527 名前:カテキョ!-お留守番編- 1/5 :2008/08/05(火) 03:04:54 ID:???
カテキョ! -お留守番編-
ピンポーン
マリナ「こんにちは~マリナ・イスマイールです」
この夏、マリナがガンダム家の呼び鈴を鳴らすのももう何度目になるだろうか。
 暫くするとパタパタとスリッパの鳴る音が近づいてきて玄関のドアが開けられる。

 顔を出したのは刹那…今は彼女の教え子である。

 刹那「ガンダムだ、マリナ・イスマイール」
マリナ「ガンダムです、刹那・F・セイエイ君」

 刹那は微かな笑みを浮かべると彼女用のスリッパを出してくれる。
マリナは何時もの様に靴からスリッパに履き替えガンダム家へと上がり込む。
しかし、今日は何か何時と様子が違う…廊下を歩きながらその違和感の理由を考えていたマリナはその原因に気付く。
マリナ『そっか…今日は家の中が静かすぎるんだわ」
ガンダム家は近所でも有名な大家族。何時も誰かしらいて賑やかな声が響いている。
それが今日は火が消えた様な静かな静寂包まれていて、普段は聞こえない広間の大時計が時を刻む音すら聞こえる。

 広間の卓袱台には既に刹那の勉強道具が広げられている。どうやら今日の予習をしていたようだ。
マリナ「予習していてくれたの?刹那君。偉いわね」
 刹那「ガンダムだからな。それと…マリナ、二人きりの時は刹那でいい」

 刹那とマリナ…二人きりの時はお互い呼び捨てで呼び合っているのだが、
 誰か居るときはマリナが遠慮して君づけで刹那を呼んでいるのだった。
マリナ「二人っきり?他のご兄弟の方々はどうされたの?」
 刹那はマリナに一枚の便箋を渡す。
 其処にはロランの字で今日は用事で出かけなければいけないので勉強のある刹那だけ置いていく事、
 三時のおやつは適当に食べて欲しい事、夕飯までには戻る事等が書いてあった。

マリナ「成る程、判ったわ…刹那」
そういいながら刹那の隣に座ったマリナは刹那に手書きのメモを手渡して授業開始の言葉を口にする。
マリナ「刹那・F・セイエイ、此が本日のミッションプランです。マルヒトマルマルよりミッションを開始してください」
 刹那「刹那・F・セイエイ了解 此より作戦行動を開始する。…3,2,1,ミッションスタート」

そしていつものように先生と生徒として勉強が始まる。
 刹那が質問しマリナが答える以外はペンが紙を滑る音と時計の音、そして外で鳴く蝉の音しか聞こえてこない。
 刹那の集中力は並はずれており、授業中は全く私語や余所見はしない。
マリナは刹那の家庭教師をし始めてから何故刹那の成績が悪いのか何時も不思議に感じていた。
マリナ『この子は頭の回転も速いし理解力も応用力もある。何より乾いたスポンジのように教えた事をドンドンと吸収していく
    …確かにちょっと頑固なところはあるけど』
 刹那『何故だろう…マリナが教えてくれると凄く判りやすい…そして心地よい声の響き。
    学校のがなってばかりいる教師達のノイズとは雲泥の差だ…何時までもこの声を聞いていたい気になる…』

マリナの側にいると刹那は自分が少しずつ真のガンダムに近づいていけるのではないかという高揚感にも似た感情を覚える。
マリナの声が、言葉が、何時も感じている理想の自分と現実の自分の絶望的なギャップに対する苛立ちが少しずつ
和らいでいくような気さえしていた。
そしてあっという間に二時間近くが経過していた。


528 名前:カテキョ!-お留守番編- 2/5 :2008/08/05(火) 03:08:06 ID:???
時計を見たマリナは三時に近いことを確認すると刹那に話しかける。

マリナ「刹那…マルサンマルマルより60分間のブレイクタイムに入ります」
 刹那「了解…ミッションリポーズ、これより待機体勢に移行する」

そういうと刹那は大きく息を吐き出し姿勢を崩す。
マリナ「刹那…お疲れ様。今日はいつも以上に集中しているわね」
 刹那「今日の俺はトランザムモードだ…しかし何時も以上に疲労が蓄積したようだ」
そういいながら卓袱台に突っ伏す刹那。
マリナ「そう…じゃあ今日は特別にブレイクタイムを60分間に延長しましょうか」
マリナはそんな刹那に微笑みながら立ち上がると台所へと向かう。

マリナ「今日はロラン君がいないから私が何かおやつを作るわ…刹那は何が食べたい?」
 刹那「……マリナが作れるモノで良い」
マリナ「微妙に失礼な言葉よね、それって」
マリナはそれを聞いて冷蔵庫を開け中身を確認する。
マリナ「卵、バター、牛乳、小麦粉もあったし…パンケーキで良いかしら?」
 刹那「パンケーキはガンダムだ」
マリナ「ウフフ…了解~」
 刹那の間髪入れない答えに思わず吹き出したマリナは手早く割烹着を身につけると調理の準備を始める。
 刹那「マリナ…なにか介入行動出来ることはないか?」
マリナ「ふんふ~ん♪私に気を遣わなくていいからTVでも見ていて頂戴。 
    刹那…休めるときに休むのもガンダムマイスターの仕事でしょ」
マリナは振り返りもせず手際よくボウルに入れた卵と牛乳を物凄い勢いでかき混ぜ泡立たせてしまう。
そのまま少しの無駄もない動きで小麦粉とベーキングパウダーを合わせふるい入れて
再び腕の動きが見えないくらいの勢いでかきまぜ始める。

 刹那「ああ…了解した」
 刹那は言われたとおりにTVをつけるがどうにも台所のマリナが気になるのかチラチラと彼女のほうに目をやってしまう。
マリナは実に楽しそうに鼻歌を奏でながら調理を続けている。
 刹那はいけないいけないと思いつつもついついそのよく動く豊かなお尻へと視線を走らせてしまう。
刹那『ダメだ…俺のこの行動はガンダムではない…いやしかし…マリナもガンダムだ。
   ガンダムの性能を見極めるために細大漏らさず観察するのはガンダムマイスターとして正しい行為といえるのではないのか?』

刹那がそんな事を考えて悶々としている事など露知らず、マリナの料理はパンケーキをフライパンで焼く行程まで来ていた。

ピーンポーン

そこに玄関の呼び鈴が鳴響く。
マリナ「刹那…悪いけど出てくれないかしら?」
刹那「……」
マリナ「刹那?」
自らの思考に没頭していた刹那は二度目のマリナの呼びかけにようやく我に返ると返答する。
「ん?……済まないちょっと考え事をしていた。任務了解」

刹那はそういうと立ち上がり玄関へと向かう。
刹那「誰だ?氏名と用件を言え」
刹那はドア越しにいきなり切り出す。
???「…モニク・キャデラック。オリバーマイの職場の同僚だ。今日は彼の忘れ物を届けに来た」

529 名前:カテキョ!-お留守番編- 3/5 :2008/08/05(火) 03:12:31 ID:???
モニク・キャディラックは緊張していた。
 何度もコンパクトで自分の顔や髪型を見直し、服に付いた埃を払う。
 出撃前のMSを整備するメカニックもかくやと言う入念さだ。
モニク『落ち付けモニク…何度もシミュレートしたではないか。私はマイの忘れ物を届けに来た。
    マイは私が忘れ物を持ってきたことを感謝するはずだ。そして手土産のケーキを差し出す。
    マイは当然上がってお茶でもどうですか?と言う。そこで私は合法的にマイの家に上がり
    彼と差し向かいで親睦を深めるの事が出来る…完璧なプランだ』
そしてモニクは震える指に渾身の力を込め呼び鈴のボタンを押した。

ピンポーン

 ややあって扉越しに声が聞こえてくる
???「誰だ?氏名と用件を言え」

いきなりの紋切り的な質問に戸惑いながらもモニクは平静を装ってシミュレート通りに返答を開始する
 モニク「…モニク・キャデラック。オリバーマイの職場の同僚だ。今日は彼の忘れ物を届けに来た」
 直ぐに鍵が開けられ玄関のドアが開かれる。
 顔を出したのは浅黒い肌をしたぼさぼさ頭の少年だった。

 刹那「俺は刹那・F・セイエイ…オリバーマイの弟だ。マイ兄は只今留守にしているので用件は俺が承る」
モニクはその言葉を聞いて己の迂闊さに頭を抱えそうになってしまう。
モニク『何て事だ…あらかじめマイが在宅かどうか確認するという初歩的な事を忘れるなんて!!』
 刹那「マイ兄の忘れ物とは何だ?俺が渡しておこうか?」
モニクはその言葉に我に返るとなんとか平静を装って刹那に質問する。
モニク「オホン…オリバー・マイはいつ頃帰宅するのだろうか?」
 刹那「マイ兄からのミッションプランの提出は受けていない。よって何処に行ったのか、いつ帰ってくるのかは不明だ」
それを聞いてがっくりと肩を落とすモニク。
 刹那はそれを見て不思議そうな顔をする。
 刹那「マイ兄の職場の同僚なら携帯に電話して居所を尋ねれば済むだろう?」
それを聞くと更に落ち込むモニク。
モニク「ど…どうせ私は職場の同僚どまりでプライベートの携帯番号も教えて貰ってませよ…orz」

マリナ「刹那…パンケーキ出来たわよ~ あら、お客様?」
 刹那「マイ兄の同僚のモニカ・キャデラック。マイ兄の忘れ物を届けに来たそうだ」
マリナはそれを聞きながらモニカを見て一瞬で見抜く。

マリナ『この女性が手に持っているのは超高級スィーツで有名な00洋菓子店の外箱!
    となると中身は……是非 食 べ て み た い !』

モニク「…この方は刹那君の姉君で?」
 刹那「いや…彼女は」

マリナ「さぁさぁさぁさぁどうぞどうぞ!お暑い中を良くおいで下さいました」
マリナはそういいながらモニクを家の中に招き入れようとする。
モニク「あ、いや…私はこれで…」
マリナ「どーぞどーぞ立ち話も何ですし、丁度お茶にしようと思っていたところなんですよ」


530 名前:カテキョ!-お留守番編- 4/5 :2008/08/05(火) 03:16:06 ID:???そう言いながらマリナはモニクを強引に招き入れると客間へと連れて行ってしまう。
 刹那はマリナとの二人っきりの時間が終わってしまったことをちょっと残念に思いながらドアを閉め二人の後を追った。

 二人は広間に座ると簡単な世間話を始めた。
 同じ年頃のせいかやがて直ぐに意気投合しパンケーキやモニクの持ってきたケーキを食べながら
熱の入ったトークモードに突入していく。

しばらくして刹那は珍しく気を利かせ空になった二人のカップに紅茶のお代わりを入れるために台所へと向かう。
 刹那『そういえばこの前紅茶にブランデーとかアルコールを入れると美味しくなると言っていたな…』
そう考えついた刹那は台所の戸棚に入ってたアムロ秘蔵のウィスキーを紅茶の中にドボドボと注いだ。
 思えば此が失敗の始まりだった…。

 -二時間後-

ピンポーンピンポーンピンポーン

 シン「あれ~?何で誰も出てこないんだろ…まだ刹那がマリナさんに勉強教えて貰ってる時間だろうに」
 外出から帰ってきたシンは呼び鈴を何度ならしても誰も出てこない事に訝しみながら、
 郵便受けの下に貼り付けてあるスペアキーを使いドアを開ける

 シンは靴を脱ごうとして刹那の靴、マリナの靴の隣に見慣れぬハイヒールがアルのに気付く。
シン『来客か?そういや客間が賑やかだな…』
シンはそう思いながら客間の方に近づくにつれ辺りに漂う匂いに気付く。
シン「アルコールの匂いか…アムロ兄さんの来客かな?」
そう思いながら何の気無しに客間を除いたシンは予想外の光景に絶句してしまう。

 「酒クサ!つかなにやってんすか!?」

シンが見たモノは…据わった目で一升瓶をラッパ飲みしているマリナとグスグス涙ぐみながら
缶ビールをちびちび飲むモニカ、そしてその間に挟まれ正座している刹那の姿であった。

マリナ「だ~か~ら~私が貧乳に見えるのは周りに馬鹿でかい乳した女ばっかいるからなのよ~判る?刹那~」
 刹那「ガンダムだ」

モニク「だからね、マイったら全然あたしの気持ちに気付いてくれないのよ、酷いよね酷いと思うよね酷いと言いなさいよ刹那君」
 刹那「ガンダムだ」

そこで刹那がシンに気付く。
 刹那「……シン!」
シン「刹那…お、オレ用事思い出したから!」
そういって踵を返そうとするシンの脚に普段めったに見せない笑顔ですがりつく刹那。
 刹那「良く来たシン!さぁ一緒に正座しよう!」
シン「なんでだよ!」

マリナ「あら~シン君じゃない…ひっく…丁度良かったこっちいらっしゃいな~ヒック」
モニク「ふぇ~ん…シン君も聞いてよぉ~マイがね~ヒック」
シン「いやあの…オレまだ未成年だし…つか刹那放せよこの!」
 刹那「シンもガンダムじゃないか 俺一人ではもうこの戦線を維持することは出来ない…増援求む!増援求む!」
シン「知るか!つか何でこんな事になってるんだよぉ!」
 刹那「話せば長いことになる…だから一緒に正座してガンダムについて語り合おうじゃないかヒック」
シン「嫌だぁああ!つか刹那お前も酔っぱらってるだろおおお」


531 名前:カテキョ!-お留守番編- 5/5 :2008/08/05(火) 03:24:25 ID:???
オリバー・マイ日常報告書 No55302
先日18:00に帰宅せり。玄関に4足の靴を発見するも内2足は我が弟のシン、刹那のものと確認。
 残りの二足は大きさから両方女性のモノ推測され、詳細観測により一足は靴の中敷きに「まりな・いすまいーる」と
記載されていることが確認された。残りの一足は不明。玄関を上がったところで大気中の成分に
微量のアルコールが含有されていることを感知。アルコール臭は廊下を進む毎に強力になり
計測の結果広間が発生源である事が判明。広間内で四人発見。全員の生命反応を確認。
 極度のアルコール臭から恐らく酩酊し睡眠状態にあるモノと推測。室内のあちこちに転がった日本酒やビールの酒瓶、
 空き缶からもこの推論はかなり正確だと裏付けられる。室内の四人の内二人は男性であり我が弟であるシン、刹那と確認。
 二人とも何故かパンツ一枚という格好だ。残り二人は女性…家庭教師のマリナ・イスマイールと
何故か我が同僚モニク・キャデラックである。この事から玄関の持ち主不明の靴がキャデラック嬢のモノであることが
 ほぼ確定した。マリナ嬢は上下白の下着姿…材質は綿100%と確認。彼女は刹那と抱き合う格好で寝ているが
詳細観察の結果性交渉の残滓は無し。キャデラック嬢は上半身裸で黒レースのパンツを履いている…材質は絹で光沢から
卸したてのモノと推測。こちらは俯せ状態であり左手に先日私がヨーツンヘイム社に忘れた書類が握られていることを確認。
どうやらキャデラック嬢はわざわざこの書類を届けに来てくれたようだ。そしてシンは丸まり「すいません…もう飲めません…」と
譫言のように呟き続けている。後、此は余談だが目測計測によりマリナ嬢のスリーサイズは(以下検閲により削除)、
モニカ嬢のスリーサイズは(以下検閲により削除)と推計せり。
18:30に長兄アムロとロランが帰宅。広間の惨状を発見し即座に明朝07:00まで広間を立ち入り禁止区域に認定。
ロランに広間に布団を敷き女性陣を寝かせる手助けをする旨を通達し、私にシンと刹那の搬送を指示。
 二人とも昔に比べるとずいぶん体重が重くなっており身体の成長を実感…しかし重い。
 本日07:30起床。一階に下りると既に広間の立ち入り禁止は解除され綺麗に清掃されていた。
 広間には神妙な顔をした先日の4名の内が正座させられ長兄アムロの説教を受けていた。その内容はかなり長いので割愛するが、
 結論としてマリナ嬢は未成年に飲酒させたとして減俸5日間、刹那は飲酒と騒動の引き金を引いた責任を取り
風呂掃除一週間+トイレ掃除一週間を命じられた。シンは巻き込まれただけ、キャデラック嬢は部外者であるということで
刑罰は免除となった。そして何故か私も騒動(キャデラック嬢が私と連絡が取れなかったことがそもそもの始まりとされた)
の一因として認定され、キャデラック嬢とプライベートアドレスを交換を命じられた。その際原因は不明だが
 キャデラック嬢の顔が耳まで真っ赤だったのと、交換し終えた後に笑顔で自分の携帯を大事そうに胸元で抱きしめたの事が
妙に印象に残った。次に会社であったときに何故その様な行動を取ったのか意図を確認し、そしてブラジャーのカップが
実際にバストサイズと合っていないのでワンサイズダウンするよう彼女に進言する事にしよう。
…以上で今回の騒動の報告を終了とする。


                 END

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最終更新:2013年09月18日 19:59