第七話 夢のあと
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どこからが夢で、どこまでが夢なのだろう…
アレスに戦闘の意思はない。ただ、ドルダに搭乗した少女から行われるであろう攻撃から身を守りつつ、現場より離脱しようと考えていた。
これからのことについて少し、ティモールやベイトと話す必要がある、と、冷静になった頭でやっと考えることが出来たのだった。
やがて、外にいるクランの方を一瞥すると、戦闘機形態に可変し、離脱しようとする。
戸惑うクランは、身の安全の為に再びドルダに搭乗せざるを得なかった。
その刹那…
ガンダムドルチェの放ったロングレンジビームライフルの閃光が、二機の合間を通り抜けて行った。
「はいはーい、ケンカはヤメね♪」
エリスが心から楽しそうに笑いながら言う。
「どういうつもりだ!?」
対照的にデイヴは険しい表情を見せる。
「どうもこうも。ケンカ両成敗って言葉、知らない?」
「そういうことじゃねえ!今から何をするつもりだ!」
「戦うの」
「何!?」
「戦うのよ、デイヴ。死を怖れてはならないわ。それはいつでも私達の隣にあるもの。ただ純粋に、死を想えたらどんなに素敵かしらね」
「答えになってねえってんだよ!この中二病が!」
たまらず激昂するデイヴ。それ言っちゃダメっすよ…
エリスは気にする様子もなく、巧みにドルチェを駆る。
「使い方違う気もするけど…とにかく、あなたは座ってるだけでいいから」
今は、ね…意味深なことを言いつつ、ドルチェはビームレイピアを抜き放ち、ガンダムマルスへと振りかぶる。
「!」
アレスは瞬時にマルスを変形させ、ビームサーベルでそれを受け止める。
「へぇ…なかなか」
ニヤリと笑うエリス。いやな笑みだ。
「何者だ!」
語気鋭く言い放つアレス。
「ご機嫌よう、アレス」
「!何故俺の名を知っている!?」
「何故も何も。いつも会ってたじゃない?私達は」
バチッ!サーベルとレイピアが互いを弾く。
「夢の中でね!」
「戯言を!」
アレスは、ビームブレイドを発生させた脚で廻し蹴りを放つ。
「昨晩も。覚えてない?」
ドルチェはひらりと舞うような動きで、いとも容易く避けてみせる。
「最後の最後まで、呼びかけたつもりなんだけどね!」
体勢を立て直したドルチェが、レイピアによる突きを繰り出す。
「!」
アレスは紙一重でその突きを見切り、機体をわずかに転身させ、再び蹴りを放つ。
嘲笑うように攻撃を避けるドルチェ。
流麗で変則的なその動きに、アレスは苦戦を強いられていた。
(あのパイロットも、俺と同じ夢を見ていただと…!?)
一方デイヴは、自らの体にかかるGに歯を食いしばりつつも、そんなことを思っていた。
「その機体は一体何だ!」
ビームライフルを撃つマルス。
「ガンダムドルチェ。覚えてない?」
ひらりと身をかわし、背部に装備されたビームキャノンを撃つドルチェ。
「あなたの家族を…そしてシンシアを、殺した機体じゃない!」
エリスは心から嬉しそうに笑い、再びロングレンジビームライフルを放った。
最大出力のそれは容赦なく収束し、マルスを襲う。
(早い!あれだけの出力を、チャージもせずに…!)
だがマルスとて、半端な機体ではない。
稀代の天才であり、そして宇宙一の変人…少年自身の祖父、ティモール・ルナーク博士の誇る最高傑作だ。
進宇宙歴102年現在、MS最速の名を欲しいままにしているこの機体にとって、回避という動作はそう難しいことではない。
ビームライフルを連射しながら、アレスが言う。
「シンシアを…!?まさか、貴様!」
「アッハハハハ!よく避けてくれたわぁ!フフッ、そうよ、そのまさかよ!」
それなんてひろし?なんてツッコミはスルーの方向で。
「貴様ァー!!」
ガンダムマルスのメイン武装、カメラファンネルが、ガンダムドルチェに牙をむく。
蝶のように舞い、蜂のように刺す八基のすれが容赦なくドルチェを襲う。
「アッハハハハ!そうでなくちゃ!楽しいわぁ!そうよね、ドルチェ?」
襲い来るファンネルに臆することもなく、少女は純粋に歪んだ笑みを見せる。
これからのことについて少し、ティモールやベイトと話す必要がある、と、冷静になった頭でやっと考えることが出来たのだった。
やがて、外にいるクランの方を一瞥すると、戦闘機形態に可変し、離脱しようとする。
戸惑うクランは、身の安全の為に再びドルダに搭乗せざるを得なかった。
その刹那…
ガンダムドルチェの放ったロングレンジビームライフルの閃光が、二機の合間を通り抜けて行った。
「はいはーい、ケンカはヤメね♪」
エリスが心から楽しそうに笑いながら言う。
「どういうつもりだ!?」
対照的にデイヴは険しい表情を見せる。
「どうもこうも。ケンカ両成敗って言葉、知らない?」
「そういうことじゃねえ!今から何をするつもりだ!」
「戦うの」
「何!?」
「戦うのよ、デイヴ。死を怖れてはならないわ。それはいつでも私達の隣にあるもの。ただ純粋に、死を想えたらどんなに素敵かしらね」
「答えになってねえってんだよ!この中二病が!」
たまらず激昂するデイヴ。それ言っちゃダメっすよ…
エリスは気にする様子もなく、巧みにドルチェを駆る。
「使い方違う気もするけど…とにかく、あなたは座ってるだけでいいから」
今は、ね…意味深なことを言いつつ、ドルチェはビームレイピアを抜き放ち、ガンダムマルスへと振りかぶる。
「!」
アレスは瞬時にマルスを変形させ、ビームサーベルでそれを受け止める。
「へぇ…なかなか」
ニヤリと笑うエリス。いやな笑みだ。
「何者だ!」
語気鋭く言い放つアレス。
「ご機嫌よう、アレス」
「!何故俺の名を知っている!?」
「何故も何も。いつも会ってたじゃない?私達は」
バチッ!サーベルとレイピアが互いを弾く。
「夢の中でね!」
「戯言を!」
アレスは、ビームブレイドを発生させた脚で廻し蹴りを放つ。
「昨晩も。覚えてない?」
ドルチェはひらりと舞うような動きで、いとも容易く避けてみせる。
「最後の最後まで、呼びかけたつもりなんだけどね!」
体勢を立て直したドルチェが、レイピアによる突きを繰り出す。
「!」
アレスは紙一重でその突きを見切り、機体をわずかに転身させ、再び蹴りを放つ。
嘲笑うように攻撃を避けるドルチェ。
流麗で変則的なその動きに、アレスは苦戦を強いられていた。
(あのパイロットも、俺と同じ夢を見ていただと…!?)
一方デイヴは、自らの体にかかるGに歯を食いしばりつつも、そんなことを思っていた。
「その機体は一体何だ!」
ビームライフルを撃つマルス。
「ガンダムドルチェ。覚えてない?」
ひらりと身をかわし、背部に装備されたビームキャノンを撃つドルチェ。
「あなたの家族を…そしてシンシアを、殺した機体じゃない!」
エリスは心から嬉しそうに笑い、再びロングレンジビームライフルを放った。
最大出力のそれは容赦なく収束し、マルスを襲う。
(早い!あれだけの出力を、チャージもせずに…!)
だがマルスとて、半端な機体ではない。
稀代の天才であり、そして宇宙一の変人…少年自身の祖父、ティモール・ルナーク博士の誇る最高傑作だ。
進宇宙歴102年現在、MS最速の名を欲しいままにしているこの機体にとって、回避という動作はそう難しいことではない。
ビームライフルを連射しながら、アレスが言う。
「シンシアを…!?まさか、貴様!」
「アッハハハハ!よく避けてくれたわぁ!フフッ、そうよ、そのまさかよ!」
それなんてひろし?なんてツッコミはスルーの方向で。
「貴様ァー!!」
ガンダムマルスのメイン武装、カメラファンネルが、ガンダムドルチェに牙をむく。
蝶のように舞い、蜂のように刺す八基のすれが容赦なくドルチェを襲う。
「アッハハハハ!そうでなくちゃ!楽しいわぁ!そうよね、ドルチェ?」
襲い来るファンネルに臆することもなく、少女は純粋に歪んだ笑みを見せる。
「…!」
一方ドルダに搭乗した謎の少女は、再び起こった激しい頭痛に苦しみもがいていた。
「くっ……ああああああ!私は…わたしは…」
「どうしたの!?シンシア、シンシア!」
とっさに口に出た妹の名。クランは少女を心配しながらも、自らが妹の名を口にしてしまったことに気づき口を噤む。
「くっ…うう、シン、シア…?」
苦痛に顔を歪めながらも、少女は「シンシア」という名に反応を見せる。
「シンシアって、わたしの名前?」
「そう。貴女はシンシア……私の妹よ」
それは全ての真相が明らかになってない今、言うべきではなかったのかもしれない。
彼女を傷付ける可能性もある。
否、それはただの都合のいい言い訳だと、クランは自嘲した。
(ただのエゴね。自分の妹を、この子に重ねて)
再び寂しそうに、少女を見つめるクラン。 )
そんなクランに向かって、少女は微笑みを浮かべた。
「お姉ちゃん」
「!!」
クランの目尻に、じわっと涙が滲む。
黙ったまま、クランは再び、少女を、シンシアを抱き締めた。
しかし、ずっと抱き合っているわけにはいかない。
クランはシンシアを離すと、迷いを振り払って、向き合う。
「シンシア、貴女はこれを、ドルダを動かせる?」
「ドルダを…?お姉ちゃん、一体何を…」
「アレスを…私達の弟を、助けるの!あの白い機体から!」
「アレ…ス?」
「そうよ、あなたの弟。あんなに仲が良かった、あなたの弟よ!」
MSやテラ・フォーミング、コロニー開発等、科学技術は栄えているが、人々の生活水準を鑑みると、荒んでいると言えるこの時代。
家族が無事に、全員揃って、平和に暮らすことなど、滅多にないことであった。
例えばデイヴィッド・リマー。例えば宗谷頃奈(そうやころな)。例えばアレス・ルナーク。そしてクラン・R・ナギサカ。
度重なる食糧危機、紛争・事変の勃発、天災…
いつしか人々は、絆というものを忘れかけていた。
自らが生き残る為には、まず隣人を騙せ…
親が子にそう教える世界。
だからこそ、だからこそ…
人々は皆誰しも、人というものに疑念を抱きつつも、心の何処かで、家族、あるいは友人の絆というものに憧れていた。
クランが、アレスが、「家族」というものに異常なほどの執着を見せる原因が、世界そのものにあったのだった。
「知ら、ない」
「!」
「知ら…ない…!わたしは…アレスなんて、知らない…」
「シンシア!」
「知らない、知りたく、ない…」
知らないというより、忘れたがっている…?
クランはシンシアの表情から、そのような意志を読み取った。
「お願い、シンシア。今は思い出さなくてもいいから!あの紅い機体を、助けてあげて!」
クランにはわかっていた。
自らの願いが、少女をシンシアに重ねること以上のエゴで、そして自らが業の道を歩み始めていることに。
自分勝手な願いの為に、シンシアを、そしてドルダの未知なる力を利用しようとしている…
(私はッ…本当に、ダメね…)
クランは自らの言動に吐き気を覚えていた。
空に唾を吐きたい気分だった。
けれど、そんなものより大切なものが、今彼女を支えている原動力となっていた。
「お願い…」
静かに涙を流しながら、クランが言う。
「……」
静寂が、二人を包む。冬の雪風よりも、氷と闇の世界よりも、冷たさを知ったうえで…
「…わかった」
小さく呟くシンシア。その瞳に迷いはなかった。
「Doll-daシステム、起動。ビームジェネレーター、展開」
魔神ドルダの参戦により、三つ巴の戦いが幕を開けようとしていた…
宇宙を駆けるファンネルからの猛攻を巧みに避けるドルチェ。
先程のデイヴとディックとは異なり、エリスは心底楽しそうだった。
「アッハハハハ!鬼さんこちら、手のなるほうへ~」
言いながら宙返り、二基のファンネルを避け、背部のビームファトランクスで撃ち落とす。
刹那、ビームサーベルを構えたマルスが、ドルチェの頭部を捉えた。
「!」
白い残像が、サーベルに貫かれる。
ドルチェはしなやかな動きで、マルスに足刀蹴りを入れる。
「くっ!」
「格闘戦用でしょ?しっかりしてよね~」
クスクスと笑い、ドルチェは匙状をした奇抜な刃を取り出す。長い柄と、柄の先端に取り付けられたスプーン状の幅広の刃からなる武器だった。
「させるか!」
アレスは力を振り絞り、マルスのビームガンブレードのトリガーを引く。
そしてドルチェの後方からは、二基のファンネルが襲いかかっていた。
「未完成なんだけどなぁ…ま、いっか」
エリスが呟くと、それまでドルチェの下半身を覆っていたドレススカート状のパーツ…
否、ファンネルが舞い、宙でシールドを形成する。
「何!?」
形成されたシールドファンネルが、マルスの攻撃のすべてを弾く。
「まずまずね、アレス。でも」
今度は暗く笑うエリス。
「これで終わり!」
匙状の実体刃にビーム粒子を纏わせた武器、ビームスコップが、マルスの命を刈りとろうと踊り出る。
「そんなもの!」
ガキィィィン!二刀流でビームスコップの斬撃を受けとめるマルス。
「ああああ!」
叫ぶアレス。空いた方の手で、ビームレイピアを構えるドルチェ。
「見苦しいよ、アレス」
レイピアをマルスに向けて、静かに振り下ろす。
瞬間、アレスはありったけの力を込めた。
「ああああぁぁぁぁぁ!」
「!」
渾身の力で、ビームスコップを弾く。
自由になったマルスを阻むものなど、もう何もない。軽やかにレイピアを避ける。
「お前は…お前だけは、絶対に倒す!」
「世界の声を、聞きたくないの?」
「黙れ…黙れェェ!」
マルスは手足合わせての四刀流で、豹のようにドルチェに飛びかかる。
「!」
マルスのしなやかな獣の動きに、意表をつかれるエリス。
その時、それまで沈黙を守っていたデイヴが、エリスのコクピットに身を乗り出し、ドルチェを…否、シールドファンネルを操ってみせた。
マルスの全力を強かに受け止めるシールドファンネル。
「デイヴ、あなた…」
「ハァ、ハァ、ハァ…」
デイヴ自身、自分が何をしたのか、何が起こったのか理解出来なかった。
「それでこそ、私のデイヴ」
余裕を取り戻したエリスが言う。
「勘違いするな」
冷たく言い放つデイヴ。
「俺は、この無駄な戦いを終わらせたいだけだ。もうやめろ!」
「心配しないで、すぐに終わるわ」
エリスが再び笑う。
「彼が死ぬことによってね…!」
再びビームスコップを構えるドルチェを、自身のシールドファンネルが阻む。
「させない、と言ったはずだ」
「デイヴ…!」
悲しそうな、けれどその口元にわずかな苛立ちを含ませ、エリスは言う。
と、そこに…
「!」
ガンダムドルダによって放たれた一閃のビームキャノン。
「ドルダ…!」
少女の中で、苛立ちが憎しみへと成長しつつあった。
一方ドルダに搭乗した謎の少女は、再び起こった激しい頭痛に苦しみもがいていた。
「くっ……ああああああ!私は…わたしは…」
「どうしたの!?シンシア、シンシア!」
とっさに口に出た妹の名。クランは少女を心配しながらも、自らが妹の名を口にしてしまったことに気づき口を噤む。
「くっ…うう、シン、シア…?」
苦痛に顔を歪めながらも、少女は「シンシア」という名に反応を見せる。
「シンシアって、わたしの名前?」
「そう。貴女はシンシア……私の妹よ」
それは全ての真相が明らかになってない今、言うべきではなかったのかもしれない。
彼女を傷付ける可能性もある。
否、それはただの都合のいい言い訳だと、クランは自嘲した。
(ただのエゴね。自分の妹を、この子に重ねて)
再び寂しそうに、少女を見つめるクラン。 )
そんなクランに向かって、少女は微笑みを浮かべた。
「お姉ちゃん」
「!!」
クランの目尻に、じわっと涙が滲む。
黙ったまま、クランは再び、少女を、シンシアを抱き締めた。
しかし、ずっと抱き合っているわけにはいかない。
クランはシンシアを離すと、迷いを振り払って、向き合う。
「シンシア、貴女はこれを、ドルダを動かせる?」
「ドルダを…?お姉ちゃん、一体何を…」
「アレスを…私達の弟を、助けるの!あの白い機体から!」
「アレ…ス?」
「そうよ、あなたの弟。あんなに仲が良かった、あなたの弟よ!」
MSやテラ・フォーミング、コロニー開発等、科学技術は栄えているが、人々の生活水準を鑑みると、荒んでいると言えるこの時代。
家族が無事に、全員揃って、平和に暮らすことなど、滅多にないことであった。
例えばデイヴィッド・リマー。例えば宗谷頃奈(そうやころな)。例えばアレス・ルナーク。そしてクラン・R・ナギサカ。
度重なる食糧危機、紛争・事変の勃発、天災…
いつしか人々は、絆というものを忘れかけていた。
自らが生き残る為には、まず隣人を騙せ…
親が子にそう教える世界。
だからこそ、だからこそ…
人々は皆誰しも、人というものに疑念を抱きつつも、心の何処かで、家族、あるいは友人の絆というものに憧れていた。
クランが、アレスが、「家族」というものに異常なほどの執着を見せる原因が、世界そのものにあったのだった。
「知ら、ない」
「!」
「知ら…ない…!わたしは…アレスなんて、知らない…」
「シンシア!」
「知らない、知りたく、ない…」
知らないというより、忘れたがっている…?
クランはシンシアの表情から、そのような意志を読み取った。
「お願い、シンシア。今は思い出さなくてもいいから!あの紅い機体を、助けてあげて!」
クランにはわかっていた。
自らの願いが、少女をシンシアに重ねること以上のエゴで、そして自らが業の道を歩み始めていることに。
自分勝手な願いの為に、シンシアを、そしてドルダの未知なる力を利用しようとしている…
(私はッ…本当に、ダメね…)
クランは自らの言動に吐き気を覚えていた。
空に唾を吐きたい気分だった。
けれど、そんなものより大切なものが、今彼女を支えている原動力となっていた。
「お願い…」
静かに涙を流しながら、クランが言う。
「……」
静寂が、二人を包む。冬の雪風よりも、氷と闇の世界よりも、冷たさを知ったうえで…
「…わかった」
小さく呟くシンシア。その瞳に迷いはなかった。
「Doll-daシステム、起動。ビームジェネレーター、展開」
魔神ドルダの参戦により、三つ巴の戦いが幕を開けようとしていた…
宇宙を駆けるファンネルからの猛攻を巧みに避けるドルチェ。
先程のデイヴとディックとは異なり、エリスは心底楽しそうだった。
「アッハハハハ!鬼さんこちら、手のなるほうへ~」
言いながら宙返り、二基のファンネルを避け、背部のビームファトランクスで撃ち落とす。
刹那、ビームサーベルを構えたマルスが、ドルチェの頭部を捉えた。
「!」
白い残像が、サーベルに貫かれる。
ドルチェはしなやかな動きで、マルスに足刀蹴りを入れる。
「くっ!」
「格闘戦用でしょ?しっかりしてよね~」
クスクスと笑い、ドルチェは匙状をした奇抜な刃を取り出す。長い柄と、柄の先端に取り付けられたスプーン状の幅広の刃からなる武器だった。
「させるか!」
アレスは力を振り絞り、マルスのビームガンブレードのトリガーを引く。
そしてドルチェの後方からは、二基のファンネルが襲いかかっていた。
「未完成なんだけどなぁ…ま、いっか」
エリスが呟くと、それまでドルチェの下半身を覆っていたドレススカート状のパーツ…
否、ファンネルが舞い、宙でシールドを形成する。
「何!?」
形成されたシールドファンネルが、マルスの攻撃のすべてを弾く。
「まずまずね、アレス。でも」
今度は暗く笑うエリス。
「これで終わり!」
匙状の実体刃にビーム粒子を纏わせた武器、ビームスコップが、マルスの命を刈りとろうと踊り出る。
「そんなもの!」
ガキィィィン!二刀流でビームスコップの斬撃を受けとめるマルス。
「ああああ!」
叫ぶアレス。空いた方の手で、ビームレイピアを構えるドルチェ。
「見苦しいよ、アレス」
レイピアをマルスに向けて、静かに振り下ろす。
瞬間、アレスはありったけの力を込めた。
「ああああぁぁぁぁぁ!」
「!」
渾身の力で、ビームスコップを弾く。
自由になったマルスを阻むものなど、もう何もない。軽やかにレイピアを避ける。
「お前は…お前だけは、絶対に倒す!」
「世界の声を、聞きたくないの?」
「黙れ…黙れェェ!」
マルスは手足合わせての四刀流で、豹のようにドルチェに飛びかかる。
「!」
マルスのしなやかな獣の動きに、意表をつかれるエリス。
その時、それまで沈黙を守っていたデイヴが、エリスのコクピットに身を乗り出し、ドルチェを…否、シールドファンネルを操ってみせた。
マルスの全力を強かに受け止めるシールドファンネル。
「デイヴ、あなた…」
「ハァ、ハァ、ハァ…」
デイヴ自身、自分が何をしたのか、何が起こったのか理解出来なかった。
「それでこそ、私のデイヴ」
余裕を取り戻したエリスが言う。
「勘違いするな」
冷たく言い放つデイヴ。
「俺は、この無駄な戦いを終わらせたいだけだ。もうやめろ!」
「心配しないで、すぐに終わるわ」
エリスが再び笑う。
「彼が死ぬことによってね…!」
再びビームスコップを構えるドルチェを、自身のシールドファンネルが阻む。
「させない、と言ったはずだ」
「デイヴ…!」
悲しそうな、けれどその口元にわずかな苛立ちを含ませ、エリスは言う。
と、そこに…
「!」
ガンダムドルダによって放たれた一閃のビームキャノン。
「ドルダ…!」
少女の中で、苛立ちが憎しみへと成長しつつあった。
後編へ続く
後編
「!待って!ここで待機しよう」
フィリア・シュードは地下遺跡ポイントで起こっている戦いにいち早く気づいた。
前進をやめ、停滞するカナリヤ。
「一体何が起きているんだ…」
顔を曇らせるギデオン。
モモは不安そうに怯え、ヴァイスは相変わらず黙っている。ミランダは焦り、ディックは息をのんだ。
「何てことだ…デイヴとナギサカさんは、この状況で一体…」
フィリアが呟く。
その場の全員が、あまり良くない結末を想像する他なかった。
「クソッ…!」
突然ディックが、ゲイリーの胸倉を掴み怒鳴る。
「何であの時止めた!」
ひっ、小さく言い怯えるゲイリー。弁明を始める。
「わ、私は、皆の安全を考えて…」
「やめなよ、中尉」
たしなめるネルネ。しかしディックはネルネの手を払うと、ゲイリーを殴ろうと拳を振り上げる。
その時…
パン!ディックは自らの頬に走った痛みに目を丸くする。
「今はそんなことをしている場合じゃないでしょ!?そんなこともわからないの!?」
フィリアが、ディックの頬を打ったのだった。
「……ッ!」
ディックは乱暴にゲイリーを突き放すと、駈け出して行った。
「あ、あの…」
不安そうにフィリアを見るモモ。
「ごめんね…」
フィリアには、ただ曖昧に謝ることしか出来なかった。
忌々しそうに襟元を正すゲイリーと、唖然とするネルネ、ミランダ。
そんな中、一人ギデオンは行方不明となった自らの部下のことを考えた。
(ナギサカ君、無事でいてくれ…!必ず君を連れ帰る!)
ああ、これほどまでに、自らの無力さを感じたことがあっただろうか…
(祈ることしか出来ないのか、我々は…!)
カナリヤの一同は、戦場を見つめながら、ただただ祈ることしか出来なかった。
フィリア・シュードは地下遺跡ポイントで起こっている戦いにいち早く気づいた。
前進をやめ、停滞するカナリヤ。
「一体何が起きているんだ…」
顔を曇らせるギデオン。
モモは不安そうに怯え、ヴァイスは相変わらず黙っている。ミランダは焦り、ディックは息をのんだ。
「何てことだ…デイヴとナギサカさんは、この状況で一体…」
フィリアが呟く。
その場の全員が、あまり良くない結末を想像する他なかった。
「クソッ…!」
突然ディックが、ゲイリーの胸倉を掴み怒鳴る。
「何であの時止めた!」
ひっ、小さく言い怯えるゲイリー。弁明を始める。
「わ、私は、皆の安全を考えて…」
「やめなよ、中尉」
たしなめるネルネ。しかしディックはネルネの手を払うと、ゲイリーを殴ろうと拳を振り上げる。
その時…
パン!ディックは自らの頬に走った痛みに目を丸くする。
「今はそんなことをしている場合じゃないでしょ!?そんなこともわからないの!?」
フィリアが、ディックの頬を打ったのだった。
「……ッ!」
ディックは乱暴にゲイリーを突き放すと、駈け出して行った。
「あ、あの…」
不安そうにフィリアを見るモモ。
「ごめんね…」
フィリアには、ただ曖昧に謝ることしか出来なかった。
忌々しそうに襟元を正すゲイリーと、唖然とするネルネ、ミランダ。
そんな中、一人ギデオンは行方不明となった自らの部下のことを考えた。
(ナギサカ君、無事でいてくれ…!必ず君を連れ帰る!)
ああ、これほどまでに、自らの無力さを感じたことがあっただろうか…
(祈ることしか出来ないのか、我々は…!)
カナリヤの一同は、戦場を見つめながら、ただただ祈ることしか出来なかった。
光が、ドルダを包む。時代の刹那に輝く光が…
ビームフィールドを纏い、ドルダは真っ直ぐドルチェへと向かう。
「フッ…そういうこと…」
ドルダのビームソードと、ドルチェのビームスコップが火花を散らす。
「やはり、あなたは失敗作だわ、シンシア!“DOLL”としての使命を見失うあなたに、ドルダは相応しくない!」
一見華奢に見えるドルチェ。しかし、そのパワーはドルダと比べて遜色のないものであった。
「…ッ!」
顔を歪めるシンシアに、ニヤつくエリス。
「歯向かおうというの!?この私に!?あなたの新しい“姉”に!?“家族”に!?」
シンシアは、一瞬だけ戸惑う。「家族」という言葉に反応したのだった。
しかしすぐに気を取り直し、強い瞳でドルチェを見据える。
「関係、ない」
静かな、強い意志が感じられる。
「私は…私の為に…お姉ちゃんの為に、戦うの!」
ビームスコップを弾いたドルダは、腹部のビームキャノンを収束させ、ドルチェに放つ。
「くっ…!」
エリスの顔が、焦りに支配される。
ビームキャノンがドルチェの右肩を掠め、大きな隙が出来る。
ドルダはそのままビームソードを構え、ビームフィールドを展開したまま突進する。
「はああああぁぁ!」
叫ぶシンシア。ビームソードを、ビームスコップが再び迎える。
一方、ガンダムマルスに乗ったアレスは…
(クランを、守らなければ…)
真っ先に考えたことは、唯一の肉親とも呼べる存在である、クランを助けることであった。
(そうだ、あの時とは違うんだ…俺が、クランを守る!)
ガンダムマルスは、その力を振り絞り、ドルチェに向けて再びファンネルを放つ。
四基しかないそれは、変則的な動きでドルチェの元へと向かう。
「!」
エリスの鋭い眼光が、マルスのファンネルを捉える。
シールドファンネルが、マルスのカメラファンネルのうちの二基とぶつかり合う。
そしてシンシアも、マルスのファンネルを自らへの攻撃と判断したのか、ビームフィールドで対応し、空いた方の手でマルスに向けてバスターライフルを放つ。
「くっ!」
バスターライフルの閃光を避けたマルスは、ドルダとファンネルに応戦しているドルチェへと突っ込む。
「俺が…俺が!」
四刀流の構えで、ドルチェに飛びかかる。
驚愕のエリス。
「クランを、助ける!」
シンシアではなく、クランの名を叫び、ドルチェの体を強く打った。
「くっ…ああああああ!」
吹っ飛ばされるドルチェ。中破もしていないが、今の一撃で戦闘を続行できる状態ではなくなったようだ。
(ここまでか…!厄介なことになったわねッ…!)
エリスが小さく舌打ちするのと同時に、デイヴが再び身を乗り出し、拡声器のスイッチを押す。
「デイヴ!何を…」
「聞こえるか!」
「「!」」
同時に反応を示す、クランとアレス。
「もうこんなことはやめよう!俺達が、これ以上争ってどうなるってんだ!」
クランは、その声を思い出す。
二年前の、テロリズム・イヤーの悲劇。
ガンダムドルチェに蹂躙され、命を落とした家族。
けれど、そんな中、最後まで諦めずに自分と弟を救ってくれた軍人…
「あなた…デイヴィッド・リマー、さん…?」
答えが返ってきたことに、嬉々とするデイヴ。
「!そうだ!君は、クラン・R・ナギサカだろ!?」
「ええ!」
「貴様…!」
アレスは、デイヴの声がドルチェから聞こえたことに憤る。
「貴様が何故、その機体に乗っている!!」
「!」
再びドルチェに攻撃を加えようとするマルス。
「やめて!」
ビームサーベルを構えたマルスを、ドルダが羽交い締めにする。
「答えろ!貴様が何故、その機体に乗っている!」
「答えろも何も…いきなりコイツが現れて俺をこん中に入れやがったんだよ!」
律儀に答えるデイヴ。ひろしとは違った。
(デイヴィッド・リマー…どこまで俺をバカにするつもりだ!?)
表情を険しくするアレス。
しかし、アレスは心の何処かで知っていた。
二年前の自分の弱さの全てを、デイヴへの怒りとしてぶつけている、己の弱さを…
ビームフィールドを纏い、ドルダは真っ直ぐドルチェへと向かう。
「フッ…そういうこと…」
ドルダのビームソードと、ドルチェのビームスコップが火花を散らす。
「やはり、あなたは失敗作だわ、シンシア!“DOLL”としての使命を見失うあなたに、ドルダは相応しくない!」
一見華奢に見えるドルチェ。しかし、そのパワーはドルダと比べて遜色のないものであった。
「…ッ!」
顔を歪めるシンシアに、ニヤつくエリス。
「歯向かおうというの!?この私に!?あなたの新しい“姉”に!?“家族”に!?」
シンシアは、一瞬だけ戸惑う。「家族」という言葉に反応したのだった。
しかしすぐに気を取り直し、強い瞳でドルチェを見据える。
「関係、ない」
静かな、強い意志が感じられる。
「私は…私の為に…お姉ちゃんの為に、戦うの!」
ビームスコップを弾いたドルダは、腹部のビームキャノンを収束させ、ドルチェに放つ。
「くっ…!」
エリスの顔が、焦りに支配される。
ビームキャノンがドルチェの右肩を掠め、大きな隙が出来る。
ドルダはそのままビームソードを構え、ビームフィールドを展開したまま突進する。
「はああああぁぁ!」
叫ぶシンシア。ビームソードを、ビームスコップが再び迎える。
一方、ガンダムマルスに乗ったアレスは…
(クランを、守らなければ…)
真っ先に考えたことは、唯一の肉親とも呼べる存在である、クランを助けることであった。
(そうだ、あの時とは違うんだ…俺が、クランを守る!)
ガンダムマルスは、その力を振り絞り、ドルチェに向けて再びファンネルを放つ。
四基しかないそれは、変則的な動きでドルチェの元へと向かう。
「!」
エリスの鋭い眼光が、マルスのファンネルを捉える。
シールドファンネルが、マルスのカメラファンネルのうちの二基とぶつかり合う。
そしてシンシアも、マルスのファンネルを自らへの攻撃と判断したのか、ビームフィールドで対応し、空いた方の手でマルスに向けてバスターライフルを放つ。
「くっ!」
バスターライフルの閃光を避けたマルスは、ドルダとファンネルに応戦しているドルチェへと突っ込む。
「俺が…俺が!」
四刀流の構えで、ドルチェに飛びかかる。
驚愕のエリス。
「クランを、助ける!」
シンシアではなく、クランの名を叫び、ドルチェの体を強く打った。
「くっ…ああああああ!」
吹っ飛ばされるドルチェ。中破もしていないが、今の一撃で戦闘を続行できる状態ではなくなったようだ。
(ここまでか…!厄介なことになったわねッ…!)
エリスが小さく舌打ちするのと同時に、デイヴが再び身を乗り出し、拡声器のスイッチを押す。
「デイヴ!何を…」
「聞こえるか!」
「「!」」
同時に反応を示す、クランとアレス。
「もうこんなことはやめよう!俺達が、これ以上争ってどうなるってんだ!」
クランは、その声を思い出す。
二年前の、テロリズム・イヤーの悲劇。
ガンダムドルチェに蹂躙され、命を落とした家族。
けれど、そんな中、最後まで諦めずに自分と弟を救ってくれた軍人…
「あなた…デイヴィッド・リマー、さん…?」
答えが返ってきたことに、嬉々とするデイヴ。
「!そうだ!君は、クラン・R・ナギサカだろ!?」
「ええ!」
「貴様…!」
アレスは、デイヴの声がドルチェから聞こえたことに憤る。
「貴様が何故、その機体に乗っている!!」
「!」
再びドルチェに攻撃を加えようとするマルス。
「やめて!」
ビームサーベルを構えたマルスを、ドルダが羽交い締めにする。
「答えろ!貴様が何故、その機体に乗っている!」
「答えろも何も…いきなりコイツが現れて俺をこん中に入れやがったんだよ!」
律儀に答えるデイヴ。ひろしとは違った。
(デイヴィッド・リマー…どこまで俺をバカにするつもりだ!?)
表情を険しくするアレス。
しかし、アレスは心の何処かで知っていた。
二年前の自分の弱さの全てを、デイヴへの怒りとしてぶつけている、己の弱さを…
『助けてよ、軍人さん!お願いだから、僕はどうなってもいいから…!』
『ダメだ!ここにいたら巻き込まれる!君と彼女を連れて逃げるぞ!』
『でも、シンシアが…!』
『済まない…!今は君達の命の方が、大事だ…!』
『シンシア、シンシアぁっ!』
『シンシア!姉さん!』
『お姉ちゃん!』
ドドドドド…崩れ落ちる建物が、生者と死者を無情にも分けて行った…
(ほらね、デイヴ)
再び笑う全ての元凶。
(あなたは、逃れられないの。だから今アレスに向けてそんなことを言っても無駄なのよ)
エリスはそう思いながら、デイヴに気づかれないようにロングレンジビームライフルを最大出力で、撃つ準備をする。
(イタチの最後っ屁ってヤツね。あんまり好きじゃないんだけど)
ドルチェが発射体勢に入る。
「「「「!」」」」
エリス以外の全員が、目を見張る。
「チャージ完了!それでは皆様、良い夢を♪」
ドォォォォォォォ!
光の渦が、全てを飲み込んでいく…
『ダメだ!ここにいたら巻き込まれる!君と彼女を連れて逃げるぞ!』
『でも、シンシアが…!』
『済まない…!今は君達の命の方が、大事だ…!』
『シンシア、シンシアぁっ!』
『シンシア!姉さん!』
『お姉ちゃん!』
ドドドドド…崩れ落ちる建物が、生者と死者を無情にも分けて行った…
(ほらね、デイヴ)
再び笑う全ての元凶。
(あなたは、逃れられないの。だから今アレスに向けてそんなことを言っても無駄なのよ)
エリスはそう思いながら、デイヴに気づかれないようにロングレンジビームライフルを最大出力で、撃つ準備をする。
(イタチの最後っ屁ってヤツね。あんまり好きじゃないんだけど)
ドルチェが発射体勢に入る。
「「「「!」」」」
エリス以外の全員が、目を見張る。
「チャージ完了!それでは皆様、良い夢を♪」
ドォォォォォォォ!
光の渦が、全てを飲み込んでいく…
「何て、ことだ…!」
目の前の情景に、絶望するフィリア。
「そん…な…」
肩の力を抜かし、崩れ落ちるミランダ。
驚愕の表情を浮かべたまま、固まるヴァイス。
体の震えが止まらず泣き出すモモ。
ギデオンは、その拳をふるふると震わせている。
目の前の情景に、絶望するフィリア。
「そん…な…」
肩の力を抜かし、崩れ落ちるミランダ。
驚愕の表情を浮かべたまま、固まるヴァイス。
体の震えが止まらず泣き出すモモ。
ギデオンは、その拳をふるふると震わせている。
綺麗な景色だった。
まるで、夢の中でしか見ることのできないような、それは綺麗な。
綺麗なものに絶望することが、ある。
すべてを奪われたカナリヤの面々は、静かに涙を流すしかなかったのだった。
まるで、夢の中でしか見ることのできないような、それは綺麗な。
綺麗なものに絶望することが、ある。
すべてを奪われたカナリヤの面々は、静かに涙を流すしかなかったのだった。
深い深いまどろみの底で、見た夢。
それは、決して開けてはならない、パンドラの箱…
それは、決して開けてはならない、パンドラの箱…
一人の少女が、悠久の時を眠る。
初雪のように白い肌に咲き誇るは、薔薇のように美しい唇。
少女には恐らく感情というものはない。眠ってはいるのだが、目を覚ましたとて、美の権化がただ在るだけだという印象を与える。
あまりの美しさに、そっと触れようと手を伸ばす。
決して遠くはない距離にいる少女に触れるには、少しの時があれば十分だろう。
しかし、あまりにも遠い。あまりにも永い。
その時間さえ愛おしく思えるほどの美しさ…
そして、指先が少女の面を捉えた刹那…
初雪のように白い肌に咲き誇るは、薔薇のように美しい唇。
少女には恐らく感情というものはない。眠ってはいるのだが、目を覚ましたとて、美の権化がただ在るだけだという印象を与える。
あまりの美しさに、そっと触れようと手を伸ばす。
決して遠くはない距離にいる少女に触れるには、少しの時があれば十分だろう。
しかし、あまりにも遠い。あまりにも永い。
その時間さえ愛おしく思えるほどの美しさ…
そして、指先が少女の面を捉えた刹那…
世界が、崩壊した。
………
以上で、運命の序曲における役者達の邂逅は、ひとまず区切りをつけることとする。
これからは、「夢のあと」に聞こえる「世界の声」に、耳を傾けていくことにしよう。
以上で、運命の序曲における役者達の邂逅は、ひとまず区切りをつけることとする。
これからは、「夢のあと」に聞こえる「世界の声」に、耳を傾けていくことにしよう。
七話 終 八話に続く