ある休日の午後。ロランに夕食のおつかいを頼まれたヒイロ・ジュドー・ガロードの14~15歳陣は
隣町のスーパーまでカレーの材料を買いにきていた。今回は特に高額の軍資金を渡しているため、
おつかい担当コンビのネコババを余計に恐れたロランは、ヒイロに2人の監視とサポートを依頼したのだった。
ヒイロ「カレー粉、牛肉、ニンジン、ジャガイモ、タマネギ、ウスターソース。それぞれ確保に成功。
    余った資金でデザート用のドーナツとアイス、そしてメンチカツを人数分購入。
    現時点における任務遂行上の障害は無い」
ガロード「・・・今更だけど兄貴のそれ系の行動、もうちょっと何とかならないのかよ?」
ヒイロ「任務中は何が起こるか予測できない。特に、俺たちのような身の上の者にはな。
    状況を逐一記録していけば万が一の時、次の奴が任務を遂行しやすくなる」
ジュドー「ただ買い物してるだけなのにそんなこと・・・あるわけないとも言えないんだよな、俺たち兄弟の場合じゃ」
そうぼやくジュドーらを無視し、ヒイロはテレコによる録音を続ける。その沈んだ声とテレコのノイズ音は、
すぐ近くにいる2人にとっては少々苦痛であった。通行人の視線も痛い。
自分たちも自分たちで、それぞれ山盛りのドーナツとアイスクリームが入った袋を両手にぶらさげているのだ。

 しばらく練り歩きが続いた後、駅の近くまで戻ってきた3人。
ジュドー「このままいけば、ちょうど昇りの列車がホームに来るな」
ガロード「帰ったらさ、みんなより先にアイス食おうぜ。一人2個の割り当てだから、食っても1個ずつ余るし」
ジュドー「おう!」
それから程なく、どこからか金属がきしむような音が聞こえてきた。
またヒイロのテレコかと考えた2人は後方の彼に顔を向ける。だが、その予想は外れていた。
ガロード「あっ!あれだよあれ。遠くの方で工事やってる」
ヒイロ「大きい工場だな」
ジュドー「ほんとだ。こっから見てもでかいな~。巨神イデ・ドームくらい?」
ヒイロ「・・・・・・」
ガロード「おいヒイロ、カレーの材料持ったままでどこへ行くんだよ?」
ヒイロ「あからさまに怪しい。調べてくる」
ガロード「・・・・・(;゚Д゚)まずは買い物を無事済ませてから、な?」
ヒイロ「・・・俺としたことが・・・任務失敗、自(ry」
2人「それもちょっと待てぇーっ!!」



ドーン


ジュドーとガロードと通行人がアフロヘアーと化した日の夜。
キラ「うあ゛ぁあ ・゚・(´Д⊂ヽ・゚・ あ゛ぁあぁ゛ああぁぁうあ゛ぁあ゛ぁぁ
ウッソ「泣いてないで崩れたバリケードを直してください、キラ兄さん!」
対するは、
シロー「第08ガノダ家小隊員へ緊急連絡!ドーナツ・アイス数十個の安否は不明!人質の身が危ない!」
ドモン「チマチマ攻めていてもラチが開かん!俺が突っ込む!」
カミーユ「血気にはやった強攻策は最悪の結果を生むぞ!」
コウ「数秒で押さえればドーナツ1、2個で損害は止まる!ウラキ中尉、突貫します!」
ロラン「キラたちも兄さんたちも落ち着いてくださいっ!」
ジュドー、ガロード「俺たちが買ってきたのに~っ!!ドーナツ返せ~!!」

 3Fの住人であるキラとウッソが『最近出番無いから腹いせに(御大将に朝食を取られてばかりだから)』
を理由にドーナツとアイスクリーム山盛りの袋4つを夕食の混乱に乗じて強奪。
バリケード(イスとPCジャンク)とトラップを仕掛けたのちに、自らの部屋に立てこもったのだ。
アムロとアル、シーブックはロランに仲裁を任せ、事の決着を待っている。
ヒイロは自室でアイスを賞味中。自分の分は帰ってきた時にちゃっかり確保しておいたようだ。
やがてアイスを完食したヒイロは、食べかすを捨てにキッチンに姿を見せた。
ヒイロ「上はまだやっているのか。仲裁なら引き受けるが?」
アムロ「いや、いい」
これ以話をややこしくしてたまるものか。
シーブック「みんながまたガンダムを引っ張り出さなきゃいいけど」
ヒイロ「・・・そうだ、お前に見てもらいたいものがある」
ヒイロがアイスと一緒に持ってきた愛用のノートパソコンには、
『ジュピター製パン』という企業のホームページが映し出されていた。
シーブック「ごめん、よくわからない。英文だらけだから外国の企業だと思うけど」
アル「この会社がどうかしたの?」
ヒイロ「念のため調べておいた。製パン業界ではかなり有名な企業で、ユーラシア大陸の複数の国に支社を置いている」
シーブック「すごいな。パンの世界でここまで成功した人たちがいたなんて」
ヒイロ「この企業が近々日本に進出する。しかも、支社の社屋はこの街の隣町に建設されている」
シーブック、アル、アムロ「!」
アル「シーブック兄ちゃん、こんな会社がすぐ近くにできちゃったら・・・」
シーブック「・・・いや、多分大丈夫。スーパーで売られているパンとドンキーベーカリーやカロッゾパンといった
      専門店で売られているパンは案外住み分けができているもんなんだ。
      デパートで食品売り場のパンとなんちゃらベーカリーのパンが隣に並んでいても、
      どっちかに売上が極端に偏ることはない」
ヒイロ「そうか。それなら安心だが・・・ジュピターにはよくない噂も流れている。気をつけろ」

ガノダ家の攻防が泊まりにきたアスランの説得によってほぼ決着したその1時間後。
二条の流星が地面に叩きつけられていた。
ザビーネ「ぐっ、ぐうううううっ!」
ドレル「うわああああああっ!!」
ザビーネの愛機『ベルガギロス』とドレルの愛機『ベルガダラス』である。
ドレル「うっ・・・・・・ザビーネ、大丈夫か?」
ザビーネ「・・・私はともかく、ギロスはダメです。10メートル歩ければ御の字か。
     ダラスは?」
ドレル「こっちはまだ当たり所がよかったようだ、まだ動ける。どこかに機体を隠せればいいんだが」
???「MSの輸送と手配ならこちらでしよう」
ドレル「誰だ!?」
ザビーネ「・・・お前は」
山林の奥から現れた時代錯誤な貴族風の紳士、それは・・・
トレーズ「自身もエレガントなら愛機もエレガントか。ますます良き友になれそうだ。あの服は大事にしているかね?」
ザビーネ「ごたくはいい。なぜお前がここにいる」
トレーズ「私は歯医者からソムリエ兼支配人まで、複数の職で腕をふるっているのだよ。
     そして、エレガントを汚す者に制裁を加えることも。君たちに協力させてもらおう」
レディ「トレーズ様、MSトレーラーの準備整いました」
トレーズ「うむ。ザビーネ君たちは紫のMSで黒いMSをトレーラーまで運んでくれないか?
     私は先に行く。わからないことがあったら運転手に聞いてくれ」
去っていくトレーズとレディ。残された2人、特にドレルは開いた口が塞がらなかった。
ドレル「な、なんなんだ連中は?あなたの知り合いか?」
ザビーネ「少し前に。相変わらず人の話を聞かない奴らだ。行きましょう。」

 山の中腹をくりぬいて建設された格納庫へ案内される2人。
ザビーネ「トレーズ。輸送と手配といったが、手配とは?」
トレーズ「君たちが行動する際、先のMSではアレを見慣れた付近住民に『私が犯人です』と言ってるようなもの。
     そこで隠密行動用にまったく異なるMSを用意させてもらった・・・これだ」
四方八方のライトに照らされて浮かび上がるのは、ドクロの紋章を額につけた3機のガンダムタイプMS。
それぞれ白黒、濃紺と紫、青と白のカラーリングが施されている。武装も微妙に違うようだ。
レディ「順に、クロスボーンガンダムX-1、同X-2、同X-3。
    ザビーネ様には中央のX-2にお乗りいただきます」
ザビーネ「フン、また黒いのか。いいだろう、ガンダムタイプが持つ悪魔の力とやらにも少し興味があった」
レディ「ドレル様には、X-3を・・・」
ドレル「いや、今はちょうど帰省中だっただけで、この先駆けつけられるかわからない。
    他の誰かのために温存しておいてくれ。もちろん、秘密は厳守する」
レディ「かしこまりました」
トレーズ「気に入ってくれたようだな。この機体は好きに使ってくれてかまわない。
     もっとも、パン職人とパン業者の戦いである以上、最後にものを言うのはパンだろうが」
ザビーネ「当然だ。俺がカロッゾさんの下で働いているのも、真の朝パン主義を極めるため。
     この社会の基盤をパンが支えている現実を確かめるために焼き続けるのだ。
     シーブックを知っているな?奴は朝パン主義を受け継ぐにふさわしい男だ。
     朝パン主義継承者の名声が欲しくないといったら嘘になるが・・・
     感情をコントロールできない人類はゴミだしな」
トレーズ「その思想には相容れないものを感じるが、こちらにそこまで強制する権利は無い。
     君は君のエレガントを極めてくれたまえ」
ザビーネ「言われなくとも。・・・さて、裏切ったフリをしてジュピターに潜入でもするかな?」



これは、製パン業界とガンダムパイロットたちを揺るがす一大事件のプロローグである。
「安心したよドゥガチ。あんたはパン屋だ・・・心が歪んだだけの、ただのパン屋だ!!」



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最終更新:2018年11月21日 23:04