アムロ、シロー、ドモン、シーブック、ロランが居間でテレビを見ていた。時間は夜中だ。
アムロ「シロー、良いか?」
シロー「未成年だからって、俺にいちいち了解取らなくても」
シローが苦笑しながらうなずくのを見て、アムロはシーブックとロランのコップにもビールを注いだ。
ドモン「コウの奴、うまく行くと思うか、な?」
ドモンのコップにはウーロン茶。彼は酒は飲めないわけではないが、ほとんど飲まない。
コウは深夜のバラエティ番組の「あいのり」の素人出演者として今週からTVに出ることになっていた。
「あいのり」は、一台のワゴンで各地を旅する素人の出演者の恋愛模様をドキュメンタリー風に見せる番組だ。
コウは彼女をつくると啖呵を切ってこの番組に応募し、見事に選ばれたのだった。
今回の出演者はコウの他には、
ピーター・スコット、背の低いシステムエンジニア。カリンガ・ヴォーゲル、フリーター。イリア・パゾム、学生。
キスハール・バグワット、体育教師。ジャクリーヌ・シモン、長身のOL。コウを入れて男女6人だ。
ロラン「コウ兄さん、この3人の中から誰を選ぶんでしょうね」
シーブック「コウ兄さんの場合、まず話しかけられるかどうかが課題だけどね」
アムロ「そうだなw」
6人の男女を乗せたラブワゴンは田園地帯を走り、田舎町に着いた。彼らはこの町で自由時間を過ごす。
つまり、この自由時間の間によろしくやってくれということだ。無論、カメラがずっと追いかけてはいるが。
コウはワゴンを降りると、ふらふらと目的もなさそうに歩き出した。
しばらくして、「そういえばみんなどこへ行ったんだろう?」といった風情できょろきょろしている。
ドモン「駄目だ、完全に出遅れてる」
テレビの前の5人は皆あきれた。一方でしばらくきょろきょろしていたコウは、何かを見つけたのか急に走り出す。
コウのトンマぶりをからかうようなナレーションとともにカメラもその後を追った。
コウは道路を突っ切ると、向こう側の農場へ走って行った。
そして、炎天下で男が農作業用の人型重機を修理していた男に話しかける。
コウ「あの、すいません。これ『ゴンスケ』じゃないですか?」
男は戸惑った様子で「そうだが」と答えた。中年にさしかかろうとする男は赤銅色に焼けたたくましい肉体をしていた。
コウ「やっぱりそうだ!ジオニックの初期の名機のゴンスケだ!まだ現役のがあったなんて!」
シロー「コウ、関係ない人に話しかけてどうするんだー!!」
叫ぶシローの傍らでアムロがつぶやく。
アムロ「あの人、ククルス・ドアン?」
コウ「あの、今何をなさってるんですか?」
ドアン「ゴンスケを修理しているのだ。しかし、長い間こき使ってきたからゴンスケにもガタが来ていてね。
これでも直らなかったら、スクラップにせざるを得ないことになりそうだ」
コウ「そんなもったいない。ゴンスケはまだ10年使えますよ」
ドアン「しかし生産終了して何年もたっているから、代替のパーツはもう手に入らないんじゃないか?」
コウ「いえ、大丈夫です。ジャンク品でそういったパーツが流れていることがありますから、それが手に入れば大丈夫です」
そう言ってコウはもう一度町にとって返し、田舎のジャンク屋から必要そうなパーツを買い集めてきた。
シーブック「修理するの?ナントォ!」
そしてコウがゴンスケの修理を始めて2時間(オンエアで家族が見ているのはほんの数分にしかならないが)。
暗くなりかけた頃、修理は完全に終わった。壊れているところだけでなく壊れそうなところも修復してしまった。
ドアン「君が言った通りだ。新品同様にまで修理されてからこのゴンスケは、
あと10年働けそうだ。本当にありがとう。何もお礼できないが、せめてこれを持って行ってくれ」
こうしてコウは袋一杯の有機野菜を
お土産にもらい、ククルス・ドアンと
別れたのだった。
昼間の修理の疲れでコウは夜も早いうちにベッドに潜り込んでいた。
一方で残った5人はどんどんと親交を深めており、そしてその夜のうちに、
スコット&シモン、キスハール&カリンガのカップルが成立したのである。
翌朝、この2組のカップルはラブワゴンを去り、コウとイリアの2人だけが残って4人の新メンバーと
合流することになったのだった。
アムロ「コウはオーディションまで受けてきて何やってるんだか」
ロラン「…コウ兄さんらしいですけど、こんな調子でこの先大丈夫なんでしょうかねぇ」
シロー「イリアって人が残ったから、あの人一本で行くか?同じ学生だから合うところもあるだろう」
シーブック「でも気が強そうじゃない?男二人とも最初は関心あったみたいだったけどあの人は無視してたし」
ドモン「アムロ兄さん、さっき言ってたククルス・ドアンって、
もしかして昔の
ガンダムファイトの名選手だった人か?そうだったら是非勝負したいな」
アムロ「あの人はもう引退したんだよ。無理に勝負の世界に駆り出すことはないだろう…?」
ドモンは不満そうな顔をした。
(了)
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コウ・ウラキ テレビ
最終更新:2017年06月16日 20:00