アルの学校に転校生がやって来た。
名前はマリーメイア、おすまし顔にベレー帽がチャームポイントの可愛らしい女の子だ。
大いに色めき立つ男子達。女子達のほうはなんとなく面白くない感じで静観している。
だが彼女が自己紹介を始めた時、事態は一変した。
マリーメイア「私、亡き
トレーズ・クシュリナーダの娘でマリーメイアと申します。愚かな
アースノイドの民草を善導すべく日々勉強しております。私の養母が申しますに、世間を
知るには高級階層の方々とお付き合いするだけでなく、下々の貴方方のような底辺の生活レベルの人達と
接するのが一番です、との事ですので、ほんの短い間ですが皆様と共に勉学致しまして、早く山の手のスクールに戻りたいと思います。
まぁ、宜しければどなたともお友達になって差し上げても良いかと思っております。よろしく。」
やんややんやの大騒ぎだった教室の中が、今は水を打ったようにシーンと静まり返っている。
先生などはこれをどうフォローしていいのか分からず教壇でオロオロしていた。
アル「・・・何だかとんでもない子が来ちゃったな。」
その時、教室の天井裏からぼそりと、誰にも聞こえぬ声で一人ごちる者が居た。
影の声「任務・・・難航・・・」
アルの悪い予感は的中した。
休み時間に学級委員長のドロシーが、取り合えず校内の施設を案内するからと
マリーメイアを連れ立った。彼女等が出て行くと教室内は一斉にマリーの悪口大会が始まった。
『いばりん坊だ!』『生まれが良いのを鼻に掛けて!』『性格ブス』『下々の貴方方って、自分は何様だ』
『後でいじめちゃおうか』『しかとでも良いよね』等言いたい放題。
様々な誹謗中傷が飛び交う中、アルは一人淡々と次の授業の準備をしながら、そんなクラスの風景を眺めていた。
そこにチェイとテルコットの二人がやって来た。
チェイ「なぁアル、お前あの女どう思う!?」
アル「うーん、変わってるよね。」
テルコット「たったそれだけ?アルはあいつの事ムカつかねーのかよ。」
アル「あの程度はうちじゃいつもなんだ。僕んちって兄ちゃんの友達とか近所の人とか良く来るけど、物凄く変な人ばっかりなんだ。
大声で人のこと馬鹿にしたり勝手に上がってきてキラ兄ちゃんの朝食食べちゃったり、いきなり庭で
ガンダムファイトやって家壊しちゃったり・・・」
2人「うわっ、ひでぇ」
アル「それでも怒ったり喧嘩だけじゃなくて、うまくなだめたりおだてたりして何とか相手とうまく付き合っているから、
今僕はよそに転校もしないでここに居られるんだ。出ないととっくの昔にテキサス・コロニー辺りに引っ越してたかも。」
ふたり「・・・・・」
アル「だからあれくらい言われても全然気にならないよ。むしろあの子、クラスで孤立しないか心配だな。」
チェイ「俺、アルのことすげー尊敬した。」
テルコット「俺らの全く知らないところで苦労してたんだな。アルって大人じゃん。」
3人がそんな会話をしていた時、隣のクラスの女子が息を切らして掛けこんで来た。
女子「ちょっと、ドロシーとあの転校生、けんかしてるわよ!」
最終更新:2017年07月05日 08:54