――歴史は繰り返す。
はじまりの人々は、微笑んで別れた。いつか、再びまみえるとき、互いに抱擁することを約束して。
ある者たちは南へ、ある者たちは東へ、ある者たちは北へ、ある者たちは海の向こうへと、それぞれの約束の地を求め旅立った。
幾千、幾万もの年月が過ぎて、彼らは再会した。
約束は破られた。
握手ではなく剣と槍が、言葉ではなく毒の矢が交わされた。
男たちは剣を、女たちは盾をとった。そして老人たちは毒杯を。
子供たちは喉笛を噛み合い、馬たちは己の流した血潮の海で溺死した。
再会した彼らは、殺し合いを始めた。
――歴史は繰り返す。
つかの間の平和を経て、人々は再び敵味方に別れて殺し合う。殺し合いの間に、世界は絶えず変転し、武器は絶えず進歩する。
――歴史は繰り返す。
しかし人類は強大になり過ぎた。強大な力は、いっそう強大な力を生じさせ、ついに人々は、自分自身、人類そのものを殺し尽くせるまでの力を手に入れてしまった。
――もはや、歴史は繰り返せなかった。
はじまりの人々は、微笑んで別れた。いつか、再びまみえるとき、互いに抱擁することを約束して。
ある者たちは南へ、ある者たちは東へ、ある者たちは北へ、ある者たちは海の向こうへと、それぞれの約束の地を求め旅立った。
幾千、幾万もの年月が過ぎて、彼らは再会した。
約束は破られた。
握手ではなく剣と槍が、言葉ではなく毒の矢が交わされた。
男たちは剣を、女たちは盾をとった。そして老人たちは毒杯を。
子供たちは喉笛を噛み合い、馬たちは己の流した血潮の海で溺死した。
再会した彼らは、殺し合いを始めた。
――歴史は繰り返す。
つかの間の平和を経て、人々は再び敵味方に別れて殺し合う。殺し合いの間に、世界は絶えず変転し、武器は絶えず進歩する。
――歴史は繰り返す。
しかし人類は強大になり過ぎた。強大な力は、いっそう強大な力を生じさせ、ついに人々は、自分自身、人類そのものを殺し尽くせるまでの力を手に入れてしまった。
――もはや、歴史は繰り返せなかった。
グレゴリオ暦末期である。
愛と平和の名の下に単一の情動へと向かうべく抑圧されていた人々の感情が、レイシズムとして燃え上がった。
いかに後の世の歴史家がこきおろそうとも、その時代に生きる人々にとってそれは、思想のための戦いであった。
倫理は諸宗教の共通項にあらず。諸宗教は単一の倫理の表現にあらず。信仰とは道徳の手段にあらずして目的なり。
白は白であり、黒は黒であり、黄は黄である。
歴史も自然も飛躍しない。まだら模様などありえない。群へと溶解するくらいなら、限りなく純粋な個でありたい。
それは平等を拒み、安楽を、浮薄を、阿片を拒む意志であった。
もはや生の目的は飲酒と放蕩と伊達気取りではない。
宣伝と博愛と逃避でもありえない。無なるものでは無論ない。
人々は再び目を開け、口を結び、耳を澄まし、武器を手に求め始めた。
孤独に耐えうる精神を取り戻すため――
出来合いでない友愛を手にするため――
法則と制度と生殖とへの屈従という本能に打ち勝ち、新たな意志の自由を創り出すため――
――人類は、あえて歴史を繰り返した。
結論から言おう。このグレゴリオ暦最後の世界戦争で、一つの種族が死に絶えた。
黄禍と呼ばれ、世界全体に浸透していた民族である。
多数の憎悪は共通の敵――大衆なるものの御前に捧げる生け贄――を求め、諸国家は地球に増えすぎたその民族を、人類共通の敵と定めて武器をとった。
各地で赤狩り、黄狩りが行われ、信仰と殺戮の波はその民族とよく似た民族をも巻き込み、世界中に伝播した。
結果、ついにその民族は滅び、海豚と鯨が大量発生したのである。
こうして半数以上を失った人類は、その戦争で得た技術力で宇宙へと進出し、グレゴリオ暦は終わりを告げた。
百年の時が流れた。
宇宙暦100年――歴史は再び繰り返す。
テロ組織NGP(ネオグリーンピース)のコロニー襲撃事件の最中、一体のMSが目撃された。
連邦軍にもNGPにも与せず、宇宙を駆け巡る黄色いMS(モビルスーツ)
ガンダムと呼ばれる伝説的なMSに類似したそれは、左腕に固定したナイフのような武器で連邦軍とNGPのMSを一体一体貫いては撃墜し、貫いては撃墜して去って行く。
その動きを封じようとMSたちが捨て身で体当たりしても、肩やふくらはぎに生やされた鋭いトゲに、串刺しにされる始末である。
黄色い影が敵味方の区別なくMSを屠って行く光景が目に焼き付き、パイロットたちは争うことも忘れて、口々につぶやいた。
『黄禍……』
『黄禍だ……』
『黄禍(チャイニング)、ガンダム』
青年は傍受した通信を聞き、愉悦に口元を歪めた。
「チャイニングガンダム、チャイニング、チャイニングチャイニング、チャイニングガンダムか……いいねぇ。いいじゃないか。素敵だ。最っ高のネーミングだ!
まさしくこいつの! この人民の! この革命の剣にふさわしい名だ!
おいシャオ! シャオ・リーベン!」
サブウインドウが開き、黒髪の儚げな容貌の少女が映し出される。
「今の聞いたろ? チャイニングだってよ!
気に入った! こいつは今日からチャイニングガンダムだ! チャイニングガンダムで登録し直せ!
そして愚民どもに教えてやれ! 地球だろうが月だろうがコロニーだろうが火星だろうがお茶の間だろうが、全宇宙に放送してやるのさ!
革命……そう! 革命だ! 貴様らのしみったれた文化の、大革命が始まるとな!
チャイニングガンダム――この黄禍が! 黄色い悪魔が! 貴様ら穴蔵の白坊主と宇宙ぼけした黒坊主どもに、たんまり引導をくれてやると!」
少女はこくんと頷いた。
「ィよーしよしよし! いいこだシャオぅ! こいつら殺っちまったらァ、たぁんとナデナデしてやるからなァ!
――鮭をスモークしておけ! 昼食には帰るッ!」
通信を終えてチャイニングガンダムが突進する。もはや連邦軍とNGPは休戦し、狙いをチャイニングガンダム一機に絞っている。
「っふ。いいぜぇ……いいぜいいぜェ! 素ん晴らしいぜェッ!」
弾丸の雨をかいくぐり、すれ違いざまに左腕のブリッツ・ダガー(雷公錫)を一閃する。
コックピットブロックを穿つと同時に謎の電光を流し込み、中のパイロットを直接に焼き殺す。
接触回線では断末魔が最後まで聞き取れない。しかし精神の限界まで広げられた想像力の翼は、克明にも克明なパイロットの今際の際の幻像を、青年の脳裏に繰り出していた。
「そうだよ! 怯えて竦んで漏らしちまえ! そして抗ってみろ! 力の限り足掻くがいいさ! お返しにこっちも全身全霊でェ――はずかしめてやる!」
これは、アルーアル・モータクトゥスという――多少精神を患っている――革命闘士の物語である。
愛と平和の名の下に単一の情動へと向かうべく抑圧されていた人々の感情が、レイシズムとして燃え上がった。
いかに後の世の歴史家がこきおろそうとも、その時代に生きる人々にとってそれは、思想のための戦いであった。
倫理は諸宗教の共通項にあらず。諸宗教は単一の倫理の表現にあらず。信仰とは道徳の手段にあらずして目的なり。
白は白であり、黒は黒であり、黄は黄である。
歴史も自然も飛躍しない。まだら模様などありえない。群へと溶解するくらいなら、限りなく純粋な個でありたい。
それは平等を拒み、安楽を、浮薄を、阿片を拒む意志であった。
もはや生の目的は飲酒と放蕩と伊達気取りではない。
宣伝と博愛と逃避でもありえない。無なるものでは無論ない。
人々は再び目を開け、口を結び、耳を澄まし、武器を手に求め始めた。
孤独に耐えうる精神を取り戻すため――
出来合いでない友愛を手にするため――
法則と制度と生殖とへの屈従という本能に打ち勝ち、新たな意志の自由を創り出すため――
――人類は、あえて歴史を繰り返した。
結論から言おう。このグレゴリオ暦最後の世界戦争で、一つの種族が死に絶えた。
黄禍と呼ばれ、世界全体に浸透していた民族である。
多数の憎悪は共通の敵――大衆なるものの御前に捧げる生け贄――を求め、諸国家は地球に増えすぎたその民族を、人類共通の敵と定めて武器をとった。
各地で赤狩り、黄狩りが行われ、信仰と殺戮の波はその民族とよく似た民族をも巻き込み、世界中に伝播した。
結果、ついにその民族は滅び、海豚と鯨が大量発生したのである。
こうして半数以上を失った人類は、その戦争で得た技術力で宇宙へと進出し、グレゴリオ暦は終わりを告げた。
百年の時が流れた。
宇宙暦100年――歴史は再び繰り返す。
テロ組織NGP(ネオグリーンピース)のコロニー襲撃事件の最中、一体のMSが目撃された。
連邦軍にもNGPにも与せず、宇宙を駆け巡る黄色いMS(モビルスーツ)
ガンダムと呼ばれる伝説的なMSに類似したそれは、左腕に固定したナイフのような武器で連邦軍とNGPのMSを一体一体貫いては撃墜し、貫いては撃墜して去って行く。
その動きを封じようとMSたちが捨て身で体当たりしても、肩やふくらはぎに生やされた鋭いトゲに、串刺しにされる始末である。
黄色い影が敵味方の区別なくMSを屠って行く光景が目に焼き付き、パイロットたちは争うことも忘れて、口々につぶやいた。
『黄禍……』
『黄禍だ……』
『黄禍(チャイニング)、ガンダム』
青年は傍受した通信を聞き、愉悦に口元を歪めた。
「チャイニングガンダム、チャイニング、チャイニングチャイニング、チャイニングガンダムか……いいねぇ。いいじゃないか。素敵だ。最っ高のネーミングだ!
まさしくこいつの! この人民の! この革命の剣にふさわしい名だ!
おいシャオ! シャオ・リーベン!」
サブウインドウが開き、黒髪の儚げな容貌の少女が映し出される。
「今の聞いたろ? チャイニングだってよ!
気に入った! こいつは今日からチャイニングガンダムだ! チャイニングガンダムで登録し直せ!
そして愚民どもに教えてやれ! 地球だろうが月だろうがコロニーだろうが火星だろうがお茶の間だろうが、全宇宙に放送してやるのさ!
革命……そう! 革命だ! 貴様らのしみったれた文化の、大革命が始まるとな!
チャイニングガンダム――この黄禍が! 黄色い悪魔が! 貴様ら穴蔵の白坊主と宇宙ぼけした黒坊主どもに、たんまり引導をくれてやると!」
少女はこくんと頷いた。
「ィよーしよしよし! いいこだシャオぅ! こいつら殺っちまったらァ、たぁんとナデナデしてやるからなァ!
――鮭をスモークしておけ! 昼食には帰るッ!」
通信を終えてチャイニングガンダムが突進する。もはや連邦軍とNGPは休戦し、狙いをチャイニングガンダム一機に絞っている。
「っふ。いいぜぇ……いいぜいいぜェ! 素ん晴らしいぜェッ!」
弾丸の雨をかいくぐり、すれ違いざまに左腕のブリッツ・ダガー(雷公錫)を一閃する。
コックピットブロックを穿つと同時に謎の電光を流し込み、中のパイロットを直接に焼き殺す。
接触回線では断末魔が最後まで聞き取れない。しかし精神の限界まで広げられた想像力の翼は、克明にも克明なパイロットの今際の際の幻像を、青年の脳裏に繰り出していた。
「そうだよ! 怯えて竦んで漏らしちまえ! そして抗ってみろ! 力の限り足掻くがいいさ! お返しにこっちも全身全霊でェ――はずかしめてやる!」
これは、アルーアル・モータクトゥスという――多少精神を患っている――革命闘士の物語である。
起動四川士Cガンダム
「肌が黄色くて悪いか! 俺は人間だよ!」
「鯨や海豚は賢いからさぁ、殺しちゃーだめなんだよなぁ。
わかるかなぁ? わかんないよなぁ、イエローは能なしだものな」
「鯨や海豚は賢いからさぁ、殺しちゃーだめなんだよなぁ。
わかるかなぁ? わかんないよなぁ、イエローは能なしだものな」
「貴方がアルーアル・モータクトゥスですわね。
わたくしはケン。ケン・チャナヨウ。見ての通りアジアンですわ」
「で、あんた何?」
「わたくしたちは差別されて来ましたわ」
わたくしはケン。ケン・チャナヨウ。見ての通りアジアンですわ」
「で、あんた何?」
「わたくしたちは差別されて来ましたわ」
「貴方だって、この世界は間違っていると、名を奪われ、不当に虐げられて来たわたくしたちには、未来永劫に謝罪と賠償を要求する権利があると、そう思っておられるのでしょう?」
「こっちくんな、関わんな」
「こっちくんな、関わんな」
「小娘? お前は」
「シャオ・リーベン……シャオでいい」
「肌が白いな」
「でもアジアン」
「シャオ・リーベン……シャオでいい」
「肌が白いな」
「でもアジアン」
「――黄禍大戦の数年前に、黄砂対策費という名目でとある軍事計画に莫大な資金が投入された。
リヴァイアサン計画――人工生命群の自己進化・自己生成によって、人知を越えるものを創造しようという計画。いわば現代のナノマシン技術を先取りしたオーパーツともいうべきもの」
「シャオの祖先は資金と技術を、アルの祖先は土地と資材を、そしてわたくしの祖先はそれらの両方を提供したということですわね」
リヴァイアサン計画――人工生命群の自己進化・自己生成によって、人知を越えるものを創造しようという計画。いわば現代のナノマシン技術を先取りしたオーパーツともいうべきもの」
「シャオの祖先は資金と技術を、アルの祖先は土地と資材を、そしてわたくしの祖先はそれらの両方を提供したということですわね」
「グレゴリオ歴2011年、共和国四川省成都市の遊園地に、突如として奇怪なモニュメントが建造された。
私の祖先の作り上げたモニュメントの意匠を、剽窃したようなモニュメント。
張りぼて同然のそれの建材がナノマシンの苗床として選ばれた。
つまりリヴァイアサン計画とは、『天郷2号』という張りぼてを、数十年の年月を経て究極兵器へと進化させる計画だった。誤算があるとすればそれは――」
「黄禍大戦。共和国人はほぼ全滅、ほかのアジアンもほとんどが核で焼かれちまって、鯨の餌だ」
「私の祖先は黄禍大戦の最中、密かに天郷2号を回収し、贋作(もとから贋作のようなデザインだけれど)とすり替えて、今度こそ誰にも知られない場所(もはや人の立ち入ることができない施設)に保管した。
今は無力でも、いつか再び、東アジア共同体の理想を掲げるときのために」
「わたくしの祖先は、一番はじめにその案を思い付かれ、皆に教えて差し上げた賢人でしてよ」
「天郷2号、俺になにを見せようというんだ……」
私の祖先の作り上げたモニュメントの意匠を、剽窃したようなモニュメント。
張りぼて同然のそれの建材がナノマシンの苗床として選ばれた。
つまりリヴァイアサン計画とは、『天郷2号』という張りぼてを、数十年の年月を経て究極兵器へと進化させる計画だった。誤算があるとすればそれは――」
「黄禍大戦。共和国人はほぼ全滅、ほかのアジアンもほとんどが核で焼かれちまって、鯨の餌だ」
「私の祖先は黄禍大戦の最中、密かに天郷2号を回収し、贋作(もとから贋作のようなデザインだけれど)とすり替えて、今度こそ誰にも知られない場所(もはや人の立ち入ることができない施設)に保管した。
今は無力でも、いつか再び、東アジア共同体の理想を掲げるときのために」
「わたくしの祖先は、一番はじめにその案を思い付かれ、皆に教えて差し上げた賢人でしてよ」
「天郷2号、俺になにを見せようというんだ……」
「そうか、そーかそーか、そうか……だったのか。俺は、このために……共産主義の理想――赤き清浄なる世界を実現するために生まれてきたのか」
「初出撃ですわ。アル、よろしくって?」
「ああ。戦い方も生き方も、こいつが全部教えてくれる」
「ああ。戦い方も生き方も、こいつが全部教えてくれる」
「やりすぎでしたわね、アル。今回のわたくしたちの目的はあくまで示威、虐殺ではなくってよ」
「似非ブルジョアがよく言うぜ。そんなに手柄が欲しいのか、キムチ女」
「似非ブルジョアがよく言うぜ。そんなに手柄が欲しいのか、キムチ女」
「アルは驕っていますわ……あら、どうかなさいまして? シャオ?」
「私には、彼がこわがっているように見える」
「こわがるですって?」
「ガンダムに心と体を作り替えられるという予感が、彼を粗暴にしているのかもしれない」
「私には、彼がこわがっているように見える」
「こわがるですって?」
「ガンダムに心と体を作り替えられるという予感が、彼を粗暴にしているのかもしれない」
「生きてるかおっさん? ……ったく、たかが野良猫のためになにやってんだか」
「なんせわたしは軍人だからな。軍人は市民を守るのが義務である。そして野良猫も市民である。そういうわけだ」
「頭、打ったんだな」
「なんせわたしは軍人だからな。軍人は市民を守るのが義務である。そして野良猫も市民である。そういうわけだ」
「頭、打ったんだな」
「あの紅いビームフラッグは……まさか連邦軍の――」
『黄禍の再来が、よもや君であったとはな……』
「――粛清の赤旗(レッドフラッグ)、レニ・スターリングとは! あんたこそ! あんただったのか!」
『戦場は広場ではない! 退け! 少年!』
「それでもしゃしゃり出るのが! 革命闘士ってもんだろう!」
『イデオロギーは死んだのだ!』
「資本主義の豚のいうことか!」
『黄禍の再来が、よもや君であったとはな……』
「――粛清の赤旗(レッドフラッグ)、レニ・スターリングとは! あんたこそ! あんただったのか!」
『戦場は広場ではない! 退け! 少年!』
「それでもしゃしゃり出るのが! 革命闘士ってもんだろう!」
『イデオロギーは死んだのだ!』
「資本主義の豚のいうことか!」
『――ここに至って私は人類が今後、地球を海豚と鯨に明け渡すべきだと確信したのである!
それがメルヴィ・レイを南極に落とす作戦の、真の目的である!
これによって海洋汚染の原因である地表に巣くう人非人たちを粛清する!
諸君! 海豚たちの新天地を開くため、鯨たちのための世界を実現するために、あと一息、諸君らの力を私に貸していただきたい。
そしてその日は、真のアースデイとして、蒼き正常なる宇宙の墓標に、永遠に刻まれるであろう!』
『ジーク! ポール! ワトンソ!』
『ジーク! ポール! ワトンソ!』
『ジーク! ポール! ワトンソ!』
それがメルヴィ・レイを南極に落とす作戦の、真の目的である!
これによって海洋汚染の原因である地表に巣くう人非人たちを粛清する!
諸君! 海豚たちの新天地を開くため、鯨たちのための世界を実現するために、あと一息、諸君らの力を私に貸していただきたい。
そしてその日は、真のアースデイとして、蒼き正常なる宇宙の墓標に、永遠に刻まれるであろう!』
『ジーク! ポール! ワトンソ!』
『ジーク! ポール! ワトンソ!』
『ジーク! ポール! ワトンソ!』
「チャイニングガンダムだけで手いっぱいだってのにNGPまで……大尉?」
「狂信者め。ついに始める気か」
「スターリング大尉は――」
『無論、わたしも阻止作戦に参加するさ。NGP総帥、ジャン・ジャック大佐とは今度こそ決着をつけねばなるまい」
「なんだあのMAは。海豚型をしている?」
『ゆけい! ジェノサイ・ドルフィン! 蒼き清浄なる世界のため、二本足の鉄獣どもを屠るがいい!』
「ぬるぬる、いや、ぬめぬめりした感覚とでもいうのか? サイコミュ的な精神波を、自ら発している? サイコミュの故障……違う、人じゃない? まさかあれに乗っているのは……」
『そう! 海豚である!』
「海豚だと?」
『人類は終わった種族なのだ。有史以来、人類は互いに争い嘘をつき、喉笛を切り飽きずここまで来てしまった。
もはや矯正など望めない。一切は過ぎ去った。一切が手遅れなのだ。
故に私ジャン・ジャックは、地球圏の支配権を、ヒトの上位種に譲渡すると宣言した』
「このサカナどもがそうだというのか! ずいぶんと生臭い、うさんな神サマだな!」
『赤き世界の少年よ、教えてやろう。
俗衆どもにとっては象徴などどんなものでもよいのだ。ヒトは信仰なしに生きることはできない。信仰のないヒトなどどこにもいない。
たとえそれが鰯の頭だったとしても、神を殺してしまった我々人類は、喜んで崇めるというものだ。
不合理故に我信ず、不合理故に我欲す、不合理故に我生きる!
そして私も、不合理故に人類の生得権を、鯨と海豚に明け渡すという理想を、信仰する!』
「なっ……未来予知だと! 海豚のくせに生意気な!」
「狂信者め。ついに始める気か」
「スターリング大尉は――」
『無論、わたしも阻止作戦に参加するさ。NGP総帥、ジャン・ジャック大佐とは今度こそ決着をつけねばなるまい」
「なんだあのMAは。海豚型をしている?」
『ゆけい! ジェノサイ・ドルフィン! 蒼き清浄なる世界のため、二本足の鉄獣どもを屠るがいい!』
「ぬるぬる、いや、ぬめぬめりした感覚とでもいうのか? サイコミュ的な精神波を、自ら発している? サイコミュの故障……違う、人じゃない? まさかあれに乗っているのは……」
『そう! 海豚である!』
「海豚だと?」
『人類は終わった種族なのだ。有史以来、人類は互いに争い嘘をつき、喉笛を切り飽きずここまで来てしまった。
もはや矯正など望めない。一切は過ぎ去った。一切が手遅れなのだ。
故に私ジャン・ジャックは、地球圏の支配権を、ヒトの上位種に譲渡すると宣言した』
「このサカナどもがそうだというのか! ずいぶんと生臭い、うさんな神サマだな!」
『赤き世界の少年よ、教えてやろう。
俗衆どもにとっては象徴などどんなものでもよいのだ。ヒトは信仰なしに生きることはできない。信仰のないヒトなどどこにもいない。
たとえそれが鰯の頭だったとしても、神を殺してしまった我々人類は、喜んで崇めるというものだ。
不合理故に我信ず、不合理故に我欲す、不合理故に我生きる!
そして私も、不合理故に人類の生得権を、鯨と海豚に明け渡すという理想を、信仰する!』
「なっ……未来予知だと! 海豚のくせに生意気な!」
「ガンダムがさ、言ってるんだよ。壊せ、壊せ、すべてを壊せってさ……これが、共和国人の積み重ねてきた血の記憶だ。
結局、共産主義なんて、誰もほんとうにしてはいなかったんだ。
血への渇望、ただ、それだけだ。
あれに乗ると、俺は引きずられてしまう。死せる共和国人の亡霊に、憎悪と嫉妬と欺瞞と残虐に、とりつかれてしまう。
俺が俺じゃなくなる。俺じゃなくなって、死せる共和国人たちに、ヒトの形をしたけだものになっちまうんだ。
怖い。俺が死ぬ。俺の体は死んでいないのに、俺が死ぬ。
イヤだ。俺は俺のままでいたい。怖い。怖いんだよ、シャオ……」
「たとえあなたがあなたでなくなる日が来るとしても、私は、あなたを支援する」
「シャオ、シャオ・リーベン……」
「支援すると、決めたのだから……」
「なぜ裏切った! ケン・チャナヨウ!」
『貴方が! わたくしの思い通りにならないから!』
「お前はお前のエゴを押しつけたいだけだ! 結局お前は誰も愛しちゃいないから、お前自身の映ったそいつが毒みたいに錯覚される!」
『愛がエゴ以外のなにものだというんですの! 赦し合う? 意志を尊重し合う? 自由を確保し合う? 気侭な欲望を黙殺し合う?
――そんなものは愛する能力も資格も持たない連中のいうことですわ! 脂ぎった寝床限りの口約束! 豚並みの肉欲を飾り立てて大威張りな、エゴすら持てない化粧猿の相互売淫――!』
「何っ、何をした!」
『……カウンターナノマシンを打ち込みましたわ、ガンダムを暴走させる。貴方とわたくしはガンダム自身から発せられるメガ粒子の檻の中で、砂へと分解されますのよ!』
「ええい! コントロールが!」
『いっしょにとけてゆきましょう、アル。砂になって、まじりあって、完全に一つのものになって、永劫に星の海を泳ぎ続けましょう。
そう……ずっと、いっしょですわ』
「チャイニングガンダムはァッ! 伊達なんだよ!」
『装甲をパージ? いえ、分解、四方に散った? 自ら量子化して、再構成したというんですの?』
「裏切り者の雌豚はァ、アルーアル・モータクトゥスが粛清する!」
『ひぃっ……!』
「帰ったら総括だ、キムチ女」
『……どう、して?』
「総括だと言った」
結局、共産主義なんて、誰もほんとうにしてはいなかったんだ。
血への渇望、ただ、それだけだ。
あれに乗ると、俺は引きずられてしまう。死せる共和国人の亡霊に、憎悪と嫉妬と欺瞞と残虐に、とりつかれてしまう。
俺が俺じゃなくなる。俺じゃなくなって、死せる共和国人たちに、ヒトの形をしたけだものになっちまうんだ。
怖い。俺が死ぬ。俺の体は死んでいないのに、俺が死ぬ。
イヤだ。俺は俺のままでいたい。怖い。怖いんだよ、シャオ……」
「たとえあなたがあなたでなくなる日が来るとしても、私は、あなたを支援する」
「シャオ、シャオ・リーベン……」
「支援すると、決めたのだから……」
「なぜ裏切った! ケン・チャナヨウ!」
『貴方が! わたくしの思い通りにならないから!』
「お前はお前のエゴを押しつけたいだけだ! 結局お前は誰も愛しちゃいないから、お前自身の映ったそいつが毒みたいに錯覚される!」
『愛がエゴ以外のなにものだというんですの! 赦し合う? 意志を尊重し合う? 自由を確保し合う? 気侭な欲望を黙殺し合う?
――そんなものは愛する能力も資格も持たない連中のいうことですわ! 脂ぎった寝床限りの口約束! 豚並みの肉欲を飾り立てて大威張りな、エゴすら持てない化粧猿の相互売淫――!』
「何っ、何をした!」
『……カウンターナノマシンを打ち込みましたわ、ガンダムを暴走させる。貴方とわたくしはガンダム自身から発せられるメガ粒子の檻の中で、砂へと分解されますのよ!』
「ええい! コントロールが!」
『いっしょにとけてゆきましょう、アル。砂になって、まじりあって、完全に一つのものになって、永劫に星の海を泳ぎ続けましょう。
そう……ずっと、いっしょですわ』
「チャイニングガンダムはァッ! 伊達なんだよ!」
『装甲をパージ? いえ、分解、四方に散った? 自ら量子化して、再構成したというんですの?』
「裏切り者の雌豚はァ、アルーアル・モータクトゥスが粛清する!」
『ひぃっ……!』
「帰ったら総括だ、キムチ女」
『……どう、して?』
「総括だと言った」
『来たか――チャイニングガンダム!』
「レニ・スターリング! 俺は俺自身の理想のために、あんたを討つ!」
『理想だと? 笑わせてくれる。もはや国民はイデオロギーのために戦争はしない。生活のために戦争を行うのだ。
この戦場を見るがいい、アルーアル。
連邦軍を構成するは食うに困った兵士たち。NGPを構成するは戦争請負会社の派遣社員たち。
革命戦士、思想のための闘士など一人もいない』
「だからどうした!」
『時代遅れだというのだ! 共産主義の亡霊め!』
「遅れてんのはてめぇらだ! 資本主義? 万人に対する万人の闘争だと?
武器と言葉はご立派だが、頭ん中は先祖帰り、原始人のままだろうが!」
『そんな理不尽な主張で――何? 押し負けた? パワーダウンか!』
『赤き世界の少年よ、貴様の理想をいってみろ』
「世界の地ならしさ、ジャン・ジャック。
すべての人民がたらふく食い、鯨飲し、互いを宣伝しあい、くたばることができる、白痴の、地上の楽園を作り上げることだ」
『俗物め。人間的な、あまりに人間的な空想だ』
「おまえらNGPはブルジョワだからさァ! 俗物暮らしのありがたみがわからねぇんだよ!」
『このような俗物を根絶すべく、私は剣をとったのだ!』
「やはり宗教は……阿片だ!」
「レニ・スターリング! 俺は俺自身の理想のために、あんたを討つ!」
『理想だと? 笑わせてくれる。もはや国民はイデオロギーのために戦争はしない。生活のために戦争を行うのだ。
この戦場を見るがいい、アルーアル。
連邦軍を構成するは食うに困った兵士たち。NGPを構成するは戦争請負会社の派遣社員たち。
革命戦士、思想のための闘士など一人もいない』
「だからどうした!」
『時代遅れだというのだ! 共産主義の亡霊め!』
「遅れてんのはてめぇらだ! 資本主義? 万人に対する万人の闘争だと?
武器と言葉はご立派だが、頭ん中は先祖帰り、原始人のままだろうが!」
『そんな理不尽な主張で――何? 押し負けた? パワーダウンか!』
『赤き世界の少年よ、貴様の理想をいってみろ』
「世界の地ならしさ、ジャン・ジャック。
すべての人民がたらふく食い、鯨飲し、互いを宣伝しあい、くたばることができる、白痴の、地上の楽園を作り上げることだ」
『俗物め。人間的な、あまりに人間的な空想だ』
「おまえらNGPはブルジョワだからさァ! 俗物暮らしのありがたみがわからねぇんだよ!」
『このような俗物を根絶すべく、私は剣をとったのだ!』
「やはり宗教は……阿片だ!」
「スターリングのおっさんか?」
『ゆけ! アルーアル・モータクトゥス。他人の意見など関係ない、
君は君自身の思想のために! 戦い! 生き! そして死ぬがいい!』
『粛清の赤旗! レニ・スターリング!』
『そうとも! 我が宿敵ジャン・ジャック!
地球がだめになるかならないかのこの時こそ、我々人間の理想が、貴様ら天使の理想を打ち砕くのだ!』
『ジェノサイ・ドルフィンよ! チャイニングガンダムに集中砲火!』
『やらせんさ!』
「何やってんだおっさん!」
『ここは私がくい止めると言った! さっさとゆけ! そしてメルヴィ・レイを破壊するのだ、アルーアル君!
わが同志、アルーアル・モータクトゥス君!』
『逃がさん!』
『追わすか!』
『ゆけ! アルーアル・モータクトゥス。他人の意見など関係ない、
君は君自身の思想のために! 戦い! 生き! そして死ぬがいい!』
『粛清の赤旗! レニ・スターリング!』
『そうとも! 我が宿敵ジャン・ジャック!
地球がだめになるかならないかのこの時こそ、我々人間の理想が、貴様ら天使の理想を打ち砕くのだ!』
『ジェノサイ・ドルフィンよ! チャイニングガンダムに集中砲火!』
『やらせんさ!』
「何やってんだおっさん!」
『ここは私がくい止めると言った! さっさとゆけ! そしてメルヴィ・レイを破壊するのだ、アルーアル君!
わが同志、アルーアル・モータクトゥス君!』
『逃がさん!』
『追わすか!』
「俺が憎いか、チャイニング。憎いだろうよ。こんなコロニー落としは、お前が望んでいたことだからな。
だが、お前の思い通りには、させてやらん。
……そうか、憎いか、もっとだ。もっともっと憎めよ。
お前は憎しみを力にする。たとえお前が俺に向けた憎しみでも、俺自身の力になる。
この石っころ……メルヴィ・レイをぶっ壊す力になる」
だが、お前の思い通りには、させてやらん。
……そうか、憎いか、もっとだ。もっともっと憎めよ。
お前は憎しみを力にする。たとえお前が俺に向けた憎しみでも、俺自身の力になる。
この石っころ……メルヴィ・レイをぶっ壊す力になる」
「――俺の思想が真っ赤に染まる! ブルジョア倒せと轟き叫ぶ!」
「怒りと、妬みと、友愛のォッ!」
「チャイニングゥフィンガーソードッ!」
『ジャン・ジャック、お前たちの、ポール・ワトンソの理想は敗れたよ……』
『ああ……しかし、この光は美しい』
『ああ……しかし、この光は美しい』
チャイニングガンダム大勝利! 希望の未来へ革○ゴー!
完