61 名前:2月1×日の景色・前編1/3 :2011/02/09(水) 18:19:24 ID:???
 ガラガラと音を立ててガンダム家の玄関が開く。
シロー「ただいま…」
 その日はよほどの激務だったのか、力感の塊のようなガンダム家の次男坊が、
 疲れ切った声で、面持ちで、こぼす様に言った。
ロラン「お帰りなさい、シロー兄さん」
 パタパタとスリッパを鳴らし、兄を出迎える八男。
ロラン「ずいぶんお疲れみたいですね。 先にお風呂にしますか?」
シロー「ああ、そうさせてもらうよ…みんなは?」
ロラン「ドモン兄さんが例によって修行だーって飛び出して行ったきりですけど。
    アムロ兄さんもマイ兄さんももう帰ってますよ」
シロー「そうか… アル! シュウト! 一緒に風呂入るか?」
アル「あ、シロー兄さん」
シュウト「おかえりなさーい」
 てっきり居間でテレビを見ていると思った二人の弟が、台所から顔を出す。
シロー「お? ロランの手伝いか?」
アル「んー…どっちかって言うと…」
シュウト「ガロード兄さん達のお手伝い?」
シロー「………また何か始めたのか、あいつらは」
ロラン「まあまあ、どちらかと言うと人助けですから」
シロー「何をやってるんだ?」
アル「チョコレートー」
シュウト「バレンタインー」
シロー「…何だって?」
ロラン「えっと、手作りチョコの請負でして…」
シロー「ああ! 去年もそんなことやってたな!」
ロラン「来月の支出を考えると、馬鹿にできない収入なんです…」
シロー「………なんか、すまん。 いろいろと」

 ロラン・セアックの手作りチョコ。
 一つ500円より―――


62 名前:2月1×日の景色・前編2/3 :2011/02/09(水) 18:20:13 ID:???
 ピンポーーン

ルナマリア『はーーい』
ジュドー「お届けものでーす!」
ルナマリア「あら、ジュドー? お届けものって?」
ジュドー「これ。 メイリンさんに頼まれたんだよ。 メイリンさんは?」
ルナマリア「夕飯の買出し。 もうすぐ戻ると思うけど…預かっとく?」
ジュドー「あ、んじゃ、受け取りにサインお願い」つ【伝票】
ルナマリア「ずいぶん本格的ね…サラサラ はい、これでいい?」
ジュドー「ほい、まいどありー。 んじゃっ!」タタタタ…
ルナマリア「あ! …もう行っちゃった…相変わらず落ち着かない子ね~。
      …で、何を頼んだのかしら、メイリンてば」ガサガサ

メイリン「ただいまー♪」
 戦い抜いた戦士の顔で、数多の戦利品を手に帰還するメイリン・ホーク。
ルナマリア「おかえり~。 遅かったわねぇ」コリコリ
メイリン「んっふっふ~、隣町のスーパーで国産牛肉の特売やってたの~」
ルナマリア「ほう! 国産デスカ!」
メイリン「今夜はご馳走よん♪ …って、何食べてるの、お姉ちゃん?」
ルナマリア「あ、これ? ジュドーがさっき届けてくれたんだけど…
      なかなかいけるわね。 どこのお店?」パクッ!
メイリン「へ? …あ…あああああああー!!」
ルナマリア「なっ、何よ…」ポリポリ
メイリン「ちょ、もうほとんど残ってないじゃない!」
ルナマリア「あー、ごめん。 お腹空いちゃって…また明日買ってきてあげるから」
メイリン「何言ってるのよー! これ、完全予約制なのよ!
     ロランさんの手作りなのよ!? もう手に入んないんだから!」
ルナマリア「え?」
メイリン「アスランにプレゼント…中学生限定って…
     ガロードに無理言ってようやく…」ブツブツ…
ルナマリア「そういえば、包装も手作りっぽい感じが…
      はっ! あんた、ロランの手作りチョコを自分がつくりました~って
      アスランに渡すつもりだったのね!」
メイリン「ぎくっ! な、何よ…お姉ちゃんだって、どこかのお店で買ったの渡すんでしょ!?
     ロランさんから買ったのを渡すのと、どこが違うのよ!」
ルナマリア「フェアじゃないって言ってんのよ!」
メイリン「人が買ったチョコを、勝手に食べつくす人に言われたくありませんー!
     あれ高かったんだから!」トリュフ20コイリ…

 ギャーギャー

 ホーク姉妹の賑やかな声は、夜半過ぎまで聞こえていたそうな。


63 名前:2月1×日の景色・前編3/3 :2011/02/09(水) 18:21:26 ID:???
セシリー「ロランのチョコ、なんで中学生しか頼めないの?」コネコネ
シーブック「高校生は自分で作れってことなんだってさw」コネコネ
セシリー「なるほど… でもそうね、中学生だと、火を使わせてもらえない家もあるでしょうし」
シーブック「女の子って大変だよな。
      高校生だと逆に料理はできて当たり前って感じだし」
セシリー「そうねぇ… まぁ、湯煎で溶かして型に流すだけだから、
     あれを料理と言われるのもナンだけどw」
シーブック「けど、手作りチョコって当たり外れ結構あるよなぁ…なんで?」
セシリー「…ふぅん、シーブックさんってば、食べ比べができるくらい、チョコ貰うんだ?」
シーブック「(やば…)え、えっと、ほら! カミーユとか!
      あいつは毎年いっぱい貰ってるからさ! そのおすそ分けで!」
セシリー「……………」
シーブック「いやほんと、俺なんてぜんぜん貰わないから!」
セシリー「…くすっ♪」
シーブック「え?」
セシリー「そんなに慌てなくても大丈夫よ♪
     シーブックがあんまり必死だから、ちょっとからかっただけ。 ごめんね」
シーブック「セシリー…」
セシリー「ちなみに、チョコの味わいは原料とか製造工程でかなり変わっちゃうんだけど…
     一般的な手作りチョコの当たり外れは、砂糖の量、つまり味付けと、
     テンパリングをきちんとしてるかどうかの違いね」
シーブック「テンパリング? って、チョコ溶かすあれだろ?」
セシリー「そ。 きちんと温度の管理ができてれば艶々で滑らかなチョコになるの。
     それがいい加減だとダマになったり、油脂分が浮いて白くなったりするのよ」
シーブック「へぇ~… あ!じゃあ、コロネのチョコとかも…」
セシリー「そうよ~。 ちゃんとやらないと、味わいがまるで違うのよ」
シーブック「うわー、そんなの考えてなかったよ…俺もまだまだだなぁ…」
セシリー「うむ、精進したまえ♪」

後編に続く

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最終更新:2015年01月01日 20:26