ジュドー「キラ兄、どうしたの、ノーパソの前でため息ついちゃって」
キラ「…うん、ラクスがジャンヌ・ロゼ・ダルクの刺繍ハンカチが欲しいっていってたから
ネットオークションのぞいてみたんだけど、値段がつりあがってて…とてもじゃないけど手が出せないよ」
ジュドー「ジャンヌ…何?」
キラ「ジャンヌ・ロゼ・ダルク。最近女子に人気の刺繍作家なんだけど、製品がネットオークションでしか手に
入らないからとんでもなく希少価値が高くて」
ジュドー「ふぅん、そんなのがあったんだ。クリスマスプレゼントなら他のにしたら」
キラ「うーん…でも折角だからラクスには喜んでもらいたいし……」
マイ「あれ、キラはジャンヌ・ロゼ・ダルクのハンカチが必用なのかい?」
ジュドー「マイ兄!?いつの間に!」
マイ「ただいま。ハンカチだったら会社にあるから何枚か持ってこようか?」
キラ「本当!?お願いしますマイ兄さん!!」
ジュドー「でもなんで
ヨーツンヘイム社にジャンヌなんとかのハンカチがあるのさ」
マイ「ああ、それはね…ここだけの話だけど……」
ラクス「いつ見てもジャンヌ・ロゼ・ダルクの刺繍はステキですわ…繊細かつ大胆で優美な色使い、
豪奢に糸を使っていても決して下品にならず固くもならない、しなやかなうつくしさ……」
キラ「へ、へぇ、ステキだよね、うん。ステキだ」
ラクス「いったいどのような方がこのようなステキな刺繍をつくってらっしゃるのかしら…きっと上流階級の
深窓のご婦人に違いませんわね。こんなに気品に溢れているんですもの…」
ショーウィンドウの前に飾られたジャンヌ・ロゼ・ダルク刺繍入りのドレスを、夢見る少女のまなざしで
うっとりと見つめるラクス。
キラはなんともいえない気持ちで微笑むしかなかった。
ジュドー「でもなんでヨーツンヘイム社にジャンヌなんとかのハンカチがあるのさ」
マイ「デュバルさんが作ってるからさ」
キラ「は?」
ジュドー「デュバルさんって、あのMr.
空中分解?」
マイ「その通り名はいささか不適切だけど、そう。あのデュバルさん。パイロットは集中力を養うために
手芸をするって言うだろ?」
キラ「…それで刺繍なの」
マイ「会社で暇になると刺繍してるもんだから沢山たまっててね。ためしに偽名でネットオークションに出したら
人気になっちゃって」
ジュドー「ジャンヌ・ロゼ・ダルク…J.R.D…
ジャン・リュック・デュバル、ね……なるほど」
ふわふわした少女の夢見る深窓のご婦人が実はちょっと電波気味のおっさんだった。
ラクス「ああ、いつかこんなドレスを着てみたいですわ…」
キラ「そうだね…きっとラクスにとっても似合うよ」
キラは本当になんともいえない気持ちで微笑むしかなかった。
最終更新:2013年09月25日 19:11