364 名前:
日登町、燃える :2008/09/06(土) 16:27:54 ID:???
マリナ「こんにちは、ロランさん」
ロラン「マリナさん? こんにちは、珍しいですね、こんな時間に」
マリナ「ええ、お食事時ですと、その、幸せ過ぎてお話が出来ないものですから…(////)」
ロラン「あはは、マリナさんは、本当に美味しそうに召し上がってくださいますからね。
作る方としても腕の振るい甲斐があるってものです」
マリナ「いえ、それは、ロランさんのお料理がとっても美味しいですから…」
ロラン「ええっと…そうやって面と向かって褒められると、照れますねぇ…あはははは」
マリナ「それで、その…」
ロラン「はい?」
マリナ「ロランさんの、鉄人級の腕前を見込んで、一つ、お願いがあるんですが…」
ロラン「はあ…」
数日後。
『軽食と喫茶のお店 M&S』
コウ「………」
キース「え~、サ店っすか~?」
モンシア「きぃ~すぅ、いやなら帰ってもらって良いんだぞ? イヤなら」
キース「いえいえ、せっかく先輩が奢ってくださるんですから、イヤだなんて。
なあ、コウ! ……コウ?」
ベイト「ん? どうかしたのか、ウラキ」
コウ「あ、いえ! 何でもありません! ……なんか、どっかで見た看板だなぁ…」
モンシア「まあ、俺たち体育会系のメシは質より何より量が優先される!
こういう小洒落た店じゃあ不満に思うのも判るが…」
ベイト「ま、騙されたと思って付き合え。 損はさせねぇぞ」
アデル「さあさあ、入り口の前に陣取ってると営業妨害ですよ」
キース「あ、なんか雰囲気いいっすね。 上品というか、派手すぎないって言うか」
マリナ「いらっしゃいま…せ?」
コウ「マリナさん!?」
モンシア「こんにちはー!マリナさん! 今日は部活の後輩を連れてきましたよ~~♪」
ベイト「…待て、モンシア」
アデル「お知り合いですか?」
コウ「ええ、俺がって言うよりは、弟の…刹那の友人ですけど。
そっか、表の看板、ロゴが前の店と同じなんだ…」
365 名前:日登町、燃える :2008/09/06(土) 16:28:48 ID:???
モンシア「…またか」
コウ「は?」
モンシア「また貴様の関係者かウラキ!!」
コウ「うわっ!」
モンシア「なんでだ! この町の美人と言う美人がなんでお前の知り合いなんだ!」
キース「そうだ! 一人くらい紹介しろ!」
コウ「ちょ、キース、お前まで…苦し」
マリナ「おやめなさい!」
モンシア「!」
キース「!」
コウ「………」ピクピク
マリナ「ほかのお客様のご迷惑です! 喧嘩を止めないなら、今すぐ出て行きなさい!」
モンシア「は、はいぃ…」
キース「美人が怒ると迫力だなぁ…」
ベイト「けど、他に客なんて…げ!」
アデル「やれやれ…」
シナプス「仲が良いのはいいことだが…場所は弁えるべきだな。 そうではないかね、諸君」
モンシア「シナプス教授!」
キース「へ?」
ベイト「…と、コーウェン理事まで…」
顔に手を当て天井を見上げるベイト。
アデル「これは、まずい所を見られましたかねぇ」
それでも一瞬で整列し、挨拶をしてしまう体育会系な人たち。
一同「「「ちぃっす!!」」」
コーウェン「まあまあシナプス教授(せんせい)。
幸いと言ってはなんだが、しゃちほこばった場所ではないのだし、それくらいで。
店長さん…マリナさんと仰ったかな?…には連邦大(ウチ)の生徒がご迷惑をおかけした」ペコリ
一同「「「スミマセンでしたっ!!」」」
マリナ「あ、いえ、そんな…お客様に頭を下げられてしまっては…」
コーウェン「いやぁ、やはり美しい方は話がわかりますな!」
マリナ「えっ…そ、そんな、美しいだなんて…」ポッ
コーウェン「ご存知かもしれませんが、このシナプス教授は食べ物に詳しくてねぇ。
彼のお勧めと言うので今日は楽しみに来たんですよ」
マリナ「まあ、光栄です」
コーウェン「実は、仕事の都合で、ここのようなちゃんとした所には気軽に出かけられなくなりそうでね。
冬篭り前の腹ごしらえと言うわけです」
熊のような体躯を揺すって豪快に笑うジョン・コーウェン。
366 名前:日登町、燃える :2008/09/06(土) 16:29:46 ID:???
コーウェン「それで、店長さんと知り合いと言うのは本当かね」
半ば強引に相席させられたコウたちに、コーウェンが声を潜めて話しかける。
ちなみにこの初老に差し掛かった
オヤジ、女性を見る目の高さでも一部で有名だったりするのだが、
学生たちは知る由も無し。
コウ「ええ、まぁ…弟が昔、ずいぶんお世話になった方らしくて…
最近はウチにも良く(メシを食いに)いらっしゃいますよ」
コーウェン「フルネームは? 恋人は居るのかね? どこに住んでおられるんだい?」
シナプス「理事…」
額を押さえるシナプス教授。
コウ「
マリナ・イスマイールさんと仰って…恋人は、居ないんじゃないかなぁ…
アムロ兄さんが刹那とくっつけようとしてるくらいだから…」
モンシア「そーか、フリーなんだな! よしよし」
ベイト「いやまて、今、なんか不穏当なことを言ってなかったか?」
コーウェン「マリナ…イスマイール? とは、アレかね? アザディスタンの…」
コウ「あ、そういえば、王女さまだって言ってたような…(すっかり忘れてた…)」
キース「あざ…なに?」
アデル「アザディスタン、です。 たしか、中東にある新興の国ですね。
何年か前に王制が復古して…一部民族に対する弾圧を理由に、
経済制裁を受けているんじゃなかったかな?」
モンシア「…お前、よくそんなこと知ってるな」
アデル「そうですか? 新聞にも載ってたことですが」
コーウェン「その原因となった民族弾圧も、実はとある勢力のデッチ上げという噂もあるがね。
とにかく、国元では色々と大変だそうだが…」
コウ「実際、バイト三昧らしいですよ。 良く倒れそうになってる所をアムロ兄さん…
兄や、弟たちがウチに引っ張ってきてますから」
モンシア「まるっきり出稼ぎじゃねーか。 くぅ…けなげだねぇ泣かせるねぇ」
ルナマリア「そーなんですよぉ。 店長ってば、真面目な上に働き者だから、
あたしたちも休むに休めなくって」
パステル・ピンクを主体とした可愛らしい制服姿で、ワゴンを押すルナマリアが愚痴をこぼす。
コウ「
ルナマリア・ホーク?」
モンシア「る~な~ちゃ~~ん♪♪」
目をハートマークにするイタリア人。
ルナマリア「いらっしゃいませ♪ ナポリタンにチキンライス、クラブサンド、マルゲリータと
カレーライス、ケバブセットにホットドッグセット、オール・スペシャルで。
お待たせしましたー」
アデル「うーむ、相変わらずのボリュームですね…」
次々とテーブルに並べられる料理は、普通の食堂なら一皿が三人分はありそうな、特大盛りであった。
キース「うわ…」
ミニスカートから伸びる脚線美に気をとられていたキースが、眼前のチキンライスに目を丸くする。
367 名前:日登町、燃える :2008/09/06(土) 16:30:41 ID:???
コーウェン「わっはっは、これはいいな!」
上機嫌に笑うコーウェンがナイフとフォークで、高さ20cmはありそうなクラブサンドに挑みかかる。
コーウェン「昔は大学の近くにある飯屋といえば、これくらいの盛りが普通だったが…
いやぁ、学生時代を思い出しますなぁ、シナプス先生!」
シナプス「理事も学生時代はずいぶんと召し上がる方だったと聞いておりますが…」
コーウェン「ああ、ワシは柔道をやっておってな。
君たちのように、部活の帰りに良く飯屋に寄ったものだよ。
さすがにこんな洒落た店ではなかったがね… うむ、美味い!」
シナプス「ふむ…ソーセージに一切ソースを加えず提供するのは、小憎らしい演出だな。
スモークされたソーセージの香りを堪能できるいいやり方だ…付け合せの(以下略」
先輩学生三人組は、すでに物も言わず、猛烈なペースでそれぞれの皿を片付けにかかっていた。
コウ「…この味は!」
キース「むぐむぐむぐ(どうかしたのか、コウ?)」
ケチャップで味付けされたチキンライスを口いっぱいに頬張ったキースが尋ねる。
マリナ「ふっふっふ…さすがはコウさん…お気づきになられましたね…」ユラリ
ルナマリア「いや、そんな劇画調演出はいいですから(苦笑」
コウ「君のツッコミ体質も相変わらずだね」
ルナマリア「言わないでくださいよぅ…気にしてるんですから」
マリナ「(華麗にスルー)この度、我が『M&S』では、スペシャルアドバイザーとして、
ロランさんの協力を得ることに成功したのです!」
シナプス「なんと!!」
スポーツ選手に提供する栄養学が高じて、ついには食通としてまで知られるようになったシナプスが、
その意味を理解して思わず叫んでしまう。
マリナ「当店で提供させていただくメニューはすべて、ロランさんの監修が入っています。
今や伝説とまでなったロランさんの味を、お手軽価格でご提供!」
モンシア「するってぇと何か? ウラキ、てめぇ!毎日こんなウマイもん食ってるのか!」
ルナマリア「ふっふっふ、ここのバイト始めて、2Kg増えました…賄が美味しすぎ…」orz
コーウェン「いやいや、お嬢さん。 あなたはもう少しふっくらしているくらいの方が…」
マリナ「経済制裁何するものぞ! 食を制する者は、経済を制す!
待っててね、アザディスタンのみんな!
美味しいものを、おなかいっっっぱい食べさせてあげるからねーー!!」
西の…母国の空に向かって気炎を上げるマリナ。
斯くして、マリナ・イスマイールの波乱に満ちた細腕繁盛記が始まった―――のかもしれない。
おわり。
最終更新:2013年09月20日 21:55