まずは彼女の出自から語らないといけないだろう。
グラールの歴史の教科書が必要になるのではないだろうか?
時はヒューマンとキャスト間の戦争が行われていた時代。
彼女…この時点での名前はまだ違う名前であったが、EMPRESSは 戦争の勃発する少し前の時代に「ヒューマンとして」生を受けた。
他の家よりほんの少し上流階級の生まれではあったものの、彼女は 只のヒューマンとして生まれたのだ。
綺麗な金髪が自慢の、とても美しい娘だったらしい。
彼女が生まれて十数年後、ヒューマンとキャスト間の戦争が勃発する。
戦争という狂気の場ではしばしば凶行が行われるものである。 彼女は捕虜として捕らえられ、とある研究所へと送られる。 この時点で、彼女の両親肉親一切は死亡している。
そこで行われていた実験、とは…記憶媒体へのヒトの記憶・人格の移植、である。 戦争という状況が無ければ、そのような非人道的な実験は流石に 行われないであろう。
だがしかしこの狂った状況を幸いに、一部の科学者が禁断の実験へ 着手するのである。
彼女…EMPRESSは、その実験の被験者の1人、なのである。
結論から言えば、その実験の被験者は、殆どが移植に失敗して 死んでしまい、生き残った者も実験体として無残な死に様を晒し。
では何故、EMPRESSだけは生き延びられたのか?
それは彼女が偶然「特別」な素体に移植されたから、である。
失敗を繰り返し、ある程度技術として確立したこの非道の行いの集大成として…当時の新型試作キャストの「素体」に、彼女の心と記憶を移植した、のである。
記憶移植直後の彼女は、ヒューマンであった頃の記憶の大半がまともに 思い出せず、何かの拍子に記憶のフラッシュバックが起こったりと
とても正常に動けたものではなかったらしい。
その彼女に常に付き添い、彼女のリハビリを助けた男がいたそうだ。当然資料等は残ってはいないが…赤い髪のキャストだった、らしい?
彼の献身的な看護により、彼女は普通に生活できるまでには回復する。そんな彼に彼女の心が揺らぐ事があっても不思議ではないだろう。
だがここで第二の悲劇が起こってしまう。
彼女のいた研究施設が爆撃を受け、かのキャストは死亡してしまう。彼女自身も深手を負ったものの、その戦闘の混乱に紛れ、逃亡。
彼女は一時の間は自由の身となったものの、当然頼るものもなく行き倒れてしまう。
幸い病院へと収容され一命を取り留めるも、そこに以前の研究所の職員の1人が現れ、またも彼女は囚われの身となってしまうのである。
ありとあらゆる非道な実験を日々繰り返される地獄であった。
彼女はその全てに耐え忍び、とうとう戦争が終わるまでの長い間を生き延びた。
そして彼らの悪事が白日の元に晒される時がきた。
科学者達は全員逮捕され処刑され、悪魔の記録は全てを闇に葬られ。
そして彼女は自由の身となったわけだが…
そして、暫く空白の期間があり
ある日、彼女はGRMの研究所に自らの特異性を「売り込みに」来た。そして研究員達は彼女が「特別な存在」である事を、認めた。
彼女の思考データを基にすれば「ヒト」に限りなく近いキャストを生み出せるのではないか?
そしてEMPRESSはGRMの2人の科学者と共に、新型試作キャストの製作に携わる事となるのである。
新型試作キャストの容姿については、何故かEMPRESSが細かく指示していた事を片方の科学者が目撃していたそうだ。
要するに、彼女は、取り戻したかったのである、ありし日の過去の自分の姿を。
もう一度、例え仮の姿であっても、元の自分に戻りたかったのだ。
だから、あの
SUNの姿は、ヒューマンであった頃のEMPRESSの姿そのもの、なのである。
過去に闇の彼方に葬られた記憶移植の技術の生き証人、EMPRESS。
その彼女の記録を用いれば、記憶の移植も可能になる、らしい。
だがしかし、本来の「ヒトに最も近いキャスト」の製作という本来の趣旨を大きく逸脱した行動を取り始めたEMPRESSに疑念を抱いた2人の
科学者が、彼女のデータを基に「全く新しい人格」を生み出し、SUNの素体に移植したのである。
自らの悲願を打ち砕かれ激怒したEMPRESS。
しかしEMPRESSの願いも虚しく、素体を持ち去られてしまう。
立ち塞がった研究者の1人を半死半生の目に合わせ、その場を立ち去る彼女。
そして消えた「素体」の行方を探る為…情報を得る為に、ガーディアンズへと潜入する。
暫くの後、かの赤い髪のキャストと瓜二つの男と遭遇する。
当たり前の事なのだが別人なのは彼女はちゃんと理解している。それでも、彼女の心に何らかの変化があったのは間違いないようである。
それから暫くして、EMPRESSはSUNに出会う。
「あの頃」の自分のように眩しく笑う、1人の「ヒト」を見てそしてEMPRESSは直感的に知ってしまう、SUNの不安定さを。
同じ「存在」であるが故に。
EMPRESSが紅蓮にSUNを引き合わせたのはそれからすぐの事である。
EMPRESSは知っている、いや、分かっている。SUNの心が万一「壊れて」しまえば、今のEMPRESSがSUNの心を乗っ取ってしまう事を。
SUNが壊れてしまえば…あの身体に「戻れる」のである。
EMPRESSの思惑が、現時点で何処にあるのか、は不明である。だが、今は彼女がSUNと紅蓮の2人を見守っている、のは事実である。
最終更新:2010年07月24日 21:01