処かでそんな都合のいい魔術なんて存在しないと理解しながら、来る日も来る日も、学術書から神話伝承まで紐解き続けた。
当然どんな文献にも残っていない。
ただ、お伽話の中にだけ、そんな夢みたいな世界のことが書いてあった。
楽園の名は、『アルハザード』と言った。
すがる思いでお伽話を読み込む。
しかし、当然のようになんの成果も得られない。
読み返した回数が二桁を超えた頃、プレシアはその童話に記された世界について既視感を覚えた。
その世界と似た世界を描いた絵本があったはずだ。
確か、アリシアの寝物語として読んだのだ。
アリシアが、「夢に絵本のキャラが出てきたんだよ」とはしゃいでいたから、暫くの間はその本を読み続けていたはずだ。
それは確か、異世界の童話だった。
魔術師ではなくもっと可愛らしい存在を描いた話だった。
その二つだけを手がかりに、図書館にこもり、アリシアに読み聞かせた本を1つずつ読み返し。
そして、見つけた。
それは遥か遠くの次元に伝わる、夢のなかに入り込む魔法少女『ねむりん』の物語。
彼女の作り上げた理想郷は、遠く離れたプレシアの世界に伝わる楽園『アルハザード』と性質が酷似していた。
それから、プレシアは手をつくして似た世界がないのかを徹底的に調べあげ、そして一つの事実にたどり着いた。
数多の時空に存在している数々の世界において、ほぼ同一の声質を持つ概念世界が確認されているという事実に。
あるいは、妖魔蠢く世界の裏側、『異界』。
あるいは、莫大な魔力の眠る海、『半物質世界』。
あるいは、夢と現の狭間に住む鬼の懐、『鬼時間』。
あるいは、禁忌を犯した者の至る場所、『真理の扉』。
あるいは、誰かの記した物語の最果て、『曖昧な都』。
あるいは、一人の少女が開いた理想郷、『ねむりんの世界』。
あるいは、オヒガンにそびえる伏魔殿、『キンカク・テンプル』。
『どこにでもあり』、『誰かには入ることができ』。
『あらゆる異質が肯定され』『常識を超える奇跡が起こり』。
そして、『どこにもない』、『誰にでもは到達できない』という矛盾した世界。
きっと、プレシアの世界に伝わる伝承では、その世界のことをアルハザードと呼んでいたのだ。
それは、世界を覆しかねない真理との邂逅。
誰もが夢のうちに置いてきた理想郷の全貌。
埃をかぶっていた童話の奥底に眠る真実に、光があたった瞬間だった。
◇
『アルハザード』への到達。童話にしか残らない世界への侵入。
場所も、条件も分からない、
だからプレシアは用意した。彼女なりの答えを。
アルハザードに近づくために用意されたのは、『楽園のかけら』とでも呼ぶべき参加者たち。
彼らの持つ楽園の記憶がこの舞台の上で失われ、魂として・英霊の魔力として、交わることのなかった異世界と混ざり合う。
複数の楽園が一つに交じり合うことで、聖杯とともに、様々な異世界の繋がった仮想楽園『アルハザード』が、聖杯とはまた別の『少女聖杯』とでも言うべき願望器が、この聖杯戦争の地に現れる。
扉を開けるための鍵は、彼女の知識に従うならば『ロストロギア』と呼ぶべき魔力たち。
この地に呼びだされ予選を勝ち抜いた二十一の(宝具ながらに英霊と同格というイレギュラーである偽アサシンを除けば二十の)英霊たち。
そのうちの十四の魔力を用いることで、現れたアルハザードの扉を無理やり開く。
選ばれたものでしか通れぬ門を、魔力と奇跡によってこじ開ける。
残りの七つは対面を取り繕うために用意した『報酬』だ。従来の聖杯戦争通り、優勝者が好きに使えばいい。
娘のために用意した器、『ローゼンメイデン』。
この地に呼び出された少女たちの魂が極限まで輝いた時、その『少女の魂』は薔薇乙女の欠けている完璧な乙女の器を満たす生け贄となる。
その魂を集め、完璧な乙女とし、異世界に眠るアリシアの魂をその乙女の中に蘇らせる。
そして、眠り続けるアリシアの身体に魂を込める。
生存競争を生き残った『完璧な少女』はいらない。
生き残ろうとして途中で夢やぶれた『不完全な少女』が必要なのだ。
優勝者は、願いを持って、どこへなりとも行けばいい。
そしてプレシアと選ばれた少女が天国へとたどり着くための地獄、『聖杯戦争』。
少女たちの輝く素敵なものをより輝かせるための舞台。
殺し合い、奪い合い、生き残りをかけて戦い合うことで、この地に集った魂はその輝きを増す。
殺し合いが進むことで残された少女たちの魂は、磨き上げられ、歪な形のまま『完璧な少女』へと近づいていく。
少女たちの夢は、アルハザードを引き寄せ。
少女たちの絶望が、不完全な少女の器を完全へと押し上げる。
邪魔させない準備も整えた。
異世界の技術である、街ひとつ分を覆い尽くし中の者を逃がさない球体結界。
そこにプレシアの持つ全ての知識と技術を注ぎ込んで改良を施した。
負担は大きいが、それでも誰かに気づかれることや、破られることはない。
二十四時間という時間制限もプレシアが内部から魔力供給を続けることで克服した。
この地、この聖杯戦争は、誰にも気づかれず、誰にも邪魔されない。
サーヴァントとの魔力パスを持っている以上、マスターたちはぬけ出すことができない。
結界の原理に気づいた参加者がサーヴァントとの契約を切って逃げ出そうとすれば、
ルーラーが直ちに彼女たちをnのフィールドに引きずり込み、魂を奪い、白い薔薇の苗床に変える。
これでようやく、アリシアを呼び戻すための『舞台』は整った。
◇
集められた異世界の資料の中に、こんな歌があった。
―――女の子って何で出来ているの?
女の子って何で出来ているの?
砂糖とスパイス。
それと素敵な何か。
そういうものでできてるよ。
少女を構成する砂糖は『魂』。
少女を輝かせるスパイスは『戦争』で。
少女に命を吹き込む素敵な何かは『楽園』だ。
三つを揃え、少女を生み出す。
もう一度、アリシアをこの世界に呼び戻す。
「もう少しよ」
「もう少しで、『約束の地』へたどり着く」
「だから」
二度、咳をする。
口に添えた手のひらは、赤く濡れていた。
「もう少しだけ……待っていてね、アリシア」
★
無数の少女たちは、楽園を夢見た。
一人ぼっちの大人は、楽園を目指した。
この舞台に上げられた少女、英霊、有象無象の危険な妄執の根源は。
少女たちが生まれるはるか昔、物語に空白を穿てなかった悲しい大人の、楽園への妄執。
ALLHAZARD PARANOIA/アルハザード・パラノイア
★
[備考]
※プレシアは『プロジェクトF.A.T.E』に参加していない平行世界からの参戦です。
※『楽園』の逸話を持つ参加者が死ぬたびに、舞台の楽園濃度が上がっていきます。
※舞台を区切る壁として球体結界(@魔法少女育成計画)を改良したものが貼られています。
魔力を持つものは出入りができず、触れれば魔力の量に応じて魔力を奪われ、無理に抜けようとすれば最悪死にます。
※何事もなければ優勝者は約束通り聖杯に願いを届けることができます。
最終更新:2016年01月13日 09:40