875 名前:僕らの節分戦争・壱 1/4 :2009/01/30(金) 09:43:46 ID:???
 連邦学園小等部の校舎に終業の鐘が鳴り響く。
 静かだった校舎が一斉に活気付き、子供たちがはしゃぎながら教室を飛び出してゆく。
けい子「シュウト君! ちょっといいかしら?」
シュウト「あ、は~い! なんですか、先生」
けい子「申し訳ないんだけど、このプリントをミネバちゃんに届けてあげてもらえるかしら?」
シュウト「ミネバちゃんに?」
けい子「おうちの方から連絡があって、しばらくお休みするらしいの」
シュウト「ミネバちゃん、病気なんですか?」
けい子「そうじゃないみたいなんだけど…お家の事情だそうよ。
    でも、節分の豆まきには出来れば参加してほしいですからね」
シュウト「え…そんなに長くお休みするんですか?」
けい子「そうらしいの。 だからちょっと様子を見てきてもらいたいのよ。
    お願いできる?」
シュウト「はい!」
 シュウトの元気な返事に、けい子は柔らかい笑みを浮かべる。
けい子「それじゃあ、お願いします」
シュウト「了解!」ケイレーイ

アル「ふ~ん、ミネバちゃん、学校休んでるんだ…」
シュウト「うん。 プルたちもいないし。 なんだかクラスが静かだったよ」コロコロ…
アル「でも、病気とかじゃないんだよね?」
シュウト「けい子先生はそう言ってた。 『お家の事情』だって」コロコロ…
アル「そっか… ミネバちゃんちって、変わってるもんなぁ」
シュウト「そうだねぇ」シャーーーー
 世界中の誰に言われようと、この兄弟にだけには言われたく無いだろう。
 ぐっと言葉を飲み込むマリーメイアであった。


876 名前:僕らの節分戦争・壱 2/4 :2009/01/30(金) 09:44:55 ID:???
 友人たちと別れたアルとシュウトの二人は、山の手の一等地に敷地を構えるザビ家を訪れた。
 すぅ~~~
シュウト「ミーネーバーちゃーん!!」
アル「あーそーぼー!!」
 原始的と言えば原始的だが、これがザビ家ドズル邸の決まりである。
 曰く。
ドズル『子供は元気が一番!』
 ということらしい。
 ちなみに、大人の来客者に対しては、監視カメラの映像を元に警備員が直接応対する。
イリア『アル君とシュウト君か。 生憎だがミネバさまはお留守にしておられる。
    用件は何か?』
 インターホンから聞こえた声は、しかし二人の予想外のものだった。
シュウト「あれ? イリアおねーちゃん?」ヒソヒソ
アル「ハマーン先生じゃないんだ…」コソコソ
シュウト「えっと、ミネバちゃんに、節分の日のプリントを持ってきました!
     …お出かけなの?」
イリア『そうだ。 …ゼナ様が君たちにお話があるそうだ。
    入ってきたまえ』
 MSがそのまま通れそうな門が静かに開く。
 そして二人を出迎えたのは、髪を左右で真紅と金に染め分けた、
 コロニーレーザー級のプロポーションを誇る女性だった。
 状況的には猫に小判も甚だしいが。
キャラ「よーう、チビども、元気だったかい!」
アル「こんにちは」
シュウト「こんにちはー」
キャラ「おう! 相変わらずあんたたちは礼儀正しいねぇ。
    ジュドーたちにも見習わせたいよ」
 言って、二人の頭をがしがしとなでくるキャラ。
キャラ「生憎とミネバ様は修行に出かけてて留守なんだ。 聞いたかい?」
アル「うん。 …えっ!」
シュウト「…修行?」


877 名前:僕らの節分戦争・壱 3/4 :2009/01/30(金) 09:45:56 ID:???
アル「ギアナ高地ーー!!」
シュウト「…って、“あの”?」
 ガンダム兄弟年少組の声が、質素ながら品のいい談話室に響く。
ゼナ「ええ。 “あの”ギアナ高地にお出かけなの」
 久方ぶりに対面するミネバの母、ゼナは相変わらずおっとりとした物腰で首肯した。
 手ずから紅茶をカップに注ぎ、二人の前にケーキの皿と共に供する。
ゼナ「さあ、召し上がって」
シュウト「わは♪ いっただきまーす!」アムアム
アル「あの、キャラお姉ちゃんが、『修行に行った』って…ホントなんですか?」
シュウト「!!」ムグムグ
ゼナ「ええ。 ほら、節分が近いでしょう?
   だから、あの人もミネバも張り切っちゃって…」
アル&シュウト「「???」」
 節分とギアナ高地での修行が結びつかず、?マークを盛大に飛ばす二人。
イリア「ゼナ様、それではお二人にはわかり難いかと」
ゼナ「あら? ああ、そうね。 嫌だわ、私もすっかりザビの家風に染まっちゃったのねぇ」
 頬に手を当て、思わずため息を付くゼナ。
ゼナ「実は…」

 ざっざっざっざっ…
 磐梯市の新市街。
 「体力一流、頭脳は五流」などと揶揄される体育大学の雄、ジオン体育大学へと
 集結する男たちの姿があった。
 その誰もが堂々たる体躯の持ち主であり、「規格外」「新類人」と呼ばれる
 現役学生たちですら怯ませるほどの生気(オーラ)を放っていた。
エンツォ「ふむ…ここも随分変わったな…」
マルコ「部長はこちらにはあまりいらっしゃらないのですか?」
エンツォ「ああ。 後輩の指導をせねばとも思うのだがな。
     日々、自分のメニューをこなすだけで精一杯なのだよ」
ラカン「はっはっは、部長は完璧主義でいらっしゃるから」
 などとにこやかに談笑しながら行く男たちの前に立つ、一人の男。
ガトー「お待ちしておりました、先輩方」
マルコ「おお! ガトー!」
エンツォ「…ほう。 以前会った時より、遥かに“気”が大きくなっておる。
     鍛えておるようだな」
ガトー「は。 我が身の非才を痛感いたしました故…」
エンツォ「うむ。 若い苦労は買ってでもせよと言う。 良い機会に恵まれたか」
ガトー「はっ… 閣下がお待ちです。 こちらへ…」


878 名前:僕らの節分戦争・壱 4/4 :2009/01/30(金) 09:46:57 ID:???
 ガトーの案内で一行が訪れたのは、今では使われていない、古い講堂であった。
 普段は窓にも板が打ち付けられて封鎖されているが、
 この日は珍しく入り口が開放されていた。
ドズル「…来たか」
エンツォ「お久しぶりでございます、閣下!
     エンツォ・ベルニーニ以下、ジオン綜合警備保障警備部有志50名、
     ただいま参上いたしました」
ドズル「すまんな、急に呼び立てをして」
エンツォ「何をおっしゃいますか。 ジオンの、しかも閣下の御為…」
マルコ「何より、ミネバ様のためとあらば、我等『ミネバたん私設親衛隊』一同!
    万難を排して参上仕ります!!」
ドズル「………」
エンツォ「………」
ガトー「………」
マルコ「はっ! し、しまったー!! つい本音がーー!!」
デラーズ「最初の一人が決まりましたかな」
ドズル「うむ」
マルコ「はっ? そういえば、本日はこちらで何を…」
ドズル「何だ? 聞いておらんのか?」
デラーズ「エンツォ殿…」
エンツォ「一応説明はしましたが…」
ラカン「さては、聴いておらなんだな、マルコ・ベッキオ」
ドズル「まあいい。 上がれ、マルコ」
 立ち上がったドズルはガウンを脱ぎ捨てると、
 ト ッ プ ロ ー プ を ま た ぎ 超 え て リ ン グ に 立 つ。 
 黒のショートトランクスにリングシューズ。
 全身にはうっすらと汗が浮いており、ウォームアップも万全である。
マルコ「あの、節分の準備と伺いましたが…」
エンツォ「そこは聞いておったのか」
ドズル「そうだ。 節分の豆まきには鬼役が必要…」
マルコ「左様! ここはこのマルコ・ベッキオが鬼役となり、ミネバ様に…」
ドズル「故に、俺は今から 鬼 と 成 る 」
マルコ「…は?」
デラーズ「貴殿ら50人と、ぢ体大現役学生有志50人!」
ドズル「あわせて100の猛者を喰らい、我が身を鬼神と化そうぞ!」
ガトー「冥府魔道への旅路、お供仕ります!」

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最終更新:2013年10月10日 18:00