78 名前:ケース・ウルカヌス 1/6 :2010/08/03(火) 22:58:47 ID:???
トレーズ「ウルカヌス?」
ハロ長官「うむ。まず送ったデータを見てくれ。
      スウェン君によると宇宙観測のデータなのだが、10秒と12秒の間に恒星が消えているだろう?
      これは恒星と望遠鏡の間に何かが通った為、と考えられるんだ」
トレーズ「ふむ。それがウルカヌスと呼ばれる資源衛星か。
      そのコードネームはOZの系列である可能性が高い……と」
ハロ長官「話が早くて助かるよ」
トレーズ「少々時間を頂きたい。私が把握してないとすればロームフェラの可能性もあるのでね」



資源衛星ウルカヌス。ロームフェラ財団によって建設、そして破棄されたそれは
内部に無人プラントを持ち、300を越えるビルゴを要している事が判明した。

ハロ長官「300以上のビルゴとなると見過ごせない。何せMDだからね」
レイヤー「データ入力一つで個人が兵力を手に入れる可能性が出てきますからね」
ハロ長官「うん。場所が場所だけにウチの署だけで行動する訳にもいかなくてね。各署、合同で当たることになった。
      そういう訳だから、グラハム君、オーバーフラッグ隊を率いてルナツーに向かってくれないか?」
フィリップ「宇宙の事に関しては俺達モルモット隊の方が経験値があるぜ?」
ハロ長官「合同作戦は各署から一部隊づつ、という取り決めなんだよ」
カレン「派閥争いを避けるため、かい。下らないね」
ハロ長官「ウチの部隊ではグラハム君のところが人数が一番多い。人数が多い方がより安全だろう。
      最悪、ビルゴとの戦闘になる。番犬がいるそうだからね」
グラハム「番犬?」

ハロ長官「うん。型式番号はOZ-16MSX-D、通称スコーピオ……」



ハワード「民間の協力者、ですか?」
グラハム「うむ。ルナツーの対策本部からの指令でな。彼らを拾ってから合流しろとの事だ」
ダリル「サイド8ですか。迂回することになりますね」
グラハム「人を拾うのに全員で向かう必要もあるまい。先にルナツーに合流していてくれ、フラッグファイター」
ハワード「はっ、了解しました!」



ユウリ「こちらイボルブ署所属・ホワイトスネーク、ウルカヌス表面に到達しました」
エイジィ「コクーン署所属・エイジィです。周囲に機影無し」

ウル「バイエルン署所属のウル=ウリアンです!」
ワッケイン「着任御苦労」
ウル「ねぎらいの言葉は感謝します。しかし、全部隊が揃わない内に作戦を開始する理由を聞きたいのです」
ワッケイン「仕方あるまい。指揮を執るエイノー提督の判断だ」
ウル「……逸ったのか」
ワッケイン「強気なのだよ」
ウル「我々も出撃しよう、レイラ! ジェラン!」
ワッケイン「その必要はあるまい。もうすぐ終わる……む?!」



シンシア「ありがとう、シュウト君。助かったわ」
シュウト「大事にしてよね? ンンはラクロアの精霊なんだから」
シンシア「深海農業研究所の信用にかけてね。ンンの存在は生物発光体の研究を進めてくれるわ」
シュウト(あ、マッドサイエンティストの目だ……)
グラハム「む? シュウト君ではないか」
シュウト「警視正? どうしてこんなところに」
グラハム「実はカクカクシカジカでな」

79 名前:ケース・ウルカヌス 2/6 :2010/08/03(火) 23:00:17 ID:???
シュウト「……それじゃあ、ウルカヌスが安全だとわかったらビルゴはどうするの?」
グラハム「ウルカヌスごと破棄する案もでている」
シュウト「ええ!?」
グラハム「MDシステムは古き良きロボット・鉄人28号のようなものだ。リモコン次第で善にも悪にもなる。
      データディスク一つで識別を書き換えられる危険性があって、今は主流から外れている。
      10や20なら兎も角、300も纏まっているとなると有効利用という訳にもいかない。
      ウルカヌス自体も軌道が地球圏から外れかかっているからな。
      300機以上のMDを登録して幾つかの企業に分配するという作業は効率が悪すぎるという判断だ」
シュウト「………」

「あの…」

グラハム「む?」
ルーナ「警察の方ですか?」
グラハム「いかにも。私がグラハム=エーカーである」
シュウト「答えになってないよ、警視正」
ルーナ「よかった、ようやく見つけられた」
グラハム「するとキミは?」
ルーナ「はい。OZのルーナ=アルモニアと言います。
     トレーズ閣下の命令でこの度の作戦にアドバイザーとして同行させていただくことになりました」
グラハム「うむ。よろしく頼む」
シュウト「警視正! ボクも一緒に行っていい?」
グラハム「断固拒否させてもらおう。これは遊びではないのだ、シュウト君」
シュウト「………」
グラハム「専用のシャトルを容易してある。急ごう、ルーナ殿」



ヒイロ「デュオ、ウルカヌスの事だが……」
デュオ「ああ、丁度悪い知らせが入ってきたところだ」
ヒイロ「悪い知らせだと?」
デュオ「12時間前にウルカヌスから番犬とビルゴが展開。
    今、警察側の第三次攻勢が失敗したところだよ」
ヒイロ「………」
デュオ「おい、ヒイロ、どこに行くんだ……って、聞くまでもないか」
ヒイロ「他のプリベンターは?」
デュオ「トロワはもう向かったっていう連絡がきた。
     カトルはコロニー平和会議に出席中で動けないってよ。
     ゼクスと五飛は位置的に到着までに3日はかかる」
ヒイロ「問題ない。今回は潜入任務だ。警察がビルゴと戦闘している間に
     ウルカヌスに直接潜入してプログラムを叩く」
デュオ「ウルカヌス内部のデータはあるのかよ?」
ヒイロ「………」
デュオ「だよな。今攻め込んでる警察にもデータは無いし……」
シャギア「ふ、困っているようだな、死神」
デュオ「お前ら、どっから!?」
オルバ「僕たちは神出鬼没のフロスト兄弟だよ。プリベンターの隠れ家に現れるぐらい造作もないよね、兄さん」
シャギア「その通りだ、オルバよ。そしてウルカヌス内部のデータもここにある」

81 名前:ケース・ウルカヌス 3/6 :2010/08/03(火) 23:02:23 ID:???
ルナツーに到着したグラハムは、怪我を負った部下達と再会した。

スウェン「すまん。お前のフラッグを壊した」
グラハム「部下を助けてくれたと聞く。感謝する」
スウェン「俺が発見した衛星だったからな。見届けにきた……
      こんなことになるならストライクを持ってくるべきだった」
ワッケイン「今更MS一機があったところでどうにもならんよ」
ウル「こちらのMSも人員もかなりの損害がでているが……ビルゴも100機は減らしたろう。私は三時間後にもう一度出撃します」
ワッケイン「君一人でか?」
ウル「問題ありません」
ワッケイン「しかし君のブロン・テクスターはもう限界だ。マンマシーンはMSとの部品の規格が合わないのでな」
グラハム「ウルカヌスのMDを動かしているのは誰なのです?」
ワッケイン「分からん。犯行声明は出ていない以上、人為的原因ではないかも知れん」
ルーナ「ですがウルカヌスの防衛プログラム――スコーピオには内部に存在するビルゴへの指揮権はありません。
     僚機として十数機は稼働する可能性はありますが、100機以上というのは……」
ワッケイン「うむ……しかし、取り敢えずMSを集めるのが急務だな」
グラハム「しかし一番近くの所轄に要請しても24時間はかかるでしょう」
ワッケイン「それは希望的に過ぎるな。私の経験から言わせてもらえば役所の仕事はもっと遅い」
スウェン「DSSDの関係企業も近くにはない」
ルーナ「OZも……」

シュウト「それならいい場所を知ってるよ!」

グラハム「なんと、シュウト君!?」
ワッケイン「アムロのところの弟か。何故……?」
シュウト「へへ、実はシャトルにこっそり隠れてたんだ」
グラハム「始末書ものだぞ……」
シュウト「それよりボク知ってるよ! この近くにガロード兄さん達の隠れ倉庫があるんだ
      そこならMSの一つや二つ、あるんじゃないかな!」



ルーナ「ありました、トールギスにヴァイエイト、キュベレイにゲルググ……それにメリクリウス!?」
ウル「一介のジャンク屋の持っているMSじゃないな」
シュウト「外側だけだと思うよ。中身がオリジナルと同じ性能とは限らないんじゃないかな」
スウェン「このゲルググ、大型のビームライフルを搭載しているな……というよりガトー・モデルか?」
グラハム「……組み立てたMSはちゃんと登録しなくてはならんのだぞ」
シュウト「ははは……」
グラハム「今回は多めにみるが。私はトールギスを使わせて貰おう。フラッグに設計思想が似ている」
ウル「サイコミュ兵器の経験がある。キュベレイにしよう」


ウル「グラハム警視正、付いてくるヤツがいるぞ」
グラハム「む……残りの三機か」
ウル「民間人は下がってくれ」
ルーナ「これでもOZのパイロットです。それにメリクリウスは操縦経験があります」
スウェン「……フラッグを壊した借りがある。このゲルググ、中身は新型だ」
ウル「………」
グラハム「ルーナ殿は分からんが、スウェン殿のMSパイロットとしての腕は知っている。頼れるぞ」
ウル「ヴァイエイトのは?」
シュウト「ボクも戦うよ」
グラハム「危険だ。下がっていたまえ」
シュウト「いやだ!」
スウェン「下がっていろ。お前が怪我をしたらセレーネ達が悲しむ」
シュウト「そんなの、みんなだってそうだよ!」
ウル「……そうだとしたらこんな危険な仕事には就かないだろう」

82 名前:ケース・ウルカヌス 4/6 :2010/08/03(火) 23:03:39 ID:???
ルーナ「敵影! スコーピオです!」
グラハム「ちぃ……ルーナ殿、シュウト君を頼む!」
ルーナ「了解、プラネットディフェンサー展開!」
ウル「いけ、ファンネル! ……シュートォッ!」
ルーナ「擦っただけ? あの巨体でなんて機動力……ッ!」
ウル「MSは勝手が違うな……いや、相手がMDだからか?
    殺意に反応しないからサイコミュの狙いが甘くなる……考えるな、戦場だぞ!」
スウェン「ビルゴも来たか……食らえ!」



トロワ「遅かったな」
デュオ「トロワ、お前……」
シャギア「地図を持っていたのかね?」
トロワ「ああ」
オルバ「きっと宇宙の心が教えてくれたんだよ、兄さん」
シャギア「我々が正義だからな、オルバよ」
トロワ「ドロシー経由でロームフェラの情報を手に入れていた」
オルバ「冗談の通じない男だ」
デュオ「おまえらがカトルと五飛の代わりかよ」
シャギア「5人揃ってのガンダムパイロットだろう」
ヒイロ「無駄口を叩くな。ウルカヌスにアクセスするぞ」



シュウト「……やっぱりだ」
ルーナ「え?」
シュウト「庇ってるんだ、あのMDは味方を庇ってる!」

ウル(MDは味方の損害を無視できるのが強みの筈だ。何故だ……)
スウェン(プラネットディフェンサーを持つビルゴは使い捨ての楯と考えても良いはず)
グラハム(スコーピオはそのビルゴを庇う動きをする!!)


( ■) PPP...

( □) ブンッ…

ルーナ「MDの動きが止まった!?」



83 名前:ケース・ウルカヌス 5/6 :2010/08/03(火) 23:06:47 ID:???
デュオ『あー…あー…マイテスマイテス……こちらプリベンターファイブ、ウルカヌス中枢を掌握した』

ウル「ちっ、プリベンターか……こちら対ウルカヌス警察部隊、協力を感謝する。ウルカヌス起動の原因は判明したのか?」
ヒイロ『本来の防衛プログラムの暴走といったところだろう』
オルバ『防衛プログラムに外から発せられた電波がノイズになって入り込んだのさ』
シャギア『"助けて"と"仲間"というキーワードがな』
ウル「プログラムの暴走か……所詮機械だな」
シュウト「何をするの!」
ウル「またバグが発生しては困る。このスコーピオだけは破壊しておくべきだろう」
シュウト「可哀想だよ!」
ウル「子供が言うこと……どけ、スコーピオの前に立つな」
シュウト「勝手に産んで、勝手に殺すなんておかしいよ!
      スコーピオはただ仲間を守っただけじゃないか!!」
ウル「そういう理不尽な事はよくあることだ。機械だけじゃない」
シュウト「うわぁ!!」
グラハム「ウル=ウリアン!!」
ウル「コクピットに当ててはいない。躾だ」
グラハム「守るべき市民に殴るのは警察のすることではない!」
ウル「俺が市民とやらだったとき、警察に守って貰った覚えはない。
    ゴミの中から食べ物を漁り、泥の中から金属を拾って金に換えた記憶ならある。
    俺自身に力が無ければ、俺の命は俺の与り知らぬところで生まれ死んでいたところだ」
スウェン「………」
ルーナ「………」
ヒイロ『その卑屈な心を今も持ち続けているのか……弱い奴だ』
ウル「うぁぁああ!!」
グラハム「やめろ、ウル刑事!」
ウル「……MDに人間性を認めれば、居場所が無くなってしまうぞ。
   戦うことで居場所を手に入れた者には尚更だ」
ルーナ「それは……」
スウェン「……違う」
ウル「お前達だって、拳を握りしめているじゃないか。拳を握るのは誰かを傷つける為だ」
シュウト「違うよ! 人が拳を握るのは、誰かを応援する為だよ!」

ワッケイン『レクレーションはそこまでだ。スコーピオやビルゴはそのまま回収してくれ』

スウェン「回収?」
ワッケイン『ウルカヌス内部のMDは全てネオジオン社が引き取るそうだ。
       武器を外して工業用として仕様するらしい。MD登録、改修、運搬は全て引き受けるという話で合意した』
デュオ『そりゃ赤字だぜ。やるねぇ、赤いオッサン』




Pガーベラ「申し訳ありません、社長」
シャア「気にするな。先行投資に過ぎん。スィートウォーターなどの建設にはMDなどいくらあっても構わんからな」
コマンダー「マドナッグ…いや、プロフェッサーのワープ航法実験の失敗の祭の救難信号が
        ウルカヌスの防衛プログラムにミキシングを起こしてしまうとは……」
シャア「それもフロスト兄弟が上手く揉み消してくれるだろう」
ナナイ「さすがです、社長」
シャア「ふ……戦いとは常に二手三手先を考えてやるものだ。
     今回の事件が表沙汰になればまた、モビルシチズンへの風当たりも強くなるだろう。それは避けなければな」
コマンダー「社長……」
シャア「モビルシチズンが今日の地位を築くまで、沢山の犠牲があった。犠牲となったモビルシチズンは今もネオジオン社の地下で眠っている。
     人間もそうだ。今回の事件で活躍したシュウト君以外の四人はみな、孤児であったり貧困層の出身者だ。
     現在社会的地位のある職に就き、輝かしい実績を上げているが、その裏には無数の彼らになれなかった人達がいる。
     私は彼らを応援したいと思うのだよ。だからこそウルカヌス受け取りの調印にも自ら赴くというものだ。行こうか、プロフェッサー」
Pガーベラ「ハッ!」




84 名前:ケース・ウルカヌス 6/6 :2010/08/03(火) 23:20:31 ID:???
トロワ「ここ(コロニー港)でお別れだな」
デュオ「サーカスの興行中だったんだって? 悪かったな」
トロワ「問題ない。ライオン君が俺の影武者をやっている」
ガロード「あ、いたいた!」
ジュドー「おーいシュウト!」
シュウト「あ……」
ガロード「なんだ、ヒイロも一緒だったのか」
ジュドー「シュウトぉ、お前なぁ……」
シュウト「ゴメン、勝手に倉庫のMS使っちゃって!」
ガロード「馬鹿! そっちじゃないっての!」
ジュドー「危ないことするんじゃないって!」
シュウト「ボクがMSに乗ったことどうして知ってるの?!」
ガロード「やっぱり乗ってやがったな!」
シュウト「あ……ズルいよ!」
デュオ「まー、シュウトにMSの操縦教えたの俺等だしな」
トロワ「なかなか筋がよかった。俺も同じぐらいの歳には傭兵としてあれぐらいはMSを動かせていた」
ガロード「後はMSのハンティングだな」
ジュドー「いやあ、潜入術っしょ」
ヒイロ「野生動物の狩りの仕方も……」
デュオ「おまえら、自分の弟を何にするつもりだよ……」
シュウト「あ、雪……」
ジュドー「天気予定じゃ今日は雪じゃねーのにな。これだから古いコロニーは……」
デュオ「でも雪が降ると洗濯の水が溜められてラッキーだぜ?」
ガロード「カイロとか売れるしな」
ヒイロ「コートを着ることが不自然じゃなくなる。コートの中に色々仕込むには便利な天候だ」
シュウト(ポカーン)
トロワ「気にするな。三つ子の魂百まで、というヤツだ。こういう奴らがいるから、この宇宙は平和なんだ」
シュウト「みんな凄いね……って、みんななんで笑ってるの?」




三ヶ月後、ウルカヌスは地球の周回軌道に入った。
内部のビルゴを工業用に稼働させたシャア=アズナブル社長は空になったウルカヌスに
廃棄されたMDやモビルシチズンの棺とした。
その中には静かに佇むスコーピオの姿もあった。


シャア「我らの友に」
ハロ長官「友に」
シャア「敬礼」
トレーズ「敬礼」
グラハム「………」
スウェン「………」
ウル「………」
ルーナ「………」
シュウト「………」





ヒイロ「ウルカヌス事件、報告終了」

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最終更新:2014年09月16日 21:54