台所にて
一杯のコップの水を見つめるキラ。実はこれ、先ほど呪泉郷の修行から帰ってきたサイサイシーに
汲んできてもらった泉の水である。またしてもフレイにぶっ掛ける事を画策しているキラなのだが、
ただ源泉をかけても効果が薄いのは先般の事例で明らかなのでキラは一策を案じ、
沸騰させて余計な水分を飛ばし、濃縮した泉を直接飲ませてしまえば飛躍的に効能は向上するはずと結論づけ、早速行動に移した。
ポリタンク一個分はあった泉水を沸騰に沸騰を重ねてできた濃縮娘溺泉が完成し、コップ一杯の水として今ここにある。
ものはできた。後はそれをどうやって飲ませるかだが、なかなか良案が浮かばない。
お茶にして飲ませるか、スポーツドリンクの粉に混ぜてスクイズボトルに入れて差し出すか、それとも・・・
「そういえば昼食の時、いつも小型の魔法瓶にミネラルウォーターを入れて持って来ているのを見てたな。
丁度同じような形の物があったはず、確か僕の部屋に・・・」
そういうとコップの水を置き去りに、キラは二階の部屋に行ってしまった。
そして入れ替わりに、苦しそうな顔をしたロランがやってきた。
「だ、だ、団子が喉に・・・み、みず・・・あ、あった!」
濃縮版娘溺泉を一気にあおる。
「ぷはぁ、苦しかった・・・ん、何だか体が変な感じ・・・あれ、これは一体!?」

「きゃぁーっ!!!」
女性の叫び声を聞いてキラが下に降りてくると、良く見知っている者の変わり果てた姿が台所にあった。
キラ「ロラン兄さん!?まさかあの水を!!」
ロラン「あぁ、胸が、おしりが・・・」
コウ「どうしたん、・・・ぶっ!!」
どてっ
その場にへたり込み、はちきれんばかりの胸元を押さえて目を潤ませているロランを見た途端、
たまたま台所に来たコウは鼻血を吹いて倒れてしまった。

兄弟s宅茶の間。
ロランとコウの二人を除き、他の全員が一同に介して家族会議を開いていた。
議題はキラの責任追及とロランを元に戻す方法の模索。
アムロ「聞けばあの後、ドモンがやかんのお湯をかけてみたけど男に戻らなかったと・・・」
シーブック「何せ1000倍濃縮ですからね、相当の効き目でしょうね。」
ヒイロ「サイサイシーに頼んで今度は男が溺れた泉を持ってきてもらえばいいんじゃないか?」
ドモン「実はそちらの泉はここ最近枯れているのだそうだ。いつ又沸いてくるのか見当もつかないと
地元民も言っている。だから奴はやむなく娘溺泉で修行をするはめになったそうだ。」
ガロード「えーっ、じゃあ当分は女のまま!?」
ジュドーがこそこそ呟く。
ジュドー「なんかそこはかとなく嬉しそうじゃないかガロさんや。」
ガロード「へっへっへっわかりますかジュドさんや。」
ジュドー「これはその、言っちゃぁなんだがいきなり・・・」
ガロード「おいしい展開になりましたなぁ。」
他の兄弟にばれぬようエヘラエヘラしている2人だった。
カミーユ「しかしそんな物をほんの一時とはいえ放置するとは・・・迂闊だぞキラ!」
ウッソ「ロラン兄さんならまだしも他の人が、例えばドモン兄さんが飲んでいたらとてつもなくおかしいですよキラ兄さん!」
やかましい、とウッソを怒つくドモンを見ながら兄弟sはうっとなった。
ドモンの女装化・・・
アムロ「ドモンの三つ編みスカート姿はともかく、話を元に戻すと、ロランを男に戻すにはできるだけ早いうちに
あらゆる手段を用いて行う事、そしてこの事は外部漏洩防止の為ロランに関する一切を緘口する、特にシャアなどには絶対気づかせるな。
なお、ロランの寝姿やシャワーシーンなどを画像にしてインターネット掲示、生写真にして一儲けしようとか考えている奴にはキングオブハートの名にかけて
鉄拳制裁がなされるからそのつもりで。」
ドモン「承知ッ!!」
ジュド・ガロ「ギクッ!!」

アムロ「以上の方針を以って皆には行動してもらう。人員は3つのグループに分ける。
シローが長でドモン、カミーユ、ヒイロの四名は護衛班、シーブックを長としてキラ、ガロード、ジュドー、ウッソの5名は
解析班、そして俺が長でコウ、アルの三名は対策本部、と以上のように編成する。護衛班はシャア一族の魔の手からロランを守れ。手段は問わない。
解析班はロランを元に戻す方法を科学的見地から見つけ出せ。呪いの泉なんて非科学の力に頼らずにだ。事は急を要し1秒たりとて無駄にできない。
心して掛かれ!」
一同「はっ!」
解散、とアムロが手を振ると皆一斉に散っていった。その時を同じくしてお風呂からロランが上がってきた。
少しでも長くお湯に浸かっていれば或いは男に戻れるかもしれないという少ない可能性にかけては見たが、
結果は彼女を見れば一目瞭然だった。
アムロ「こらロラン、バスタオル1枚でこのような所をうろつくなど、兄弟の目を気にしろ。」
ロラン「あぁ、すいません、気がつきませんでした。注意します。男物の服が合わないものですから。」
アムロ「今方策を纏めて行動に移した。後は皆に任せろ。それと今後はアルを常に同行しろ。いろいろ手助けになるはずだ。」
アル「よろしくね、ロランお姉ちゃん。」
丁度そこへ神妙な面持ちでキラがやって来た。
キラ「ロラン兄さん、ごめんなさい、僕、僕・・・」
ロラン「いいんですよキラ、勝手に人のものを飲んだ僕も悪いんです。自分一人が悪いと決め付けないで。」
キラ「ありがとう兄さん。」
はらはらと泣き出すキラ。
するとロランはキラを自分の胸に抱き寄せた。
ロラン「気にしないで、誰も貴方を責めたりしませんよ。」
アムロ『おいおい、薄布1枚の姿でそんな大胆な・・・早く女の体を自覚して欲しいものだ。だがもしかして、体ばかりか心まで女になりきっていたりしないだろうな。」
二人を見ながら心配するアムロだった。

2階からヘロヘロとコウが降りてきた。鼻血はやっと収まったらしい。
ロラン「あ、コウ兄さん、大丈夫ですか?」
そういってコウに振り向いた時に、またやってしまった。
キラのあの意味もなくベルトと金具の多い服にタオルが引っかかり、更にロランも一歩前に踏み出してしまった為に
ハラリ・・・
その生まれたままの姿はコウの眼前に完全に露わとなり、しなやかな肢体、揺れる乳房、ピー(規制します)が彼の脳にインプットされる刹那、
思いっきりそのスイッチが入れられてしまった・・・

コウ「・・・ブブブーーーッッッ!!!!!」

彼の体のどこにこれだけたまっていたのかと言うくらい怒涛の大出血をぶちかまし、辺り一面全てを朱に染めた。
茶の間はその為当分の間使用できなくなり、後に『血の間』と兄弟の間で長く語られる事となる。
アムロ「ったく、これだからチェリーは!」

ガンダム家三男壮絶大出血の後・・・

直撃を受けたロラン、キラ、い合わせてしぶきを受けたアムロ、アルはこの後入浴。
因みにアムロの意向でロランとアルは一緒に風呂に入ることに。

本筋に戻り、ロランの性をかけたガンダム家の”裏オペレーション・メテオ”は開始された。
しかし、この情報は某一家に察知されていた。

シャア「いかんな、フラン嬢。他人の家の中を盗み見るなど。」
フラン「ふぉふぁふぇふぁひふふぁー!(訳:お前が言うかー!)」
シャア「しかし君のお陰で、ロラン君の思いもよらない出来事を知る事ができた。感謝する。ついでにこのネガも貰っておくよ。」
フラン「ふぁーっひゅうふぁんふぉふおっふへふぁーっ!(訳:アーっ、夕刊のトップネタ-ッ!)」
シャア「カイには怪しまれないようにフラン嬢のことは言いくるめておこう。連れて行け。」
ガトー「承知!」

ガンダム家”裏オペレーション・メテオ”作戦本部室。
という名の台所。
夕食の準備で包丁を使っているロランと、椅子に座って今更朝刊を読んでいるアムロ。
別に読みたくもないのだが今はこれが必要なのだ。これを立てておかないと、丁度真正面の位置に
ロランが居て、鼻歌交じりに大根を切る度に彼(女?)のお尻が悩ましいほどに揺れるのが目に入ってしまう。
とにかく目のやり場に困る。
ただでさえ、毎日使っているシャンプーの匂いが今日はやけに芳しいというのに、体のラインがくっきり出るような服を着て
あまつさえその上からエプロンなど、理性があってもこれはたまったものではない。
だから、というわけで時々新聞の陰からこそっと覗き見してはさっと隠れるアムロだった。

アムロ『ええい、たかだか弟が妹になっただけで我ながら情けない!女性との付き合いならいくらでも有ったのに・・・』

フラウ、セイラ、ララァ、ベルトーチカ、仕事上だけだがチェーン、色々思い出してみたが、いずれもうまくいかなかった云々は別にして、
今この時ほどこんな、甘く切なく酸っぱいような気持ちになった事があっただろうか・・・

「・・・ん」

なんだこのレモンのような初恋の味は!?

「・・さん」

俺はときめいているのか!?

「・いさん」

ばかな、血のつながった兄弟でそんな事!

ロラン「兄さん!」
アムロ「うわっ!!驚いた、なんだロラン、こんなに近くで!」
ロラン「もう、何度も呼んでるのにへんじしてくれないんですから。そんなに一生懸命読んでるなんて、何か面白い記事でも有りましたか?」
アムロ「あ、あぁ、あの、その、こ、ここにタマちゃん、タマちゃんの記事がな・・」
必死でごまかすアムロ、すると横から覗き込むようにしていたロラン、すっと後ろに周るとアムロの背中に持たれかかり、
あごを肩に乗せて新聞を見た。
ロラン「わぁ、かわいい!何だかいつも見るのと違ってすごくかわいく見えます。」
その時アムロは硬直していた。ロランの横顔最接近、髪の感触と香り、吐息、そして何より
背中に当たる胸の感触・・・それらを一気に体験させられて。
アムロ『ロラン頼む、女である事を自覚しろ!無防備過ぎる!しかもいつもより行動が女染みてる!
ひょっとしてゲシュタルト崩壊まで起こしてるのか!?・・・・・だがこの気持ち、不快ではないむしろ、心地よくはある。
まさかこの歳で味わうとは思ってもみなかったがこれが、これが・・・妹萌え・・・というやつなのか・・・』

一瞬心の中で超えてはいけない一線を踏み越えたいけない兄、アムロだった。

裏オペ・メテ(略します)防衛局室、という名のヒイロの部屋。
家の内外の各要所に配置した監視カメラを通じ、複数のモニターで監視活動を行う
シロー、ドモン、カミーユにヒイロ達であったが、今はある一ヶ所を映した画面に
皆釘付けになっていた。アムロとロランの嬉し恥ずかしBOYS BE・・・ショウが上演されていた。
シロー「兄さん、すっかり舞い上がっているぞ。」
ドモン「元は男の女にあれほど落ち着きをなくすとは・・・指導不覚悟!」
ヒイロ「しかしロランの様子もおかしい。普段の彼の行動パターンから大きく逸脱している。」
カミーユ「あれは明らかに、女の子の振る舞いだよ!」
シロー「まさか、身体ばかりか精神も女化!?」
カミーユ「あり得ますよ。」
ドモン「男としての自覚がなくなっていると?」
ヒイロ「恐らく・・・今自分がしている事に何の疑念も持っていないだろう。」
ドモン「恐ろしい。あの泉水、つくづく飲まなくて良かった・・・」
言われなくても他の3人は心底そう思った。
ドモンの女体化。
カミーユ「おえ・・・」

画面中の台所の中でいちゃつく2人。新婚さんの生活を彷彿とさせる場面が繰り広げられていたが、
いきなり舞台は急展開した。台所が突然煙で覆われ何も見えなくなった。
シロー「何ィ、しまったぁっ!!」
他のモニターを見回すと全て画面が砂の嵐と化していた。
ヒイロ「赤外線モードに切り替え、状況確認、侵入者と思しき熱源2、約1名を捕捉した模様!」
シロー「ちぃ、完全に出し抜かれた!ドモン、窓から突貫しろ!ヒイロはそこから支援行動、
カミーユは俺に続け、状況開始!」
3人「了解!」
ドモンは窓を蹴破って飛び降りた。シローとカミーユは装備を両手に階段を駆け下りていった。
ヒイロはモニターを睨み続ける。
ヒイロ「閃光手榴弾を使ったか、熱源が感知できない!」

窓から庭に降り立つや否や、台所の窓をぶち壊して突貫挺身するドモン。飛び蹴りで
屋内に進入するとあたり構わずパンチと蹴りを繰り出す。皿や茶碗の破壊音が鳴り響く。
台所の入り口ではシローとカミーユがサブマシンガンを構えて待機していた。赤外線暗視眼鏡を用いて煙と光の中を直視している。
シロー「ドモンが斬り込んだな、そろそろ閃光が小さくなってきた。よし、賊と思しき熱源2、確認!アムお兄さんと
ロランは近くにいないな、射撃用意、銃身が焼きつくまで、撃てぇぇっ!!!」 
射線上にドモンがいるのもお構いなしに2人はフルオートで撃ちまくった。
ドドドドドド!!

ヒイロ「閃光減少、画面復帰、熱源再確認・・・これは!!」
モニターを見て血相を変えたヒイロはインカムに怒鳴った。
ヒイロ「03より00へ、射撃中止、侵入者は約1名を拉致して撤退した模様、繰り返す、侵入者は・・・」

煙も晴れて視界が開けた台所には、ドモンが放った拳と蹴りによる破壊の跡、シローとカミーユが穿った無数の弾痕、
芋虫の如くふん縛られて転がっているアムロと、等身大の二体のモビルスーツのダミーだった。
カミーユ「このタイムラグで賊はもう我々が捕捉できない距離まで逃げてますね、多分・・・」

ガンダム家を猛スピードで走り去る一台の朱塗りの乗用車。中には運転手のギンガナム、助手席にガトー、
後部席には右にシャア、左に御曹司、真中には居辛そうにろらん、と5人乗っていた。
グエン「手荒な行いだった事は謝る、ローラ。だが君の現状を利用しようとした者もいたのでね。」
シャア「アムロに話しても分かってもらえないと思ってね、仕方なくこのような手段を取った訳だ。理由は我々の家に来てもらえばわかる、ロラン君。」
ロラン「そんなに擦り寄ってこないで下さいグエンさん!こんな事をして正当な理由なんてあるんですか、シャア大佐!」

シャアの屋敷。
応接間に通されたロランが見た者は、ソファにどっかりと不遜そうに腰を下ろしている
東方不敗と、俯き加減でロランにバツの悪そうな一瞥をくれたフランであった。
シャア「実は彼女が君の一大事を夕刊の見出し記事にしようとしていたのを我々が見つけてね。」
ガトー「我が身の立身の為に友人を売る行為を見過ごす訳にはいかんのでな、今ここにいてもらっているのだ。因みにその時のネガがこれだ。」
ギンガナム「ずるいよなぁ、人を踏み台にするなど!わかっているのかフラン嬢!」
正論だけに言い返せず、フランは下を向いて唇をかんだ。
不敗「ふん、反論できぬか、この悪党め。それもこれもお前が阿呆だからだ!」
ロラン「ちょっと待ってください皆さん!」
そう言うとロランはフランの横に座り彼女の肩を抱いた。
ロラン「確かに彼女は人として間違った事をしたかも知れません。ですが僕は彼女が今の仕事に一生懸命で大好きな事も知ってます。
わき目も振らずに頑張ってきた為に時として物事の善悪の区別もつかないほどのめり込んでしまったと僕は思います。」
シャアs「・・・・・」
ロラン「誰だって間違いは起こすものです。僕だって仮に彼女と立場が入れ替わっていたら同じ事をしているかもしれない。
それは皆さんも同じでしょう。」
シャアs『ギクッ』
ロラン「僕は彼女を赦します。いいえ、そもそも事の原因はあの水を飲んで女になった僕にあります。だから皆さんも彼女を責めるのは止めて
この事は忘れてください。」
両手で顔を覆っていたフランが、流す涙もそのままにロランの胸にむしゃぶりついた。
フラン「ごめんなさいロラン、あたし、どうかしてたの!」
ロラン「いいんだよフラン、すんだ事だから。もう泣かないで。皆さんお願いします、彼女を赦してって・・えぇ!」
ふと見上げるとシャア達も感涙に咽び喘いでいた。
シャア「なんという労りと友愛、ララァのように私を導いてくれ・・・」
ガトー「心、洗われました。」
不敗「ロランには教えられたよ。人間も自然の一部だと。」
ギンガナム「すごいよロラン、さすがガンダム家のお姉さん!」
グエン「これで何故私の横にいない、ローラ!」
ロラン「あの、もしもし・・・」

シャア「すまないロラン君、フラン嬢を出汁に君を連れてきて如何こうしようと考えていたのも
事実だ。だが今一つ、君をここへ連れてきた理由もあるのだよ。それを今から話そう。二人とも、入り給え。」
後方の扉からゼクスとクルーゼが入ってきた。良くみると二人の仮面の下からそれぞれ二筋の滴が流れていた。
ゼクス「ぐす、それでは説明させていただきます。ロラン君、君はローラ・ローラが社交界で絶大な人気を誇っているのを知っているか。」
クルーゼ「謎の美少女ローラを口説き落としたいと願う名士の方々は五萬とおられてね。誰が先にローラをモノにするかと密かに小競り合いが生じているほどなのだよ。チーン!(鼻をかむ音)」
ロラン「・・・えぇーっ僕をですか!」
クルーゼ「それに近頃は変な噂も出始めた・・・ローラ・ローラに優しくしてもらえば幸運が訪れると。」
ゼクス「君はこの前のパーティでさる中年男性の口付をその右手に貰ったね。」
ロラン「はい・・・とても気味の悪い出来事でした。」
ゼクス「彼は有名な株主でね、次の日に彼の持ち株がいきなり高騰したそうだよ。」
クルーゼ「先月の舞踏会でとある老人のダンスのパートナーを勤めた・・・」
ロラン「足ばかり踏まれて大変でした。」
クルーゼ「我々の関連企業の会社の会長なのだが、あの後新製品の売上が爆発的に伸びて、赤字だった計上利益を
大黒字にひっくり返してくれたよ。」
ロラン「ええ、そんなまさか・・・」
グエン「話に割り込ませてもらうが、この例は枚挙に暇が無い。君の麗しい右頬にキスしたデブ親父がいただろう。」
ロラン「思い出したくない過去の一つです、それは・・・」
グエン「私もだ。あいつは君の兄上の会社に出資している財閥の重役だったが、後の株主総会で頭取に任命された。」
ロラン「あの、ひょっとして僕・・・」
シャア「ここまで聞いて分かったと思うが、君は期せずしてこの業界の”あげまん”になっていたのだよ。最早伝説を作った存在であると言ってもいい。」
いつもでれでれしているグエンやギンガナムまでが真顔でいるあたり、冗談を言っている訳ではないと悟ったロランだった。

ガトー「そうした事でローラ・ローラを我が物にしようと企む輩が多く、近頃は至る所に
君を狙う捜査網が広がっているのです。」
シャア「実は君の家にもその網が掛かりかけていたのだが、その時は幸いまだ男であったし、
なんとか我々の情報操作とギンガナムの押し込み護衛で難を切り抜けてきた。」
ロラン「え、じゃあ毎朝家に来てキラの朝食を横取りしてたのは、裏にそんな理由が・・・」
思い当たる節はあった。彼が来た日は必ずドモンやヒイロ辺りが『家の周りに何か妙な人の気配を感じる』と
いぶかしんでいた。最もギンガナムの起こす騒動で有耶無耶になっていたが・・・
グエン「この問題については何度もアムロ殿と何度も協議しようとしたのだが、その、ローラに関して我々は
彼に対して信用が無くてね。全く取り合ってもらえなかった・・・」
不敗「この馬鹿がせめて気を利かして事の成り行きを説明してもいいものを、取りあえずの護衛と朝食を済ませると
満足してさっさと帰ってくる始末だ。」
ギンガナム「だがロランの作った朝飯のお陰でいつも絶好調である!」

グエン「当たり前だ!そのような役目、本来なら私が勤めるものをそれを・・・」
ガトー「あの時のじゃんけんは恨みっこ無し、ということではなかったのですか、グエン・ラインフォード。」
クルーゼ「しかも貴方は少し遅出し臭かった。ズルはいけませんな。」
不敗「ふん、だからこのような大事な役目、じゃんけん如きで決めるなどとせずアミダすれば良かったのだ!」
ゼクス「そのアミダを書いたのは師匠、貴方でしたな。あの辺りは手口があからさまに怪しいというもの。」
シャア「ええい、このような時に互いを疑い合うなど・・・完璧な作戦にならんではないか!」
何だかロランを肴に口喧嘩を始めたシャアs。皆一様にいらいらしていた。
ロラン『皆さんとてもいらついてるな、いつになったら帰れるのかしら。こんなに暗くなったし、もう7時半過ぎてるし・・・
みんなは夕飯どうしてるかな・・・夕飯、あ、そういえばなるほど・・・』
ある事に気づいたロランは優しく微笑みかけてこう言った。
ロラン「あの、皆さんここでひとまず休題にして夕飯にしませんか?お腹がすいていらいらしているように見えるようですし、
話し合いは穏やかにしたほうが良いと思います。材料があれば僕が何か作りますから・・・」
シャアs「何、ロランの手料理!それは是非とも!!」
途端に目の色を変えるシャアsであった。
そこへこそこそ耳打ちするフラン。
フラン「いきなりうまく手なづけたわね、これを糸口に隙を見て逃げる?」
ロラン「そんな事をしても無駄だと思うよ。それよりもっとうまい方法がみつかりそうなんだ。」
ロランの脳裏にはある絵図が描かれつつあった。タイミングを見計らって兄達をここに呼び寄せよう、そして・・・
ロラン「台所をお借りしますね。フラン、手伝って。」

所変わってガンダム家
台所の片づけがやっと終わり、今は各人のガンダムの出撃準備を行っていた。
アムロ「ロランは必ず奴の屋敷の中だ、火力強襲で奪還だ!」
みればRX-78の装備は右手にライフル、左手にバズーカ、体にガンダムハンマーを巻きつけ
鎖と本体の間にビームジャべリンを挟み込んでいる。腰には何故かジャイアント・バズが無理やり装着されていた。
シーブック「この前の対戦の鹵獲火器まで・・・やり過ぎだよ、アムロ兄さん。」
アムロ「在庫の武器と弾薬は持てるだけ搭載しろ!金を惜しむな、なければどんどん調達しろ!」

ジュドー「なんかすげー気合はってるけど・・・」
ガロード「弟を拉致されて怒り狂う兄・・というよりも」
ジュドー「いうよりも?」
ガロード「カミさん寝取られて嫉妬に狂うダメ夫ってなかんじ。」
ジュドー「いや全く。これだけの火力を集中したらロラン兄貴も無事ですまないって言っても聞かねーし。」
ガロード「あの調子じゃロラン殺して俺も死ぬって言いかねないぞ。」
2人「はぁー、やれやれ。」

丁度その時格納庫にアルがやって来た。片手に受話器を持っている。
アル「アムロ兄ちゃん、電話・・・」
アムロ「格納庫は危険だから来てはいけないとあれほど、それに今忙しいから後にしてもらいなさい!」
アル「でも、ロランお姉ちゃんからだよ。」
その一言で一斉に騒然とする兄弟たち。全員アルに注目し、整備の手を止めた為一気に格納庫が静かになる。
アムロ「そう言う事はまず初めに言いなさいっもしもし、ロラン!?」
アルから受話器を毟り取り電話に出るアムロ。もううろたえまくり全開である。
アムロ「手荒な事はされてないか!?今すぐガンダムで乗り込んで・・・って、何、いらない?後1時間もしたら呼ぶから
空身で来い?それはどういう・・・正装をして来るように・・・意味がわからな・・・考えがあるから言う通りに・・・
わかった。そうしよう。大丈夫なんだな、そうか。うむ」
受話器を切るアムロ、その周りに弟達が集まった。
アムロ「作戦を変更する。ガンダムを仕舞ってみんな正装に着替えろ。奴の屋敷に表玄関から入るぞ。」

フラン「ちょっと、ご兄弟を呼んで大丈夫なの?大騒ぎじゃすまないわよ。」
ロラン「平気だよ、きっと上手くいく。さて、携帯は仕舞ってと・・・」
フラン「胸の谷間に隠しておいたとは・・奴等も気づけなかったわね。」
ロラン「もしもの事を考えてしこんでおいたの・・・あ、フランお鍋吹いてる!」
フラン「あらやだ、いけない!アチチ!」
ロラン「こっちはチンジャオロースーできあがりっと。」
フラン「電話の片手間で、やるわねロラン!こっちもブイヤベース気合入れるわよー」
ロラン「次は鴨肉のローストっと・・・材料がいいから遣り甲斐が出るな。」

この状況を充分楽しんでいる二人だった。

女達の手際は大した物で、僅か1時間の間に2人はテーブルにクラスを掛け、
食器を用意し、調理をしながら給仕も行いシャアsに食前酒を注いでやったりした。
見目麗しき女性の立ち振る舞いは充分過ぎるほど彼等の目を喜ばせた。
差詰ロランのエプロン姿など我が家で拝めるなど思ってもみなかった6人の男たちは今やこの世の春を
謳歌していた。食事の前から酒もどんどん進む。
シャア「今宵のブランデーが甘く味わえる。ナナイの時とはえらい違いだ。」
グエン「ああ、ローラが前を通りすぎるだけで爽やかな香りが・・・」
ガトー「見苦しいですぞ、その様なあからさまに嗅いでは。しかし、あの時と同じ、可憐だ。part1 >>829参照)」
不敗「ふん、いつも同じ面を拝んで飲む酒とは雲泥の差だ。」
ギンガナム「いや全く。我輩も師匠の顔を見てそう思ったところだ。」
クルーゼ「私は彼女の前ならばこの仮面を脱いでも良い所存だ。」
ゼクス「ほう、貴公もか。」
最早全員耳に聞こえない効果音『でれ~ッ』が頭上に鳴り響いていた。

ロラン『良し、この調子で後は兄さん達が来てくれれば・・・』

グエン「これだけ豪華な料理を出していただき、かような普段着でいただいては
まことに失礼。我々はこれから着替えてきますので貴方達もドレスアップしていただきたい。
この階段の登った右側に女性用のドレスルームがあります。晩餐会のときに着替えてそのまま衣装を置いていく
ご婦人方が多いので、古着で申し訳無いが好きな物を使って構わない。」

というわけでお嬢様方二名ただ今試着中。
フラン「ねぇ、今のうちに逃げたほうがいいんじゃない!?」
ロラン「僕達の足じゃどうせあっという間に連れ戻されちゃうよ。それにこの先の問題も解決できない。ここの皆さんも今日は
変な事をしそうにないし・・・あ、そのカクテルドレス似合う!」
フラン「あっ本当だ・・・ってこれでいいのかしら。ロラン貴方このチャイナかわいいわ。着てみて。」
ロラン「うん、これね。ちょっと、そんなに見ないでよ」
フラン「あんたって胸もお尻も大きいわね。女のあたしがドキドキしちゃう。今度ロランの弟君に頼んで泉の水作ってもらおうかな。」
ロラン「ええ、フランもスレンダーでいい線いってるのに、もったいないよ。」
フラン「む、持つ者が持たざる者に対して言う台詞ね、なんかむかつく!そういう事をいわせるのはこの乳か!?」
ロラン「きゃあ、そんなフラン、やめてぇっ」
フラン「この、この、よいではないかぁ」
ロラン「あれぇ、おやめになってぇ、あん」

何はともあれ、この状況を楽しんでいる二人だった。

丁度その時、屋敷の玄関前。
余所行きの一張羅に正装して戸口で身構える兄弟s。一番前には右正拳を腰溜めに
地面を大股に踏ん張るドモン。
ドモン「俺の殺気を感じてまず最初にここに現れるのは師匠に間違いない。ここで一戦交えるから
その隙に皆、頼む!」
弟達「了解!」
アムロ「・・・骨は拾いに来るぞ。後で。」
シロー「ム、扉の向こうに人の気配が!」
ドモン「ドアノブに手を掛けたな、来るぞ!」
ガチャ、ギイ~
重く大きな扉が開くとそこには・・・
カクテル・スーツに身を包み、背筋はぴんと伸びているが、表情が既に酔っ払い親父の
東方不敗がいた。片手にはシャンパングラスが掴まれていた。
不敗「よーく来たなー馬鹿弟子がーッ今日は愉快だぞーッまあ入れーっ!!」
普段の闘争心も覇気も殺気も微塵も無く、お陰で攻撃するタイミングを逸したドモンだった。
不敗「まあそう堅くなルナー!はよ来いー!」
ドモンの首根っこを腕で掴んで、そのまま奥に行ってしまった不敗だった。
ヒイロ「・・・攻撃の意思は全く見受けられない。」
カミーユ「シャアの家なのにザラッとした感じがしません。」
アムロ「ああ、むしろ和やかな雰囲気が伝わってくる。ロランが大丈夫と言ったのはこの事か。」
キラ「とにかく中に入りましょう。」

賑やかな笑い声が応接間から聞こえる。あそこにロランがいる気配が・・・
アムロがその扉を開く。

シャア「遅いぞアムロ、待ちくたびれたよ。」
アムロ「何の騒ぎだこれは!?この状況でパーティなど!」
シャア「積もる話もあるのだ、こちらへ来い。ローラ嬢、よろしく頼む。」
ローラ「はい。」
後ろから声がして振り向くと、扉の陰に人がいた。良く知っている者で、飛びきりの美女だ。

目の前にいるロランはチャイナドレスに身を包み、後ろ髪を束ねてポニーテールにし、
ピンクの口紅とアイシャドウに彩られて佇んでいる。衣装と化粧で大人の雰囲気を醸し出し、
ポニーテールで少女の可愛らしさを感じさせるまさに憎いまでの演出がなされていた。
ローラ「兄さん、こちらに・・・」
兄の左腕を我が腕に抱いて、シャアの座る横の席にエスコートするローラ。
成す術なく、ひょこひょこと歩いていくアムロ。
シャア「やっと来れたか。君達も各々の席についてくれたまえ。」
傍らにいたフランにエスコートされ、おずおずと椅子に座る弟達。因みにコウはフランの胸元あけすけの
カクテルドレス姿に早くもテンぱっている。
全員席につくと、2人の淑女がグラスにシャンパンを(未成年者にはアップルタイザー)を注いでいく。
やはりいい思いをしたのはローラに給仕してもらった者達であろう。ほのかに香る香水が彼等の鼻腔を優しくくすぐる、
目線の高さに豊満な胸が近づいてくる、彼女の吐息が耳に掛かる。

ガトー「ウラキ、気持ちはわかるが何とかできないのか。ホレ、ナプキンだ。」
もれ出る鼻血を拭うコウだった。

シャア「今日はローラ嬢を通じて、ガンダム家と我が一族の今後の友好の発展を祈念して杯を開けてもらいたい。
乾杯!」
皆無言で厳かにグラスをかざし、飲み干した。
グエン「今日は色々ありましたが、それは取りあえず各々の胸に仕舞っていただいて、今宵のひとときを楽しんでいただきたい。
料理はローラとフラン嬢が腕によりを掛けて作ってくれました。思う存分味わっていただきたい。」
最初いまいち状況把握ができていない兄弟sだったが、雰囲気にもなれていつものペースに戻りつつあった。
ジュドー「俺この肉のローストいただき!」
ゼクス「このブイヤベースはなかなか・・」
不敗「ドモン、このチンジャオロースーはいけるぞ!!」
アル「ウッソ兄ちゃん、はい醤油。」
ギンガナム「このタン・シチュー、絶妙である!分かっているのかローラローラ!」
ローラ「はいはい、お代わりはありますよ。」
賑やかな喧騒が穏やかに場を包んだ。



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5コマ以上 ガンダム一家 ロラン・セアック ローラ・ローラで大騒ぎ 性転換 長編

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最終更新:2018年10月23日 10:32