(part6
764の続き)
屋敷の庭にて。2人の黒ずくめの男が草むらに隠れて中の様子を監視していた。
カクリコン「間違い無い、件のローラ・ローラだ。やはり女性、ロラン・セアックの女装と言う情報は誤りのようだ。
幸いシャア一族と
ガンダム家は油断しているようだ。チャンスだジェリド、やるなら今だ!」
ジェリド「ああ分かっている、催涙弾を撃ちこめ、それで一気に突入確保だ!射撃用意。」
カクリコン「OK、いくぞ!・・・何だこの音・・電気のこぎりのような・・・」
ジェリド「うわ、円盤みたいのが迫ってくる!感づかれたか!」
カクリコン「くそ、撤退だ、各人散開して逃げ・・・うぎゃああっ!!」
ジェリド「人だけを狙って攻撃するのか!?早い、逃げ切れない!うわ、マ、マウアーっ!」
屋敷の中ではシャアとアムロが中庭の景色を眺めていた。
シャア「最近我々の業界に参入してでかい面をしているティターンズ商事の裏の兵隊共だ。ここまで嗅ぎつけたのは大した物だが、それまでの事。
あのようなチンピラにはこの程度のお仕置きが丁度いい。」
アムロ「
ミンチよりひどいな。いや、ミンチに失礼だったな。」
シャア「あのような者どもにローラ嬢を奪われてみろ、どのような事になるか・・・」
アムロ「俺やシャアだけでない、我々に関連する様々な企業があの悪徳会社にひれ伏す事になる。産業界の冬が来るぞ。」
シャア「それどころか無関係の世界にも影響が及ぶ。社長のジャマイカンはバスク・オムとつるんでいるぞ。」
アムロ「あの極悪政治屋か!?あんな男の為にロランの幸福を悪用させてたまるか!!」
シャア「当然だ。世の中どうなってしまうか想像に難くない。お互い自分の会社の為、世のため人の為に一苦労しなくてはならなくなった。そこでだ・・・」
周りの賑やかな喧騒をよそに、2人だけの大人の密談が始まった。
その頃
不敗「いやぁ
ロラン君、わしゃもう飲めないよー!」
ドモン「師匠、そう言いながらもうボトル三本目ですよ・・・」
ローラ「お強いんですね、さぁどうぞ。」
ギンガナム「小生のグラスも空なのである!」
ガトー「やかましい、貴様は手酌で充分だ。」
グエン「ローラ、注いでばかりいないで君も飲み給え。ほら、僕が注いだロマネ・コンティの70年物だ。」
ジュドー「やべ、あいつ酒の中に何か仕込んでるかも・・・」
ガロード「ここは一つ俺が・・・ア、グエンさんいいワインですねそれ、ちょっとお毒見・・・」
グイッゴクリッ バタッ
ガロード「ぐー、ぐー」
フラン「ア、寝ちゃった・・・グエンさん、これは一体・・・あ、いない」
シーブック『なんとー、カーテンの陰に隠れているぞ!」
カミーユ「そんな行為が赦せないんだよ、そんな御曹司、修正してやる!」
一同「おうっ!」
兄弟sと一族に追われて逃げ惑うグエン。いとも簡単に掴まり締め上げを食らう。
深い眠りについてしまったガロードはローラの膝枕にて介抱されたが、彼女の柔らかい腿の感触を感知する事はできなかった。
ガロード「ム・・・ティファ・・・気持ちいい・・・」
大騒ぎだったパーティもやがて沈静化し、アル等兄弟s若年組がおねむになった為、
ころあいを見て宴はお開きになった。
一族側が用意してくれた数台の運転手つきリムジンに各々好き勝手に分乗して帰路につくことになった。
シャア「例の件、よろしく頼む。」
アムロ「そちらもな。」
車の窓越しでの短い会話と互いの目礼の後、車はゆるりと進み出す。
その時、窓からローラが顔をひょこりと出してこう言った。
ローラ「キッチンのテーブルにある物を置いておきましたから、良ければ後で召し上がってください。
今日はとっても楽しかったですよー!」
彼女の笑顔も声もあっという間に小さくなるほどリムジンは先まで行ってしまったが、男たちはその光景をいつまでも見送っていた。
クルーゼ「いい宴でしたな。」
ゼクス「当初は彼女を人質にして彼らと一戦も辞さない覚悟でいたものを、何をどう間違えたのか、仲良く酒を酌み交わす事になろうとは・・・」
不敗「完全に嵌められたな。あの少女、意図してこのような流れにしたのなら相当な策士だぞ。」
ガトー「あのようなはかりごとなら、いくらでも謀られましょうぞ。」
グエン「私に対する嫌味ですか?確かに私のした事は可愛げガありませんでしたが・・・」
シャア「分かっているならそれでいい。まあ、当初の目的以上の成果があったのだから良しとしよう。アムロと交わした約束の内容は追々話すとして・・ギンガナムが見えんが?」
後ろからギンガナムが何やら紙袋を抱えて持ってきた。
ギンガナム「全員見るがいい、この箱の中身を。ローラのお手製である!」
紙袋から白い小箱を手渡され、中身を確かめる一族。各人それを手に取った瞬間表情が変わった。
手の平ほどのハート・チョコと手紙が入っていた。
『14日は過ぎちゃいましたけど、バレンタインデーのチョコを作ってみました。大人の皆さんには甘いものはどうかとも思いましたけど、良かったら食べてみてください。』
皆、各々の表情と同じ清みきった夜空を見上げていた。彼らの目には、誰もが同じあの人の顔があの大きな星空の中に映っていた。
ローラ・ローラ
あの夜空に、笑顔できめっ!
その頃、送迎リムジンのコンボイでは・・・
先頭車両にはフラン、ジュドガロ、ヒイロ、二番車両にはドモン、ウッソ、カミーユ、コウ、シロー、
最後尾はアムロ、ロラン、キラにアルがそれぞれ分乗している。因みにこのリムジンは前後対面席になっており、
それぞれ向き合って座っている。余談だがフランはヒイロと、ローラはアムロと対面している。
フラン『何よこの子さっきからあたしの事、冷めた仕草で熱く見て。ちょっと目をそらしなさいよ、でないとあたしも目のやり場に困るでしょ。
良く見るとなかなか可愛い顔してるけど、暗いと言うか、怖いと言うか、取っ付き難そうな雰囲気よね。
ア、ひょっとしてこの胸元が気になってるとか・・・このイブニングドレスとっても高そうなのをバックレてそのまま着てきちゃったのよね。
女の色香に弱い年頃だろうし・・・実はあたしの
スレンダーなボディに内心メロメロとか・・・ローラの豊満な体とは違う女を感じたか!?』
ヒイロ「なぁ、あんた・・・」
フラン「『お、向こうから話題振ってきた!会話を弾ませてお姉さんと仲良くなろうって魂胆ね!よおし、いっちょその誘いに乗ってあげるわよ!』
なぁに、坊や。」
ヒイロ「胸元の淋しそうな服だが、寒くないか?」
フラン「・・・へ?」
ヒイロ「その薄い胸板で明け透けの服だと寒いだろう。この襟巻きを使え。」
ジュドガロ「どひゃひゃひゃーっ!!」
脇で2人が大笑い。
ジュドー「おい、言ってることが正直過ぎるぞ!」
ガロード「その台詞じゃ全然親切になってないって・・・ぷぷぷ」
2人「だははははははーっ!!」
そのやり取りを聞いて顔を真っ赤にするフラン。
フラン「あんた達ぃ、あたしの”女”をなんだと思ってんのよー!」
ヒイロ「気にするな、リリーナと比べても変わりは無い。普通の女性だ。」
彼女の事は知っているが自分よりかなり年下。それと比べて変わりが無いじゃ、なんの発育も無い貧相女と言われているようなもの、フランのネガティブな発想が
そう結論付けた。勿論ヒイロに悪気は無い。
フラン「あんたねぇ、もうちょっとデリカシーってもんを身につけなさいよ!そんな事ズケズケ自分の彼女に言ったら逆上して刃物持って追いかけられるわよ!」
ヒイロ「何、なんでそれを・・・」
急にこめかみから汗が滲み出すヒイロ。どうやら身に覚えがあるらしい。
ヒイロ「いつもそうだ。リリーナに気を使ってあれこれ言ってみると、急に会話が止まったり、何やら淋しそうな作り笑いを見せて『気にしないで・・・』と言うんだ。
その後必ずあの眉毛女がなたを持って俺を追いまわす、『少しはデリカシーって物を持て』と・・・
教えてくれ、俺は後何回話せば彼女は心のそこから笑ってくれる!俺は後何回話せば、眉毛女のミンチを作らずにすむ・・・」
暑くも無いのに汗をだらだらかく3人。
フラン「あのさぁ、この子・・・」
ジュドー「しょうがねえよ、だって・・・」
ガロード「兄弟の中でも謎が多い人なんだ。」
フラン「・・・あんた、リリーナさんに何を言ったの?」
ヒイロ「それは・・・」
運転手「すいません皆様、急ブレーキします!猫が飛び出したーっ!」
四人「ぎゃあー!!」
(大分間があきましたが又書きます。お嫌でなければ良しなに)
翌朝。ガンダム家の食卓。
昨夜の疲れがやや残った表情の兄弟たち。けだるい感じでもそもそと食事をしている。
今日は珍しくギンガナムがいないのでいつもよりは静かである。
シロー「イヤー、昨日の急ブレーキにはまいったなぁ。」
カミーユ「対面に座っていたシーブックに頭突きをかましてしまった。」
シーブック「お陰でまだこぶが痛むよ。」
ジュドー「ヒイロ兄なんかフランさんの胸に突っ込んじゃったんだよな。」
ヒイロ「すごく痛かった。」
ガロード「だからって『薄い胸などといって悪かった、実に強靭な胸板だ』ってのは誉め言葉になんないぜ。」
ヒイロ「それで怒っていたのか。国語をもう少し勉強しよう・・・」
ドモン「あれしきの事で取り乱すとは軟弱な・・・そこへいくとアムロ兄さんは何事もなかったようで大したものだ。
なあ、アムロ兄さん!」
アムロ「・・・ああ、当然だ。」
アル「僕はキラ兄ちゃんにぶつかって一緒に気絶してたみたいだけど、ロラン姉ちゃんハ大丈夫だった?」
ロラン「・・・ええ、平気、でしたよ。」
ウッソ「本当に良かったですよ。対面がコウ兄さんだったら、車内は
血の池地獄でしたよ。」
コウ「・・・(反論する気力なし)」
キラ「・・・(無言で同意)」
だがこの時、新聞を読んでいなかったら、皆に背を向けてたくあんを刻んでいなかったら、アムロとロランはその真っ赤な素顔をまじまじと
見られていたことだろう。二人は思い出していた。昨夜のあのパニックの状況を・・・
アムロはあの時の記憶を反芻していた。打ち消そうとしても思い出してしまう、あの場面・・・
急ブレーキで乱痴気騒ぎになる車内。金切り声を上げるドライバー、中に浮いたアルを必死に押さえようと
Gに抗うキラ、そして今にも自分に飛び込みそうなのを必死に堪えるロラン。アムロももしもの時に備えて足場をしっかり踏ん張った。
するとやはり、女の力では急制動の慣性には勝てず、ロランが物凄い勢いで飛んできた。
ほぼ同時に強烈な衝撃と視界のブラックアウトがアムロに見まわれた。
自分もほんの数瞬、気を失ったろうか・・・段々回復する意識と共にアムロは思考を回した。視界も徐々に戻ってきて、周りの状況を確認しようと目を凝らしたとき、
彼はこの時、自分がとんでもない状況に置かれているのに気づいた。
自分の全く眼前には、ロランの顔意外見えなかった。しかも麻痺していた知覚、触覚が戻って初めて解った。唇に何かが触れている、いや、触れていると言うより密着している。
この感触、この温もり、この、先ほど味わったワインの味・・・
この時アムロは、ロランとキスをしていたのだ!
密着する腰と腰、重なる胸と胸、絡み合う指と指、そして、結びつく唇と唇・・・
これほどまでに完璧に抱き合う事になろうとは作り事の世界でもない限りあり得ないと思っていたが・・・
そう、昔見たアニメで
主人公の男の子が憧れの年上女性の深酒を諌めようともみ合いになり、偶然ディープなキスをしてしまうシーンがあり、
あまりに作りすぎた話だとせせら笑ったものだが、まさかこの身に実際に起こるとは・・・
身動きが取れず固まるアムロ。
しかし、ロランの柔らかい、甘やかな唇を心の片隅で楽しんでいる自分に気づいた。
アムロ『いかん!元は弟で、第一近親者と、事故とはいえ粘膜の接触などと!』
そんな事を考えていたとき、ロランのまぶたが開いた。彼女も気を失っていたらしく、暫く呆けていたがやがて事態を認識したらしく、目を大きく開いたかと思うと
そのまま硬直してしまった。
見詰め合う2人・・・
我に返ったアムロは焦って愚挙に出てしまった。
アムロ「いかん、離れろ!」
本人はそう言ったつもりだったのだが声になるはずもなく、それどころか互いの舌と舌が絡み合ってしまった。
びくうっ!!
ロランの体が感電したかのように跳ね上がり、その勢いで二人の体は離れた。
席からずり落ちて呆けているアムロと、紅潮した頬と潤んで涙ぐんだ目で何かを訴えるように兄を見つめるロランだけに、
永遠の一瞬ともいえる時間が過ぎていった・・・
『後で懺悔に行って来よう・・・』
そう考えるアムロであった。
最終更新:2018年10月29日 14:03