161 名前:通常の名無しさんの3倍投稿日:2008/05/25(日) 18:12:14 ID:???
パラレルパラレルルルルルルー
ガンダム家の団欒の一時。
姿が無い兄弟がいるのも、この大家族では仕方がないとは言え、
この日は少し様子が違うよう。
兄弟たちも、お客さんも、食い入るようにそろってテレビを見ている。
何しろ大人数だから、普段はテレビが点いてても見れない者が出るのだが、
キラが持ち込んだハンディコンピューターまで使って同じ番組を見ようとしていた。
刹那「ロラン兄さん、始まったようだ」
ロラン「はーい、今行きますよー」
刹那の声に応え、洗い物をしていたロランがパタパタとスリッパを鳴らしつつその中に加わる。
その番組は、アマチュアのバンドが出場して、なにやらするとちょっとした小遣い稼ぎになるらしい。
ジュドーが話を持ち込み、カミーユ、シーブック、ウッソがそれに乗る形で応募、選考を突破して、
どうやら今のところ、順調に進んでいるらしい。
DJ『まずはギター1!』
シン「あ、カミーユ」
DJ『そのギターテクは第二のイングヴェイか?
いや、俺こそ最速!スピードキング、ラファエ~ロ!』
指先が見えないほどの高速プレイを魅せるカミーユ。
ギンガナム「ほう、大したスピードだ…」
DJ『続いてギター2!』
ハロ「ウッソ! ウッソ!」
DJ『Vツインはダテじゃねえ!ベビーフェイスがクールに極める!
ダブルドラゴン、ドナテロ!』
一つのボディから、二本のネックが伸びるツインギターをかき鳴らすウッソ。
ガロード「とりあえず、鳴ってるみたいだな…」
アムロ「心配か?」
ガロード「そりゃあ、俺とジュドーが作ったマ改造ギターが、TVに映るんだからねぇ…
プレイ中に壊れなきゃいいけど」
DJ『次はドラムス!』
プル「ジュドーだ!ジュドーが映ったよ
プルツー!!」
プルツー「判った、判ったから落ち着いて、姉さん」ユサブラナイデ
DJ『刻むビートにハートが震える!
サンライトイエロー、ミケランジェッロ!』
ロラン「えっと………どういう意味なんでしょうか…」
シロー「流せ」
DJ『そしてこの凄腕メンバーを纏めるベェェェェイスッ!』
ドモン「むっ?」
DJ『不死身のリズムマシーン、
バンドマスター、レ・オ・ナ・ル・ド!』
ドモン「シーブックのヤツ、怪我をしてないか?」
ロラン「えっ?」
ガロード「ホントだ!左手、包帯してる!」
アムロ「なんだと?」
DJ『そして最後に!』
キラ「え? メンバーって4人じゃ…」
DJ『最後の5週目で超~クールな秘密兵器の投入だ!
セクシークイーン・エイプリル!』
おへそも生足もむき出しで、扇情的なレザーの衣装を纏いしは…
兄弟たち「「「「「セシリー!?」」」」」
162 名前:通常の名無しさんの3倍投稿日:2008/05/25(日) 18:18:00 ID:???
収録スタジオの観客席を埋める聴衆は、まだざわめいていた。
にわか人気とは言え、カミーユとウッソが目当ての客だけに、全体的には女性の方が多かったが、
それでも長身のセシリーが舞台に現れた瞬間の歓声は暴力的はほどだった。
「うわ~、誰だ、あれ?」
「イロっぺ~~♪」
「足ながっ!」
「うう、女は胸じゃないのよっ!」
「なんかレオ君と仲良さげじゃない?」
「つーか、レオナルド、左手怪我してないか?」
「あん?」
「グラス貸せ」
「袖で隠してるけど、包帯巻いてるみたいだな…それも、けっこう分厚い…」
ざわ、ざわ、ざわ…
シーブック「大丈夫かい?セシリー」
セシリー「あら、私はエイプリルよ?」
シーブック「セシ…」
セシリー「そういうことにしておいて。“エイプリル”って役になってないと立ってられそうにないから」
困ったような笑顔に、シーブックは何も言えなくなる。
セシリー「それに、大丈夫じゃないのはあなたのほうでしょ?」
シーブック「まぁ…それはそうなんだけど…俺の場合は、俺の都合でやってるだけだから…」
セシリー「お兄ちゃんは大変ね」クスッ
励ますつもりが、どう見ても余裕があるのはセシリーの方だった。
無意識に頬を掻こうと左手を上げ、シーブックは痛みに顔をしかめる。
カミーユ「ジュドー、行けそうか?」
ジュドー「俺は、おっけーだけど…ホントにやるのか?」
カミーユ「シーブックがやるって言ってるんだ。普段おとなしいくせに、
言い出したら絶対に止まらないヤツだって、お前も知ってるだろう」
ウッソ「仕方ありませんよ。ここで止めたら、
アルとシュウト、この先ずっと気にすると思うし」
ウッソの言葉に振り返る二人。
そしてその視線の先には、舞台の袖。
泣き腫らした目で、シャクティにしがみついてぐずっているアルとシュウトがいる。
ウッソの視線に気づいたシャクティが顔を上げ、微笑みを浮かべてうなずいた。
『がんばって』
声が届く距離ではないが、三人はシャクティの声を聞いた気がした。
カミーユ「こうなったら俺たちで二人を支えるしかないだろう。
さっきの打ち合わせどおり、メインのラインはウッソ、お前がやれ。
俺はサイドでリズムよりにやる」
ウッソ「あ、オープニングはカミーユ兄さんのソロで行きましょう。
そっちのほうがインパクトあると思うし。あとは、任せてください」
カミーユ「判った」
AD「そろそろ本番いきまーす!」
シーブック「よし!それじゃあ、みんな、いくぞ!」
「「「おうっ!」」」「はいっ」
163 名前:通常の名無しさんの3倍投稿日:2008/05/25(日) 18:18:59 ID:???
シーブックがスタンドからヤマハのベースギターを取り上げる。
それはストラップをボディだけではなく、左側をヘッドに繋げるように即席の改造が施されていた。
そのストラップを、セシリー…エイプリルが手に取った。
シーブックの首にストラップをかけ、そして………
ざわざわざわ
「なんだあれ…」
「き~~っ!レオ君にひっつきすぎ!」
「ひょっとして二人弾き?」
「まじかよ!」
一人がフレットを押さえ、一人が弦を弾く。
そんなプレイをするギタリストが皆無だった訳ではないが、どちらかと言えば余技、余芸の類のプレイである。
シーブック「みんながフォローしてくれる。セシ…エイプリルは落ち着いて押さえてくれればいい」
エイプリル「大丈夫、私のことは気にしないで。
私 が 貴 方 に 合 わ せ る か ら 」
シーブックに寄り添って立つ“エイプリル”は、両目を閉じると深呼吸を一つ。
自分が消えてゆく。
感覚が広がる。
風と、空気と…そして宇宙と溶け合う感覚…
恐怖はあった。
だが、傍らには、大好きな少年が立っていてくれる。
彼女は意識を、少年に重ね合わせる。
エイプリル「(繋がった…)」
この瞬間、彼女はエイプリルであり、セシリー・フェアチャイルドであり、そして、シーブック・アノーであった。
164 名前:通常の名無しさんの3倍投稿日:2008/05/25(日) 18:22:38 ID:???
エンドタイトル
心地よいまどろみの中から抜け出すと、見覚えのある天井があった。
セシリー「私の…へや?」
シーブック「セシリー…目が覚めたかい?」
セシリー「しーぶっく……なんだか、ぼーっとしてる…まだ、ゆめを見てるみたい…」
シーブック「随分気持良さそうに寝てたからね」
セシリー「そう? ………私、どうしたの?」
シーブック「………“力”を使いすぎて、プレイの後に倒れたんだ。
シャクティがあの場に居てくれて良かったよ…
でも、もう大丈夫だってテクス先生も言ってた。
あとは栄養をとって、ゆっくり休めばすぐ良くなるってさ」
セシリー「やぁねぇ…それじゃあ太っちゃう…」
シーブック「ははは…セシリーは少しくらい太っても、魅力的なのは変わらないと思うよ」
セシリー「うふふっ、ありがとー、シーブック…」
シーブック「じゃあ、俺、カロッゾさんにセシリーが目を覚ましたって言ってくる。
特製のパン粥食べれば、元気もでるさ」
セシリー「うん………ねぇ、シーブック」
シーブック「ん?」
セシリー「大好き」
おわり
最終更新:2013年09月16日 22:17