チェーン「アムロ部長、お先に失礼します」
アストナージ「俺も、上がりますよ~。な、ケーラ♪」ケーラにウィンウする
ケーラ「もう、馬鹿……私も上がります。
明日はルナ2へ10時、直行ですから。アムロ部長も忘れないで下さいね」

「ああ、ルナ2に10時だよね。お疲れ……あ、ケーラ?…」

ケーラ「なんですか?」

「その…これからアストナージとデートでも?」

ケーラ「…ええ、けど、五月蝿いから少~し、付き合うだけですよ」
やれやれと言った感じでドアを開けて退室。
言葉とは裏腹にケーラも満更でも無いようだ。

「案外あれで上手くいってるから不思議だよな……」
アムロは溜息をついて、独り、部屋に残り仕事を続ける。
木曜日の夜。この時間のオフィスはアムロの部署以外の明りは消えている。

「さて…」
ケーラ達が帰ってから暫く経ち、仕事を切り上げたアムロはフロアの電気を消して退室。
ビルを出て強い風に吹かれると、急に暖かいモノを食べたくなってきた。
「帰ってもロランはご飯を用意してくれてはいるだろうけど……」
帰り際、居酒屋《青い巨星》へと脚を向ける。

青い巨星の暖簾を潜ると
ハモン「いらっしゃい~、アラ…お久し振りね」
アムロ「ご無沙汰してます。急にここの煮込みが食べたくなって…」カウンターに座る

ラル「小僧か…今日は懐かしい顔が揃う日らしいな」
アムロ「え…どういう事です?……」

カイ「よう!アムロ、久し振りだな」
アムロ「カイさん!何時、帰ってきたんですか?……」
カイ「今夜さ。で、ここに来たんだよ。へへぇ……親父さんの顔見ないと帰ってきた気がしないんでね」
ラル「嬉しい事を言ってくれるな……しかし、おだてても安くはせんぞ」
カイ「くぅ~~……駄目なの?参ったね。こりゃ」

ハモン「ふふふふ……、まるで昔に戻ったみたいね。貴方達、アムロ君に毎晩集りに来ていたでしょう」

大学時代、この店でバイトをしていたアムロを利用して、サークル仲間達が
安く酒を飲みに来ていた時期があった。カイはその頃からの悪友の一人だ。

ガラガラ~ 暖簾を潜り、新しい来客が入る。

ハモン「いらっしゃい~、まぁ……アルテイシア様!」

セイラ「お久し振りです……あ!アムロ、カイ。どうして!?」
カイ「うぉ!珍しいねぇ!!」
アムロ「セイラさん……」

青い巨星の奥座敷にて
アムロ、カイ、セイラの三人は昔話に花を咲かせていた。

カイ「ブライトさんはさ……よ~くアムロの事ぶん殴ってたよなあ~…」
アムロ「…そうですね。そんな事もありましたね…」
カイ「1番やり合ってた当人同士がさぁ、今でも同じ会社で働いてるっても…不思議だよなぁ…」
アムロ「腐れ縁だと思ってますよ…」

久々に有った旧知の友の昔話は絶えず…

カイ「…ああ、そうそう!セイラさんの酒の強さには参ったね!俺は…」
セイラ「そう?」
カイ「最初見た時はさぁ…いかにもお嬢さん。って…俺等と雰囲気が違ってたのになぁ~だろ?アムロ」
アムロ「…ええ」

カイ「新歓コンパで酒の飲み比べになって、最初は皆で女子を潰す計画だったのが…意外や意外。
すげぇ強かったなぁ~…セイラさん。で、仕舞にゃ~『軟弱者!それでも男ですか!』と朝まで付き合わされたっけなぁ……」
セイラ「そんな昔の事……カイは、記者として色々な地域を回っているのでしょう?今回は何処を回って来たのかしら?」

カウンターで三人を見守るラルとハモン。
ラル「アルテイシア様も益々、お美しくなられて…」
ハモン「三人とも、ついこの間までは子供だと思っていたら…」

数時間後、店を出た三人。
カイ「俺はこのまま、ホテルに戻るよ。そんじゃな!」背中を向けてアムロ達と別れる。

アムロとセイラは夜道を歩く、偶然にも、久し振りに二人っきりの時間が生まれた。
セイラ「アムロは又、仕事のし過ぎじゃなくて?……顔、少しヤツれているわよ」
アムロ「そうですか?…」
セイラ「病院に来なさい。健康診断してあげるわ……アムロも、もう若くは無いのだから、身体のケアは怠らないでね。
兄弟を背負ってるからと言って、無理を押して仕事をしていては駄目よ……あら、御免なさい。
職業病かしら?……余計なお世話だったわね」

アムロ「いいえ、それよりもセイラさんこそ…シャアの世話よりも自分の事を……」

セイラ「アムロ…私ね……」
アムロ「はい?」
セイラ「病院に居るからかしら?人の人生って…生きてる内にどれだけ好きな事をして、過せるか?
その人がどれだけ精一杯、悔いなく生きたか……で、幸せかどうか?が決まると思っているわ。
兄さんは……とても、幸せな人ね。色々な意味で……私はそんな兄を見ているのが幸せなの」
アムロ「それは……、シャアに縛られているんですよ!」

セイラ「そうかもしれないわね……けれど、私はそれでいいのよ。今のところはね……。
今日はアムロに遭えて嬉しかったわ。それじゃあ…」
アムロ「送りますよ」
セイラ「いいわ……。一人で帰れます。私の心配をしてくれて有難う(微笑)アムロ…」

アムロ「さようなら…セイラさん…」

暫くセイラの後ろ姿を見守るアムロ。
その姿は昔、アムロが憧れていた清楚さを保ちつつも、憂いを含んだ大人の女性のモノになっていた。
(終)



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最終更新:2018年10月31日 21:00