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地中海、血に染めて その4

サハラ砂漠のど真ん中に、わずかに緑の茂るオアシスがあった。その周りにはロンメル隊がキャンプを設営しており、彼らはここを拠点に神出鬼没の戦いで連邦軍を悩ませていた。東から太陽がのぼり、キャンプ全体が朝焼けに染まる。11月5日の朝である。
と、砂の丘陵の中から、一機の砂漠仕様のザクが姿を現した。機体を隠すために盛られた砂を振り払い、ザクは朝日の中に堂々と立ち上がる。すぐさま他のザクが姿を現し、それらは隊伍を組んでキャンプを出発してゆく。先頭のザクデザートタイプは、他のザクとは若干異なる外見を持っていた。この機体には、この部隊の隊長であるロンメルその人が乗っていたのである。

「カラハン、ニキは先行して黒い木馬の偵察に行け。ドップの報告によればここからまっすぐに行けば遭遇できるはずだ。アルニム小隊は左翼に展開しろ。ほかは直進!」

ロンメルの指示のもと、10機の砂漠仕様ザクが進撃してゆく。彼らはブラックハウスとの最初の戦闘で13機ものMSを失ったが、ロンメル隊、正式名称ジオンアフリカ軍団には、まだまだ多くのMSが残されていた。
執念深い性格のロンメルは、一度うけた屈辱は絶対に許せない人物だった。
ブラックハウスに討たれた部下達の無念をはらさないうちは、ロンメルは何度でも攻撃をしかける覚悟だった。
だが彼は部隊のMSを全機投入するような真似はしなかった。先の戦闘で敵が一筋縄ではいかない相手だというのはよくわかった。ありえないとは思うが、部隊が全滅してしまっては身も蓋もない。
ロンメルはじっと地平線を睨み、その先にいるであろうブラックハウスに「待っておれ…」と呟いた。

† † † † †

ブラックハウスの周りでは、アベの操縦するヤラナイカが試験運転を行なっていた。その横でオレはBlackCatに乗って周囲を警戒する。さらに上空では、シンのコアファイターが旋回し、あちこちに目を光らせていた。

「砂漠で足元がおぼつかないってのに、よくやるな阿部さん。」

オレはヤラナイカのしっかりした足取りを見て言った。

「OSがいいのかもな。この地面でも下手なボールよりは操縦しやすい。」
「そういうものかな。オレや黒猫なんかは最近はOSの処理速度が遅いんじゃないかと感じてるんだが。」
「そりゃーOSのせいじゃないよ?」

突然MKⅡが通信に割り込んできた。

「どういうことだ?」
「ナガモンと猫さんのほうが速すぎるんだよ。二人は感性が敏感すぎて機体の機動処理が済む前に次の操作を連続させるから、どうしたって遅く感じちゃうのさ。今Lv.57とユキがOSのバージョンアップを試してるけど、あんまり上手くいってないみたいだねぇ。」
「そうか…なんとかしてほしいな…」
「OSだけよくなっても機体のポテンシャルそのものの問題もあるからねぇ…まぁ今はその機体で頑張っとくれ。」
「まかせとけって。」
その時、上空で警戒していたシンが警報を発した。
「方位278から何かが接近して来ます!おそらくMSが二機!!距離16000!どうしますか艦長?」
「総員第一戦闘配備!WhiteCat以外の全MSを発進させます!魔理沙さんと黒猫さんは直ちに発進準備を!」
あずにゃんが艦長席に座りながら指示を飛ばし、ブラックハウスの艦内はにわかに騒がしくなる。
「たかだかMS二機相手に大袈裟すぎないか?」
オレはあずにゃんにそう言ったが彼女はそれをやんわりと否定した。
「シュミレーションはやったとは言え、阿部さんはこれが初実戦です。それにこれが敵の全力とは思えません。おそらくまた別動隊がいると思います。今のうちに出せる戦力は出しておきます。」
「わかった。」
その時、ヒップギグの砲塔が一斉に旋回を始めた。敵のMSへ向けて全力射撃を行うらしい。砲身はやや上を向き、ピタリと止まった。次の瞬間、全砲門が一斉に火を吹いた。セオリー無視の初弾からの斉射だ。射撃の瞬間、猛烈な衝撃波が辺りを駆け抜けた。機体の外にいたら間違いなく鼓膜をやられるだろう。撃ち出された砲弾は約15kmをあっと言う間に飛翔し、着弾した。
「シン、着弾地点の観測を頼む!」
ヒップギグのミオの通信が聞こえ、コアファイターが高度を上げていく。
「敵MSは健在!尚も接近中!ブラックハウスのレーダーじゃ捕捉できないのか?!」
シンが叫び、ブラックハウスの艦橋ではあずにゃんがカントーを一瞥したが、カントーは首を横に振った。
「起伏の多い地形のため、ただでさえ不明瞭な視界がさらに見辛くなってます。」
「なら俺がコアファイターで攻撃を…」
「それはダメです!」
シンが急降下しようとしたが、あずにゃんがそれを止めた。

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06/02 17:44 W51S(e) [215]エルザス
214
「攻撃にはうつらず、周囲の警戒と観測を続けてください。いまブラックハウス隊で目が効くのはあなただけです!」
「クッソ!」
コアファイターがもう一度機首をあげ、敵への攻撃コースから外れた。
「ナガモンさんは敵に向かってください。阿部さんはこのままブラックハウスと共に待機。マスパとブラックサンは?」
「発進準備完了!」
あずにゃんの問いにアークが答える。数秒後にはカタパルトからブラックサンが飛び出してきた。
「せっかくお風呂入ってたのに、服着る暇もなかったよ。」
黒猫の声が聞こえた。映像は切っている。
「まさか、服着てないのか?」
「うん。下着だけ。」
なんて奴だ。戦闘に臨む格好が下着のみとは。京大尉の反応が気になるが、何も言ってこない。戦闘に一刻も早く参加するためだから仕方ないという判断らしい。
「黒猫さんはナガモンと共に進んでください。魔理沙さんはまだ出ないで!」
あずにゃんが叫び、砂漠へ飛び出そうとしていた魔理沙が驚いて叫ぶ。
「なんでなのぜ?!」
魔理沙の言葉遣いがおかしくなっている。
「他の敵が現れるかもしれません。ブラックハウスはともかく、ヒップギグはMSに接近されたらまずいんです!」
「おぉっと待ったぁ!そいつは聞き捨てならんなナカノ小佐!」
通信に割り込んできたのはヒップギグのリツだ。
「ヒップギグのことなら守ってくれなくて結構!MSのひとつやふたつ、自力で倒して見せるよ!」
「先輩!?だけど…!」
「リツの言うとおりだぞアズサ。」
今度はミオが入ってきた。
「ヒップギグなら心配はいらない。自分の身は自分で守るよ。アズサは敵を積極的に叩いてくれ。援護は任せろ。」
「ミオ先輩まで…わかりました。魔理沙さん!」
「合点承知だZE☆」
マスパはブラックハウスから飛び出すと、敵に向かって走るオレと黒猫をあっと言う間に追い抜いていった。
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06/02 17:45 W51S(e) [216]エルザス
215
「砂漠じゃ機動性はマスパが一番かもね。」
黒猫が感心したように言う。

「同感だがオレたちも負けてられないぞ!急ごう!!」
「了解!」

オレたちはBlackCatとブラックサンを並走させ、マスパの後を追う。

「ヒップギグ、砲撃を一時中断してくれ!敵を確認したい。」
「こちらヒップギグ、了解した。」
ミオの声がしてすぐに砲撃が止んだ。しかしまだ砂塵がたちこめて敵影は見えない。マスパは構わずに前進してゆく。
「気をつけて魔理沙!もう敵と近いはずだよ!」
黒猫が警戒を促すが、魔理沙は前進をやめない。このままでは危険だ。
「うかつだぞ魔理沙ッ!」
オレがそう叫んだ瞬間、砂塵のカーテンの中から二機のザクがマスパの目の前に現れた。その内の一機はマスパに飛びかかるようにしてマスパに体当たりし、それを押し倒した。
「うわッ!」
「魔理沙ぁ!!」
もう一機のザクはヒートホークを振りかざし、マスパの機体を斬りつけた。強烈な衝突音と火花がほとばしり、マスパの主砲が一刀両断されてしまった。オレと黒猫はようやくマスパの元に辿り着き、それぞれ二機のザクに飛び付いた。
「魔理沙から離れろよこの変態ッ!」
黒猫の一喝とともにブラックサンの右腕が唸りを上げ、強烈なフックがザクの頭部に炸裂する。オレは飛び付いた敵にゼロ距離からバルカンを撃ち込み、さらにトンガリコーンで斬りつける。敵は抵抗を試みたがジェネレータの出力はBlackCatのほうが上回っていた。巨大な爪は着実にザクを切り裂き、そのコックピットもズタズタになると、ザクの抵抗は終わった。
「わたしの右手が真っ赤に燃えるぅ!」
黒猫のほうを振り向くと、ブラックサンの腕のバイタルチャージが作動し、その手はザクの頭部をがっちりと掴んでいた。
「シャイニング・フィンガー!!!!!!」
黒猫は決め台詞を中略し、一気にカタをつけた。ザクの頭部が爆散し、頭を失ったザクはゆっくりと後ろに倒れた。
「危なかったな魔理沙。」
オレはマスパの機体を起こしつつ、魔理沙に声をかけた。
「私のマスタースパークが…」
魔理沙はその大きな瞳いっぱいに涙をためていた。不謹慎かもしれないが、うるんだ瞳は魔理沙を一層かわいらしく見せていた。その時、シンから通信が入った。

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06/03 08:17 W51S(e) [217]エルザス
216
「警告!ナガモンさんたちとブラックハウスとの間に敵がいる!地面に埋まって隠れてたんだ!さっき見つけた二機はこっちだ!今やったのは別の奴です!」
「なんだって!?」
見れば、砂が丘陵になっている場所の陰から、二機のザクが姿を現していた。ザクはこちらには見向きもせず、ブラックハウスとヒップギグのほうに向かってゆく。
「あずにゃん、そっちに行ったよ!」
黒猫が叫ぶ。
「確認しました!主砲砲撃開始!トレインさん!!」
「まかせろ!」
ブラックハウスのレールガンが射撃を始め、続いてヒップギグも砲門を開いた。オレたちはマスパの車体に乗っかり急いで引き返す。
「味方の弾幕に突っ込むわけにはいかない。魔理沙、少し迂回してからブラックハウスに向かおう。」
「あんな弾幕、避けるだけならたいしたことないぜ!」
魔理沙はそう言うとマスパを更に加速させ、ブラックハウスとヒップギグの貼った弾幕の只中へと突っ込んで行った。
「おい!魔理沙!!うわっ!」
オレは魔理沙を止めようとしたが、すぐ近くでヒップギグの砲弾が炸裂し、舌を噛みそうになった。BlackCatにできるのはただただマスパにしがみつくことだけだ。一方黒猫はこの状況を楽しんでいるらしく、さっきから至近弾がある度に「グレイズ!グレイズ!」などと叫んでいる。爆煙の向こう側に、敵のザク二機が一瞬だけ見えた。マスパはザクを追い越したのだ。間もなくマスパは弾幕を抜け、ブラックハウスの巨体が見えてきた。その足元にはヤラナイカがマシンガンを構えている。阿部さんの士気は十分だ。そこへ、シンから再び報告が入る。
「方位064に新たな敵!MS4機が接近してきます!距離7000!」
「リツ先輩!ヒップギグは今出てきた敵に砲撃をお願いします!」
「了解!ミオ!!」
「主砲右旋回!方位064、距離6800に調整!仰角5、炸薬1、ようそろ!」
「主砲撃ち方始め!」
ヒップギグの40.6サンチ砲が一斉に火を吹き、砲弾はほぼ水平に飛翔して炸裂した。
「次弾装填急げ!目標かわらず!」
ミオがキビキビと射撃を指揮し、巨大な砲弾が次から次に撃ち出される。あちらの敵はヒップギグに任せてよさそうだ。
一方、ブラックハウス正面にいる筈の二機は舞い上がった砂埃に隠れて出てこない。
「逃げたのか?」
阿部さんが言ったが、果たしてそうだろうか。

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06/03 08:39 W51S(e) [218]エルザス
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「マスパの収容急いでください!ナガモンさんは念のためヒップギグの前面に出て支援を!ブラックサンとヤラナイカはここで待機していてください!」
あずにゃんの指令を受けて、オレはブラックハウスから離れてヒップギグの方に向かう。ヒップギグの正面では砲弾が派手に炸裂しつづけ、4機いるはずの敵の姿はまったく見えない。砲撃だけで倒してしまったのではないか?
「シン、ヒップギグ側の敵は確認出来るか?」
「無理です!砂でなんにも…あっ、方位197に戦闘機編隊!ドップ三機が移動してます!」
また新たな敵だ。ロンメル隊のしつこさは尋常ではない。命令を下すあずにゃんの声にも焦りがにじむ。
「た、対空戦闘用意!ナンジさん、お願いします!」
「了解!」
対空機銃班のナンジが答える。一年戦争が始まってから連邦軍に志願した彼は、ブラックハウス全体の対空機銃を指揮している。驚くべきは彼は指揮を取りつつ自分も機銃を操作できるということである。高速で飛翔する敵機を撃ち落とすには艦全体で統制のとれた対空弾幕を展開する必要がある。その指揮を取りながら自分の機銃でも敵を狙うというのは人間離れした技なのだ。いま、彼の指揮する対空機銃班が一斉に射撃を開始し、ブラックハウスから斜めに幾筋もの弾道が描かれた。接近しつつあったドップは回避運動をとるが、一機が弾幕に捕まり空中で爆発した。さらに一機の後ろにシンのコアファイターがくっつき、正確な射撃であっと言う間に撃墜する。残る一機はきびすを返して離脱してゆく。その時、ずっとレーダーと格闘していたカントーが興奮した様子で叫んだ。
「ヒップギグの砲撃は敵MS二機を撃破した模様!残る二機がナガモンさんのほうに向かっています!」
「ようやくお出ましか。歓迎してやらないとな。」
オレはたちこめる砂塵の向こう側をキッと見据えた。敵の気配が近づいてくる。どこだ?右…いや、違う。
「そこぉ!!」
アームストロング砲が発射され、太いビームが砂のカーテンにまっすぐ突き刺さる。刹那、カーテンの向こう側で爆発が起こり、砂と煙と炎が混じりあった不思議な色彩が目の前に広がった。
「やりました!命中です!」
アークが叫ぶ。わかってるって。
「カントー、もう一機はどこだ?」
「方位060、おおむね今撃った角度です。距離800!近いですよ!」
だが、砂塵はすぐ目の前までたちこめていた。

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06/03 11:52 W51S(e) [219]エルザス
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「わからないな。シン!お前は見えるか?」
オレはシンに呼びかける。しかし、応答はない。
「シン!どうした?シン!アーク、シンは何をしてる?」
「残ったドップを追撃して離れて行きました。無線通じません!」
「くそっ!カントー、敵との距離は?」
「距離200!敵はジャンプしました!上です!!」

すぐさま見上げれば、ザクの機体が砂塵を振り払い空中に飛び出す瞬間だった。

「こいつッ!」

BlackCat を後方へジャンプさせつつ、ビームライフルを撃ちかける。だが敵のザクは空中でわずかにバーニアをふかしてこれをよけ、手に持ったバズーカで反撃してきた。オレは機体を横っ飛びさせてこれをやり過ごし、敵が着地した瞬間を狙って飛び出す。敵は着地の直前にもう一度バーニアをふかし、落下速度を打ち消すはずだ。そこをトンガリコーンで叩く!
オレは跳び上がって地上から30mあたりの空中にトンガリコーンを振るった。
「よけられまい!」
だが、敵機はバーニアをふかさず、そのまま地面に着地した。凄まじい衝突音がして砂塵が舞い上がる。
「なに!?」
とっさの判断か、あるいは操作を誤ったか、とにかく敵は必殺のトンガリコーンをかいくぐった。BlackCatはその敵の頭を飛び越して着地する。振り向き様にビームライフルを構えるが、敵はすでに目の前。ヒートホークがライフルを一刀両断にして、ザクはそのままBlackCatにもたれかかってきた。
「なんのつもりだ!?」
これでは敵は攻撃できないはずだ。こちらには頭部バルカンがある。その時、足元で爆発が起こり、ザクの膝からしたが吹き飛んだ。着地の衝撃が機体に重大な損傷を与えたらしい。これで敵は動けないが、ザクはBlackCatにしっかりと抱きつき離れようとしない。それはまるで親に行かないでくれと懇願する子供のようだった。オレは思わずバルカンのトリガーを引く指を止めた。オレとしたことが、敵に情けを…
その時、ブラックハウスの側の地面から、新たなザクが墓地から蘇る死体のように立ち上がった。
「また新手か!?」
オレはブラックハウスの方へ向かおうとするが、しがみついたザクが離れない。
「このッ!」
トンガリコーンを自分に突き刺すような形で、オレはしがみつくザクを葬った。どういうわけか、オレはコックピットは避けて攻撃していた。急いでブラックハウスに向かう。新手のザクは他の機体とは外観が少し異なっていた。隊長機だ!

† † † † †

「真後ろにザク!隊長機です!!」
カントーが叫び、あずにゃんはさらなる新手にも冷静に対処する。
「トレインさん!主砲での攻撃は?」
「真後ろは無理だ!対空班にやらせろ!」
「ナンジさん!お願いします!」
「了解!後方を狙える機銃はすべて仰角をさげろ!敵は近いぞ!」
ブラックハウスのあちこちに突きでた対空機銃の銃身が水平に近くなり、針ネズミのような弾幕が展開される。さらにブラックハウスは後部ミサイルを放った。だが敵のザク、ロンメルの機体はそれらをかいくぐり、ブラックハウスの直近まで迫ると空中に跳び上がった。
「まずいッ!」
ナンジが叫び、彼の操る機銃が火を吹き、ザクに火線を集中させる。ザクはナンジの機銃座を睨むと、空中で方向転換してその真上に着地した。
「こざかしい奴め!」
ロンメルが怒りを露にした瞬間、銃座が小爆発を起こして焔が甲板上を駆け抜けた。
「ナンジさん!?」
あずにゃんが悲鳴のような声で叫ぶと、ザクは甲板上で振り向いて艦橋を睨みつけた。クルー達全員が息をのむ中、ザクはマシンガンを構えて艦橋に向けた。
「これで終りだ。黒い木馬ァ!」
だが、ロンメルが引き金を引こうとしたその瞬間、彼のザクが握るマシンガンは正確なビーム攻撃を受けて爆発してしまった。
「なんと!?」
ロンメルは攻撃のあった方向を見定める。東の方角から、一機のジムが接近してきていた。その背後から一隻の陸上戦艦がついてくる。だがヒップギグはブラックハウスの後ろにちゃんといた。
「連邦の増援か!ニキ!アルニム小隊はどうした?」
ロンメルはブラックハウスの甲板から飛び降りつつきいた。甲板上につっ立っていたらいい的だ。
「全滅した模様です!こちらも敵のMSに足止めを食わされてます!」
ロンメルの部下、ニキとカラハンは、ブラックサンとヤラナイカが固く守るブラックハウス前面で完全に立ち往生していた。出撃したロンメル以下10機のMSのうち、すでに6機までが撃破され、1機は敵前逃亡の醜態を晒し、残るはロンメルたち三人だけとなっていた。そこへきて新たな連邦軍の増援である。
「やむをえん。撤退するぞ!クラッカーを地面に投げろ!それを合図に後退!」
「了解!」
カラハンのザクがクラッカーを地面に投げ、それが爆発すると膨大な量の砂が舞い上がった。ロンメルはそこに飛び込んで離脱をはかった。ナガモンのBlackCatがすぐそこまで来ていたがクラッカーを投げつけてやりすごした。BlackCatはクラッカーの爆発に巻き込まれたが、損傷は軽微だった。しかし、ロンメルには逃げられた。
「クソッ、逃げられたな。」
ナガモンが呟くその上空に、シンのコアファイターが飛んで来た。その後ろに一機のミデア輸送機とセイバーフィッシュの三機編隊がついている。
「あれは一体…?」
あずにゃんがどんどん近づいてくる陸上戦艦を見ながら言う。ムスカの言っていた増援部隊であろうか。その時、底抜けに明るい声が艦橋に響いた。
「あ~ず~にゃ~ん!!」
「ユイ先輩?!」
映像回線がつながり、相手の様子がモニターに映し出される。思った通り、声の主はユイ・ヒラサワ中佐だった。その傍らには彼女の妹のウイ・ヒラサワの姿もある。
「ウイちゃんまで!どうしてここに?」
「ムスカっていう人にあのジムとミデアを護衛するように命令されたの。途中で前線飛行場からセイバーフィッシュも合流したんだよ!」
いまブラックハウスに近づいて来ている陸上戦艦は、ヒップギグと同じフェンダー級、ギータであった。艦長のユイ・ヒラサワ中佐はあずにゃんの先輩でリツやミオと同期、副長のウイ・ヒラサワはあずにゃんと同期である。ギータはますます接近してきてジムを追い抜いても一向に止まる気配がない。
「ユイ~!元気でやってるか~?」
「久しぶりだな。」
リツとミオが通信に入ってきた。彼女たちはお互いに挨拶を交わし、久々の再開に会話は弾んだ。ギータは速度を落とさずどんどん近づいて来る。すでにブラックハウスから1500mまで近づいて来た。だが、ユイは話に夢中でそれに気付かない。ギータは全速前進の命令を忠実に守り、今やブラックハウスへの直撃コースに入った。操舵手が不安げにユイを振り向いたが、ユイはニコニコしてリツとミオの話を聞いている。事態に気づいたのは副長のウイが先だった。
「お姉ちゃん、前!前!!」
「ん~?」
ユイの首がモニターからゆっくりと旋回し、真正面に迫るブラックハウスが視界に入った。
「やば!止まれない!止まらない!」

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06/07 08:18 W51S(e) [222]エルザス
221
この時になってあずにゃんも異変に気づいた。ギータはほぼ最大船速のまますでに500mにまで迫っている。
「後進いっぱい!」
「後進いっぱぁい!」
あずにゃんが慌てて叫ぶと、京がすかさず復唱し、ジョーンズが黙って船を操作した。ブラックハウスの巨体が動き出すが、そうそう素早い移動できるものではない。避けられない!
その時、収容間際だったブラックサンとBlackCatが飛び出し、ギータの正面に立ちはだかった。ギータの艦橋でもブラックハウスと同じ命令が発せられていた。推進装置が逆噴射するがとても止まらない。ブラックサンとBlackCatはなんとギータのへさきに取りつくと、二機だけでギータを止めにかかった。船を抑える二機のMSは踏ん張る姿勢のままどんどんギータに押され、後ろに進みながら柔らかい地面に埋まり始めた。
「やばいぞこれ!」
ナガモンが珍しく慌てた様子で叫び、バーニアを噴かしてどうにかギータを止めようとする。黒猫は歯を食いしばったまま操縦悍を押さえていた。一瞬でも気を抜くと機体が弾き飛ばされそうになる。
ブラックハウス艦橋ではクルー達が固唾をのんで両機を見守っていた。だが、ギータの姿はどんどん大きくなってくる。あずにゃんは意を決して叫んだ。
「総員衝撃に備えてください!副長、捕まって!」
あずにゃんは立っている京の手を掴むと、その躰を抱き寄せた。運を天に任せ、ぎゅっと目をつぶる。クルー達が皆身をこわばらせるなか、一人ジョーンズだけが平然と舵を握ってギータを見据えていた。
「止まれ止まれ止まれぇええぇえぇぇぇ!!!!」
ナガモンが叫び、ギータはいよいよブラックハウスに迫った。その距離、100m。刹那、黒猫があらん限りの大声で叫んだ。
「おまんちん!」
その瞬間、ギータの速度がぐっと落ちたかと思うと、その船体はブラックハウスまであと数メートルを残した場所で停止した。
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06/07 08:19 W51S(e) [223]エルザス
222
一瞬の静寂のあと、ナガモンが呟いた。
「と、止まった…」
はあぁ~という安堵の吐息があちこちから聞こえ、ギータとブラックハウスのクルーはようやく肩の力を抜いた。
「あなたたち!なにやってるの!」
上空のミデア輸送機から通信が入る。
「ノドカも来てたのか!」
ミオの声がそれに答えた。ノドカ・マナベ中佐もユイやミオの同期だ。
「あんまりハラハラさせないでよ。ユイは昔から変わらないわね…」
「あとはムギちゃんがいればみんな揃うね~。」
ユイが間延びした声で言った。
「先輩!そんなこと言ってる場合ですか!ちゃんと前見て操艦してください!」
あずにゃんが怒ったように言うと、一同が笑った。

アリー・アル・サーシェスは集まっているブラックハウスやヒップギグ、ギータを遠くに眺めていた。
「助けてやったってのにこっちにはお構いなしか?まったく…ん?」
ふと足元に目をやると、BlackCatがトンガリコーンで倒したザクが地面に転がっていた。そしてそのハッチが開いたかと思うと、中からパイロットが出てきて両手を上げた。
「降参か。運がなかったな。」
アリーはジムの手のひらに捕虜を乗せると、ブラックハウスに向かって歩き始めた。
「捕虜をとったぞ!ブラックハウスさんよぉ!」
あずにゃんはアリーから通信が入って初めてジムの存在を思い出した。そうだ、さっき敵の隊長機がブラックハウスの甲板に飛び乗ってこちらを睨んだ時、あのジムが危ういところを救ってくれたのだった。
「協力を感謝します。えぇと、お名前は…?」
「アリー・アル・サーシェスだ。ブラックハウスに転属になった。ジャブローまでよろしく頼むぜ、艦長さん。」
「あ、アズサ・ナカノ中佐です。よろしくお願いします。」
「それで、この捕虜は?」
アリーのジムが手のひらを軽く掲げ、その上に乗っている負傷した捕虜を見せる。
「まずは手当てを。阿部さん、捕虜を受け取ってすぐに医務室に運んであげてください。サーシェスさんもブラックハウスに着艦を。着任の確認を行います。」
アベのヤラナイカが捕虜を受け取り、ブラックハウスの格納庫に姿を消した。アリーのジムも後に続く。ブラックハウスのすぐそばで止まっているギータの前には、ブラックサンとBlackCatが力尽きたように倒れていた。
「バラバラの機種のデコボコ部隊か。おもしれぇじゃねぇの。」
アリーはそう呟いた。

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06/07 17:40 W51S(e) [224]エルザス
223

あずにゃんはアリーがムスカから預かった命令書を受け取った。曰く、
「ブラックハウス及びヒップギグは合流した増援部隊、ギータ、ジム、ミデア、セイバーフィッシュ四機とともにブラックハウス隊を再編成し、ロンメル隊の攻撃を警戒しつつただちに第4軍団に合流せよ。第4軍団は現在、カセリーヌ峠付近に展開し、アレクサンドリアとの間に到達した公国軍クリミア脱出部隊を包囲しつつある。部隊配置は同封の作戦地図を参照のこと」
あずにゃんは一緒に渡された地図を見てみる。アフリカ北岸の地図だ。連邦軍の部隊は青、公国軍の部隊が赤で示されている。まず東からシナイ半島に青(スエズ運河奪還作戦の部隊)、スエズ運河を跨ぐように赤(スエズ運河守備隊)、アレクサンドリアとナイル川沿いに青(これもスエズ運河奪還作戦の部隊)、その西に赤(クリミアから脱出し、二海峡を突破してきた部隊)、最後にまた青(ムスカの第4軍団)となっていた。つまり、アフリカ北岸にはいま青と赤が交互に展開する奇怪な縞模様が描かれていたのである。命令文書はさらに続く。
「友軍部隊のうち、アレクサンドリア周辺にある部隊は敵に東西から挟まれている。東側のスエズ運河守備隊は強力であり、西側の敵も敗残部隊とは言え二海峡を突破してきているからあなどることはできない。従って第4軍団は総力をもってこの敵を殲滅するものである。ブラックハウス隊はその攻撃の重要な戦力であるため、最大の速力をもって第4軍団に合流せよ。以上。」
命令文書を読み終わったあずにゃんはそれを京に渡した。あずにゃん達はいまブラックハウスのガンルームに集まっていた。ブラックハウス、ヒップギグ、ギータの各艦長と副長が一同に会し、今後の作戦を確認していたのである。ナガモンたちパイロット組とアリーも壁際に立っていた。補給部隊のノドカとその護衛戦闘機編隊を率いるタチバナというパイロットは一度自分達の補給のために一度航空基地に戻っていた。
「つまり、スエズ運河奪還作戦の主力部隊のうち半分は、敵に包囲されているということですか?」
京がアフリカ戦線の現状を極めて簡潔にまとめた。あずにゃんがうなずいて同意する。
「そうらしいですね…しかしこの程度で奪還作戦は中止されないでしょうね。ミオ先輩はどう思います?」

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06/07 18:30 W51S(e) [225]エルザス
224
「その通りだろうな。上層部の判断としては第4軍団が敵のクリミア脱出部隊、キシリア親衛隊らしいな、これを素早く掃討してしまえば問題ないってことなんだろう。」
ミオの意見にリツも賛同する。
「ブラックハウス隊がロンメル隊をかなり叩いたからムスカは後ろに気をつかわずに攻撃できるってわけだ。その攻撃にもブラックハウス隊をまた使うなんて、まったくぅ。」
ふてくされたように言うリツに、それまで居眠りをしていたユイが反応する。
「でもおかげで皆に会えたね~。」
「のんきだなぁあいかわらず。ウイも大変だねぇ。」
リツがウイに同情したような眼差し向けるが、彼女はユイが誉められたのかと思ったらしく、嬉しそうに微笑んだ。
「でも本当に久しぶりですね、なんだか嘘みたい。」
マイペースぶりは妹も変わらないようだ。話を元に戻そうと、京が口を開いた。
「とにかく現状ではカセリーヌ峠を目指して進めばいい訳ですね。キシリア親衛隊がどの程度の戦力なのかわかりませんが、今はそれよりも後方のロンメル隊に注意するべきでしょう。」
「京大尉はロンメルがまた襲撃してくると考えてるのか?」
ミオがきいた。
「はい。今日の戦闘からもわかるように、ロンメル隊の執念深さはかなりのものです。我々の戦力が増えたとはいえ、敵にしてみれば第4軍団に合流する以前に我々を叩きたいはずです。」
京の意見にずっと黙っていたナガモンが反論した。
「オレはそうは思わないな。連続の戦闘で敵はかなりの数のMSを失ってる。ロンメル隊に何機のMSがあるかなんて知ったこっちゃないが、普通に考えて壊滅に近い被害を受けてるはずだ。この上また攻撃してきたらそれは狂気の沙汰だよ。」
「しかしこの前の戦闘で敵はMSを10機以上失ったんだぞ。ジャブローに着く前に戦った敵ならこれで全滅していた。にもかかわらずロンメルは今日も攻撃をしかけてきた。」
「だから今日の攻撃で敵は壊滅したと思うんだ。敵の引き際はかなり焦っているように感じた。」
「ブラックハウスから見ている限りはそうは思わなかったが…こちらもかなり追い詰められていた。」
京はそう言うとあずにゃんのほうをちらりと見た。同意を求めているようだった。

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06/08 07:59 W51S(e) [226]エルザス
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「副長の言う通りです。サーシェスさんが助けてくれなかったら私たちはやられていました。でも、ナガモンさんの意見も正しいと思います。辛いのは敵も同じ、今が正念場です。だからこそ攻撃を仕掛けてくるかもしれないけど…黒猫さんはどう思いますか?」
ユイ同様居眠りをしていた黒猫が、壁によりかかり目をつぶったままムニャムニャと言う。

「ロンメルは来ないよ。気配をまったく感じないもの。もう基地に戻ってしばらくは出てこないと思うにゃ…」
それだけ言うと、黒猫は再び寝息をたてはじめた。
「決まりですね。ロンメルは来ない。ブラックハウス隊は後方を警戒しながらではなく、ひたすら前だけを見てカセリーヌ峠に向かいます。」
あずにゃんが決然と言い放つと、早速リツが疑問を呈した。
「ちょっと待って、彼女の意見だけで決めて平気なの?ブラックハウスは空に逃げられるけどヒップギグとギータはそうはいかないんだよ?」
「一隻だけで逃げたりしません。それに黒猫さんの感性は本物です。絶対に大丈夫です。」
「えらい自信だなぁ…じゃあ一丁カセリーヌまで突っ走るか!」
リツがそう言って拳を突き上げる。
「おー!☆」
一同がそれに合わせて気合いを入れて、その場はこれで解散となった。艦橋へ戻る途中、京はウイに呼び止められた。
「本当はお姉ちゃんがやるべきなんですけど…」
ウイはそう言うと軍用封筒を取り出し、中味を京に渡した。
「これは…?」
「輸送部隊がジムと一緒に整備士さん二名も運んで来たんです。ブラックハウスに配属になるので、これはその書類です。」
「コヨミ・アララギとヒタギ・センジョウガハラ…了解しました。二人はいまどこに?」
「多分ジムのいる格納庫だと思います。左右どっちかまではわからないんですけど…」
ウイは照れたように伏し目勝ちに微笑んだ。
「わかりました。探してみます。」
「よろしくお願いします!」
ウイはペコリとお辞儀をすると、ギータに戻る姉のもとへ走っていった。

京が右舷側の格納庫に来ると、MKⅡとLv.57が新入り二人を整備兵たちに紹介しているところだった。

「え~、今日から我が整備第一班に配属になる…なんだったっけ?」

MKⅡが緊張感なく進行役を務めているが、二人の名前を忘れてしまったらしい。Lv.57が助け船をだす。

「コヨミ・アララギ軍曹とヒタギ・センジョウガハラ曹長です。」
「あぁそうそう。アララギくんとツンデレちゃんです。これからよろしく。」

結局MKⅡには二人の難しい名前は覚えられなかったらしい。適当なあだ名をつけてしまったが、ヒタギのほうは一向に構わない様子だった。
むしろアララギのほうがヒタギの顔色を伺っているようだ。

「じゃあ、二人とも自己紹介を。」

MKⅡがそう言って一歩下がった。ヒタギはMKⅡとLv.57を一瞥し、Lv.57が手をさしだして「どうぞ」という仕草をしたので喋り始めた。

「ヒタギ・センジョウガハラです。ツンデレですがデレるのはアララギ君に対してだけです。過度な期待はしないでください。と言うより、アララギ君以外の男が近づいてきたら容赦なく攻撃します。」

ヒタギが堂々とそう言って、整備班男子の刺すような視線が一斉にアララギに向けられた。明らかな敵意と殺意を感じる。

「お、おいセンジョウガハラ、いきなり自己紹介でそんなこといわなくても…」
「あいかわらずバカねアララギ君。今のうちに言うことは言っておかないと、バカな男どもはすぐにつけあがってしまうものよ。それに、私が他の男に取られてもいいの?」
ヒタギはアララギの瞳をまっすぐ見据えて言った。端正な顔立ちがアララギを見つめている。
「いや…、それは嫌だけど…」
内心では「なんで人前でこんな恥晒しを!?」と思いつつも、アララギは素直に答えていた。案の定、整備兵達の殺気がより強くなった。
「ならこれでいいのよ。私からは以上です。」
ヒタギはそう言って一歩下がった。兵士達から盛大な拍手が送られる。

「じゃあ次はアララギ君。」

MKⅡに言われて、アララギは一歩前に出たが、整備兵達が襲いかかってくるのではないかと気が気ではなかった。

「えぇと、コヨミ・アララギです。よく変な名前って言われますが、ホントに変で困ってます。アハハハ…」

アララギ以外だれも笑わなかった。ヒタギの時の暖かい雰囲気はどこにいったんだ!と内心に叫びつつ、アララギは自己紹介を続ける。

「趣味は自転車、といっても今は手元にないからどうしようもないんだけど…とにかく足手まといにならないように、精一杯がんばります。」

アララギが一歩下がると、パラパラとした拍手が起こった。なんという格差…アララギはそう嘆かずにはいられなかった。

「まぁ二人ともこれから頑張ってもらうから皆仲良くしてね。それじゃ解散。」

MKⅡはそう言うと、二人を残していってしまった。途端に整備兵達がヒタギとアララギを取り囲む。ただし別々に。

「センジョウガハラさん、スリーサイズは?」
「体重がほとんどなかったってほんとですか?」
「なぜアララギの野郎と!」
「結婚してください!」

ヒタギを取り囲んだ面々は次から次に質問を投げ掛ける。一方アララギに発せられた言葉はもっと簡単だった。

「あとでツラかせや。」

アララギを囲んだいかつい男たちはそれだけ言うとヒタギを取り巻く輪に加わった。アララギは背中に嫌な汗をかいていた。
これからの生活は大丈夫だろうか。

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最終更新:2010年12月25日 14:30
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