2LDKで家賃月5000円の部屋にお住まいの2人。
シーリン「家賃は5000円。でも光熱費が馬鹿にならないわ。水も電気も別料金なのよ」
マリナ「無駄遣いしないで基本料金内に納めるしかないわね、シーリン。水は雨水を溜めたり、公園とか公共用の水を汲んだりしてるけれど」
シーリン「その水を沸かすにも電気、灯りに電気、通信に電気、何にしても電気を使うわ」
マリナ「そ、それならガンダムさんちに足こぎ式発電機作ってもらったから!こげば運動でダイエットにもなるし、一石二鳥よ!」
シーリン「すずめの涙よ!…それより、もっと確実で効果的な方法があるわ」
シーリンの提案、それは悪魔のアイデアだった。

???「こんにちは、電気の定期点検に参りました」
電気工事作業員の男が差し出したIDカードには、間違いなく、電力会社の代理店「有限会社ARG電気サービス」の人間だということが示されていた。
何もおかしなところはない。
マリナ「…アムロ…さん?」
その作業員がアムロだということを除けば。マリナが事情を聞くと、アムロは率直に副業だと言った。
アムロ「別に怪しいことはしてませんよ。うちみたいなところがよそに電気工事を頼むと経費がえらいことになるんで、自分で電気工事の資格と、
    代理店の免許を取って、自分で管理してるんです。近所の分もやってるんですが、最近は住人が少なくなって開店休業みたいなものでしたけどね」
マリナ「はあ…これが、シーリンの言ってた秘策ですか?」
アムロ「理由は彼女から聞きました。話は簡単です。隣のグラハム君の部屋の消費電力が、一人暮らしでめったに帰らないくせに、やたらと多い。
    そこで、このアパートの配線をいじって、彼の部屋から電気を拝借するんですよ。彼の使う量に比べたら微々たるものです。まずバレませんよ」
シーリン「というわけよ。どう?」
マリナ「でもアムロさんに危険な橋を渡らせることになりませんか?」
マリナはちゅうちょしたが、結局二人の説得に折れて首を縦に振るのだった。

アムロはマリナたちの部屋の配線工事を済ませると、工事を仕上げるために、事前にアパート管理会社から借りたマスターキーでグラハムの部屋に入った。
グラハムの部屋に生活のにおいはしなかった。ポストには大量の新聞と広告が詰まっており、部屋はほこりだらけ。出入り自体ほとんどないのだろう。
その中で、ガンダム兄弟家を一望出来る窓に面した一部屋が異様だった。窓に多数のビデオカメラが取り付けられ、壁中に取り付けられた同じ数のディスプレイが、
ビデオカメラの画像を映し出している。そしてカメラとディスプレイと同数の録画装置が自動的にビデオディスクを24時間作り続けていた。
アムロ「これが電力消費が多い理由か。幸い家の中まではカメラを向けていないし、俺たちを監視しているわけでもないようだが…」
窓の外を見ると、庭にいるヒイロやキャプテンと目が合った。二人とも前からグラハムの部屋からの乱反射を訴えて気にしていた。乱反射の原因はレンズだったわけだ。

アムロ「工事は終わったよ。もし彼にばれそうだったりしたら、この非常スイッチを操作してくれ。ブレーカーの仕掛けが動いてアパートの電気を止める」
シーリン「そんな余計なことをしたら、かえって危険になるんじゃないですか?」
アムロ「緊急修理の際はARG電気サービスへご連絡下さい。電力供給の復旧から証拠隠滅まで承ります。…というわけだよ」
シーリン「なるほど。さすがですね」
マリナ「すみません、このお礼は必ず」
アムロ「わざわざいいですよ。今後も僕の家族と仲良くしてもらえるなら、それで十分さ」

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最終更新:2013年09月27日 21:36