561 名前:咆哮哀歌 5-1/4 :2010/05/20(木) 10:59:15 ID:???
559の続き


 キコキコキコ…
マユ「ふわぁ…お兄ちゃん、すごーい!」
ステラ「うぇい! シンすごい!」
シン「はいはい」
 ナイフを使って、器用に缶の蓋を切るシンに、尊敬のまなざしが注がれる。
シン「マユは真似すんなよ? 下手したら大怪我するからな」
マユ「はーい。 もう、お兄ちゃんたら心配性なんだから」
クロノス「…」
 やや離れた所ではしゃぐ三人をじっと見つめる大型犬。
マユ「クロノス…だっけ? なんだか、大人しい子だね」
ステラ「うぇい。 クロノス、いい子」
シン「(大人しいって言うよりは、元気が無い気がするけど…ん?)」
 不意に、大人しく座っていたクロノスが立ち上がる。
クロノス「………」
 見れば、鼻を引くつかせながら、何かを探すように辺りを見回す。
 もちろん明かりといえばシンの傍らのライトくらい。
 天井に小さな亀裂はあるが、差し込む光は圧倒的に光量が不足しており、
 ライトの外側は一面の闇である。

‐‐『さぁ、今日はご馳走だぞ~』
 白皙の、物静かな雰囲気を持つ男の姿がフラッシュバックする。

 犬の嗅覚は人の数万から数千万倍とも言われる。
 人間であるシン達には特にどうとは思わぬ缶詰の匂いを、
 大型犬は鋭敏に嗅ぎ取っていた。

ステラ「クロノス?」

‐‐『やったよ―――! どうやらスポンサーが見つかりそうだ!』

ステラ「クロノス!」

‐‐『僕の夢はね、―――。 事故とか、病気とか…
   そんな傷ついた動物たちの新しい四肢を作り出すことなんだ。
   …って、君に言っても判らないかな? あははは』




562 名前:咆哮哀歌 5-2/4 :2010/05/20(木) 11:01:19 ID:???
シン「なんか…様子が変じゃないか?」
マユ「うん…」

 轟音! 轟音! 轟音!
 閃光と、鼻を突く鋭い――硝煙の臭い。
‐『ふふ…なんの研究かは知らんが、いくばくかの金にはなろう…』
 血の臭い。

 ハッ…ハッ…ハッ…ハッ…ハッ…

 闇の中で、クロノスの荒い呼吸音が響く。

ステラ「…クロノス?」

 ハーッ、ハーッ、ハーッ…


 血の臭い。

 血の臭い。

 血の臭い。

 血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い
 血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い
 血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い
 血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い
 血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い
 血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い
 血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い
 血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い
 血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い
 血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い
 血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い
 血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い
 血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い
 血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い
 血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い
 血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い
 血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い
 血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い
 血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い
 血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い
 血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い
 血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い
 血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い
 血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い
 血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い
 血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い
 血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い
 血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い
 血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い
 血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い
 血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い
 血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い
 血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い血の臭い


563 名前:咆哮哀歌 5-3/4 :2010/05/20(木) 11:02:24 ID:???
‐‐『あはははは! そうだ、いいぞ―――!』
‐‐『ごめん、―――。 でも、この実験が上手くいけば』
‐‐『大丈夫かい、―――? 僕はここにいるよ』

 そして、失われた、大好きな臭い。

‐‐『に…逃げ… リク…オー…』

 ぐるるるる…

シン「マユ、下がって…ゆっくり」
マユ「う、うん」
 シンはゆっくりとジャケットから右腕を抜くと、左腕に巻きつけた。
 ライダースーツにも使えるような厚手のものだが、
 成人ほどもある大型犬の牙をどの程度防いでくれるものか。
ステラ「クロノス? ねぇ、どうしたの?」

 ぅるるるるるるるる…

 牙をむき、“何か”を睨むクロノス。
 その目はシンやマユ、そしてほとんど鼻先にいるステラも見ていない。
 シンが視線の先にライトを向けるが、そこにはただ洞窟の岩肌があるのみである。

 ガアッ!

 洞窟に、獣の咆哮が轟く。
ステラ「クロノス…」
シン「ステラ、下がって! そいつ、普通じゃない!」
ステラ「でも…」
シン「でもはなし!」

 ゴアアアッ!

 再び響き渡る咆哮。
 その時である。

 ヴィンッ!

シン「モノアイ!?」


564 名前:咆哮哀歌 5-4/4 :2010/05/20(木) 11:03:46 ID:???
 洞窟のさらに奥、ライトの光が届かない闇の中で、独特の起動音と共に、
 モノアイ・カメラが鈍く輝いた。
マユ「ガイアちゃん?」
シン「違う…これ、まさか、シーブック兄が言ってた…」
 その光でおぼろげに浮かび上がったのは、尖った鼻先の、四足獣型MS。
ステラ「クロノス!」
シン「ステラ、下がれ! そいつはヤバイ!」

 ウオオォォォォン!

 一際高くクロノスが吼えると、“四本足”が胸のハッチを開きながら前進。
 地上高7~8mはあろうかと言うそのコクピットへ、クロノスは一挙動で飛び乗る。
シン「まさか、あいつ…エクステンデッドなのか!」
マユ「お兄ちゃん!」ギュッ

 轟!

 クロノスを収めたMSはそのまま跳躍、洞窟の天井を突き破る。
ステラ「クロノスーーー!!」
 ステラの悲痛な呼び声も、岩盤の崩落の音に飲み込まれた。




ダリル「海岸地区だと!?」
ハワード「まずいぞ…山岳地帯の封鎖に、近隣のMS隊はほとんど出払っている!」
グラハム「ならば、最も機動力に長ける我等オーバーフラッグス隊の出番だろう」
ハワード「警視正!」
ダリル「了解です!」
ジョシュア「回せーー!」

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最終更新:2014年08月07日 18:55