アットウィキロゴ

それは魔術師の正位置 ◆kRh/.U2BNI


―――魔術師の正位置。
新しい変化や環境の中で、自分を生かし、自分の力で道を切り開いていくことができる前向きな気持ちと積極的な意志力、新しい状況の中での成功をこのカードは表している。




聖杯戦争の舞台である街に設置された神社。
あまり参拝客の来ない小さな神社であった。
鳥居をくぐると古い石畳でできた参道とその先に本殿が見える。
参道を外れるとそこは砂利で覆われている。
その中で、巫女服に身を包み、竹箒でせっせと掃除をしている少女がいた。
さっさっ…と箒で掃く音が、神社の境内に響いていた。

ふと鳥居の外を見やると、そろそろ日が街の建物の向こうへ沈もうとしている。
そこから差し込む光が眩しかったので目を逸らし、夕日に照らされながら掃除に打ち込んだ。

「っと…こんなところやね」

しばらくして、あちこちに散乱していた落ち葉を回収できた。
見回して掃き忘れているところがないか見回してから、少女は掃き掃除を切り上げた。
竹箒を所定の場所に返し、巫女服から私服へと着替え、自分の髪とシュシュで二つのおさげを作り、帰り支度をする。
少女はよくこの神社で簡単なお手伝いしており、今日の掃き掃除もその一環だ。
帰り際に「いつもありがとう」と神主に言われ、少し嬉しくなりながら鳥居を出た。
上を見ると空がオレンジ色から紫色に変わろうとしているところだった。
暗くなる前に家に帰ろうと思い、自宅のマンションへ向かう足を少し速める。

鳥居を出てから数分歩くと人通りの少ない路地に出た。

「日本の神社はどうやった?」

その少女・東條希は1人、歩きながら口を開いた。

「――キャスター」
「ああ、なかなかにスピリチュアルだったよ。神社というのは」

誰も来ないと見越してか、ローブを羽織った褐色肌の男が何もない空間から姿を現す。
彼はこの街で記憶を取り戻した希のサーヴァント。
クラスは『キャスター』で、真名はモハメド・アヴドゥルといった。
アヴドゥルは、霊体で見物していた神社の印象を述べていった。
希がアヴドゥルと出会ってからは、様々な話題でよく話が弾んだ。

「お賽銭はな、願いの対価に払うものじゃなくて、神さんに願いを叶えてもらったお礼なんよ」
「そうだったのか。イスラムじゃあ貧しい人に財を分け与えると天国にいけるという教えがあるから、エジプトには乞食の組合があってビジネスが成り立ってるくらいなんだ。
なるほど、日本神道においてはお金は必ずしも対価になるわけじゃあないのか」

今日も2人は神社の賽銭について語り合い、戦争の中の日常を謳歌している。
国籍も世代も年齢(享年)も違うが、希とアヴドゥルは二人とも占いという一点において通ずるところがあった。
夕日の下で談笑しながら並んで歩く二人の姿は聖杯戦争の渦中にいることも忘れているかのようだった。





―――ガチャリ。
希がマンションの自室の鍵を開ける。
寝室に荷物を置いてからキッチンへ向かい、夕飯の下準備を始めた。
アヴドゥルはというと、帰り道に多少人通りのある場所もあったので霊体に戻っていた。

「私が召喚されてから3日か…」

アヴドゥルは再度実体化して食卓の椅子に座り、独り言ちる。
今のところ他のサーヴァントの気配は見られない。
時々『炎の探知機』で偵察に出ることもあるが、特に反応はなかった。
ろくに敵と遭わなかったせいか、アヴドゥルにも先刻のように神社の見物などに興じる程度の余裕はできていた。

「キャスター以外のサーヴァントは見当たらへんな~。誰がマスターか全然分からへん」

希は希で、学校でも偽の記憶を持っていた頃の自分を演じていたが、特に周囲の人物の様子に変化はない。
何人かいる顔見知りも、『この世界では』いつも通りであった。

「まだ記憶を取り戻していない者の方が多いのかもしれないな。…希、油断は禁物だ」

…決して忘れたわけではない。
己がマスターが本来無縁であったはずの戦いに既に巻き込まれていることは。

アヴドゥルは思った。
なぜ、無関係な少女がこのような血で血を洗うような戦場に駆り出されなければならないのかと。
マスター――希はここに来る前は音ノ木坂学院に通い、スクールアイドルなるものをしていたと聞く。
輝かしいであろう青春から彼女を無理矢理引き離して命の危機に晒すなど、決して認められないことだ。
このくだらない戦争は必ず滅ぼさねばならぬ。
誰が何のために殺し合わせるかは分からないが、
無差別に人を巻き込む点はかつて自分が打ち倒そうとした邪悪の化身・DIOに似ている。
そして何よりも希を守り、必ず元の世界へ返してあげたい。
炎のように熱き精神の宿る魔術師には確固たる意思があった。

「希」
「んー?」

アヴドゥルは椅子から立ち上がる。

「…私はこの戦争を認めるつもりはないし、君を守るために戦おうと思う」
「どうしたん、急に?」

冷蔵庫を漁っていた希がキッチンカウンター越しにアヴドゥルの方へ向く。
希の目を真っすぐに見つめるアヴドゥルの姿が見えた。

「君はどうなんだ?その…怖くは、ないのか?恐怖という感情は誰にでもある。私も恐怖のあまり敵前逃亡したことだってある」

生前、占い屋でのDIOとの対峙を思い返しながらアヴドゥルは語った。
普通の少女ならば、殺し合いの世界に放り込まれようものなら絶望の表情を見せたり、泣き出したりしてもおかしくはない。
しかし希は本来の記憶が戻ってから意外とすんなりと現実を受け入れたらしく、今も元の世界と同様に『いつも通り』でいることができている。
だがアヴドゥルは、希は心の奥底では恐怖に苛まれているのではないかと心配だったのだ。

「確かに、殺されるかもしれん思たら今も怖いんよ?」

心のどこかに潜む恐怖の存在を認めつつも、「けどな」と言いかけて希はキッチンカウンターから出る。
そして近くにあったチェストの引き出しからある物を取り出した。


「これは……」

希がテーブルの上に置いたそれを見て、アヴドゥルの記憶にDIOを倒す旅に出た日が蘇る。
運命のカード、タロットの22枚の束。
中でも『星』のカードはかつて旅を共にした承太郎のスタンドの命名の元になったカードだ。
希はアヴドゥルと向かい合う形で椅子に座ると、慣れた手つきでシャッフルしてから22枚のデッキを横並びに展開する。
カードは裏を向いており、アヴドゥルはもちろん、希からも表面は見えない。
希はその中から1枚だけを取り出し、アヴドゥルに見せた。

それを見たアヴドゥルの目が見開かれる。
引かれたカードには、若い男が描かれていた。その男の前にあるテーブルに剣・杖・杯・護符がある。その男は聖杖を文字通り天に向かって掲げていた。

「魔術師の正位置」

希は引いたカードの名を口に出して言う。

「ウチはあれから何回かウチの運勢を占ってみたんよ。そしたら、出てくるのは魔術師ばっかり。今回もほら、魔術師の正位置やん?」

希はアヴドゥルにカードを見せびらかしながらにっこりと微笑む。
魔術師の正位置は新しい状況で、自分の力で道を切り開いていくことができる前向きな気持ちとその中での成功を暗示している。
それが「カードのお告げ」であるならば、きっと前に進んだ先に何かを切り開いていくことができると考えたのだ。

「それに、魔術師はウチの目の前にいつもおる」

希はアヴドゥルを見つめて言った。
そう、彼はキャスター、魔術師だ。
宝具であるスタンド『魔術師の赤』もその名の通り魔術師の暗示を受けたスタンド。

「ウチはどうしても知りたい。どうして自分が聖杯戦争に呼ばれたのかを。
それを知らずに殺されるなんて、ウチは嫌や。
だからキャスター…あなたはウチにとっての『魔術師』でいてくれる?」
「希…」

どうやらこの少女は自分が思っている以上にタフらしい。
「怖くないのか」と聞いてしまった自分が恥ずかしくなった。

アヴドゥルはDIOの姿を再び見ることなく、謎のスタンド使いの急襲から仲間を庇い、死を迎えた。
エジプトへの旅は一度死にかけたこともあったが、
共に栄えてはならぬ悪へ立ち向かった仲間のためならば、命は惜しくなかった。
「助けない」と言ったのに自らそれを破ってでも仲間を庇うとは――どうやら私は仲間のことになると自分が見えなくなるようだ。
――だが、それもいい。

もう一度、私はサーヴァントとして生を受けた。
DIOの館でポルナレフとイギーを突き飛ばしたところまでしか覚えていないが、後は承太郎達がやってくれるだろう。
DIOを倒し、生き残った者が新たな道を切り開いていく…それを『魔術師の赤』は暗示していたのかもしれないな。
後悔はない。聖杯にかける願いもない。
ならば――

「――無論だ。君がそれを信じて前に進むというのなら…私は君を守る『魔術師』となろう。いつまでも君にとっての正位置であり続けよう」

「そして、私と!」

突如、アヴドゥルの背中から逞しい猛禽類の頭がついた赤い像が姿を現す。
この像こそが『魔術師の赤』。アヴドゥルの熱き精神の具現。

「『魔術師の赤』がッ!君を導こうッ!」

東條希の引き当てたサーヴァント――それは魔術師の正位置。

【クラス】
キャスター

【真名】
モハメド・アヴドゥル@ジョジョの奇妙な冒険

【パラメーター】
筋力D 耐久C 敏捷E 魔力A 幸運A 宝具A

【属性】
秩序・善

【クラススキル】
陣地作成:D
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
ただしキャスターは本来占い師であるため、工房を作ることは難しい。

道具作成:-
魔力を帯びた器具を作成する能力。
『魔術師の赤』で炎を作り出す能力を持つ代わりに、このスキルは失われている。

【保有スキル】
心眼(真):B
スタンド使いとしての修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す戦闘論理。

博識:B
キャスターが占い師として様々な人の話を聞いてきたことや、趣味の古書集めにより身につけたあらゆる分野に通ずる知識。
持ち前の知識から、一定確率で相手のスキル・宝具の能力・真名を看破する。

かばう:C
邪悪の化身を倒す旅路で2度に渡って仲間を庇った逸話からくるスキル。
かばう対象の代わりにキャスターがダメージを受ける。

被虐体質:D
集団戦闘において、敵の標的になる確率が増すスキル。
マイナススキルのように思われがちだが、
強固な守りを持つサーヴァントがこのスキルを持っていると優れた護衛役として機能する。
キャスターの能力は敵に危険視されており、最初にキャスターを倒そうとする者も少なくなかったことからこのスキルを有する。

炎の探知機:B
『魔術師の赤』の炎を応用したスキル。
炎は生命エネルギーの象徴であるため、生命に引き寄せられる炎を作り出すことで隠れている敵を見つけ出すことができる。
同ランクまでの気配遮断スキルを無効化する。

【宝具】
『魔術師の赤(マジシャンズ・レッド)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1~20 最大捕捉:20
生命が持つ精神エネルギーが具現化した存在。所有者の意思で動かせるビジョン『スタンド』。
たくましい人間の男性のような肉体の上に鳥(猛禽類)のような頭がついた人型スタンド。
火炎や熱を自由自在に操る能力を持ち、鉄をもドロドロに溶かしてしまうほど高温。
『魔術師の赤』の炎は魔力で作られており、キャスターの意思で点火と消火が可能な上、
物理法則を無視した燃え方も可能であり、キャスターの意志でその炎はその形状や熱量、温度、性質を変化させる。
風に流されず重力に逆らえる炎や、水をかけたり真空状態になっても消えない炎も作成可能。
他にも物理的な形状を持つ炎で相手を縛りあげて酸欠で気絶させたり、炎で瞬時に穴を掘って退避するなど、様々な場面で応用が効く。

『死んだはずのあの男(イエス・アイ・アム)』
ランク:C 種別:対己宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
敵のスタンドの弾丸を額に受け死亡したと思われていたが、実は生きており仲間の窮地を救ってジョースター一行に合流したエピソードに基づく宝具。
キャスターは消滅しても一度だけ復活し、マスターの元へ再び現界することができる。

ただし、死んだと思われてから数日跨いでジョースター一行に合流したことから、復活するのは消滅してから約一日後になる。
その一日の間、マスターは自分で自分を守らねばならず、その一日でマスターが死亡した場合は当然この宝具も無意味となる。
誰の目から見ても消滅したと認識されるため、ルーラーの襲撃もマスター単独で振り切らねばならない。

【weapon】
  • 宝具『魔術師の赤』のスタンドビジョン
スタンドで格闘戦を行うことが可能。
ステータスはサーヴァント換算で、
筋力C、耐久C、敏捷C相当。
ただし、火炎を操る能力が主になるため、能力はそこそこ。

【サーヴァントとしての願い】
マスターのために戦う。

【人物背景】
生まれつきのスタンド使い。
生真面目で確固たる意思と行動力を持った人物。
しかしその意思の強さが行き過ぎ頑固かつ短気な一面を覗かせてしまうこともあり、
アヴドゥル自身も自らを「結構熱くなるタイプで、ギャンブルには向いていない」と評している。
友人であり、彼とは正反対の柔軟な思考力を持ったジョセフはベストパートナーと言える。
一方で、敵へイタズラをするために仲間を立小便に誘ったりと、豪快な一面もある。

職業は占い師。かつて空条承太郎による邪悪の化身・DIOを討つ旅に同行した。
承太郎と出会う以前にその優れたスタンド能力に目を付けた邪悪の化身・DIOから仲間に勧誘されている。
占い師という職業柄誰かの話を聞く機会が多いためか、若しくは古書集めの趣味の賜物か、ジョースター一行の中でも特に様々な分野において博識で、
敵のスタンド使いについて自分が知っている情報を仲間内に提供する事で実質的に一行のブレイン的な役割も担っていた。
また、普段の落ち着いた態度に隠れがちだが仲間への信頼と思いやりは非常に強い。
しかし、最期はDIOの側近の攻撃から仲間を庇い、両腕を残して亜空間に飲み込まれ、死亡した。

マスター補正により、幸運が大きく上昇している。

【マスター】
東條希@ラブライブ!

【マスターとしての願い】
なぜ自分が呼ばれたのかを知りたい

【weapon】
特になし

【能力・技能】
運がいい。くじ引きではハズレを引いたことがないらしい
タロット占いがよくあたり、過去では処世術として使っていた。
魔力面では、魔術師には劣るものの、霊感が強く、パワースポット巡りなどスピリチュアルなことに長年触れてきたのでそこそこある。

【人物背景】
国立音ノ木坂学院に通う三年生、スクールアイドルユニット『μ's』のメンバー。
基本的におっとりしており、似非関西弁を話す。
パワースポットや占いに傾倒する不思議系スピリチュアルガール。
占いにはタロットカードを使う。
一方でメンバーに対して胸をわしわしと触るセクハラ親父な面もある。
運がいいことが自慢で、くじ引きでハズレを引いたことはないらしい。
幼い時から霊感が非常に強く、自分にしか見えない霊や霊獣が見えていた。
現在ではぼんやり見える程度らしい。

アニメでは穂乃果達に厳しい態度を取る絵里とは違い、
μ'sのメンバーに度々助言してくれるなどアイドル活動に対しては非常に前向き。
曰く、カードのお告げらしく、μ'sの名付け親も希。

【方針】
なぜこの聖杯戦争に呼ばれたのかを突き止める

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2015年04月28日 05:20